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元・兵士 城壁の外へ(4)

「い、移住してくれるのかぁ?!!」「すごい!! すごいわぁ!!!」


「あ、あの、皆さん(カミノー村の住民)はいいんですか?」


「全然構わないよ!! じゃあ早速、村民総出で家を建てよう!!」


「そうね!! 材料なら、まだ使っていない『柵の残り』があった筈よ!」


 寝ぼけ眼のまま一階に降りてきたウズメが耳にした(聞いた)、『楽しそうな会話』

キッチンに行ってみると、ちょっと寝癖のついた長い銀髪を垂らしているツルキーが、主人と女将と話し合っていた。


 「何の話をしてるんですか?」と聞かなくても、会話の内容から、どんな話(相談)をしていたのか 

分かったウズメも、ツルキーの元に駆け寄る。


「ツルキーさん、城下町から来てるんですよね。じゃあご家族とかは・・・」


「いやいや、俺は結婚もしていないし、此処から城下町はそんなに離れていないから、親に会いたくな

 ったらいつでも会いに行けるし。


 ___それよりウズメさん、俺、あんたに感謝してるんだ。

 行き当たりばったりな旅路を後悔していた俺を導いてくれた(助けてくれた)んだから。」


「え? え?? え???」


 頭の中を『?マーク』で埋め尽くしているウズメに対し、主人は「大人っていうのはそうゆうもんだよ」と、ツルキーの背中を叩く(フォローする)。

 同じ大人同士でもあり、同性同士でもある主人だけ、ツルキーの後悔が理解できている様子。




 移住が決まったからには、速攻で新しい家造りがスタートする。

朝からヒスイもミラも作業を休んで、ツルキーの家造り(別の仕事)に精を出す。

 久しぶりに肉体労働をした二人の体力は、ウズメの目から見ても落ちているのが分かった。

ただ、落ちてはいるものの、『男性の村人』と同じくらい。


 これに二人は危機感を感じていたが、ウズメが

「それはさ、『新しい時代』を生きる、『新しい二人』になった・・・って事じゃないかな?」

 と、さりげなくフォローする。


 ただ、その発言が二人にとっては

『新しい時代を生きる自分たち=貧弱な自分たち』

 という解釈になってしまい、ますます二人の危機感は増してしまう。


 そんな二人が導き出した結論は、『一日の半分は村の皆のお手伝いをしよう(体を動かそう)』というもの。

 ウズメもその結論には納得した。

 二人が自分たちの仕事に集中しているのは悪い事ではないものの(夢中になっているのは良い事だが)、それで体調を崩したりしたら『新しい自分』が台無し(元も子もない)。


 そして、二人の体力づくりを後押ししたのが、『新居の建築』

村人たちで話し合った結果、村の防御壁代わりだった幹の活用方法としても、これからツルキーのような移住者が増える未来も想像して、少しずつ建築していく事に。


「___なんか良いな、自分で住む家を、自分で1(いち)から作る・・・なんて。

 まぁ、俺はただ木材を運んでるだけなんだけどさ。」


「いえいえ、それだけでも十分ありがたいですよ。ツルキーさん

 私もヒスイさんも、家を建てるほどの技術はありませんが、重い物を運んで感謝してくれる人がいるだ

 けで、いくらでも頑張れます。」


「ミラー、お話は別にいいけど、ちゃんと前見て運んでねー

 ミラが倒れちゃうと、私も巻き添えになっちゃうから(倒れちゃうから)。」


「大丈夫ですよー! これくらいでへこたれていた・・・



 ららららららららららららら!!!」


「あわわわぁぁぁぁぁ!!!」


 柱を持ったままひっくり返ったヒスイとミラは、倒れる瞬間に思い出した(後悔した)。

村の道は、ウズメ達が来てから整えた為、油断すると滑ってしまう事を。

 以前は凸凹道だった為、足に力を入れないと踏み込めなかった(まともに歩けなかった)。

しかし、今は逆に、足に力を入れると、平らになった地面に激突する。


