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60.雪一角兎




 ユウタはたまにクレアのところにやってくる。それは相談の時もあれば遊びに来ただけの時もある。ユウタはクロエのおやつが大好物なので大抵取ってきた果物やら木の実などを持参する。ソフィーなどは呆れながら「ただの子どもみたいですね」と言っている。

 実際、元の世界ではまだ子供と呼ばれる年齢だ。それに加えて、この世界に来てから甘いものに飢えている部分もあって、お菓子になりそうなものはせっせと収穫している。ついでにクレアが欲しがっているものを見つけた場合お駄賃ももらえる。それで喜ぶ様子がそう見えたとしても仕方のないことだろう。


 この世界においてはユウタだって十分働き手となる年齢だ。それを彼も理解はしているので立派に働いてはいるが、だからといってたった一人で暮らしていくのは寂しいと感じた。しばらく世話になっていたクレアの家ではそこそこに騒がしかったというのもある。


 ソフィーはいつだってクレアが大好きだという態度で世話を焼いているし、クロエはやらかすソフィーや研究に夢中になっているクレアを叱っていた。クレア自身は静かな方だったが、エリアスみたいなストーカーっぽい人間が寄ってきていたりする。正直ちょっぴり心配だ。レディアみたいな美形もいたが、彼は適切な距離を探りながら接しているのでいいんじゃないかと彼は思っている。

 リルローズが来た時はクレアも少しそわそわする。ちょっとだけではあるが楽しそうに世話を焼く様子はほのぼのしている。

 ユウタは自分もそういう目で見られていることには気がついていない。



「先生!!雪一角兎居たよ!」



 そんなわけでクレアの見つけたら教えてリストにあった魔獣を捕まえてきたユウタは今日も元気に突撃してきた。

 雪一角兎とはツノウサギのレア種である。冬のみに表れることから“雪”と名がつく。真っ白なふわふわの毛に赤い目の魔獣だ。額にクリスタルのような美しい角があることもあってか、この時期に出る魔物の中では一際高く売れる。

 その姿を見ながらたまたま妹と一緒に来ていたリヒトは「よくそんな薄着で走り回れるな!?」と叫んだが、ユウタは首を傾げるだけだ。



「えーっと、結構良い素材のコートなんで見た目以上には温いよ。それに、動きにくいと余計に危ないし」



 寒さで赤くなった頬を掻きながらそう返すユウタだが、その腕の中の雪一角兎は震えている。



「というか、始末してから持ってこい」


「ヤだよ!可愛いから俺の心が痛い」



 当の魔獣は震えているが、とはリヒトもいえなかった。それに、人間の3歳児くらいのサイズの、それも角がついた魔獣を可愛いと言うセンスも少し信じられなかった部分もある。



「まぁ、先生が欲しがってたの角だけだし」


「角がなくなれば、そいつは食われるだけだろう」


「いや、普通に飼うつもりだけど」


「は?」



 嬉しそうに「なー、ユキちゃん」と頬擦りする様子にドン引きした。魔獣はやはりプルプルしている。とても懐いているようには見えなかった。



「魔獣を飼うほど、君の家は広くないだろう」



 いつの間にか来ていたクレアが呆れたような声音でそう言うと、リヒトは遂に「そもそも魔獣を飼うな!」と突っ込んだ。なお、彼の妹はソワソワとユウタの腕の中の魔獣を見つめている。



「あ、シャルロッテちゃんが触んのは角切った後な」



 嬉しそうにコクコク頷くシャルロッテをよそに、雪一角兎は必死にもがいていた。自分の生存に必要不可欠な角を切られるというのだから当然である。

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