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第三章(7) 普通(村)の生活に馴染んだ頃

 急に主人を止めたのにも驚いたが、突然真剣な表情になるウズメに、ヒスイだけではなく、全員がびっくりした。

 ただ、ウズメが真剣な顔で相談した内容は、全員が聞いても「あぁ・・・・・」と、納得するもの。


 そう、舞台に立つ(人前で踊る)為には、まだ『準備』が足りない。


『美味しいパンを作れる才能』だけでは、パン屋を開けないように。

『鉱物』だけでは、武器も雑貨も作れないように。

『薬』だけでは、崩れた体調が戻らないように。



「さて、ここで二人に問題です。

 踊り子さんに必要なのはダンス力ですが、他に何が必要でしょーかっ。」


 ウズメの問題に、ウズメとミラは二人で顔を見合わせて、一緒に考える。


 他の二人(主人・女将)はというと、主人は他の村民から「馬車の修理を手伝ってくれー!」と言われ、今度は慎重に地面を踏みしめながら去っていく。

 唯一この村で馬車を持っている村民と主人が、遠くで何気ない会話をしながら作業をしていた。

どうやら柵の撤去で大量に余った木材が勿体ない為、使っていない馬車の補修を始めている様子。


 女将はというと、いきなりダッシュで宿へと戻る。

舞の踊りを見るのに夢中で、『ついさっきまでやっていた事』を忘れていたから。

 洗濯用のお湯をつくる為、かまどで水を温めたまま、火を放置している事を忘れ、慌てていたのだ。


 残った二人ヒスイ・ミラで、ウズメの問いの真理を頑張って考えていた。

二人とも踊り子自体を、あまり見たことがない為、『理想の踊り子』を、頭の中で妄想する。

 そして、ウズメの出した問題に回答したのは、ミラだった。


「えぇぇっと・・・・・


 キラキラした・・・服とか???」


「そう!! 正解!!」


「えぇ?! 正解だったんですか?!」


 自分で発言したにも関わらず驚くミラ、だがミラの答えに、ヒスイも納得した様子。


「___でもウズメ、衣装なら城下町で買ってから、こっちに来た方が良かったんじゃ・・・」


「そう、私もヒスイと同じく、何着か買ってみようかなー・・・って思ったの。


 でもさ、なんか・・・・・『アレ』が可哀想になった・・・っていうか・・・」


「『アレ』って何?」


 ヒスイの問いに、ウズメは『割り当てられた自分の部屋』を指差した。

何故ウズメがそんな場所(宿の2階)を指差したのか、二人はまだ分からなかったが、ウズメは再びタライに座りながら、淡々と語る。


「私たちの旅に寄り添ってくれたのは、『武器』だけじゃなかった。

 もちろん、ヒスイとミラの力添えもあってこその勝利だよ。

 でも頑張っていたのは、『人』だけじゃなくて、『物』だって同じくらい頑張ったんだよ。


 そう、『防具』だって、私の命をずっと守り続けてくれた。


 ___お金をかけたからこそ、手放せなくなっただけなのかもしれないけどね。

 でも、あのまま飾って放置・・・というのも、使っていた私としては、複雑なの。」


 ウズメは二人に語りながら、険しい旅のなかに埋もれていた、『奮発した記憶』を思い返す。




 普段から『ギャンブル』はおろか、『買い物』すらしないウズメ。

買うものといえば、3人と一緒に食べるご飯やおやつくらい。

 だがそれ以外の物は、『服』から『アクセサリー』に至るまで、買ったことは殆ど無い。


 遠征用の物品(食料・日用品)も、他の仲間に任せっぱなしで、足りないものがあっても文句一つ言わなかった。

 他のメンバーに関しては、遠征中に物が少なくなった時点でイライラするのだが、ウズメは一貫して「なんとかなるでしょ」の一点張り。


 ウズメは、『買い物が下手』というわけでもなく、『上手』というわけでもない。

ただ、『買い物をした経験』があまりないから、自信が持てないのだ。


 彼女が生まれ育ったのは、お店がまばらにしかない、しかも店主の都合で閉まっている事も珍しくない、そんな田舎。

 その上、成人して務めた後も、買い物なんて、できる状況ではなかった。

そもそも、『買い物すら許されない環境』 部下はカードさえ持つ事を許されなかった。


 転生して、両親から『お使い』を頼まれたことは何度もあったものの、その(小銭)程度しかお金を使う機会はなかった。

 お使いを頼んでくれる両親が亡くなると、すぐ兵舎で修練に明け暮れる日々に突入。

とにかく自分の腕(戦う技術)を磨くのに必死で、国から出される給金は、ほぼ貯金に回していた。


 年頃の女の子が、城下町で様々な服を選び、アクセサリーに目を輝かせるなか、ウズメが向かい合ったのは、槍と魔族。

 防具を買って身につけるのは、その『延長線上』に過ぎなかった。


 どんなに槍の腕前を磨いても、敵から受ける攻撃から逃れられない時もあるのは必然。

しかし、身に着けている防具が自分に合っているか否かで、天と地の差があった。

 それは、ウズメが身をもって知っている。実際彼女は、防具に何度も命を救われた(守られた)。


 ただ頑丈な防具で揃えても、重かったり動きにくかったりすると、戦いに支障が出てしまう。

だから、自分の動ける範囲と、力の強さを吟味しながら、補修や補強を重ねる。

 こうして、自分オリジナルの防具を作るのも、仕事の一環(戦士の常識)。


 幾つもの改良を重ねてもらうには、相応の大金が必要になるものの、『勇者の右腕』であったウズメには、相当おまけを重ねてもらった。

 それはもう、頼んでいるウズメが申し訳なくなる程。




 そんな思い出が詰まった防具もまた、彼女の戦いの記録の一部であり、槍と同様、手放せない存在。 


 魔王を倒す以前から、ウズメは現役の(使っている)防具に加え、お古になった防具も一緒に持ち歩いている。

 片足・片腕がない防具や、最新型と入れ替えた古い防具など。

それは、ただ単に『勿体ないから』・・・だけではない。


 ウズメにとっては、まだ形のあるうちは、『自らの努力の形』として残り続けている。

彼女の前世が、『紙』や『CD』が古くなった、いわゆる『データの時代』だった事もあり、形として残る物が一層大切に思えた。


 他の仲間から、「そんなもの、さっさと捨ててしまえ」と言われても、ウズメは一向に捨てなかった。

「自分が持つんだから、旅に支障は出ないわ」と言って。

 これにはヒスイもミラも、『ヤレヤレ・・・・・』と思うしかなかった。


 そんな思い出たちを活かす方法、ウズメはそれを、練習している(踊っている)最中に思いついた。

思いつけたのは、頭の隅にひっそり保管していた、『あの晩』の記憶が元。


「う、ウズメさん。まさか、あの重たそうな『防具』を身につけて踊るんですか・・・???」


「その考えもあった、でも、いざやってみると鎧が重すぎて無理だった。」


「ですよね・・・・・」


「_____だから






 ヒスイに『改造』してもらいたいの。」


「_______________








 はい???」

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