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私の住んでいるこの街には5つの区がある。
北区、東区、西区、南区、そして中央区。
この地域に暮らす住人はこの街を“4区”と呼んでおり、この4区はあまりの治安の悪さから国から隔離された特殊な街。
そしてこれは、かつてその4区でNo.1と呼ばれた、そして私にとっての“ヒーローたち”の物語だ。
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チュンチュンチュンと小鳥たちがさえずる声が聞こえて来ると、カーテンの隙間から眩いばかりの陽が差し込む。
それが、かつてここで過ごしていた私の朝の合図となっていた。
真っ白な壁、真っ白な天井、真っ白なシーツ、そして消毒液の匂い。
私はこの場所が好きではなかった。
それは、家族と離され、一人ぼっちで過ごさなければならなかったからだった。
時には苦いお薬を飲んだり、とっても痛い針を身体に刺されたり、嫌だと泣いても、白い服を着たここにいる大人たちは笑顔で「すぐ終わるからね」と言って、それらを強いてくる。
それでも、苦いお薬や鋭い針を我慢できたのは、私がそれらを受け入れると家族の皆が笑顔で「偉いね、美月」と言って頭を撫でてくれるからだった。
私には、同じ世代の子供たちが当たり前に出来ることでも、出来ない事の方が多かった。
例えば、運動や身体を激しく動かす様な遊び。
例えば、人混みの多い場所。例えば、長距離を移動するような旅行など。
窓の外から聞こえて来る、子供たちの楽し気な笑い声は、そうした私の劣等感を強くさせていた。
そんな私の世界を壊してくれたのは、他でもない“ヒーローたち”だった。
『美月、こっち来いよ!』
そう言って手を引いてくれた彼らは、今どこで何をしているのだろうか。