63.特異性
クレアの作った薬や化粧品の効果が他の人間が作ったものとは桁違いに強い。
アレーディアは報告を見ながらそっと目を細めた。
クレアの作った魔法陣などの報告を見た時から勘づいてはいたが、少々“優秀”の域から逸脱している気がした。マーリンの万能性とはまた違うが、クレアは彼女が望む形の魔法関連の能力が非常に高いように見受けられる。
かといって戦闘ができないというわけではない。だが、それは必要だからと決死の思いで身につけただけ。それでも戦闘系の魔法もそこらの魔法使い・魔導師よりも優れているといえる。
マーリンが背後にいることも含めて敵にはしたくない。それに加えて、それだけの実力を持ちながら、彼女はどこか庇護欲を唆る。あと、規格外と一緒にいたせいか、自分の実力に気がついていない。
「効果の違いは魔力量と質の差によるものだろうな。レシピの権利を登録してもらって、販売するものは他の者に作らせたものにするか。バカなことを考える者の数を減らすためにもある程度はこちらでコントロールする方がいいだろう」
「まぁ、そうっスねぇ。クレアさん、作るものも思考も争い向きじゃない感じですし。ただ、アレーディア殿下みたいに正体隠して近づいてくれない人がいるんでもう目はつけられてますけど」
その言葉にアレーディアは少し遠い目をした。
曲がりなりにも王族だ。恋情を疑われれば割と大変なことになる。恋愛が絡むと途端にポンコツになる弟を思い出すと頭を抱えたくなる。戦場でのエリアスは非常に優秀だというのに。
「クレアさんって傾国なんスかね?」
「いや、お前とか狂ってないだろう」
何か言いたそうな顔でネーロは薄ら笑いを浮かべる。彼の中では、エリアスにマーリンにあのメイド二人は結構ヤバいラインにあった。ユウタは大型犬的な懐き方だが、それでも彼女に何かあれば牙を剥くであろうことは予想できた。クレアは死ななければ良いと困ったことがあるまで放置を決め込んでいるが、すでに単騎でゴブリンの大群を始末している男だ。勇者として召喚されたというのは紛れもない事実なのだろう。
地味に脅威なのがエルフ三姉兄妹である。優秀な狩人であるルナマリア、器用貧乏ではあるが各方面の魔法に通じるリヒト、呪術と薬学に長けるシャルロッテ。べったりしているわけではないけれど、この三人はクレアに助けられたということで危機があれば一回くらいは全力で助けるだろう。というか、さっさと借りを返したいとその機を伺っている。
「我が国に、商標登録制度があってよかった。でなければ搾取云々で滅ぼされていた」
「マーリン殿マッジで怖いっスもんねぇ」
少なくとも目に光が戻ったクレアは女王のお気に入りで、かつ国にとって有益だ。これからも良い距離感で付き合っていきたいものである。
「ところで、リルローズ様にと追加でこれ預かってるんスけど」
「あの子はこの季節、乾燥で大変なことになるってぼやいていたからそれでかな」
そう言って一応中身の確認にそれを回してお礼の選定をさせるようにとネーロにカタログを渡した。




