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「20080807 pm14:00-17:00 森にて」

たとえ阿蘇唯一の女子が怒って帰ってしまったとしても、明達の物語は問題なく続く。


「信也、そっちいたかー?」

「んにゃ、いねぇー。明はー?」

「こっちもいないーってか、くさいよこれ!」


腐ったバナナ(蜂蜜付けストッキング入り)を前に、キャッキャと騒ぐ三匹の猿。

そこには、女子を怒らせたことに対する反省も、後悔も、なにより、恐怖が感じられない。


「あーーーーもう!クワガタいないじゃん。カナブンいるけど!こいつら、逃げる気配すら無く蜜吸ってるけど!」


明の前には、二匹のカナブン。しかし欲しいのは、カブトムシとクワガタ。

明達は汗だくで三時間も森を練り歩き、やっと出くわした昆虫がこの二匹だけだった。


三匹の猿が、カナブン二匹に集まる。

そして。


「おまえら、蜜吸うな!」


言うやいなや、腐ったバナナを蹴飛ばす裕也。

これにはさすがのカナブンも驚き、飛び去った。


ふーふーと鼻穴を膨らませて息をする裕也は、それでも我慢ならなかったらしく、「チェストー」のかけ声とともに木に一発蹴りを叩き込む。

ときおりではあるが、こういうことをするとクワガタが落ちてくることがあるのだ。


そして、今回裕也のもとに降ってきたのは、一匹のムカデ。しかも、胸の辺りにいい感じに引っかかり、服を這い出す。


「dsjがおいsfdgjms:dかfl:sdklgじゃ:いg」


新世界の言葉を吐き散らしながら、木の枝でムカデと格闘する裕也。

もともと国語は苦手な裕也だが、それでもいつもはまだマシに喋る。



「ああ、ばちあたり。神木蹴ったりするから・・・」


信也が、あきれ顔で裕也を見る。助けるそぶりなど微塵も見せないのは、親友たる信頼感の成せる技か。


「これ、御神木?この神社の?え?バナナ?え?」


焦る明。

さらりと信也が口にしたことは、どう考えても罰当たりの対象が裕也だけでないことを示していた。


「ああ、心配ないよ。この御神木、越後の家のやつじゃないから。えーっと、なんかよく分かんないけど、この木は昔から神様が宿る木って言われててな。まあ、言われてるだけで、自称神木なんだよ。」


「自称」の使いかがおかしいのはご愛嬌。

また、そう言いつつ信也は、ストッキングバナナを木の枝でのけて、明にその裏を見てみろと言った。


はたして、そこあったのは。


  いつか二人で、かならずこの景色のもとに

  

  この約束を、いつか二人で果たしましょう

                         」


そこにあったのは、たった二行の言葉。

それこそは、遠い彼の日に果たされるはずだった、ありしひの「約束」。



「うわー、ガッツリ掘ってあるね・・・だれ、こんな罰当たりなこと下の・・・信也と裕也?」


果たされるべきだった、彼の日の「約束」。しかし、果たされずに終わってしまった過去のモノ。

しかし・・・


「いやいや、さすがのおれたちも、バナナはぶら下げれるけどなーーーこれはちょっと無理だわ。あー、裕也なら行けるかも。じっさい、さっきあいつ蹴ってたし。で、まあ、ようするに、俺が言いたいことは、こんなことしたやつがいるんだけど、そいつはけっきょく、何の罰もあたらなかったて話だってこと」


物語は、再び動き出す。

それは、「再会」という大義のもとに。

あるいは、「だれかのため」という、優しさのもとに。


「ふーん。なら、もんだいないのか、バナナくらい・・・で、裕也は?なんか、さっきから静かじゃない?」



そう、物語は動き出すのだ。すべからく、そうであるべくして、動き出すーーーが、その前に。


「貴様ら・・・ウチの管轄ではないとはいえ、御神木にそんなもんぶら下げるとはいい度胸だな」


しかるべき制裁は、しかるべきモノ達に与えられるべきであり。


「げっ、越後のおやじさん!?」

「え、あれが?ぜんぜんにてないーーーーうわー!!!無理ムリ!なにそれ、ああああああああああああああ!!!!!!裕也がーーーー!!!!!」



まあ、さしよりまずは。

結城に腹いせとばかりにこの御神木の件をちくられて、およそ現代社会では想像もつかないお仕置きを受けているサル三匹の・・・はなしは跳ばすか・・・











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