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1.理不尽な転生

 カチカチとキーボードをタイピングする音が、暗い部屋に響く。

 パソコンのすぐそばに置いてある砂糖が大量に溶けた炭酸水、まぁつまりコーラだ。

 缶ならではの持ちやすさと、持った時にヒュンとなる冷たさから、中に入ってる健康に悪いランキング6位くらいの飲み物のおいしさを際立てる。


「はぁ……最近配信の伸びが悪いなぁ」


 ダークキング・オンライン。

 俺が、仕事と私生活、家族に至るまでを犠牲にしてやっている、クソゲーだ。

 自分が魔王になって、家来達にあれこれ命令して勇者とかと戦わせるシミュレーションゲームだ。

 かと思いきや、魔王自体のレベル上げをさぼっていると、いつしか戦いを挑みに来る勇者に備えて、自分のレベル、スキル、魔法に至るまでも育てておかないといけないという、RPG要素もあるゲームだ。

 つまり……やることがある神ゲーだ。

 え? クソゲーなんじゃねーかってか?

 ほら、クソゲークソゲーって言ってるゲームほど、神ゲーだったりするじゃん。

 つまりそう言う事だ。

 とまぁ、俺はこのゲームで生活のすべてを犠牲にしているだけあって、トップランカーと呼ばれている。


「そろそろ、新作が出るんだよなぁ」


 俺は、このゲームで配信していることで広告収入などを利用して、生活に必要な物を配達で買ったりしているのだが……。

 先ほども言った通り、最近配信の伸びが悪い。


「やっぱり、新作が出る影響かな?」

 

 このダークキング・オンラインは本来、複数人でのプレイも可能なもので、ふつうは友達なんかと一緒に協力して、最強の魔王を目指す前提のゲームなのだが、俺はそんなゲームをソロで攻略しているということで一役話題を呼んで、人気な配信者になっていた。

 しかし……ソロで攻略しているということの面白さもさすがに二年もすれば飽きられて、新作発売も間近なせいで、俺の配信の伸びが悪いのだろう。


「新作……手を出すつもりはなかったけどな~、仕方ないか」


 俺は、三代あるパソコンのうちから一つを使って、ジャングルと同じ名前のオンライン通販サイトを開いて、ダークキング・オンライン2を探すが……。


「あ? ないぞ、さすがに予約くらいはできるだろうが……」


 俺は、他のサイトでも探し回った結果、最後に公式サイトに入って確認してみると……。


「オンラインでの販売はしません……っはごみがよ」


 どうやら店頭での販売のみらしく、俺の住むアパートから一番近い位置にあるゲーム屋さんでの販売も予定しているらしい……。


「えーっと、尚オンラインからの予約は受け付けております……『公式サイトからのみ』」


 仕方なく、オンライン予約をして発売日まで何とかやり過ごす。



 ダークキング・オンライン2の発売当日。


 俺は、灼熱の太陽に体内の水分を絞り取られて、目的地であるゲーム屋さん————距離にして300メートルの位置にある————へと向かっていた。

 息が……上がる。

 こんなに歩いたのは久しぶりだ————現在歩いた距離50メートル————これほどまでに外がカオスな事になっていようとは……。

 いやはや、夏という季節は恐ろしい。

 待ちゆく男女は半そで短パンと自分の肌を焼かれていることにも気づかずに、笑っていやがる。

 畜生、うらやましくねーぞ……ギャルだけど、ものすごく美人な奴と歩いてる学生なんて羨ましくないぞ。

 ワンピースに身を包んで、待った? とか明らかに待っていたであろう男性に聞いている、清楚そうな女と一緒にいる男性なんて、羨ましくないぞ!!

 男だけの学生達がため息と共に、歩いているのが目に入る。

 おっ、あそこに同士がいるな、お前らはいい奴らだきっとそうだ。

 俺がそう思って、息を切らしながらも目的地に向かっていく。


「着いた……ゲーム……はぁはぁ……屋さん」

 

 やっとの思いで着いたゲーム屋さん。

 自動ドアに迎えられて中に入ると、ガンガンに聞かせたクーラーのおかげで体力が回復している感覚になる。

 汗を手持ちのタオルで拭って、そのままレジへと向かう。

 女性の店員にスマホのメールを見せる。


「こ、こちら……お願いします」


「はい! ダークキング・オンライン2ですね! 少々お待ちください」


「は、はい……」


 元気な女性の店員がそう言いながら、事務所の方へと消えていく。

 というか、結構美人だったな……。

 なんだ? この街の女性は皆美人なのか?

