2.報告とこれから
「アナスキ、先日の五星軍との戦いをまとめた報告書を読んでくれ」
俺は、また断られるんじゃないかと思ったが、アナスキは一つため息を吐くと手に持っていた報告書を開く。
ため息ってこいつ本当に失礼な奴だなぁ~。
俺が、アナスキを一度睨むも、心ここにあらずという顔のアナスキが、深いため息と共に報告書を読んでいく。
「魔王様、三日前の五星軍との戦いでの損害ですが、人間界に潜入しているサイレントウィッチからの報告で、五星軍側の損害は人口の4割を超えたとのことです。それに比べて我々の損害はたったの2割。武器、人員共に想定していた最小限の損害以下に抑えられました」
アナスキが報告書を淡々と、というかけだるそうに読んでいく。
なに? 何が不満なの?
俺、君の親でも殺した?
アナスキの言った報告を聞いた四天王の者達が、おぉっと声を上げる。
「さすが魔王様!!!」
フェーゴが体を燃え上がらせながら喜ぶのを、鬱陶しそうに見るピハロだったがすぐに俺のほうを見ると笑顔になって羽をばたつかせる。
トレントは頭の木から花を咲かせていて、ホネボネーは喜びのあまり骸骨に少しヒビが入ってしまったのを、持参してきていた、モーピッグから絞ってきた乳を飲んで骨を回復させていた。
「よし、アナスキその報告書に続きも話してくれ」
俺がアナスキにそう命令すると……。
アナスキが俺の目の前に報告書を置いてきた……。
自分で読めってか!!
あぁ分かりましたよ! 自分で読みますよ!!
俺が、諦めて報告書を読もうとした時、フェーゴの身体が先ほどよりも大きく燃え出す。
どうやら、怒ったようだ。
「おい、アナスキ、お前魔王様に対する態度がなってないんじゃないか?」
「うるさい雑魚、火だるま小僧は黙ってな」
「誰が火だるま小僧だ!!!」
手に炎を溜めたフェーゴに対して、アナスキは人差し指だけをフェーゴに向ける。
なんだか、今にも喧嘩始めそうじゃん。
さすがに会議中に喧嘩されるのも嫌なので、俺は仕方なく声をかける。
「お! お前達やめないか!!」
「しかし、魔王様!! この女を抱くことしか能のないゴミが魔王様を侮辱しているのですよ!!」
「誰が、女を抱くことしか能がないだ、体を燃やすことしか能のない炭め」
「なんだと!!!」
何こいつら!!
仲悪すぎない?
犬猿の仲にもほどがあるだろうが、いさめるこっちに身にもなってほしいんだが……。
俺は、他の三人の顔色を見まわす、誰もこの喧嘩を止める気がないところを見るに、他の三人もフェーゴと同じ事を思っているのだろう。
うーん……仕方ない。
【スキル】
威圧レベル10
支配レベル10
発動。
「やめろと言ってるのが、聞こえないのか?」
威圧と支配のスキルを発動させた状態で話すと、全員の身体がビクっと震えて、カタカタと怯えだす。
あっ、しまった。
全員怖がってるじゃん……少しやり過ぎたか?
俺が、そんな事を思っていると……。
フェーゴの炎が少しピンク色に燃える。
「はっ! あはぁっは! 魔王様なんと素晴らしい威圧……心も体もすべて支配されてしまいます」
うえ、気持ちわる。
俺は、微苦笑を浮かべながら他の者も見てみる。
アナスキは、固い表情こそ変わらないが、頬が少し火照っている。キモイ!
ピハロは足をもぞもぞと動かせて、恍惚な表情を浮かべていた。エロい!
トレントは大理石に自分の音を張り巡らせる。やめて?
ホネボネーは頭だけを残して他の部位が砕けてしまった。大丈夫か?
「み、皆の者落ち着くのだ……」
「そんな、魔王様がスキルをお使いになってしまったせいだというのに……なんと意地悪な方だ」
やめてフェーゴ、そう言う言葉は女の子が言うから需要があるんだ。
全身火だるまのフェーゴが言っても、怖いを通りこしてキモイから……。
「ま、魔王様……話を前に進めましょう」
「そうだなピハロ、話しを前に進めよう。おいアナスキ続きを」
「魔王様、今は無理です……今すぐにでも女を抱かないと……この火照りを押さえないと」
アナスキはそう言うと、部屋から出て行ってしまう。
あいつ、一回報告書呼んで喧嘩しそうになった挙句、興奮して女抱きに行きやがった、しかも会議中に……人間界送りにしてやろ。
いや? 女が好きなんだかむしろあいつからしたら好都合か……。
「では、続きを話す」
気にしても仕方ないな、今は会議のほうが大切だ。
今後の方針も決めなきゃいけないわけだし。
頑張るか……。
「先ほど、我ら側の損害が、五星軍に比べて少ないと言ったな、これに関しては、皆の頑張りがあったからだ。先も言ったが、勇者を撃退したフェーゴ含め、できるだけ多くの家来に近々褒美を与えよう、それで今後の方針なn」
「魔王様、すみません」
「なんだ、ピハロ」
「魔王様、お言葉ですが、褒美の件に関しては与える必要性が見えません」
「それは、労をしたものに、褒美を与えるという至極全うな私の考えに反対ということかピハロ?」
俺は、少し怒気を含めた声音でピハロに質問する。
無意識化で【スキル】威圧レベル10が発動していることに俺は気づかず、ガタガタと震えるピハロは、恍惚とした表情で口を動かし始める。
「いえ、私達、魔王様の家来は皆、魔王様に仕える事ができる。ただそれだけで幸せなのです」
「うむ……なるほど、そう言う意見もあるのか、分かった、なら褒美の件は我の方で少し考え直そう、ただ勇者を撃退したフェーゴ含め、マグマエリアで戦った魔物達には何かしらの形で褒美を与えるということで、納得してもらえるかピハロ?」
「問題ございません」
「そうか、なら褒美の件はこれで終わりだな、では続いて、五星軍の捕虜達についてだが」
「はい、魔王様そちらの件は私にお任せください」
「トレント、具体的には捕虜をどうするつもりだ?」
「はい、私の眷属達の餌の分も必要なのですが、なにより人間を使った新たな生物兵器の苗床にできないかと」
「トレント、その際に皮などはどうするんだ?」
ホネボネーが眼鏡を押し上げながら、トレントに聞くと。
「あら、そこまでは考えてませんでしたわ、でもたぶん皮は不必要になるかと」
「ホネボネー皮を何かに使うのか?」
「はい、魔王様、これを気に私のようにアンデットでも無臭の者であれば、人間の皮をかぶることで少しでも変装できればと思い、研究をしたいのです」
「ほう、興味深い研究だな、本当にできるのであれば、人間界に潜入させれる魔物の数が増えるな、よしトレント、もし必要のない種族の皮があった場合は剥いで、ホネボネーに渡しておいてくれ」
「かしこまりましたわ」
「よし、ではこれにて、会議を終わる。四天王諸君、各々の仕事に戻ってくれ」
「「「「っは!!」」」」
俺は、席から立ちあがって、四天王に背中を向けて、両開きの扉から外に出ると……。
「っか、っはあっ……」
地面に転がって痙攣しているアナスキがいた。
おそらく先ほど無意識で発動してしまった威圧のせいだろうが……。
関わるのがめんどくさかったので、ヒールだけかけてその場を逃げるように俺は、去って行った。
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ではまた!!