パスワードを教えてください レトロRPGの巧妙な罠
最近レトロゲームに嵌っている。
一時間やる時もあれば三時間以上やる時もある。
もちろん依存症じゃないからコントロール可能。
特に対戦ゲームやスポーツは相手もいて白熱する。
でも僕は偉いから時間が来たら止められる。
相手もいるし冷静になる時間もあるから問題ないさ。
ただRPGはそうは行かない。
時間も相当かかる。
百時間も二百時間も費やす場合もある。
驚くことにこのゲームにはセーブ機能がついていない。
今第二幕のボス戦。
もうそろそろ朝の四時だと言うのに終わりそうにない。
新聞配達のバイク音が響き渡る。
鳥が騒がしい。まるで早く寝ろと言ってるようだ。
ついでに遠くから聞こえる始発のブレーキ音。
待ってくれ。僕が悪いんじゃない。
これは不可抗力なんだ。
許してくれ。見逃してくれ。
僕が悪いんじゃないんだ。悪いとしたら勝手に動くこの体が悪い。
泣いてなんかいないよ。でもちょっとだけ後悔してるんだ。
僕が不用意に続けたばかりに。
第一のボスを倒しついハイになっちゃった。
これが俗に言うプレイヤーズハイ。
迷いに迷った。ここで止めようって何度思ったか。
でも誘惑には勝てなかった。
セーブが出来ないから悪いんだ。
いつでもすぐにセーブ出来るのはドキドキしない。
やっぱりセーブエリアまでどうにか辿り着くのが醍醐味。
だからセーブエリアが…… うおおお!
僕がいけないのか?
ボス戦に向けもう少しレベルアップしてればこんなに苦労しなかった。
このボスだって酷い。
見逃してくれない。いくら逃げるを選択しても邪魔する嫌な奴。
そうすると体力もアイテムも無くなりついには武器まで奪われた。
どうしよう? どうしよう?
ここは諦めてリセット。そうまだ終わらない。
でもそうもいかない。さっきも言ったようにセーブ機能がついてない。
その代わりパスワードがある。
だが直前のパスワードを見逃してしまった。
今手元にあるのは宿屋の時のもの。
これでは終われない。少なくても第二幕をクリアするまで続ける。
それが今日の目標。
宿屋から再開するか。五時までに終わらせればいいさ。
それにしても英数字の十二桁って〇〇ナンバーじゃあるまいし。
そうだ。ダメ元で入れてみますか。
パスワードを入力。
もう眠くて仕方がない。疲れてもいる。
だからどんな僅かなチャンスでも賭ける。
それがゲーマーだ。
ではさっそく。
うわああ! 見たことのない世界。
どうやら最終幕のラスボス戦手前に来ちまった。
これはこれで嬉しくない。
<完>