 幸い、二人は転んだだけで、怪我はしなかったが、改めて自分たちの変化(体がなまった自分たち)に

絶望する。

 しかし、新しくなった地面に慣れていないのは、二人だけではない。


 実際、新しくなった村の道には、『誰かが転んだ跡』がいくつも残っている。

生まれた時から歩きにくい道が当たり前だった村人からすれば、道を新しくした事は、嬉しい事・・・とは限らない。二人もその仲間。


 そして、倒れている二人の後ろからも、村人の誰かが滑って転んでいる音が・・・・・

しかし、転んだ二人も、後ろで転んだ村人も、揃って笑っていた。


 新しい家の土台を作っている村人の方も、ワチャワチャと騒いでいた。

家を作るのが久しぶりすぎて、一体何処から手をつければいいのか、組み立て方が合っているのか、試行錯誤の繰り返し。


 これには、宿の裏で練習していた(踊っていた)ウズメも不安になり、宿の屋根(高い場所)から工程を観察しつつ、おかしな場所を指摘する。

 高い場所から見れば、一目で進行具合が分かる為、ウズメはつい練習も忘れ、見入ってしまう。


 そうこうしていると、女将が下から覗き込むような姿勢で、窓からウズメにサンドイッチ(昼食)を差し出す。


「ウズメさーん、お昼ご飯持って来たわよー」


「え? もうそんな時間??

 やばー・・・・・半日ずっと屋根の上にいたのか(観察していたのか)・・・

 午後はちゃんと練習しなきゃなぁ・・・・・」


「たまには休んでもいいんじゃない? 

 休んでゆっくり頭を整理すれば、新しいアイデア(踊り方)が湧いてくるかもよ。

 

 それに、ウズメちゃんの指示がないと、いつまで経っても終わる気配がないから。

 十数年くらい前は、家くらいなら数日くらいで完成させたんだけど、やっぱり皆、久々すぎて感覚が戻

 らないみたい。」


「___逆に考えと、十年以上は、『この村はずっと変わらなかったんですね』

 それって、何だか・・・ロマンを感じます。」


 女将は、アタフタしながら木材と睨めっこする村人たちを、だいぶ心配している様子。

ただ、村では割と古参な女将でも、今までの村では見られなかった(ありえなかった)光景に、ついウズメと一緒に見入ってしまう。


「それにしても、随分森が開けたじゃない。」


「でもまだまだ森は深いんですよね。

 まぁ、木材に困らないのはいいんですけど、森の奥の木ほど、切るのに手こずっているみたいです。」


「仕方ないわよ、だって私たちがこの村で暮らし始める遥か昔からある森だもの。

 長い年月をかけて大きくなった森も素敵だけど、そろそろ手入れしないと、村も森の一部になっちゃう

 から、定期的に管理しないとダメね。」


 周囲の木々を安心して得られるようになった(魔族に襲われる心配のない)今となっては、多少建築に時間をかけても、さほど問題にはならない(いつでも材料を切り出せる)。

 村の建築は、そこまで丈夫にはならない(全部木造になってしまう)ものの、もう魔族に家を荒らされることがない為、石材などで固める(家を強くする)必要もない。


 いつまでも村の中に、大量の巨大な杭(幹)を放置するわけにもいかない事情も重なり、ツルキーの住む家以外にも、いくつか家を建てる予定。

 ツルキーが移住してくれた事で、(彼以外にも移住してくれる人が増えるかもしれない・・・!!)という期待も高まってくれた結果である。


 配ったチラシに書いてある

『移住者募集! いつでも大歓迎!』

 という文言を提案したウズメでさえ、あまり期待していなかった。


 お客さんが来てくれるようになったとはいえ、移住はやっぱりハードルが高い。

『一泊だけ』なら、軽く了承できるのだが、『数年・十数年』では、やはり色々と考えてしまう。


 しかし、ウズメの予想は、『良い意味』で裏切られた。




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