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バカ女が戦車でやってくる!  作者: TANK_KONG
第一章
1/33

01

いちおうSFのつもりです。


2025/03/22:導入部分07まで書き換えました。

 …

 ……

 ……鉄の味がする…


 …何だ、この感覚は。


 鉄の味はするが、舌が感じた訳ではないようだ。

 そもそも舌が動かせない、??

 いや、それどころか身体もどこも動かせない。

 ていうか身体がどうなっているかも判然としない。

 目も開かない、音も聞こえない。

 何がどうなっている?


 暗闇の中、ただ、自分だけが居る。


 こうなる前に何をしていたか思い出せない。


 いや、徐々に記憶が……


 ……確か何かの展示会に…そう、プラモの展示会だ。


 静岡の展示会で、主催するメーカーのラインナップに30年ぶりにミリタリーモデルシリーズが復活したとかで、それを見に来たはずだが…


 そう、そこに実物の戦車が飾ってあったのを思い出した。

 自衛隊で使っている実物の、実用化試験の最終試作車だったと思う。

 いわゆる第4世代と呼ばれる、乗員が一人でも作戦が可能なワンマンオペレーションを実現した戦車で、ロシアと中国以外では西側で唯一日本だけが営々と戦車開発を続けており、大陸国でも武器輸出国でもないのになぜ?と世界から不思議に思われていたのだ。

 多分、某重工メーカーのお偉いさんに戦車好きが居るんだと思うが、同じく戦車好きの俺としてはちょっと誇らしかったりする。

 いや、そんな話は今はどうでも良い。

 そこで何が起こったかだ。

 そう、確か会場でその実物に触れた瞬間、何か電気が走ったというか、ビクッとなったんだが、その時何かが起きたんだと思う。

 そこからの記憶が無い。

 寸前に悲鳴のようなものが聞こえた気がするのだが、そこで完全に意識が途切れたのだ。

 良く分からないが、とにかく一瞬で意識が無くなっていることを考えると、何かが落ちてきた死んだのか、核爆弾でも落ちたか。

 そんなことをしばらく考えていると、急に頭に電気が流れる感覚がして、音が聞こえるようになった。

 電話越しに聞く音声のように、明瞭ではなくガサガサと、ノイズ混じりで音が聞こえる。

 女の人の声がする。

 何だ?独り言のようにブツクサ喋っているが、よく聞き取れない。

 だが、その声の主が「よっしゃ」と言った瞬間、突然目が見えるようになった。

 ゆっくり目が開くとかではなく、いきなりだ。

 ちょうどテレビのスイッチが入ったかのように、いきなり動画の映像が見えるようになったのだ。

 そして、驚いたことに音声も先ほどより明瞭に、ちゃんとステレオで聞こえるようになった。

 その先ほどから聞こえていた声の主と思われる女性は、まだ子供のようで、見た感じ中学生くらいか?

 「やった〜、カメラ映った〜」と喜んでいる……が、かなり露出が激しい。

 露出と言ってもカメラの露出ではなく、少女の服装のことだ。

 超ミニのタンクトップだが、ビニール素材のようなツヤのある生地で、身体にピッタリ張り付いている。

 下乳が半分見えており、もちろんブラもしていないようだ。

 かなり小さめの胸なので、無くても平気なのかも知れないが、周りの目が心配だ。

 下はよく見えないが、こっちもかなり短めの…デニムのショートパンツか?

 いや、ショートとか言うレベルでは無く、股下からの布の長さは10cmも無い。

 パンツと言うより帯を巻いただけのようにも見える。

 今立ち上がって後ろを向いて何かを探しているようだが、横から何かがはみ出して見えそうなくらい短い。

 ん?下着穿いてないんじゃないか?これ。

 オイオイ露出狂か?

 いやいや、そんなことより、この状況だ。

 ここはそもそも何処なんだ?

 見た感じ周囲はひどく狭い室内、ん?もしかして戦車の中か?

