第4話~WaLtz~
渡「お散歩お散歩楽しいなー。」
百花「楽しいなー。」
渡「太陽が気持ちいいねー、百花?」
百花「うん!」
渡「公園到着ー!さっ、何して遊ぼっか?」
百花「砂遊びー!」
渡「よし!じゃぁ砂でお城作るか?」
百花「作ろ作ろー!」
渡・百花「お城、お城。」
百花「ねぇ、お姉ちゃん・・・あのお兄さん変だよー?」
渡「え?」
江藤「そっかー。うん。お前意地悪だなー。いい加減仲直りしろよな?」
百花「誰もいないのにお話ししてる。」
渡「・・・百花。いい子でお城作っててくれる?」
百花「はーい!」
渡「・・・こんにちは。」
江藤「!!あ!こんにちは。」
渡「先週もいらっしゃってましたよね?」
江藤「・・・はい。」
渡「・・・あ、私、渡祥子って言います。砂場で遊んでるのは百花。あの・・・」
江藤「僕は江藤大樹です。・・・」
渡「餌やりですか?」
江藤「ここハトがいつも集まるんで。」
渡「江藤さんが餌やるから集まるんですよ。」
江藤「すいません。」
渡「あ、いや、その決して悪い意味じゃなくて・・・江藤さんがいるからハトも集まるって言うか・・・そのハトの方が江藤さんを慕ってると言うか・・・」
江藤「ありがとうございます。」
渡「鳥、お好きなんですか?」
江藤「動物全般大好きですね。」
渡「へー。ペットは?」
江藤「1羽と4匹・・・」
渡「わー。4匹ってワンちゃんですか?」
江藤「はい。」
渡「ほんとに好きなんですね?」
江藤「保健所とか行くと、ワンちゃん達が必死にうったえてくるんですよね。」
渡「その感じなんかわかるかも。助けてーって言ってるように見えてくるんですよね。」
江藤「見えると言うか・・・聞こえると言うか・・・」
渡「もしかして、動物の声が聞けたりして?」
江藤「あの、そんなまさか!・・・そんなわけないじゃないですか。」
渡「・・・ハトに話しかけてましたよね?」
江藤「え?いや、違いますよ。独り言と言うか・・・愚痴をこぼしてたと言うか・・・」
渡「愚痴かー。私も愚痴だらけですよ。」
江藤「あの、餌やります?」
渡「いいんですか?」
江藤「どうぞ。パンのみみ大量にあるんでいくらでもどうぞ。」
渡「やったー。」
江藤「!・・・」
渡「え?・・・うわっ!ビックリした!!江藤さん肩になんかでっかい鳥とまってますよ?」
江藤「鷲ですよ。ペットのジークです。すいません、驚かせちゃって。」
渡「いえ・・・ペットの1羽って・・・このデッカイ鷲のこと!?」
江藤「はい。・・・ジーク?なんかあった?・・・え!?わかった。急ごう。すいませんけど、僕これで失礼します。」
渡「?どうかしたんですか?」
江藤「道で、ネコちゃんが小学生達にいじめられてるみたいで、急いで助けないと!」
渡「いじめられてるって・そんな情報どこから?・・・」
江藤「ジークです。」
渡「え?・・・鷲が?・・・」
江藤「失礼します!みんな!行くよ!」
渡「!?!?えー??・・・なに?・・・ハトみんな江藤さんに着いていっちゃった・・・」
百花「お姉ちゃん!はやくお城作ろーよー!」
渡「はいはい!ごめんごめん!・・・」
<次の日>
渡「ってなことが昨日ありまして・・・」
冴島「へー。その人が何かの能力者なんじゃないか、と?」
渡「まぁ、ただの勘ですけどね?」
冴島「ただ動物と仲がいいだけじゃないですか?」
渡「けど、ネコがいじめられてるって、鷲が言ってるって言ってハト全部連れて走っていったんですよ?」
冴島「確かに不思議だけどねー・・・ハトが飛んでいったのは、その人が突然走り出したことに驚いて一斉に飛び出したって可能性もあるしね・・・」
