第十章(7) 新たなる魔族の王・ルシベルの懇願(こんがん)
「俺もそのお仲間に入れてくれたら嬉しいんですが・・・・・」
「___ふふふっ。ツルキー、大丈夫?
無理しなくていいんだよ。」
ついさっきまで、警戒心むき出しで彼を警戒していたツルキーとは打って変わり、『仲間になりたそうな目でコチラを見ている』様に、ウズメは少し笑いながら首を傾げた。
ただ、ルシベルは先程まで警戒心むき出しで睨みつけられていたこともあり、今は逆にルシベルの方がツルキーを警戒している。
「いいえ、彼は至極当然の対応をしていただけですよ、ウズメさん。
彼はそれほどまで、村を守る責任感が人一倍なんです。
だから私は確信したんです、この村が、どれほど大勢の存在から愛され、大切にされているのか。」
「そうですね。正直、城下町よりも此処の方が大事ですよ、俺にとってね。」
「それ・・・・・言っちゃうんだ・・・まぁいいけど。
___あとルシベルさん、私はもう平気ですから、そろそろ手を離してくれませんか。
ちょっと・・・・・痛いです。」
好機を逃したくない一心がこもったルシベルの力は、本人が思っている以上に強くなってしまった。
それに気づいたルシベルは、飛び跳ねる勢いでウズメから離れる。その顔は、薄い赤で染まっていた。
「し、失礼しました!!!
まだ年頃の女性の手を掴んだ挙句、跡が残るほど強い力で・・・!!!」
「でも、『この程度の力』で跡になるなんて・・・・・やっぱり私はもう戦えない。
以前の私は、戦っている魔族に拉致されそうになっても、腕に跡なんて一箇所も残らなかった。
そんな、『平和で染まりきった私』でも、力になるのなら、尽力させてください。」
「本当ですか?!!」
「___というより、ここまで聞いちゃったら、協力するしかないですって。
私だって、此処を失いたくない(守りたい)気持ちは本物です。
それに、ルシベル様がこの村の環境をどんどん広めてくれた未来を、見てみたい。
大丈夫、もう私は『盲目に戦わない』 『強いから』という曖昧な理由で戦わない。
魔族と人間が手を取り合う『新たな時代を迎える為』、私は貴方と共に頑張る。」
「あ、あああのぉ!!!」
ウズメが後ろを振り向くと、先ほどまで困惑で何もできなかったヒスイとミラが、鼻息を荒くして(やる気満々)でウズメに宣言する
「私だって、此処までウズメについてきたんだから、最後の最後まで、一緒にいるわよ!!!
例えウズメの作戦が失敗したとしても、逃げる時だって、成功した時だって、一緒に結末を見届ける
覚悟くらいできてるわ!!!
___最後の最後になるんだったら、私だって、今までの努力を全部詰め込んだ衣装で、ウズメの最
後を飾るわ!!!」
「私も、見届ける事しかできませんけど、私に『絵描き』という未来を教えてくれたウズメさんの有志
を、最後の最後に『絵』として残せる事を誇りに思います。
___それに、またウズメさんと、こうして共に頑張れる事が、なんだか嬉しく思えます。」
二人の決意を聞き、ツルキーは頭を掻きながら、3人の強い意志に感銘を受けていた。
「___これが『勇者一行』と『一般人』の違いか。納得だ。」
「え? わ、私は荷物運びをしていただけで、勇者一行の一員では・・・・・」
そう言って謙遜するソラの頭を、優しく撫でてあげるツルキー。
「俺にとっては、それがどんな役目であろうと、一行の仲間である事に変わりないよ。
ウズメちゃんの頑張り(戦い)を、どんな時でも見届けてきた二人だって、ウズメちゃんに負けない
くらいの度胸と勇気がある。」
「___まぁ、それがないとウズメにはついていけないわよ。
逆に、それだけあれば、ウズメには大抵ついていけるからね。
『今回の一件』も、その二つがあれば、なんとか乗り越えられそう。」
「そうですよ!! ウズメさんならきっとできますって!!」
ソラ・オロチ・リーフ達(魔族サイド)は、ウズメ達(人間サイド)が互いに励まし合っているなか、改めて、『新たな魔族の王』に挨拶をする。
そして、村での賑やかな暮らしと、村での生活が自分たちにとって、どれだけ尊い(失いたくない)ものなのかを力説する。
「ルシベル・・・様、私も皆さんの戦いに、同行させてください。
私は決して強くありませんし、戦った経験もありません。できる事は、せいぜい治療くらい・・・
でも、私は自分の命に換えてでも、この村を、ウズメさん達との楽しい日々を守りたい。
もう私にとって、この村は『我が家』であり、ウズメさん達は『家族』なんです。
家族が頑張るなら、私だって頑張ります。それを教えてくれたのは、村やウズメさん達です。」
「ルシベル様にも、私の作った料理を、是非食べてもらいたい。
大きな事をやり遂げる前には、体調を整えて、心身ともに元気になる必要がありますから。
村の人々が教えてくれた料理は、どれも美味しくて、毎日作るのが楽しいんです。
そして、私の作ってくれた料理を食べてくれる村人たちには、これからも私の作った『感謝の気持ち
(料理)』を、これからも食べてもらいたい・・・!!」
「___私たちはウズメと出会わなければ、エルフの演奏が、人間にも通じるなんて知らなかった。
_____というより、人々があんなに熱心に聞いてくれる(私たちの演奏を楽しんでくれる)か
ら、私たちは何もかもを見失わずに済んだ。
それを教えてくれた村の人たちに、これからも私たちの演奏を聞かせてあげたい。
いや、私たちの演奏が、この国の、この世界中の何処でも通用できるか試してみたい。
その夢を叶える為にも、私たちは戦うんです。」
ルシベルは、ソラ達の決意を聞き、思わず涙を流してしまった。
ここまで強い愛(決意)を持って行動できる魔族は、彼の父と瓜二つ。
「無理なんじゃ」とも言わない 「可能性は0(零)に近いですよ」とも言わない
「仮に叶ったとしても・・・」と、後ろ向きな言葉も言わない
とにかく自分の意思を強く掲げ、後ろ向きな考え(マイナス思考)はひとまず頭の隅に置いておく。
「愚か」と言われようが、「夢物語」と言われようが、心身を支える柱(決意)を守る為に体を張る。
例えそれが儚く(ひと時の夢)ても、自分の柱を誇りに思いながら、大いに胸を張る。
ここまで清々しい味方につけたルシベルは、『次の段階』へ進む意思を固めた。
「_____さてウズメさん、ここからが大変になります(問題です)。
どうやって、部下の進軍を止めるのか、どうやって説得するか。
そこで、『国の今後(未来)』が決まると言っても、過言ではありません。
私にできる事なら何でもします、どうか、知恵をお貸し下さい。」
「__________
そんなの、決まってる。」
「?」「?」「?」
全員が、キョトンとした顔でウズメを見た。
「ルシベル様は『言葉だけ』で、仲間の魔族に説得を試みた。でもダメだった。
___そうですよね?」
ルシベルは、彼女の言葉に深く頷いた。
「___なら、『言葉ではない形』で、知ってもらえばいい。
まだ人間を、『非力で傲慢な存在』としか認知していない、魔族たちに。」
「_____それは一体・・・???」




