救助要請
その後、しばしの重い沈黙があったが、その沈黙を再び破ったのは、火菜くんではなく霊子くんだった。
「…そ、そそっ…そういえば情!「水樹の仲間たちに会った時にみんなにお願いしたいことがある」とか言っていなかったっけか?」
そ、それ、君が言い出すのか…。
まあいいや。ちょうど機会を作ってくれたわけだし、遠慮なく利用してやらなくてはいけないなっ!
でもこれを行ってしまった後、しばしの間、僕が僕ではなくなってしまう。
そうなってしまうのが、僕は怖い。怖くて怖くて、怯えてしまっている。
どうしよう。手足の震えがさっきから止まらない。
しかし、僕はこの時のために生きてきた。
だから僕は、今すぐにでもこの使命を果たすため、ある言葉を言い、ある契約をしなければいけない。
怖い、怖い。怖くて、たまらない。
もし本当のことがバレてしまったら、絶対に嫌われてしまう。軽蔑されてしまう。
でも、言わなければならない。
勇気を出せっ!僕っ!
いざっ。
「あ、あのっ、僕っ、みなさんにお願いがありますのだっ」
どうしよう。さっきより動機が激しくなっている。
どうしよう。さっきより心拍数が上がっている。
…そっか。僕は今、緊張しているんだ。
これが、「緊張」という感情なんだ。
…って、「そっか。」じゃないっ。
そんなことを言っている場合じゃないんだっ。
落ち着けっ。ひとまず落ち着けっ。とりあえず落ち着けっ。
落ち着いて、落ち着いて続きを話せっ。
「ぼっ、僕の友達と僕を、助けてくださいませんか?なのだっ!」
言った!僕は言ってやった!
でもこれが、僕と僕以外の人にとっての恐怖の始まりだ。
戦場に例えるなら、さっきの僕の言葉は開戦のラッパだ。
みんなの方をチラリと見てみると、戸惑ったような顔をしていた。
そんな中、花乃くんが口を開いた。
「あの…すまんが、何をどう助ければ良いかを教えてはくれぬか?」
ご、ごめんなさい。
「お、お願いだからっ…何も聞かずに、助けてくれるかを答えてほしいですのだっ。お願いしますのだっ」
最初はみんな不思議そうな顔をして見つめ合っていたが、少しすると、「困っているなら助けてあげなきゃだよねっ!」とでも思ったからか、みんなで目配せして同じ気持ちか確認し、最後に花乃くんが口を開いた。
「…分かった。助ける」
そう言ってくれたことの嬉しさに、ついつい顔がほころんでしまう。
「…ありがとう、ございます…なのだっ」
あまりの嬉しさに涙までもが出てきてしまいそうになるが、それはなんとか直前で止めることができた。
僕は、今から少しの間、僕ではなくなってしまう。
僕はそのまま、強制的に目を閉じさせられてしまった。