渡「けど、ハトが一羽残らず全羽が江藤さんの後ろ着いていったんですってば!」
冴島「んー・・・あっ!」
渡「なんですか?!」
冴島「お昼の時間だ!」
渡「大袈裟な・・・」
冴島「今日は一緒に外に食べに行こうか?」
渡「いいですよ。私カップ麺持ってきましたし。」
冴島「毎日カップ麺ばっかりじゃ体に毒だよ?ほらほら、出掛けましょ出掛けましょ。」
渡「わかりましたからー。」
冴島「んじゃ、天ぷら定食2つお願いします。」
渡「・・・もちろん先生のおごりですよね?」
冴島「まさか。」
渡「えー?誘っといて目下に払わせるんですか?」
冴島「いや、むしろ私もおごってもらおうと思ってたのに・・・」
渡「冗談よしてください。」
冴島「あ・・・財布忘れた・・・」
渡「はー?ちょっといい加減にしてくださいよ!」
冴島「いいじゃないいいじゃない。帰ったらちゃんと払うから、立て替えといて。」
渡「んじゃ、ここにサインを。」
冴島「ん?」
渡「なんだかんだ言って、結局払ってもらえなかったら困るんで。」
冴島「そんなー。ちゃんと払うってば。信用無いなー。」
渡「用心するにこしたことはないですから。」
冴島「はぁ・・・はいはい。わかりましたよー。・・・・・・はい。これでいいでしょ?」
渡「サイン・・・しっかりいただきましたよ?」
江藤「こんにちは。」
渡「?あ!江藤さん!?」
江藤「どうも。・・・その格好・・・看護師さんでらっしゃったんですか?」
渡「あ。はい。・・・あ!先生こちら、例の江藤大樹さんです。」
江藤「例のってなんのことです?」
渡「いえいえ、こっちの話です。・・・んで、こちら私の勤務する診察室の冴島孝徳先生です。」
江藤「はじめまして。」
冴島「はじめまして。」
渡「あの、江藤さんおうちこの辺なんですか?」
江藤「いえ、僕この近くでペットショップやってて」
冴島「ふーん・・・動物と毎日身近に接する青年か・・・」
渡「ペットショップ?へー。そうなんだ。」
江藤「よかったら今度いらしてください。」
渡「行きます行きます!」
冴島「あの、これから伺ってもいいですか?」
渡「は?」
江藤「え?・・・いいですけど・・・お仕事大丈夫ですか?・・・」
冴島「はい。」
<ペットショップ「WaLtz」>
渡「先生・・・いいんですか?休憩時間終わっちゃいますよ?」
冴島「いいのいいの。どうせ仕事無いし。・・・能力者かどうか、色々観察しなくちゃね・・・」
江藤「ここです。どうぞ。」
渡「へー・・・お店の名前ワルツって言うんですね。」
江藤「はい。」
渡「音楽お好きなんですか?」
江藤「まぁ、それもあるんですけど・・・昔の僕の相棒の名前で。」
渡「相棒?」
江藤「えぇ。・・・ジーク!!」
冴島「うぉ!!ビックリした!!」
江藤「すいません。・・・この子のお父さんの名前が・・・ワルツって言うんです。」
渡「ジークのお父さんが・・・で、そのワルツ君は?」
江藤「・・・亡くなりました。半年前に。」
渡「あ・・・ごめんなさい・・・」
江藤「・・・ワルツとも・・・話したかったな・・・」
冴島「その分、ジークと一杯喋ればいいじゃないですか。」
江藤「えぇ。・・・え?いや、喋ると言うか・・・コミュニケーションというか・・・別に動物に一方的に話すとかそういうわけではなくですね?」
冴島「ホントに喋れるんですよね?」
江藤「え?」
冴島「私、超能力の研究家でもありまして・・・わかるんですよ・・・超能力者が目の前にいればすぐにわかる・・・」
江藤「・・・へぇ・・・超能力の研究ですか・・・」
冴島「私は、どんな話でもバカにしたり笑ったりはしません。」
渡「先生?」