 うん多分間違いない、最新型の25(フタゴー)式戦車のようだ。

 俺が最後に見た、あの戦車だろうか?

 そして俺は、カメラからの映像を見せられているのか、身動きは出来ないものの、ゆっくり左右に視線を動かすことは出来るようだ。

 かなりゆっくりだ、そう、小さなモーターで動く監視カメラのように。

 声を発しようと試みたが、そもそも呼吸をしていないことに今になって気づいた。

 どうなっている?

 まるでロボットにでもなったみたいだ。



 ブゥ〜ンという音とともに、身体中が熱くなるような感覚を覚え、全身の各パーツが動き出したようなそんな気がしたが、相変わらず動かせる手や足があるようには感じられない。

 ただ、湧き上がるエネルギーのようなものが全身に満ちてくるのが感じられる。

 すると突然、目の前にコンピュータの画面が現れ、OSが立ち上がる様子が見えた。

 だが、その画面は全て裏返しで、まるでモニターを裏から見ているような感じだ。

 ユーザーログインのダイアログが表示されたところで、例の露出狂娘がこちらに向かい、何かと照らし合わせて一文字ずつパスワードを入力していく。

 ふうむ、今どき生体認証じゃないのか?

 っていうか、この状況はもしかして俺はコンピュータの中の人になったのか?

 だが、OSの初期画面が表示されて、俺は腰を抜かしそうになった。

 腰がどこだかは分からないが、なんと国産の某OSのロゴが見えるではないか。

 一般のPCでこのOSが使われることはほとんど無いが、国産の家電や自動車などの制御に使われるのは実はこっちの方が多い。

 もちろん一般人の目に触れることは無く、そんなものはエンジニアしか使ったことが無いだろう。

 ってことは、この娘はエンジニアなのか?

 じゃあ、俺は家電か何かになったのか?

 自販機に転生するラノベがあったような気がするが、この場合どう判断したら良い?

 戦車の中と思ったのだが、さすがに戦車のOSが某国産OSってことは無いだろう。

 ってことは別の何かか?

 そう思っているウチに、その少女が画面を操作し色々なパーツの接続状況を確認しているようだ。

 逆さ文字なので読みにくいが、「砲塔電源」とか「ディーゼル補助電力」とか読めるので、やっぱり戦車っぽい。

 もう一度周囲の状況を良く見てみると、色々なパーツが乱雑に転がっており、そのほとんどが錆びていたり変形していたりでまともな部品は少ない感じだ。

 どうやらスクラップを掻き集めて、組み上げたって感じだな。

 こんな中学生の娘にそんなこと出来るのか?

 その娘が画面を食い入るように見つめ、顔が画面全体にどアップになった。

 セルフレームの丸眼鏡を賭けているので、大昔のマンガの某鳥○キャラのように見えなくも無いが、良く見るとけっこう歳がいってそうな感じがしてきた。

 顔だけ見てると、実は20代なんじゃないか?って気がする。

 その娘が、「やっぱコイツか」と独り言をつぶやき後ろを振り向いて、ケーブルを辿って何かのパーツを引っ張り出して調べている。

 四つん這いになっているので、お尻が真正面にある。

 そしてデニムの短パンは彼女の大事な部分にかなり食い込んで、脇から本当にはみ出しそうになっている。

 こ、これは遺憾なものを……

 しかし、男なら反応すべきモノの存在は感じられない。

 呼吸はしてないはずだが、なぜかため息が漏れた。

 いったい俺はどうなってしまったんだ?



