第5話~ユータのコトバ~
百花「あ!お姉ちゃーん!」
渡「百花ー!今日も一日良い子にしてた?」
百花「ちゃんと良い子にしてたよ!」
渡「そっかそっか。んじゃ、良い子の百花にいいお知らせがあります。」
百花「んー?」
渡「じゃーん!!私たちの新しい家族だよー!」
百花「わー!!インコだ!インコだ!飼うのー?」
渡「うん。今日からこの子も家族だよ!」
百花「名前は?」
渡「名前はね「ユータ」。」
百花「ユータよろしくねー!」
ユータ「よろしくなー。」
渡「お!すごいねー。」
ユータ「祥子もよろしくなー。」
渡「すごいすごい!名前呼んでくれたー。よろしくね?」
百花「ユータ天才だね!いっぱい喋るよー?」
ユータ「だって天才だもん!」
百花「わお!ユータ天才だって!」
渡「そっかー。いい子いい子。さて、帰ろうか。」
百花「今日の夜ご飯なにー?」
渡「今日はねー、カレーだよ?」
百花「やったー!百花カレー大好き!」
渡「作るの手伝ってねー?」
百花「はーい!!」
<渡の家>
渡「朝だよー。百花。起きてー。幼稚園遅刻するよー?」
百花「もう準備できてるよ?」
渡「あれ?珍しい。今日は早起きだね。」
百花「うん。ユータが起こしてくれたんだよー?」
渡「え?」
ユータ「よっ!祥子おはよー。」
渡「え・・・おはよう・・・」
ユータ「二人ともー、もう朝御飯準備できてるぞー。」
渡「え?・・・」
百花「わーい。ユータありがと!」
ユータ「祥子はオレンジジュースで、百花はミルクでいいんだよなー?」
百花「そだよー。ありがと!」
渡「・・・コップ・・・まだ出してなかったのに・・・」
ユータ「だーから、俺が用意しといてやったんだってば。」
渡「インコって・・・頭いいの?・・・」
ユータ「ん?どういう意味?」
渡「ユータ、新聞とってきて?」
ユータ「あぁ、もうとってきたよ。テレビの横。」
渡「・・・今日って何曜日?」
ユータ「水曜日だろ?どうした?」
渡「・・・今何時何分?」
ユータ「6時半だけど?」
渡「・・・どうなってんの?会話になってる・・・インコってみんなこうなのかな・・・」
<WaLtz>
江藤「え?」
渡「だから・・・その・・・ユータ・・・私の言葉がわかるみたいなんだけど・・・」
江藤「え?・・・まぁ、勉強させればある程度は喋れると思いますよ?・・・インコですし・・・」
渡「・・・なんか、それが普通な感じじゃないって言うか・・・」
江藤「え?・・・ユータ、何かあったのか?」
ユータ「なにもないぞ?ただ、祥子と百花の朝御飯用意してあげただけなんだけどな・・・なんか、まずかった?」
江藤「そっか・・・あの、ご飯の用意をしてあげたかっただけみたいですけど。」
渡「・・・ユータの喋ってること・・・今全部わかりましたけど・・・」
江藤「え?・・・もしかして、渡さんも僕と同じ力が!?」
渡「いや、そんなわけは・・・」
江藤「ジーク!おいで!・・・お話して?」
渡「・・・」
江藤「きこえました?」
渡「なにも・・・聞こえなかったんだけど・・・」
江藤「おかしいな・・・え?・・・あぁ。はい。」
渡「どうしたんですか?」
江藤「ジークがユータに話があるって・・・」
渡「・・・」
ユータ「だから、俺は別になにもしてないって。・・・そうだぞ?・・・違う違う。そうじゃなくて、俺は祥子と百花のことを思って・・・」
渡「なんか・・・ジークの喋ってることは全然わからないんだけど・・・ユータの言葉だけ・・・全部聞こえる・・・」
江藤「え?・・・どうなってるんでしょう?・・・じゃぁ他の子達の声も聞こえませんか?」
渡「・・・うん・・・全然・・・聞こえない・・・ねぇ・・・なんでユータの言葉はきこえるの?」
ユータ「え?・・・なんでだろ?」
<診察室>
渡「だから、ユータが喋るんです!」
冴島「・・・そりゃ喋るでしょ・・・だって、この子インコでしょ?ねぇ?」
ユータ「あぁ。」
冴島「ほら。本人も言ってますよ?」
渡「だからー。何て言うか・・・こっちの言ってること全部完璧に理解してるみたいなんですよ・・・」
