Tips~ノゾマレタ、センソウ
世界録の断片3 望まれた戦争
「大統領。情報部より、日本により近日ハワイ奇襲が行われるとの情報が上がってきています。如何なさいますか」
そう、黒服の男は告げた。にこりともせず、ただ淡々と。
それがどのような意味を持つのか理解していながら、まるで感情などないかのような、事務的な口調で、一国の一大事を国の長に伝えたのだ。
「それは本当か!?すばらしい!そうか・・・やっとか!やっと始められるか!」
黒服が伝えたことは、「これから戦争が始まる」---ということだ。そう、これから、人と人とが殺しあう、戦争が始まるのだ。
・・・にもかかわらず、そのことを伝えられた長は、それを吉報として受け取っていた。
「火種は用意できました。これを機に、民意は戦争へと傾くでしょう---問題は、火種の大きさです。このことを各領域の司令官にお伝えになられますか」
火種は用意できたと、黒服は言う。
そして。
「ははは、お前も冗談がうまくなったな!この状況で、伝えるだと?なぜだ?偉大なる大義の誕生には、悲劇という前座が必要だ!そして、その悲劇は大きければば大きいほどいいに決まっている!」
火種は・・・悲しみは、大きいほどよい---そう言われてなお、黒服は表情一つ変えない。
その火種が悲劇で燃え上がると知りながら。
「了解しました。では、そのように手はずを整えてまいります。では、詳細なプランが確立しだい、またご連絡に伺います。では、失礼します」
黒服を見送る大国の長。
長は、黒服が去った後、ぽつりと、こうこぼした。
「これで東洋を猿どもから解放できる。しかも、三国同盟も持ち出せば、欧州への介入も可能になる・・・ここからだ。ここから、新世界への一歩が踏み出せる!」