江藤「・・・あの・・・超能力かどうかはわかりませんけど・・・その・・・動物の喋ってることがわかるんです・・・」
渡「!・・・やっぱり。」
冴島「・・・詳しく聞かせていただけますか?」
江藤「・・・その前に・・・ひとつきいてもいいですか?」
冴島「どうぞ?」
江藤「僕みたいな・・・変な力を持った人って・・・他にもいるんですか?」
冴島「えぇ。いますよ。たくさん。私はたくさんの超能力者と会ってきました。ですから、「自分は変だ、変わってる」・・・そう思って自分の力を隠そうとする気持ちはよくわかります。」
江藤「・・・なんか・・・なんでもお見通しですね・・・初めはビックリしたんですよ・・・いつも通りお店のペットのお手入れしてたら・・・店のいたるところから声が聞こえて・・・むしろ怖かったと言うか・・・」
冴島「最初はそうでしょうね。」
江藤「でも、動物と話せるって楽しいなって今は思います・・・それに、ちゃんとうちの子達の望んだ主を選んであげられる。」
冴島「どういう意味ですか?」
江藤「動物って、僕たちよりも何倍も勘が鋭くて・・・その上すっごい敏感に物事を感じとるんです。初めてきたお客様でも、この人はいい飼い主になるとか、この人に飼われたら毎日つまらなそうとか・・・そう言うの一瞬で感じとるんですよ・・・それこそ、飼われたら暴力ふるわれるとか言うのもわかるみたいで・・・そう言うお客様には理由をつけて、うちの子は渡さないようにしてます。」
冴島「そうですか。・・・ワルツ君とも喋りたかったって言うのは・・・どういう意味ですか?」
江藤「半年前ワルツが死んでから・・・毎日泣いてたんですよ僕・・・情けない話ですけど・・・」
渡「そんなことありません。ペットって・・・家族同然ですもん!・・・亡くなったら悲しんで当然です。」
江藤「ありがとうございます。・・・毎日毎日泣きながらお店出てて・・・ジークも毎日私の傍らでずっと寄り添っててくれました。・・・そしたら、ある日いきなり・・・いつものように私の傍らで寄り添ってくれてたジークに怒られたんです・・・「毎日泣いてばっかりじゃお客さんに失礼だ。父さんもそんなんじゃ安心できないだろ」って・・・驚きました。怒られたことより何よりジークが喋りだしたことに驚いた・・・今考えてみると、いつも寄り添ってくれてたけど・・・毎日僕を叱りつけてくれてたんだなって思います・・・お店の動物もみんな僕を励ましてくれて・・・だから、うちの子達には感謝してるし、みんなに、幸せになれる主を見つけてあげたい・・・」
冴島「そうですか・・・話してくださってありがとうございます。」
江藤「・・・このこと・・・初めて人に話しました・・・」
冴島「私は、笑わないし変だとも思いません。」
渡「あの、私もです!江藤さんの力、最高にかっこいいです!」
江藤「あ・・・ありがとうございます。・・・昨日公園で会ったとき・・・「ハトと喋ってた」って言ったじゃないですか?」
渡「あ・・・はい。」
江藤「あの時、絶対変な人に思われてるだろうなって・・・ちょっと恥ずかしかったんですけど・・・」
渡「いえ、そんなこと思ってないですよ。」
江藤「・・・そうですか。よかった。」
冴島「これ、名刺です。・・・能力について、悩みができてもなかなかそれを相談できる相手には出会えない・・・なにか相談したいことやききたいことがあれば私のところに来てください。」
江藤「ありがとうございます。」
冴島「いつでも、お待ちしてます。」
江藤「けど・・・こんな変な話でも、信じてもらえて・・・話せただけでも今までのモヤモヤが一気にとれた気がします。」