冴島「そう。・・・頭いいんじゃないの?」
渡「んもー!だから、なんか違うんですってば!」
冴島「話が通じたのはただの偶然ですよ。」
渡「偶然じゃないんですよ!曜日も時間も理解してるし・・・ちゃんと会話として成立してるんですよ?それに、江藤さんのところの他の動物達の声は全然きこえないのに、ユータの喋ってることだけハッキリわかるんです!」
冴島「記録では100の人語を操るインコがいたと言われています。少しくらい多く言葉が喋れるからと言って・・・」
ユータ「冴島のおっさん。俺も超能力あるのかも・・・」
冴島「は?」
ユータ「動物初の超能力者!って感じ?」
冴島「どんな力です?」
ユータ「んー。まぁ人間と会話する力?」
冴島「・・・普通ですねー。」
ユータ「けど、人間にはない超感覚で超能力の分析とかできるぜ?」
冴島「分析ですか?」
ユータ「そっ。冴島のおっさん。あんたの能力は、未来の事象を左右する力。ただし、世界に対する一定以上の影響力を持った事象には干渉できない。大樹兄さんの能力は、人間以外の生物との意思疏通。兄さんは多分気付いてないと思うけど、その気になれば魚や昆虫、もっと言えば植物なんかとも会話ができるはずだ。・・・百花の能力は絵の具現化。絵に描いたものを現実世界に出現させることができるけど、その時に命を吹き込むこともできる。ただし、絵の描かれた用紙自体が濡れたり破れたり、破損した場合は出現させたものは一瞬で消滅する。そこが弱点だな。・・・それから、吉岡光輔って人の能力はパイロキネシスか・・・実際会ったことないから断言はできないけど・・・」
冴島「ん?なんで吉岡くんのことまで知ってるの?」
ユータ「え?だってここに書いてあるじゃんか。」
渡「カルテ?ユータ、文字まで読めるの?」
ユータ「読めるよ。「吉岡光輔。能力の暴走により友人の一人に火傷を負わせてしまう。」」
冴島「・・・文字まで読めるんですか・・・」
ユータ「うん。」
冴島「・・・能力の分析も、非常に立派なものでした。私のよきライバルになるでしょう。」
渡「ライバルって・・・っていうか先生!今完全にユータと会話成立してたじゃないですか!?」
冴島「そういえばそうですね・・・成立しすぎて気づきませんでした。」
渡「先生ー、しっかりしてくださいよ。」
冴島「たしかに、ここまで完璧に人間と言葉を交わせる動物は常識を越えてるかもしれないね・・・」
渡「ほら、意味もなく言葉発してる感じじゃないでしょ?能力の分析から、文字の読み取りまでなんでもできますよ??」
ユータ「やっぱ俺も超能力あるんじゃ?」
冴島「・・・鳥類と霊長類では脳のつくりが違いますから・・・超能力と言うか・・・ユータくんのそれは・・・ただの突然変異かもしれませんね・・・」
ユータ「んだとー?超能力だよ!超能力ー!」
渡「まぁまぁ、落ち着いて。」
冴島「やれやれ・・・」
吉岡「(ノック)」
冴島「あ。どーぞ。」
吉岡「こんにちは。」
渡「あら、吉岡くん!久しぶり!」
冴島「久しぶり。」
吉岡「お久しぶりです。」
渡「?なーんか、元気そうだね?」
吉岡「そうですか?」
渡「なんか前よりいきいきしてる。」
吉岡「今まで、我慢して言えなかったこといっぱい言えるようになって、すごい晴れ晴れした気分なんですよね。」
冴島「我慢強さを失ったけど、それが功を奏した感じかな?」
吉岡「まぁ、そんな感じです。」
冴島「そういえば、お友達と仲直りはできたかな?」
吉岡「・・・いえ・・・なんか避けられてて・・・けど、毎日メールで謝ってます。」
渡「メールねぇ・・・」
ユータ「文章だけじゃ伝わらないこともあるんだぞ?」
吉岡「は?」
ユータ「やっぱ、謝るときは直接言葉で伝えなきゃ。」
吉岡「あの・・・先生・・・この鳥・・・」
冴島「あぁこの子、渡くんちのユータくん。」
ユータ「よろしく。」
吉岡「・・・インコって・・・会話できるんですっけ?」
冴島「多少言葉を理解できる特殊な個体もいると聞きますが・・・ユータくんの場合は完璧にこちらの言葉を理解しているようです・・・」
ユータ「そゆこと。俺の超能力だよ。」