 そう思って待ち時間暇だと少し他のゲームを見ていると、他の女性の客と目が合ってしまう。

 あっ、いや、さっきの考えは撤回するわ。

 目の前の女性には申し訳ないが、やはり美人とは、砂浜の中で光る一粒の金なのだろう。

 そんな失礼な事を考えながら待っていると。


「お待たせしましたー! こちら予約の商品です~!」


「あ……ありがとうございます。あっ、こちらお金です」


「はい! 8980円ちょうど頂きます、ありがとうございました、またのご来店お待ちしてます」


 女性の店員が営業スマイルで俺にそう言って、お辞儀をする。

 俺は、そのまま少しにやけた頬をムニムニと引っ張りながらお店を出ていく。

 女性との会話なんて一体何ねんぶりだろう————会話ではない————俺は自分のアパートの自室を目指して移動を開始する。

 すると……先ほどの学生達がなんか女の子達と歩いているのを見かけてしまった……。


「っち、お前らは同士だと思ってたのによ……」


 俺は、舌打ちをして、もう一度学生達を見る。


「はぁ……帰るか……」


 なんだかすごくむなしい気分になってしまった。

 俺は項垂れてしまって、そのまま信号に足をかけていくと……。

 なんだか周りが少し騒がしくなっているのが聞こえる。

 うるさいなぁ……。

 俺が、そう思って、後ろを振り向くと……。

 信号は赤になっていた……。

 周りの人の声よりも騒がし、クラクションをトラックが響かせたかと思うと……。


「あっ————」


 俺は、トラックに轢かれて————死んだ————。



 白い部屋にいた。

 目の前に白い輪っかと天使の羽を生やした、たぶん神がいた。


「我は神だ」


 やっぱり神だった。

 俺は、自分の身体を触ってみる。


「えーっと、俺トラックに轢かれて死んだんですよね?」


「おうそうじゃ、いやぁ~、グロかったぞ~小僧、まさか人間の頭があんなことになるんて」


「うえ……聞きたくねぇ」


「そうか、聞きたくないかい、じゃあ見てみるかい? ほらテレビに映るから」


「テレビ?」


 神は手をパンと叩くと、俺の隣に急にテレビを出現させる。

 そこには、俺の死体がうつって……って!


「いやいや!! 見たいとも言ってない! 言ってない!! ていうか誰が自分の死体をわざわざ見たいとか思うんだよ!!」


「たまに、おるからの~、一応聞いてみたまでだい」


「いや、見せようとしてるし、応答の前に行動してるし……」


「ほっほっほ、そんなことより、他にも後をつかえているからえーっと、君の本名は……荒川りょうすけか、経歴はと……ほうほう……なるほどなるほど……これはこれは」


 なんかとても長い巻紙を高速で読んでいく神。

 一体どんな事が書いてあるのか気になるが……少し待っていると……。

 全部を読み切った神が、二、三度頷くと。


「うむ、荒川君」


「はい」


「転生か地獄どっちかを選びなさい」


「て、天国という選択肢は?」


「ん? ゲームだけをして、様々な人に迷惑をかけた挙句、心の中にでは人に恨みごとしか抱かなかった君がなんで、善良な人間だけがいける天国に行けると思ったのかね?」


「……」


「ほらほら、選んで、全部を一からやり直して反省する転生か、罪を償って千年後に天国に行くか」


「て……転生で」


「そうかそうか、転生を選ぶかでは~」


 神は手のひらを開くと、球体がいくつか出てくる。

 よく見ると、地球によく似た見た目の球体もある……っていうかまんま地球じゃねーか。

 神はその中から一つを選ぶと。


「では、この世界に転生するがよい、ちなみに何に転生するかわ、我にも分からない、まぁ何に転生しても、前世のように人々に迷惑をかけるような罪は侵さないように、では行ってらっしゃい~」


「は……はぁ」


 俺は、神様が手を振った瞬間に足元に空間ができて、その中へ消えていく。


「うわああああああ!!!」


 暗い空間の中を落ちていく、少しすると浮遊感もなくなって、地面に足を付いている感覚に襲われる。

 そして、次の瞬間、目の前に横線で光が差し込む。

 目が覚めた。

 視線の先には、角が生えていて黒色の肌と赤い目の、明らかな魔物が目の前にいた。

 そして、俺はその魔物に抱きかかえられていた。


「おぉ、我が息子よ、お前が次期魔王だ!!」


 えっ?

 魔王?

 えっ?

 俺は、人に迷惑をかけないでねと神にいわれた傍から、異世界で人に迷惑をかけるランキング堂々の1位である魔王に転生していた。

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 ではまた!!

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