78.とある王と勇者
腹の探り合いや静かな争いに食傷気味なロルフレードは、かつて世話をしていた異郷人からの贈り物を受け取った。自分が教えていた時より洗練された字を見て、彼には珍しく笑みを浮かべた。
赤い髪に青い瞳。それは奇しくも、ユウタの魔法を育てた魔導師と似た色をしていた。瞳はクレアの方が若干深い青であろうか。
彼にとってのユウタは実の弟よりも弟らしい少年だった。ユウタにとっては命綱であったからかもしれないが、その勤勉さや素直さはロルフレードにとってはある種癒しでもあった。そのため、彼にはロルフと呼ぶことを許している。
そんなユウタが「お世話になりました!」とばかりに冒険者として頭角を表したその証を捧げてきた。これだけ質の良い魔石を持てるということはそれだけ活躍しているということだろう。
流石に自分ではユウタの強大な魔力を抑えることはできなかったため、自分と同じ色を持つという女に感謝した。
「それにしても、赤髪に青い目……な」
珍しい色彩ではない。しかし、ユウタから見ても色が似ていると書かれていることに少し思うところもあった。勇者として呼ばれただけあってか、ユウタは勘が鋭い。
「だがまぁ、ただでさえコルツ王国が酷すぎて中々落ち着かんかった上に自国も父上のお陰で腐っていたからな。支援はありがたい」
強い力を持つ魔石は己の身を守るのに役立つし、祝いの名目で贈られた物資のお陰で飢える民は減った。
安易に支援されるだけでは、国ごと呑まれて終わりだろう。だが、絶妙な綱渡りとたまに発揮される善良さが彼を窮地に陥らせはしなかった。
「せんせー!ロルフから返事きた!!」
楽しげに振る手には手紙と思わしき物が見える。彼の表情からは嬉しいということがよくわかる。
「犬みたいだな」
苦笑するクロエの言葉に、一瞬ソフィーの姿を思い浮かべてしまったのは仕方のないことではないだろうか。クレアを見ながらにこにこと笑っているソフィーに目を向けてそんなことを思う。
ユウタ曰く“兄のような男”だと聞いているために三人ともロルフレードのことを悪い人間だと思っていない。何せ、ユウタ自身がウサギにデレッデレの可愛い物好きの勇者様だ。彼が信用する人なら悪い人間ではないだろうと無意識に思っていた。
(そういえば、ロルフレード・アイル・レオニールは私と同じ髪の色だと言っていたか)
瞳の色は僅かに違うと聞いているが、似ていると聞くと少し気になった。
親を恋しがる歳でもなかろうに、とクレアは自嘲するように笑みを浮かべた。