吉岡「・・・鳥にも・・・超能力が?」
冴島「・・・私の研究に鳥類は含まれていませんからね・・・謎です・・・」
吉岡「・・・」
ユータ「なんだよ?」
吉岡「・・・こんにちは。」
ユータ「こんにちは」
吉岡「今何時?」
ユータ「今?9時34分。ってかおっちゃんの机に時計置いてあんだから自分で見ろよな・・・」
吉岡「いや、試しに聞いてみただけ。」
ユータ「おいおい。・・んで、能力コントロール出来るようになったか?」
吉岡「え?」
ユータ「だからー、怒りが能力を誘発しちゃうんだろ?コントロール出来るようになったか?」
吉岡「・・・なんでそんなことまで知ってるの?・・・先生、教えました?」
冴島「いいえ。」
渡「ごめんなさい。さっき、ユータが自分でカルテ見たの・・・」
吉岡「カルテって・・・まさか、文字まで読めるんですか?」
ユータ「読めるけど?」
吉岡「すご・・・先生。ペンと紙借りてもいいですか?」
冴島「どうぞ。」
渡「なにするの?」
吉岡「・・・・・・これ読める?」
ユータ「・・・マグロ?」
吉岡「・・・んじゃ・・・これは?」
ユータ「クラゲじゃないっけ?」
吉岡「うそ・・・じゃ、これ。」
ユータ「イルカだろ?」
吉岡「!!・・・んじゃ最後。」
ユータ「バラでしょ?ってか、お前も薔薇なんて漢字よく書けるな・・・」
吉岡「すご過ぎる・・・」
冴島「という感じで・・・ユータくん。ここの医師はあくまでも私ですから。そのことはお忘れなく。」
ユータ「はいはい。」
吉岡「いやー。こんなインコがいるなんて、ビックリですね・・・」
冴島「私も目が点です・・・で、最近は何か変わったことは?」
吉岡「特には。あれ以来怒りで何かを燃やしてしまうこともありません。・・・最近、自分の意思でコントロール出来るように俺なりに練習してみてるんですけど・・・」
冴島「そう・・・どんな練習ですか?」
吉岡「これです。」
渡「?ロウソク?」
吉岡「はい。・・・集中して・・・」
渡「あ!火がついた!」
吉岡「毎日夜寝る前に練習してるんです。」
冴島「・・・大分、操れるようになったみたいですね。・・・ただ、自分の力に溺れないように気を付けてください。」
吉岡「え?」
ユータ「お前の炎。マッチとかライターとかのそれとは、ちょっと違うなー。」
冴島「ん?」
ユータ「心に密接にリンクした力は、異質な性質を持ってる。」
吉岡「?どんな性質?」
ユータ「炎に心が宿るんだよ。」
冴島「ほぉ。・・・興味深い。心が宿るとはどういう意味です?」
ユータ「簡単に言うと、「火傷させたくない相手には熱さを与えない」って感じ?」
吉岡「じゃぁ、例えば花壇を燃やしたとして、花は燃やさずに雑草だけ焼き払ったり出来るわけ?」
ユータ「そういうこと。んま、それにはもっと正確なコントロールが必要だろうけどね。」
冴島「面白い。そんな特性も持っているとは。実験してみましょうか?」
吉岡「え?」
冴島「・・・吉岡くん。この皿一面に炎を張れますか?」
吉岡「はい。・・・灯れ。」
冴島「うん。結構です。・・・では、ここに3色の色紙があります。・・・ちょっと小さく折りますね。・・・これを、同じ皿に入れます。・・・赤い色紙だけ燃やしてみましょう。」
吉岡「・・・出来るかな・・・」
冴島「失敗しても構いません。」
吉岡「・・・一応やってみます・・・灯れ・・・」
冴島「・・・おや・・・全部燃えちゃいましたね・・・」
吉岡「はぁ・・・やっぱり無理ですよ。」
ユータ「あんたの力の源は「怒り」とか「憎しみ」の負の力だ。「赤色が憎い」って言い聞かせながらやってみろ。」
冴島「・・・だそうです。・・・もう一度やってみましょうか。」
吉岡「・・・はい・・・赤が憎い・・・ね・・・」
冴島「はい。用意できましたよ。」
吉岡「・・・灯れ・・・」
渡「!全部炎に包まれてるのに・・・赤だけ燃え方が違う・・・」
冴島「炎を消してみてください。」
吉岡「はい。」
冴島「・・・他の2色にくらべて、赤の色紙だけ・・・焦げ付き方が激しい・・・完璧にはまだ無理なようですが、少なくともユータくんが言ったように炎に心を宿すことは少なからず可能なようですね・・・」