 まずは冷静に、自分のことを思い出してみよう。

 俺の名は、クラウゼ・鉄男、だったと言うべきか。

 生きているのか死んでいるのか、ともかく最後に記憶が残っているのが39歳の時だ。

 生まれは1987年(昭和62年)という昭和のどん詰まりで、産まれたのはドイツだったらしい。

 父親もドイツ人でクラウゼは父親の姓だ。

 母は日本人で、自動車会社に就職後ドイツに派遣され、そこで父親と結婚し、俺が出来たのだが、なんやかんやで俺が3歳の頃離婚し、日本に帰国。

 そこからずっと、母子家庭で育ったのだ。

 なので、父親の記憶はほとんど無く、写真でしか知らないし、母親も多くを語ろうとはしない。

 外見が外人なのと、外人にしてはイケメンじゃ無いという理由で、周囲に馴染めず、クラスでは浮いた存在だった。

 スポーツは嫌いだが機械いじりが好きなのと、小学生だが普通にコンピュータが使えたので、母親は単純にパソコンを与えておけば良いと思ったのだろう。

 事実その通りだったが、おかげで見事に重度のオタクとして育ってしまった。

 ドイツ人とのハーフだがドイツ語はほとんど話せないし、知ってる単語も三流大学で第二外国語をドイツ語にしたヤツより多分少ない。

 ただし、軍事用語は別である。

 軍事を語る時だけは、誰よりも饒舌になる自信がある。

 そして、その最後の記憶にあった年は2026年。

 米中対立が、いよいよ本格化し、ロシア・北朝鮮・イラン・シリア・レバノンが反米連合を結成。

 ついに軍事衝突が避けられないとまで言われていた年だ。

 切っ掛けは、第二期トランプ政権になってアメリカの分断が加速し、リベラル系の富豪やIT企業がアメリカを捨ててシンガポールなどの第三国に本拠を移してしまったことで、税収が大幅に減少してしまった。

 さらに世界の主流だったはずのエンタメ産業も、日本のアニメやJ-POPに押されて低調を極めるなどして、アメリカ全体の国力が低下してしまった。

 この結果、主要な国際組織からの脱退や支援を打ち切るなどで、世界的なプレゼンスも低下。

 みすみす中国の台頭を許す結果となった。

 一方でパレスチナでの戦争では一時休戦となっていたがそれを無視して再びイスラエルがガザ地区を侵攻、完全に占領し、西岸地区も軍によって支配され完全にホロコースト状態となった。

 それでもアメリカはイスラエルを支持したため、あまりのダブルスタンダードぶりに中国やアフリカ諸国などが猛反発した。

 アメリカの凋落ぶりを見た中国は独自の世界秩序を自ら作り出すことを宣言し、国連とは別の国際的な軍事連合を模索し始める。

 その結果、国連は単にアメリカの同盟国の集まりのような場となってしまい、平和維持機構としての機能を失い、反米連合はこぞって国連を脱退。

 新たに「世界平和連盟」を設立した。

 多くの新興国やアフリカ諸国がそちらに移行して、完全に欧米VS世界という構図が出来上がってしまった。

 同時に、解決の糸口の見えないロシア×ウクライナ、あるいはイスラエル×周辺諸国の紛争に対するアメリカのダブルスタンダードに世界中が辟易としていた多くの国が中国との提携を結ぶこととなった。

