第四章(10) ヒスイの仕事と、村の変化
「_____なんて『酷い偶然(神様のイタズラ)』なんだ。」
「ウズメ、どうしたの? 私が必死に編んだ(作った)衣装に、何か不満でも?」
「え?! 違う違う!!
いや・・・まさかお披露目会が、『冬(11月)』になるとは思わなかったからさ・・・
冬ってこんなに寒かったっけ?」
「ウズメなら大丈夫でしょ、だって一度も体調を崩した事なんてなかったじゃん。」
ヒスイが疲労困憊状態から復活したのは、仕事を終えた(衣装が完成した)1週間後。
だが、目を覚ましてもヒスイの体が動くようになるまでは、更に一週間の期間を費やした。
完成した直後、文字通りヒスイは『力尽きた』
目醒めた直後も、倒れた前後の記憶が曖昧になって、完成した衣装を見てヒスイが放った一言は
「完成・・・させたんだっけ・・・???」
ヒスイが宿の外を見た際も、自分がカミノー村まで来た記憶が曖昧になって、ミラとウズメが1から10まで説明した。
彼女が混乱するのも仕方ない、ヒスイが頑張って、力尽きている間に、村全体がだいぶ変わっているのだから。
まず、ウズメが頑張って柵を引っこ抜き、凹み(へこみ)を一つ一つ丁寧に埋めた結果、村が以前より大きくなった。
そして、森(村)の外へと続く道も、ウズメの協力もあって、きれいに整備された。
ただ草を除去して地面を整えただけなのだが、ウズメ達3人が雑草をかき分けて村に来た時よりは、だいぶ綺麗になった。
これなら人だけではなく、『馬や』『馬車』も村に来れる。つまり、『地位が高い人(城下町からのお客)』も集客できる。
だが、まだ旅人を村へ連れて来る(観光させる)には、色々と準備が必要。
道の周りはまだ草ボーボー、周囲に聳える木々も、少しずつ伐採していかないと、薄暗い小道になってしまう(昼間でも危ない)。
以前は魔族に怯え、まともに(昼間でも)木を伐採する事ができなかった木こり。
だが最近は、常時森の中で、木を叩く音が聞こえる。
それくらい、森には『放置された資源』が山のようにあった。
長い間、管理もできずに放置されていた(手入れができなかった)森には、丸々1日かけないと切れない大木もちらほら。
大木一本を、村に被害を与えない(直撃しない)ように、ゆっくり慎重に切り倒すだけでも、半月は費やしてしまいそうな程。
ウズメも協力するものの、木の伐採は初めての経験だった為、なかなか切れない(しぶとい)大木の幹を前に、ひたすら睨めっこをしていた(どうすれば切り倒せるか考えていた)。
だがその分、やっとの思いで切り倒せた爽快感に、ウズメはすっかりハマってしまう。
元々コツを掴むのが上手いウズメにとって、一週間も手伝えば、大木を1人で切り倒せる。
ミラも今まで一行の荷物を背負っていた経験が生きて、切り倒された幹を、何本も何本も、大の大人と一緒に村まで運んでいた。
自分よりも小さい子供(女の子)が、体の何倍も大きい幹を軽々と運ぶその姿に、村民一同はただただ呆然とするしかない。
そんな顔を見せられては、ミラもだんだん面白くなってしまい、家を新しい木材(壁・ドア)へ替える際も、ポンポン材料(木の板)を屋根に放り投げていた。
森が開拓されて、頑丈な木材が手軽に手に入るようになった(森での作業が安易になった)為、短い間に村の建物もだいぶ綺麗になった。
2回目に村へ来た時も含め、どの家々も廃屋に見える(倒壊寸前な)くらい古びていた。
だが、ウズメとミラの協力もあって、強風程度なら耐えられられそう(少しはマシになる)。
「えーっと・・・・・
ヒスイ、このリボンってどこに結ぶの?」
「こっちこっち、太ももの上。
___あぁ、リボンの長さが左右で違う。ちょっとじっとしてて。」
初めて袖を通した時も、着るだけで半日もかかってしまった(手間取ってしまった)。
今まで防具しか着たことがなかったウズメにとって、複雑で不思議な形をした服を着ることは、まるで『体操選手の準備運動』の様だった。
ちなみにウズメは、まだ衣装に袖を通した姿を、宿の主人と女将には見せていない。
だから、村人全員に見せる初舞台(初舞踊)を、二人も楽しみにしていた。
ヒスイがウズメの着替えを手伝い、ミラはホールで、料理や酒の提供を手伝う。
ミラはここでも、小柄な体型と倍以上はある体力を活かして、せっせと厨房とホールを行き来する。
「___よしっ、完成!!」
「結構軽いし、フィット感も心地良いな・・・」
「当然でしょ。」
「???」
「だってそれ、昔はウズメの防具だったんだから、着慣れた感があるのは当然よ。」
「そういえばそうだった!!!」
(___でも本当に軽く着れるなぁ。
外見はだいぶ複雑だけど、そうゆうところも考えて、ヒスイは作ってくれたのかな・・・?)