吉岡「今度は、これ練習してみます。」
冴島「そうですね。・・・ただし・・・くれぐれも、能力に溺れないように。」
吉岡「はい。・・・あの、全然関係ない話してもいいですか?」
冴島「?なんですか?」」
吉岡「・・・俺、大学で演劇部やってるんですけど・・・」
渡「へー。かっこいい。」
吉岡「そんなことないです。・・・んで、部員で・・・ってか俺の幼馴染みなんですけど・・・そいつが部費盗んだって・・・疑われてて・・・けど、そんなことするようなやつじゃないんです。・・・俺・・・一瞬全員燃やしてやろうかと思っちゃったんですよね・・・」
冴島「・・・そうですか・・・けど君は力を使わなかった・・・」
吉岡「はい・・・けど他に俺ができること思い付かなくて・・・」
冴島「・・・その友達を・・・信じてあげることです。」
吉岡「信じる・・・ですか?」
冴島「誰がどう思っていようと関係ない。理解していて欲しい人に理解していてもらえれば、それが一番の幸せです。」
吉岡「理解していて欲しい人ね・・・」
冴島「信じていると・・・一言伝えてあげてください。・・・と・・・私にはそれくらいのことしか言えませんが・・・」
吉岡「ありがとうございました。・・・俺、そいつのこと信じてますから。・・・言ってみますね。」
冴島「根本的な解決にはならないかもしれませんがね・・・」
吉岡「一緒に・・・がんばってみます。」
冴島「えぇ。応援しています。」
吉岡「んじゃ、俺そろそろ・・・」
渡「例のお茶、また持って帰ります?」
吉岡「あ。いただきます。」
渡「はい。じゃぁこれ。どうぞ。」
吉岡「すいません。ありがとうございます。」
冴島「じゃ、また時間のあるときに来てください。」
吉岡「はい。失礼しました。」
渡「さよならー。」
冴島「ふー。ユータくんの分析には敵いませんね。これではどちらが専門家かわからない。」
ユータ「俺に出来るのは能力の分析だけだ。それ以外はおっちゃんにまかせるよ。」
冴島「そうですか?これからも是非手伝ってもらいたいもんですね。」
渡「ちょっと先生・・・」
ユータ「あぁ。気が向いたらまた来る。んじゃ祥子、俺先家に帰ってるわ。」
渡「え?ちょっとユータ?!・・・行っちゃった・・・あの、先生・・・ごめんなさい。」
冴島「なにがです?」
渡「ユータ・・・先生がするべき診断を勝手にやって・・・」
冴島「いえいえ。能力の隠れた特性を見抜くとは、私にはできない。動物が持つ、超感覚のなせるわざなのか・・・それとも、それ自体がユータくんの能力なのか・・・」
渡「え?」
冴島「どちらにせよ、ユータくんにはこれからも協力をお願いしたい。」
渡「・・・はぁ・・・」
冴島「それよりも・・・少し県警の方で不安な動きが見られます・・・恐れていたことが・・・起きてしまうかもしれませんね・・・」
渡「恐れていたこと?」
<県警>
郷田「神宮寺!お前本気か?」
神宮寺「えぇ。なにか問題でも?」
郷田「待て。」
神宮寺「ちょっと!資料を返して!」
郷田「・・・超能力者を無差別に逮捕するつもりか・・・」
神宮寺「危険な怪物達を、これ以上野放しにしておくわけにはいかないでしょ?」
郷田「あのなぁ・・・そもそも超能力者なんてこの世にいるわけないだろ?」
神宮寺「私知ってるんですよ?・・・郷田さんが、超能力者による捜査不可能な事件の容疑者を双葉会総合病院の医師に回してること。・・・少なくともあなたと、その医師・・・二人を取り調べれば超能力の存在の有無は明らかになる。しかも、その医師のカルテを洗えば超能力者の個人情報もすべて手に入る。・・・それに・・・私自身・・・超能力者を知ってるし・・・」
郷田「あ?」
神宮寺「いえ。では、対策本部設立の提案書出してくるので私はこれで・・・」
郷田「んなの、上が認めるわけないだろ?」
神宮寺「・・・認めさせて見せるわよ・・・あの犯人さえ捕まえられれば・・・」
郷田「例の冷凍殺人か?」
神宮寺「犯人は、この手であげて見せる。」