 お陰で昨年まで経済的な行き詰まりに喘いでいた中国も、見事に完全復活を遂げたことで、米中の国力の差はほぼ無くなってしまった。

 そんな中、日本は相変わらずノホホンとアメリカの後を追うばかりで、独自の国家戦略は俺の知る限り最後まで示すことは無かった。

 そのため、図らずも日本が世界平和連盟(世平連)に対し、防波堤のごとく立ちはだかる存在となってしまったのだ。

 2025年に勃発した台湾併合でも、結局アメリカは中国との直接対決を避けたため、傍観する結果となった。

 それ以降東アジアにおけるアメリカのプレゼンスは無残なほど低下してしまった。

 日本からすれば沖縄から先は全て敵という状態になってしまった訳だ。

 唯一、韓国のみが同盟国だったのだが、その韓国も去年国連を脱退、アメリカとの同盟を破棄して永世中立を宣言した。

 これには世界中が衝撃を受けたが、中国にもロシアにも北朝鮮を通じて国境を接している以上、アメリカに与すれば軍事的最前線化は避けられない。

 タダでさえ少子化で国力が低下しているのに、戦場になるリスクが高まれば、株価も下がり、製造業は国外へと逃れていってしまう。

 それを避けるには中立を保つしか無かったのだ。

 何よりも肝心のアメリカが信用出来なかったというのが最大の要因なのだと思う。

 そして、2026年である。

 中立を宣言したにも係わらず、北朝鮮が大量のミサイル攻撃の後、越境し、南に侵攻を開始したのだ。

 2024年までは国の存亡さえ危ぶまれた北朝鮮だったが、中ロの支援で見事蘇り、1年で地上部隊の装備の刷新が完了した。

 航空戦力のみ、中国軍に依存する形であったが、軍事力を大幅にアップデートすることが出来たのだ。

 危険な賭だが韓国にとって唯一の手段だった中立宣言は、思惑とは裏腹に世平連に利する結果となってしまったのだ。

 長期化すると思われた侵攻作戦は、意外にも短期で終了し、アメリカの介入すら間に合わず、大韓民国はたった10日で消滅した。

 極東ロシア軍の大量参戦があったとはいえ、あまりにも早すぎる陥落で、一旦軍を引き上げていたアメリカが再編成して、韓国に軍を送ろうと日本に兵力を結集していたが、残念ながら間に合わなかった。

 そして、その結集した米軍を叩く好機とばかりに中国と北朝鮮とロシアは日本への最後のメッセージを送ってきた。

 今すぐ日米安保を解消すれば攻撃はしないと。

 しかし、日本の政治家も官僚もそれを本当のことと考えられなかったようだ。

 もちろん、日本も手をこまねいてばかりでは無かったが、軍事予算を前年より15%増やし、イギリス・イタリアと共同開発中だった次期戦闘機の開発を切り上げ、自国開発にして大幅に加速させる程度だった。

 静岡に飾ってあった新型戦車も、そんな中で開発された物だった。

 何かときな臭い雰囲気はあったものの、俺も含め日本人はどこか他所の話と受け止めていたのだ。

 そんな世情もあって、プラモデル業界もミリタリー関係にシフトして、そっち方面の製品を新たに多数リリースしていた。

 予てよりプラモデル、というかミリタリー好きだった俺は、わざわざ静岡まで出向き、その展示会に行っていたのだ。

 朝のニュースを見ていなかったので、その日何が起きたのかは分からないが、確かにミサイル攻撃があったとしてもおかしくない情勢だったのだ。

 もし核戦争があったのだとしたら、もはや日本も何も、世界は既に存在してないのではないか?

 ともかく、俺の記憶はその瞬間までしか無い。

 この戦車がその時見ていた25式だったとして、それにしてもこの傷みようは、それからかなりの年月が経ったことを示している。

 仮に今が2060年で、俺は戦車に転生したと言われても、信じてしまいそうな気がする。

 そうだ、もし戦車に転生したのだったら、このコンピュータも使えるんじゃないか?

 そう思い、色々と念じてみたり、指を動かすようなイメージを浮かべてみたが、何かが変わったということも無く、ただ思念だけがそこに在り続けるだけだった。

 何とか外部とコミュニケーションを取る手段を見つけないとな。

 そうするウチに、目の前のチビエロ娘が、正常なパーツと交換したのか、何処かの電源が入り、ヴオォ〜ンという音と共に全ての計器に電源が入り、次の瞬間けたたましいディーゼル発電機の音が響き渡った。


初めましての方、初めまして。

TANK_KONGと申します。

長々と大谷吉続などという場当たり的な小説を書いておりましたが、ここらでもう少し本腰を入れて小説を書こうと、奮起いたしまして、なるべく1年以内に完成させる目標で書き始めました。

今回はちゃんと結末も決めて書き始めておりますので、それなりに「読める」話を目指しております。

面白いとか、古くさいとか、感想などお寄せ頂ければ幸いでございます。

よろしくお願いいたします。

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