以前の防具よりも軽いのに、捨てている(無駄になった)部分は殆どない。
それも、ヒスイの実力のうち。
切り取って貼り付け、削っては塗っての繰り返しは、気の遠くなる作業。
でもヒスイは、完成に向けて全力で取り組み、ようやく自分の納得する形になった(完成した)。
「____というかさ、本気でやるの?」
「___今日お披露目する事は決まってたじゃん、村の皆も集まってくれてるし、踊らないわけには
いかないよ。」
「いや、そうじゃなくて・・・・・
本気で『飛び降りるの』??」
「その方がインパクトあるでしょ?
大丈夫だって、魔族に追われて、崖から飛び降りて無傷だったんだから。
あの時の高さに比べたら、全然低いくらいだって。」
二階のヒスイの部屋(控室)で準備を整え、少しだけドアを開けてホールの様子を伺う二人。
宿屋の主人と女将が頑張ってくれたおかげで、子供も含め、村人全員(約30人)が集結している。
三人が思っている以上に、カミノー村の人口は多かった。
城下町と比べたら天と地の差ではあるが、城下町の人の多さは、もう多過ぎて意識できない。
だから、一つの集会場で収まるくらいの量(人数)が、ウズメにとっては丁度いい。
___しかし、推測していた人数も大きく上回った(思っていたより多かった)為、本番を目の前に、まるでスライムのように震えが止まらない。
魔王を倒す直前でさえ、そんな状況にはならなかっった為、ヒスイはそんな状態になっている(ブルブル状態の)ウズメを、ここぞとばかりにじっくり観察している。
ニヤニヤとウズメを見つめているヒスイに、ウズメは自然と平常心を取り戻していく。
一時は会話すらままならなかった(言葉を発する暇もなかった)ヒスイ。
しかし、衣装が完成した後のヒスイは、ウズメ達が知っているヒスイと全く変わらない。
それがウズメにとっては、一番強くて身近な安定剤なのだ。
「___じゃあヒスイ、『盛り上げ役』、頼んだよ!」
「えぇえ?!! アレ(段取り)ってそうゆう役目だったの?!!」
ウズメは自らの拳に力を入れ、胸を強く叩く(自分自身に喝を入れる)。
そんな彼女の覚悟を見届けたヒスイも、ウズメの『踊り子としての新たな人生』を見送る役目を聞き入れ、勢いよく部屋を飛び出し、ホールで待機している全員に向かって叫んだ。
「さぁ皆さん!!! 今日はお集まりいただき、本当にありがとうございます!!!
今日皆さんをこの場所へ呼んだのは、この村の『新たなシンボル(名物)』になろうと一念発起し
た、かの魔王を倒した勇者一行の一人
ウズメによるダンスをご覧いただく為でございます!!!」