冴島「信じますよ。超能力の研究家である前に、私自身一能力者の身ですからね。」
江藤「え!?じゃぁあなたも能力が?!」
冴島「えぇ。」
江藤「どんな力なんですか?」
冴島「それは・・・渡くんにでもきいてください。」
渡「え?・・・」
冴島「さてと、そろそろ病院に戻らねば。・・・江藤さん。是非ともこの子達に・・・素敵な主を探してあげてくださいね。」
江藤「はい!もちろんです!」
冴島「では・・・失礼します。」
江藤「あ・・・渡さん!待ってください。」
渡「はい?」
江藤「この子が・・・あなたを主にしたいと・・・」
渡「私?」
江藤「はい。・・・いいんだよね?・・・うん。・・・百花ちゃんとも遊んでみたいって言ってます。」
渡「え?」
江藤「あ・・・いや、・・・その・・・百花ちゃんと渡さんの話・・・今朝みんなにしたもので・・・」
冴島「・・・そういうことねー・・・」
渡「私達の話ですか?・・・」
江藤「あ、いや・・・ただ、昨日あった出来事を話しただけというか・・・なんというか・・・その・・・この子の主になっていただけませんか?!」
渡「・・・この子がそう言ってるなら。引き受けます!・・・百花も喜ぶと思うし・・・インコですよね?この子・・・」
江藤「はい。」
渡「名前は?」
江藤「ユータです。」
渡「ユータね・・・男の子か。」
江藤「はい。ジークの親友です。」
渡「そうなんだ・・・じゃぁたまにこの子連れてジークに会いに来なきゃですね?」
江藤「あ・・・はい!ジークも喜びます。・・・ね?・・・わかったわかった。・・・「絶対来いよー」って言ってます。それと「親友をよろしく」と。」
渡「はーい。ジーク?ちゃんとユータと遊びに来るからね。」
江藤「「頼んだぞ」って言ってます。」
渡「了解!」
江藤「じゃぁ、よろしくお願いします。」
渡「はい。そろそろ行きますね。ジーク、ばいばい。また来るからねー。」
冴島「お邪魔しました。」
江藤「いえ。こちらこそ色々ありがとうございました。」
渡「失礼します。」
渡「・・・江藤さんの能力の代償は・・・ワルツくんですかね・・・」
冴島「・・・そう言うことになりますね・・・家族同然の存在をなくして・・・あの能力を手に入れた・・・代償はやはり大きいですね・・・」
渡「ワルツくんとも・・・いっぱい喋ってもらいたかったな・・・」
冴島「・・・そうですね・・・」
渡「・・・いやー、それにしてもビックリしました。先生、能力者を探知する力まであったんですね?」
冴島「なんのことですか?」
渡「なんのって・・・「超能力者が目の前にいればすぐにわかる」っておっしゃってたじゃないですか?」
冴島「あぁ。あれは、ただの嘘です。」
渡「は?」
冴島「かまをかけただけですよ。・・・あぁ言って、もしも本当に能力者なら、専門家と聞いて、素直に私に打ち明けてなにか相談をしてくるかも知れない・・・けど、もしも能力者じゃなかったとしても「冗談ですよ」で終わらせれば済む話ですから。」
渡「うわー。嫌なやり口しますね・・・」
冴島「ところで渡くん。あの江藤って青年が好きなんですねー?」
渡「は!?なに言ってんですか?!いきなり!私は、別になんとも!」
冴島「何をそんなに動揺してるんですか?・・・かまをかけただけですよ。」
渡「は!?・・・いい加減にしてください!!!先生!!!!」
ユータ「ふぁあ。眠たい・・・」
渡「ん?・・・ユータ・・・なんか喋った?」
冴島「ほらほら、私より遅く病院にゴールしたらお昼御飯のお金払いませんよー?」
渡「はー???そんなことしたら契約不履行で訴えてやる!!!・・・って、先生!本気で走らないでくださいよ!」