第三章(4) 普通(村)の生活に馴染んだ頃
だからこそ、ウズメは自分たちも、普通の国民(一般人)と一緒に『働ける方法』を考えていた。
ウズメは城下町で、様々な人と関わりながら、自分にもできる仕事がないか、あれこれメモしていた。
ミラもヒスイも、ウズメが何かを書き留めている(メモしている)光景はよく目にしていたが、その内容が何なのかは、今日初めて知る。
ウズメが見せてくれたメモの内容は、一通りの職業と、自分たち3人をを照らし合わせたもの。
___かなり偏見もある(雑で大雑把な)内容ではあったものの、二人との付き合いが、一行のなかで一番深かったウズメにしてみれば、二人に合った職業は何となく分かる。
『馬宿 馬とそんなに関わりがなかった道中だったから、全員怪しい
牧場 ミラ・○(動物が好きみたいだから)
ウズメ・△(動物がそんなに好きなわけではないけど、扱いには慣れてる方・・・だと思う)
ヒスイ・✖️(城下町の馬宿へ立ち寄った際、鼻を摘んで苦い顔をしていた
多分、臭いがダメなんだと思う)
服屋 ヒスイ・○(センスが良い。城下町の服屋を眺めていたことが何度もある)
ミラ・△(できそうな気はするけど、服に対する好みなどがないから、ちょっと心配)
ヒスイ・×(センスもない上に、繊細な布を破いてしまいそう)
アクセサリー職人 ウズメ・○(金物の扱いに関しては熟知しているつもり)
ミラ ヒスイ・○(コツコツ地道に頑張れる二人なら、すぐコツを掴むかも
ただ、一から私たちに作り方などを教えてくれる人が、カミノー村に滞在してい
るかは、正直怪しい
城下町には職人が多いけど、習っているうちに何年も月日が過ぎてしまいそう)
・一度、二人にそれぞれ、「子供の頃になりたかった仕事はある?」と、質問してみた事があった
だけど、どちらも曖昧な返答で、キッパリ「これになりたかった!」とは言わなかった。
___でもそれも、二人の境遇を考えると、私が納得するべき。
二人を養えるくらい、私が稼げればいいんだけど・・・・・
そう考えると、二人は私の仕事の『手伝い』を、仕事とするのもアリかもしれない
二人はまだ幼いんだから、本格的な仕事を探してもらうのは、もうちょっと先でも全然大丈夫
目標・二人が大人になるまでは、私が頑張る』
「_______ムカつく。」
「え? 何で??」
「_____何であんたは、いっつも自分のことは後回しで、私たちのお世話ばっかり・・・!!!」
「ヒ、ヒスイさん・・・・・」
不機嫌になってしまったヒスイの気持ちに、ミラも同感だったものの、何も言えなかった。
ミラは、自分が誰かの支えがないと生きられないことを、自分自身が一番理解している。
それを気づかせたのは、買主であるコーコン・・・ではない。
コーコンによる酷い仕打ち(暴力・暴言)に耐えられたのは、ウズメやヒスイが一緒だったから。
「私は、ウズメさんについていきます。
どんなに辛い仕事を任されたとしても、二人がいれば、もう私はそれでいいんです。
___それに、少なくとも、魔王を倒すための旅路よりは、仕事の方がマシだと思うので。」
「そりゃそうでしょ」「そりゃそうでしょ」
同時に言葉を交わすウズメとヒスイに、三人は思わず笑ってしまう。
言わずもがな、魔王討伐までの道のり(旅)は、一筋縄ではいかなかった。
誰が、どこで命を落としてもおかしくない、『死神』が目の前で、いつも待機しているような状況。
当然、そんな時に人の心配なんてできない。
どんなに力のある勇者でも、自分の命を守るだけで、精一杯だった。
そんな状況下(戦場)を経験した三人には、『戦う』以上に怖い事なんてない。
職人の怒鳴り声より、魔族が命を狙って舌なめずりする音の方がよっぽど怖い。
農具を振い続ける作業より、武器を持ち戦う方が心臓に悪い。
繁盛店の店番をするより、魔族に気づかれないように隠れている方が、生きた心地なんてしない。
ある意味三人は、『無敵の人』状態。
まだ色々と決まっていない事は山ほどあるものの、誰も怖気付いてはいなかった。
「私だって、半端な気持ちでここまで来たわけじゃない。
今更どんな仕事を任されようとも、私はウズメを信じる。
それが、私にできる、精一杯の事だからね。」
その言葉が聞けて、ウズメも安心して、笑いながら『タライの裏面』に立つ。
「ありがとう、その言葉が聞けただけで、なんだか大きく前進できた気がする。
___でも、まだ私は正直、不安なんだよね・・・」
「どうゆう事よ。」
ヒスイとミラが、二人で首を傾げた。
「だって私、『踊り』なんて今まで本格的にやった事なかったから、本当にこれでお金が稼げるのか、
不安なの。
私の踊りなんて、城下町で見たのを、ただ真似てるだけ。
踊り子さんが持っていた『松明』 あれを私の『槍』に置き換えただけで、「私にもできるかも」っ
て思っただけ・・・というか・・・
___でも、やってみたかったの。
これが、私の槍を後世まで活かせる方法だと思って、私なりに頑張って特訓してた。
そりゃ、最初は翻弄されたわ、何事も最初はね。
本物の槍を持って、初めて挑んだ模擬試合の時だって、まぐれで勝ったようなもんだし。」
「えぇ、そんな事ないと思いますけど・・・」
さりげなくフォローするミラの優しさ(思いやり)は、いつもウズメを勇気づける。
ミラ自身に自覚はないが、戦う身にとって、ある程度の自信がないと、武器を振るう勇気(力)が弱くなってしまう。
そして、ウズメは自分自身で自信をつける(つくる)事ができない。
だからこそウズメは、コーコンに多少憧れている(羨ましい)節があった。
彼は周りから何を言われても、何もかも『自分が一番』を貫いていたから。
___その考え方が、『よくない方向』に向かっていたとしても、彼は自分自身を疑わない。
「ちょ、ちょっと待ってよウズメ。
さっきから話を聞いてるけど、まだ私、ウズメが何を話したいのか、さっぱり分からない。
どうして私たちを、わざわざ此処(宿の裏口)に呼び出したの??」
「それに、話の途中で、気になり言葉がちらほら・・・
『踊り』とか、『松明』を『槍』に・・・とか・・・・・
ハッ!!!
ウズメさん、もしかして・・・!!!」
ミラは、ウズメがこれから何をしようとしているのかを、何となく察した。
彼女の言う通り、会話のあちこちに、もう『ヒント』が隠れている。
だが、ヒスイはまだよく分かっていない様子だった為、ウズメは深呼吸をして、覚悟を決めた。
「_____とりあえずさ、二人とも
『手拍子』お願いできる?」
そう言いながら、ウズメが両手を叩きながら、二人にリズム(テンポ)を教える。
まだ何が何だかよく分かっていないヒスイだったが、ミラが真横でワクワクしながら手を叩いているのを見て、ヒスイも渋々リズムを刻む(手を叩く)
そして、二人の手拍子が一定のリズムになったと同時に、ウズメは動き始める。




