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第五章(2) ミラの仕事と、村の未来

「なら、『チラシ』でも配れば?」


「うわっ!!!」「ひ、ヒスイさんっ?!!」


「「うわっ」って、失礼ね、ウズメ。ちょうど新作が出来上がったから、見せに来たのに。

 ___腰もだいぶ痛くなったから、程よく立ち上がらないと(動かないと)体が壊れる。」


 2人は気づいていなかったが、ヒスイは2人が頭を抱えて悩んでいる光景を、しばらく観察していた。

新作が完成した為、ウズメに試着してもらおうと降りてきた(ホールに来た)のだが、そんな雰囲気でもない(声をかけられる状況でもなかった)為、しばらくヒスイも困っていた。


 まだ2人は、集客の事で悩んでいる事を、ヒスイに話していない。それでも、ヒスイは見抜いていた。

何度も何度も村から出ている2人が、何故か暗い顔で帰ってくる姿を。

 当初はあんなに楽しそうに、村の外の状況を語っていたミラの表情ですら、日が経つにつれ、何故かどんどん固くなっていく。


 ヒスイは、あれこれと手を打っている(動いている)2人を見つつ、それでもなかなか成果があげられず(集客できず)に悩んでいる2人と、いつの間にか悩みを共有していた。

 手を動かしながら(衣装を作りながら)、『かつて町に住んでいた頃』を思い返して。


 ヒスイも、かつては『町長の娘』として、それなりの英才教育を受けてきた。

町の歴史や経済に関わる事だけではなく、町でお店を構えている人が、どのように商品を売買しているのか、どのように町の経済へ貢献しているのか。




 そんなヒスイだからこそ、導き出した答え(過去)がある。

見て聞いた当初は、「そんな事で客が集まれば、誰も苦労しないわ」とと思っていたヒスイ。

 しかし、そんな彼女の考え自体が甘かった。


『複雑なアイデア』とは、『万人受けしないアイデア』とも言える。

 つまり、魅力を感じる人を制限してしまう。

自信満々にアピールしても、聞く側が理解できないと意味がない。


 つまり、誰が聞いても理解できる『単純なアイデア』の方が、客の注目を集めやすい。その一つが



 『可愛いイラスト付きのチラシ』



 彼女がかつて住んでいた、町で一番大きな屋敷には、毎日欠かさず、ポストにチラシが入っていた。

食べ物を売るお店の他にも、服屋 おもちゃ屋 鍛冶屋 病院 レストラン ・・・等。


 ヒスイの父は、それらのチラシから読み取れる情報を整理していた。

そのお店がどうゆう経営方針なのか、どうゆう商品を取り扱っているのか、問題が起こりそうな箇所はないか。


 娘であったヒスイに、そんな能力は持ち合わせなかったものの、彼女もチラシの凄さは理解できた。

チラシを見た人は、ヒスイも含め、自然とそこへ足を運んでしまう(興味が向く)。


 『大安売り』『チャンス』『今売れている』『新商品』

等の文字を見てしまうと、どうしても気になってしまう(無視できない)。

 文字の他にも、小さな地図を載せていたり、可愛いイラスト等も、人を呼び込むチラシの魔力。




 そんな過去を思い返した瞬間、ヒスイは立ち上がって(作業を中断して)、2人に提案する為に階段を降りていた。

 自分も随分前から、二人の悩みを知っていた(集客に困っていた)事を悟られないようにする為、まだ作りかけの衣装も持参して、『試着』という言葉まで使う徹底ぶり。


「ち、『チラシ』ですか・・・?

 でもただ文字を書いて配っても、来てくれるか・・・

 看板を設置しても、村に寄ってもくれなかったんですよ。」


「文字だけじゃダメなのよ。


 『絵』を描けばいいじゃない。」


「そ・・・・・その手があったぁぁぁ!!!」


 ウズメが急に立ち上がると、ミラはビクッと体を痙攣けいれんさせる。

そしてヒスイは、ニヤリと口角を上げて、ミラの方を向く。

 ミラは、ヒスイがどうして自分を見ているのか分からない様子で、首を傾げる。


 ヒスイは、ホールに補充された(常備してある)、新しい紙と羽ペンを、ミラに差し出した。

それでもまだ状況が理解できていない(ヒスイの行動の意味が分からない)ミラと、察したウズメ。


「ひ、ヒスイさん???」


「ミラ、私と一緒に、外で(野宿中に)見張り番をしていた時のこと、覚えてる?」


「は、はい・・・・・

 もう何十回とやってきましたから。」


「私にとっては、何十回と続けた野営でも、一つ一つ違うんだよね。

 良い思い出のある野営もあれば、よくない思い出のある野営もある。


 ___そんな私が覚えている、『一番印象に残った夜』

 その夜は、時が経つのも忘れて、『3人』で一緒に楽しんだ。

 またやりたい気持ちもあったけど、なかなかできなくて・・・・・」


「『楽しんだ夜』??? 『またやりたい』???」


 ミラはヒスイの言葉をバラバラに解釈して、自分にも覚えがないかを(頭の中を)探してみる。


 ウズメ同様、ヒスイにも、『記憶に焼きついている(わすれられない)夜』があった。

何回、何十回と繰り返した野営のなか、ヒスイが一番楽しかった野営は、『名もなき荒野』での一夜。

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