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31.心象武器




 ユウタの予想通り、「そろそろ自分の心象武器(サイコロジカルウェポン)を発現させてみようか」とクレアは告げた。



「最初はがっかりするかもしれないが、心象武器というのは持ち主と共に成長する武器だ。私の杖だってはじめはこのくらいの物だった」


「はい!」



 ペンくらいの長さだった、とジェスチャーで示すと、ユウタは元気よく返事をした。魔法の出力が大きくなっても問題ないようにと張られた結界の中でワクワクとした表情で胸に手を当てた。漫画や小説のような出来事が自分に起こるのは興奮する。



(短剣くらいの大きさかな?わかんないけど、楽しみだ)



 感じられるようになってきた魔力の流れに、心象武器を現した師へと目線を移す。すると、そこにあったのはワンドと呼ばれる指揮棒ほどの杖だった。某有名児童文学の魔法使いが使用しているくらいの大きさでやはり蒼玉が付いている。



「心象武器というのは自分の内にある魔力の形を現界させる魔法だ。前にも言ったがしっかりと魔法を習っていない人間や、普通に過ごしているだけの人間が使うのは難しい」



 己が内に武器を持っていても魔法をしっかり学んでいる、もしくは何か特別なことがない限り顕現は難しい。そして、その特別なことというのはとびっきりの悲劇であることが多い。



「幼い時から魔法と馴染みがある貴族や、魔法を使う冒険者の家族以外では、魔力の制御を覚えていないことが多い。魔力が多ければ多いほど、己の魔力を制御できていないと暴走をすることすらあるから後回しにしていたが……まぁ、そろそろ大丈夫だろう」



 魔力というだけであれば、クレアは魔導師の名に恥じぬ一級の量を持っている。むしろ、彼女にとっては過酷な旅を送るはめになったせいか一般の魔導師よりも優れた魔力と技術を持っている。今のユウタが暴走したとしても無事に収めるだけの実力があってこその今回のことである。

 ユウタが召喚された国で魔法関連を教えられなかったのは暴走した彼を抑えられるものがいなかったせいもある。それでも一般常識や基礎知識自体は王太子から教わっていたからかスムーズに済んだのでその辺りはユウタも彼に感謝している。



「では、ユウタ。目を閉じて」



 言われた通りに瞳を閉じた。胸にクレアの手が当てられる。そこから温かいものが広がっていく。誘導するように自分に中の深いところまでそれは向かっていく。追いかけるように自分の中の魔力を動かせば、奥の奥。そこに光の塊のようなものを見つけた。

 手に取れ、とそれはユウタに囁きかけるようだった。恐る恐る魔力を伸ばす。


 魔力は光に塊と絡みつき、手に何かが触れるような感触があった。気がつけばクレアからのガイドは消えていた。薄く目を開ければ手にきらきらとした光が見える。それが求めるがままに魔力を練り上げて与える。段々と剣の形をとっていく。


 完成したのはシンプルな剣。飾りも最小限のものだ。紅玉に金の飾りが印象的だ。



「飾りは綺麗だけどゲームで剣士が持つ初期装備みたい」


「うん、これはすごいな。これだけの力を持っていたなら私の旅も、もう少し早く終わっただろうに」



 覗き込む師の予想外の言葉に、「嘘ぉ!?」と叫んだ。



「嘘を言う必要はないだろう?正直、我が祖国の勇者はそれなりに強くはあったが、君のように自分の内から聖剣を取り出すことはできなかった。使用していたのも国から支給されたものだ」



 それも、過去の勇者が残したと呼ばれる聖剣である。残したと言われているが、クレアは卑怯な手で奪い取ったのではないかと思っていたりする。クレアの考えるコルツ王国はそういうことをする国であった。



「鍛錬を重ねることで、より強い剣にもなっていくだろう。心象武器は己の写し鏡だ。これからも励むといい」



 そう言われてユウタは手の中へと視線を落とした。聖剣だなんて言われても実感はあまり湧かない。けれど、確かに感じる自分の魔力とその形。ぎゅっと握ると、その瞬間光の粒となって弾けた。



「え?」


「いきなり長時間の維持は難しい。ほら、普段頑張ってくれている強化魔法だってそうだろう?」



 クレアにそう言われて、そうだったとしょんぼりした。



「異世界転移って漫画みたいに上手くいかないな……」



 とは言っても、彼だって今の庇護者がいてゆっくりと修行してもらえる日々はとても恵まれたことだとわかっている。召喚されてすぐであればわからなかったかもしれないけれど、嫌がらせにあったり、お金を盗まれたりといった目にもあってきた。結局、どこであっても謙虚に生きることが必要なのかもしれない。けれど、知恵を使ってうまく立ち回ることも忘れてはいけない。



「死にたかねーもんな」



 ユウタだって必死だ。ここで頑張らないと、彼だっていつまでも面倒を見てもらえるわけではない。気を取り直して前を向いた。早く一人立ちしないとそのうちソフィーに追い出されるのは必至だ。

心象武器は慣れれば本人の意思で大きさ変えられる。クレアが戦いの中で身の丈くらいにしてるのは肉体を強化して物理で敵を倒すこともあるため。

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