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タイム・トラベル

作者: セルロイド

 こんにちは。河野です。今日は折り入って伝えたいことがありましたので、この手紙を書きました。告白の手紙と勘違いさせてしまったらごめんなさい。

 まずは自己紹介から。俺は河野こうの卓也たくや。二年一組の男子中学生です。まあ、昨年も同じクラスだったし、ずっと顔を合わせていたと思いますから、俺についてはよくご存知でしょう。


 最近の河野くん、何か雰囲気が変わったと思わないですか? シブみが増したというか。隠しきれないダンディズムが漂いだしたというか。

 そうなのです。実は俺、未来の世界からやってきたんです。中学二年生の姿をしているけれど、俺、本当は今年で25歳になる大人なんです。人生二周目ってやつですね。羨ましいでしょう。分からなければ某コナンくんみたいなもんだと思ってください。それかドラえもん。


 さて。ここからが本題です。実を言うと、この話、あなたに直接伝えてしまって良いものか、今の今までずっと悩んでいました。けれど、何もせずにあなたが同じ結末を辿るのを黙って見ているより、この手紙を書いて、少しでも未来を変えたほうがずっと良いだろうと思いまして、筆を取りました。


 単刀直入に言います。あなたは今年の秋に自殺します。校舎の屋上から身を投げ、頭を打って死んでしまいます。理由は俺には分かりません。部活中、突然家に帰されて、翌日登校してみたら、あなたは死んでいました。

 俺はこの結末を変えたい。もし、死ぬ以外にどうしようもなくなってしまったら、俺や周りの人たちを頼ってほしい。

 あなたは死んだらそれで終わりだろうけれど、残された人たちはたまらなく辛いんです。俺を見てごらんなさい。10年経ってもまだ傷が癒えない。死ぬときはせめて理由を伝えてから死んでください。そうすれば少しは胸のつかえが取れます。


 来月にもう一度手紙を書きます。では、お元気で。




ps 未来からの手紙って普通に考えてホラーだよね。怖がらせたらごめん。


ps テレビでUFO特集やってる! すげえ!



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



――なにこれ? ドッキリ?


 私、こと高崎たかさき沙奈さなは下駄箱に入っていた薄水色の手紙をぺろりと裏返した。

 子どもらしくない丁寧な文字に、丁寧な言葉遣い。なのに、書いてあることはめちゃくちゃ。

 自分のこと、未来人とか言っちゃってるし。私のことを心配してくれているみたいだけれど。頭を打ったのは君のほうなんじゃないでしょうかね。

 手紙を開けたのが下校後で良かった。こんなの誰かに見られたら、それこそ自殺したくなるような目にあっていたに違いない。


 確か、河野くんはテニス部だったはず。私と接点なんてあったっけ。……というか、「あったっけ」って考えている時点で、接点なんてないよなぁ。

 キモい、というより、グロテスク。得体が知れなさすぎてこわい。まじで捨てられないくらいこわい。捨てたら呪われそう。いや。そう、じゃない。絶対に呪われる。

 あーあ。新学期早々、変なのに目をつけられちゃったなー。


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