第三話「君の名は...」
俺の怒りに反応したかのようにアーミルは距離を詰めた。
「はぁぁあ!」
素早く俺の懐に潜り込むと腰の短剣を抜き体を連続で刺してくる。
俺はゴホゴホと血を吐きながらアーミル君の肩に手を置く。
「こら、やめなさい。効かないけどね! 痛いのよ! ふんっ!」
我を忘れたように刺してくるから思いっきりラリアットを喰らわしてやった。
急激な強い衝撃を与えたことによりクリーンヒット。一発でKOだ。
さて、こいつはなぜ邪魔してきたのか。
持ち帰ってユデマ王国3000年の歴史が作り出した媚薬で感度3000倍にでもして吐かせてやるか。
「彼は私達エルフと敵対している国アスラン王国の騎士です」
「へぇ」
「私達エルフの町はアスラン王国南部にありきっとどこかでドライム病にかかって壊滅の危機だと知り月光花を採取させないことでそのまま滅ぼそうと思ったのでしょう」
「へぇ」
何この子? 天才? まぁ確かにそうすれば効率的だわ。
しかしこのガキどうするか。
うーん
「アーミル様!」
「貴様達何者だ!」
そんなことを考えてたら何か森の奥からぞろぞろと出てきた。
このガキと同じような服を着ている。きっと仲間だろう。
そりゃそうか、いくら採取されないようにすると言っても一人じゃきついよな魔物とかいるし。
しかし挨拶はしておくか。
「私はユデマ王国第二王子ユデマ・マゴ・デルガァシュ二世だ! 誰だお前達は!」
「我々はアスラン王国第二騎士団だ! 貴様らエルフの町の者だな! アーミル様の仇取らせてもらう!」
まずい、また襲いかかって来そうだ。見たところ数十人だがここで倒しても荷物が多くなるだけだ。
「交渉しようぜ」
「交渉だと...」
「おん。このガキ死んでないからさ、返すんでお国に帰ってくれませんか?」
「ならぬ!たとえアーミル様が死んでいようが生きていようが我々の命はこの月光花を採取させないようにすることだ!」
そりゃそうだ。うーん。どうしよう。適当言うか。
「実は俺ドラゴンの子供で王国の王子だからめちゃくちゃ権力あるんだよね」
「ユデマ王国など聞いたことがない!...だが妖精の町の近くでドラゴンが出現したと言う情報は聞いた。」
「おん。そうそう、それ俺のパピーだから、ユデマ王国もドラゴンの国なのね。だから空の上にあるから同盟組もうぜ。エルフの町に手を出さない代わりにドラゴンパワーあげるから。」
我ながら素晴らしい案だ。あとは龍の息吹とか言って『ユデマ王国固定砲台ユデマキャノン』を打っとけばいいだろう。
いや、そういえばここ異世界だからユデマ王国ねぇわ。 やべ、どうしよ。
「その取引乗った。」
そんなことを思っていると。目の前で倒れていたアーミル君が意識を取り戻していた。
「貴様の——」
「誰だお前は!」
「もう嫌この人...話遮るし...」
「いや、すまんて続けて」
「はぁ...貴様の話が本当なら、エルフの町を放っていてもそれ以上の利点が我々にある。だから、貴様にはこれから我らの王国に来てもらう。もし先の話が虚言であれば、我々アスラン王国全てを敵に回すと思え!」
「いいよ」
———
ということでお国に行くことになってしまった。無事月光花を採取させてもらい、エルフちゃんと町に帰り、泊めてもらうことになった。
明日にはさっきの騎士達との待ち合わせ場所に行かなければならない。
「ありがとうございますじゃ、これで我々は救われる...」
「おん。いいよ」
町は月光花の入手によりお祭り騒ぎだ。
あちこちから「ユデマさんかっこいい!」「キャー抱いてぇ!」と聞こえる...気がする。
「ユデマさんありがとうございますわざわざ町のために...」
「い、いや。いいっすよ暇だったんで」
「なんとお礼をしたらいいか...私にできることが有ればなんでも言ってください!」
「え?まじ?なんでも!?」
「はい!」
こいつは言ってはならないことを言った。
なんでもするってな!
そして俺は願いを言った...
「リリーです!」
——
勇気を出して名前を聞いたのだった。
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