50.師は地雷が多い
50 話!
泣き疲れて眠り、翌朝目を覚ましたクレアは鏡を見て、「酷い顔」と呟いた。久しぶりにちゃんと人に甘えた気がする、と思いながら苦笑した。あんなに悪名高い師であっても、クレアには世話焼きの一面も見せる。
(そういえば、昔、早く良い女になれよとか言っていたか?)
昨晩の自分への対応を見ると、まだ子供扱いに思える。そんなことを考えながら回復魔法を自分にかけて、鏡で多少なりとも見れる顔になったことを確認してから部屋を出ると、弟子の悲鳴が聞こえた。外を見ると、マーリンが楽しそうにユウタを追いかけている。
「何をやってるんだ?」
呆れたように呟いて、現場に向かう。
外に出ると、「先生!!マーリンさん止めて!!」とクレアの後ろに隠れた。不機嫌そうに近づいてきたマーリンは「クレアの後ろに隠れるってどういうつもり?」と述べた直後、呻き声を発してかがみ込んでいた。
「クレア、何をするんだい!?」
「我が師、大人気ないですよ」
腰に手を当てて怒っています、という態度をとると、拗ねたような顔をした。どちらが子供かわからない。
「一応、ユウタが悪い可能性もあるので理由を」
「珍しい白い獣を狩ったから、君の防寒具にしたいとかで来てたのが気に食わなかった」
「お世話になったからお礼だって言ってるし、ソフィーさんとクロエさんは大賛成なのに!!」
「クレア、男の世話なんてしなくていいのに」
マーリンは何を言っているのだろう、とクレアはちょっと何を言っているのかわからないと言う顔をした。そして、ゆっくりと長い溜息を吐いた。
「ユウタ、気持ちは嬉しいがあまり気にしなくともいい。白なんてデザイン次第で流行り廃りが少ないし、使わないにしても高く売れる」
「……なんか、仕留めたその夕方からギルドでギラギラ系の人からめちゃくちゃ声かけられて怖いからマジで受け取ってくれた方が嬉しいんだけど」
「ああ、美に対してただならぬ気迫を持つ女性は、どこの国にも多いよね。そういうとこが可愛いところでもあるんだけど」
マーリンの言葉に「あれを可愛いと言えるのは勇者だろ。あ、俺が勇者だったわ」と返しているユウタは意外と図太かった。多少図太くなければとっくに死んでいたかもしれないという一面もあるので、それが悪いことだとは言えないが。
「……勇者?」
何が気に障ったのだろうと、ユウタは怪訝そうな顔をしながら頷いた。
「はい。一応。上が止めてるのに暴走した魔法使いさんたちが召喚しちゃったらしくて」
笑うユウタに低い声で「何を笑っている」と問いかけた。それに眉を下げてユウタは、「まぁ、別に特に待ってる人もいないんで」なんて答えた。
「どこの国?昔僕たちが各国に二度と召喚なんていうクソな魔法は使わないようにと各国の王族に署名させったっていうのに、今の人間は脳味噌が腐っているのかな」
「師、落ち着いて」
にこにこと笑っているが、これはブチギレているぞとクレアは気づいている。ユウタは洗いざらい吐かされたが、本人はそう思ってはいない。変なことを聞くなぁくらいの話である。その国にとっての救いは「王太子がユウタをきちんと保護し、学ばせていた」のがマーリンの怒りを多少鎮めた点であろうか。
「それにしても、マーリンさんって一体何歳なんだろう」
呑気にそんなことを言う彼は大物かもしれない。本人であれば「あ、勇者だから俺大物だわ!」とカラカラと笑っただろう。




