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バカ女が戦車でやってくる!  作者: TANK_KONG
第一章
2/33

02

 鉄男の死からちょうど35年。

 今日の日付は2061年、6月15日である。

 鉄男の記憶の通り、2026年に世界は破滅し、人類は地表に住めない状態となった。

 彼のいた静岡の展示会場は、北朝鮮の核ミサイルの攻撃で消滅してしまった。

 富士演習場で訓練中の米軍を狙ったものが、何らかの理由で大きく外れ、静岡市に落ちてしまったのだ。

 積年の恨みを晴らすがごとく、北朝鮮は南朝鮮を制圧後、余勢を駆って日本にまで手を延ばしたのだ。

 ロシア、中国の忠告も、絶頂期を迎えたキム王朝の主の耳には届かなかった。

 むしろアメリカ軍が多数駐留する今が好機と、核による先制攻撃に踏み切ったのだ。

 確かに日本に居たアメリカ軍は全滅し、日本の主要都市は消滅した。

 その結果、アメリカから、国土が真っ平らになるほどの核の報復を受け、朝鮮半島は事実上壊滅した。

 しかし、ロシア、中国も応戦したため、その当時に配備してあったほぼ全ての核ミサイルが連鎖的に発射されてしまった。

 不幸なことに地下にシェルターを作っていた東京、大阪、名古屋の三大都市は、中国とロシアからそれぞれのミサイルによって何度も攻撃され、地下施設さえも破壊されてしまったのだ。

 いくつか、迎撃されたものもあったが、たとえ標的ではない地域であっても、放射能を帯びた塵は世界中に拡がり、あまりに多くの核爆発が同時に起きたため、オゾン層が全て消滅し、太陽放射線が直接地表に降り注ぐこととなった。

 そのため、大気のプラズマ化が低高度でも起こり、電離層が大きく変容し、長距離の無線通信が不可能となってしまった。

 通信は見通せる範囲の短距離か有線のみとなってしまい、衛星通信もインターネットも消滅してしまった。

 更に予想されていた核の冬は結局は訪れず、むしろ大気のプラズマ化が進行したことで呼吸可能な大気が地表から高度1000mまでに大幅に減少、多くの生物を死に至らしめた。

 また、赤道付近の強烈な直射日光は地表を枯らし、海水の蒸発を促進して、水蒸気を大量に発生させた。

 これにより、中緯度地域では常に雨雲に覆われ、酸性度の高い雨は地表の石灰分を溶かし、二酸化炭素を大量に発生させたため、さらに温暖化が進んでしまった。

 高緯度地域では砂漠化が進み、強風と放射能に汚染された砂塵にまみれ、完全に死の大地となった。

 南北の極点地域では、大気のプラズマ化が地表にまで及び、放射線を含む強烈な電磁波が飛び交い、生身の生物は生息出来なくなった。

 地表にありながら呼吸すら出来ず、もはや宇宙服が無ければ歩けない状態となった。

 残された人々は地下に潜り、中緯度圏にのみ住むことが許されたが、強酸性で放射能を帯びた雨は遺伝子を破壊するため、防護服無しで外を歩くことは出来ない。

 そのため、外を移動する時は放射線を遮断出来る乗り物を利用するしかない。

 屋外にあった一般の乗用車は放射線により、半導体が破壊されてしまい、使用出来ない。

 戦車を始めとする、NBC(Nuclear, Biological, Chemicalの略)耐性のある軍用車か、それを前提として作られたVIP専用車のみ、運用可能な状態となった。

 訪れたのは大昔に書かれた小説や、映画などで予見されていた通り、汚染された水と大気、動く物の何も無い死の世界だった。

 核のもたらした惨禍は、たった一日で、何万年に及ぶ人類の歴史を消し去ってしまった。

 地下に潜った人類たちも、無傷では済まなかった。

 放射能の影響で遺伝子が破壊され、男性のおよそ8割が精子を作れないという事態になり、世代が進むほどそれがその影響が大きくなっていた。

 核戦争前に生まれた世代は辛うじて生殖能力があったようだが、現在はほぼ女しか生まれなくなってしまって、仮に男が生まれてもほとんどが不能者として産まれてくる。

 もはや、人類は今を生き残ることが全てで、明日の食料を確保することしか頭にない。

 到底何年も先の未来を描く余裕は無かったのだ。


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