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4.読めない文字と精霊

「うーむ……」


「魔王様、どうなされましたか?」


「いやな、父親の魔法を使おうとしているのだが……字が読めなくてな」


「魔王様が読めないとなると、古代文字で書かれたりしているのですか?」


「そうだな、ある意味古代文字だな……」


 俺は、ぐにゃぐにゃとした横棒しか書かれていないページを、呆れた目で見る。

 いや~、これ父親は睡魔であるバクに何かささやかれながら書いたのか?

 そう思いたくなるほど、字が汚い……。

 一つ前のページへとも戻ってみる。

 

「ふむ、こっちのページは読めるんだがなぁ」


 ユリシアが、悩ましい表情で頭を抱えて本を見る俺に、近づいてくる。


「魔王様、紅茶をどうぞ」


「お、おう、後で頂くよ……、ところでユリシア、お前はこのページに何が書かれているか見てくれ」


 俺が、そう言って、ユリシアに父親の本を見せようとするが……、ユリシアは自分の手で目を覆ってしまう。


「いけません!! 魔王様!! それは前魔王様が、ご子息である現魔王様のために書き残したものです!! 私のような下々の者が閲覧していい物ではありません!!」


「む? そうか」


「そうなのです!!」


 完全な縦社会である魔物の世界、魔王を絶対としているがために魔王への忠誠心がすごいんだなぁ~。

 でも……俺もこの世界で魔王になる前は君らと同じ下々の一員だったから、少し居心地が悪いなぁ~。

 ん? 魔王を絶対としている?

 俺は一瞬アナスキの顔を思うかべるが、あれは少し特殊だから考えないでおこう。

 

「ユリシア……お前のその忠誠心、見事と褒めてやろう。だが、我はお前に見てくれと命令をしたのだ、命令した時点で閲覧の許可が出たとそうは考えないか?」


 はっとしたユリシアが額から冷や汗を流す。

 魔王である俺の命令に逆らったから何かお仕置きをされると、そう思っているのだろう。

 瞬きの回数が少し増えて、息も乱れている。


「ブレイバーハート」


 明らかに落ち着きが無くなっていたユリシアに、俺が相手を強制的に落ち着かせる魔法を使って、ユリシアを落ち着かせる。


「落ち着いたか?」


「は……はい、お手数をおかけして申し訳ございません」


「ほれ、紅茶も少し飲め」


「しかし、それは魔王様のために……」


「そ、そうか? しかし今はユリシアの心を落ち着かせるほうが大事だ、ほら……飲め」


「かしこまりました」


 よし!! なんとか言いくるめたぞ!!

 苦い紅茶を飲まずに済んで少し心が跳ねてしまって笑顔になる。

 紅茶を飲む、ユリシアは心から落ち着いたようで、ほっと息を出す。


「よし、ではこのページに書かれている文字が読めるか?」


「拝見します……こ、これは……」


 謎の横棒文字のページをを見たユリシアが驚きの声を上げる。


「ど、どうした!? 何かわかったか?」


「すみません、私程度には睡魔にたぶらかされながら書いた文字のようにしか見えませんでした」


 あぁ、俺もそう思った……。


「そ、そうか……少し無理な命令をしたな、ありがとうユリシア」


「そ、そんな魔王様!! もったいないお言葉を……」


 俺はユリシアにお礼を一度してから、席から立ちあがる。


「ユリシア少し外に出る」


「ご一緒します」


「いや、よい、少し一人になりたい」


「そ、それは……」


「ん? 何か問題でもあるのか?」


「いえ、魔王様はこの世で最強の存在です、何も問題などございません」


「そうか、なら他の者達にも我が一人で外に外出したと言っておいてくれ」


「かしこまりました」


 俺は自分自身にフライ、スピードアップ、ウィンドバリア、インビジブルと言った魔法を同時に使って、自室のバルコニーから月明りの美しい夜の空へと出かける。

 フライで空を飛んで、スピードアップで移動速度を上げる、ウィンドバリアで反発でかかる風を無効化、インビジブルで他者に自分自身の姿を見せないようにする。

 俺が、子供の時にも使っていた、お散歩用の魔法達だ。


「雲一つないか……」


 雲を突き抜けて雲海を見るのが結構好きなんだがなぁ。

 すこしがっかりだが、今は雲海よりも、この父親の謎の文字だ。


「仕方ない、この本に魂をやるか」


 俺は、前世では正直あまり本を読まなかった。

 この世界に来てから、魔法の本を読み始めたりしたが、正直内容が難しくておつむが弱い俺では、理解までに少し時間がかかっていた。

 今でこそ、理解しているから初めて見たり、読んだ魔法でも使えるが、それでもやはり今のこの謎の文字のように読めないという理由で習得に時間がかかった魔法も多々ある。

 そこで俺が、考え出したのが……自分で簡単に理解できないなら、誰よりも理解している奴を作ってしまう事だった。

 もちろん、俺に魔法を教える先生がいなかったわけではないが、先生が10問中10問とも答えをくれるわけではない。

 だからこそ、俺は魔物側のとある精霊と契約をした。


「おい、リーブロ」


 俺が、精霊リーブロの名前を言うと、ポンとかわいらしいピンク色の煙と共に、小さな体と同等の羽が生えた精霊が出てくる。


「はい、ご子息様」


「今はもう魔王だ」


「そうでしたか、魔王様、ご就任おめでとうございます」


「あぁ、それは別によい、それよりもこの本なのだかがな」


 俺は、礼の本をリーブロに見せる。


「この本は……もしかして前魔王様が書かれたものですか?」


 本をめくってみていくリーブロ。


「なぜ父親のだと分かる?」


「それはこの魔法を使っていたのが、前魔王様だけだったからです」


「ふむ、そうか……、それでこの本の中には入れるか?」


「そうですね……一応入れますが、前魔王様の込められた魔力が多いために、入れても、2、3分んが限界です」


「十分だ、このページを読んでほしくてな」


「うお、何ですか、この睡魔にたぶらかされながら書いたような文字は」


「……では頼んだぞ」


「はい、ポルタ―ガイスト」

 

 リーブロがそう言うと、精霊としての原型が無くなって、淡い光の玉になって、本の中に消えていく。 

 そして本自体が淡く光出したかと思うと、本に目と口ができる。

 少し不気味な見た目をしているが、俺は本に問いかける。


「このページに書かれている文字は何と読む?」


「はい、このページには、ダークの上位魔法、ダークマターについて書かれています。ダークマターの主な運用方法はダークと同じですが、一つだけ違う点があり、それはダークマターで他者の強化ができるということです」


「味方の強化か……」


「ただし、ダークマターで強化した他者は……ぷはっ!! もう……はぁはぁ、無理です」


「っぐ、気になる所で……仕方ない捕虜となっている者を使って少し試してみるか……。ありがとうリーブロ」


「いえ、少し休憩をもらいますけど、またお呼びくださいませ」


「あぁ、感謝するぞ」


「それでは」


 リーブロはそれだけ言うと、消えてしまった。


「ダークの上位互換か……」


 俺は、そうつぶやきながら、魔王城へと帰って行った。

 


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