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12.次の行き先




 勇者たちは青年らに庇われるかつての仲間を睨みつけ、そして国民を助けるために去った。その後ろ姿を見ながら、それでもきっと多くの民を見殺しにするのだろうな、とクレアは考えたけれど何も言うことはなかった。

 彼らは要請に従って、貴族としか関わらないだろう。



「魔導師、我が国に来るといい」



 青年は剣をその身にしまい、片膝をついてクレアにそう伝えた。その手を取って、「妹を保護して頂けたこと、感謝している」と告げた。遠くからクレアを呼ぶ幼い声が聞こえる。その声に、彼の言う妹が誰なのかを察した。顔には出ていないがホッとしている。



「く、クレア!!死んじゃヤダぁ!!」


「リズ。俺がいて、おまえの恩人を死なせると思うのか」



 呆れた声で妹に告げる。それに「お兄様!」と嬉しそうな声で応じる彼女の表情は花が咲いたような笑顔だ。

 その後ろから、美しい白銀の髪の美女が現れる。あらあらと穏やかな笑顔を浮かべており、それを見てリヒトは顔を引き攣らせた。遠くから、「ご主人ー!!」という元気な声も聞こえる。ソフィーが小声で「遅くはありませんか?」と呟いた。凄みの混ざったその声にクレアは何があったのかと思って首を傾げた。真顔のままの彼女を見て、青年は何か思うところがある様子だったが、妹に袖を引かれて静かに首を横に振られると、なにかを言うのをやめた。



「ご主人、一応コレ確保してきたぜ!」



 駆けてきたクロエが片手で頭上に挙げたものは、小さな骨壷だった。それを見て、少しだけクレアの表情が和らいだ。小さな声で、どこか泣いているような声で「ありがとう」と言う彼女に、クロエはニカっと笑って「おうよ」と返した。



「お母さん」



 骨壷を抱きしめたクレアの声が静かに、けれどなぜかその耳にこびりついて青年は自然に彼女に視線を奪われた。



「エリアス、もうお話はしたの?」



 兄妹の母である女性に尋ねられて、ハッとする。「誘いはかけた」と言って目を逸らす。



「クレア、とりあえずうちに来て!あなたはもう少しゆっくりするべき!!」



 リルローズはビシッとクレアを指差してそう言った。彼女から見て、クレアは働きすぎだった。暇になるために引退したという彼女はその実、通り過ぎる人たちを助けていて、あまり休んでいる様子は見えなかった。自分も助けられた身ではあるが、まめに働くその姿はもはや献身を超えているような気がしていた。


 結局、クレアはこの森に居続けることは危険であるとソフィー・クロエに説得されて竜の親子と彼らの国へ向かうことになった。

 そこで、兄妹の母が竜の女王であり、保護した女の子が竜のお姫様であるという事実に絶句することになる。



「こんな偶然もあるものだな」



 どこかのお嬢様だとは思っていたが、まさかそんなに高貴な出だとは知らなくて、褒美をくれるという女王に困った顔をした。特に褒美をもらいたかったわけではない。

そんなクレアを見かねたのか、代わりにリルローズが色々と注文を付け出して、止めようとしたが、ソフィーやクロエも一緒になってクレアの扱いについて話をし出して、気がついた時には住む場所や国立図書館の出入りの権利について話がついていた。

リヒトが顔を引き攣らせてるのは女王様の血走った目を見た後だから。娘を血眼で探していたので仕方ない。

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