第一章 再会 弐話 告白
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「すまない、胸を借りってしまって」
俺はしばらく泣き続けた。ファルは何も言わずにずっと抱きしめてくれた。まるで、姉のように。
「いいですよ、泣いているフウリ様は可愛かったですし」
「なっ!?」
俺は恥ずかしさの余り俯いてしまった。ファルめ、見ない間に小悪魔になったな.....。
「お兄ちゃん可愛いぃ~~♡」
「やめろ! 頬をすりすりするな!」
ミナは俺の頬に自らの頬を擦り付けていた。
「でも、みんな....俺を助けてくれてありがとな」
「当たり前です」
「当然ですわ!」
「うん!!」
「..........必然」
俺は自然と顔が綻んでいた。
「で、お兄ちゃんはこれからどうするの?」
「あぁー、そうだな....誰かのお世話になるしかないかな」
「じゃあ、抱きしめ合った私ですね」
「は!? なんでそうなるのですか!?」
「ははははははは!」
俺は笑ってしまった。今までに出したことのない大きな声で。
「何がおかしいのですか? 気持ち悪いですわよ?」
相変わらず毒舌のローラであった。だが、俺は安心した。みんな容姿は変わっていたが、芯は変わっていなかった。俺は思った、
守れてよかった.....と
◇◇◇
「久しぶりに来たな」
「5年ぶりですか?」
「あぁ、それくらいだな」
現在俺は王都に来ていた。カノンの魔法により3日掛かる距離が10歩で来れてしまった。魔法というものは恐ろしいものだと実感した瞬間であった。
それしても、王都の雰囲気が以前に比べ格段に賑やかになっていた。数年前は種族間で争いが酷く、少し雰囲気が悪かったが、今は条約がどうとかで種族間の争いが禁止され、王都でも多くの種族が存在していた。
「まず、この体を洗わなきゃな」
俺の体は酷く汚れ、通行人からの眼差しがひどく突き刺さっていた。それはそうだ、俺はろくに風呂も入らせてもらえず、それなのに糞尿の処理や探鉱に行かされていたのだ。自分では気づかないと思うが、周りから見ればおそらく酷い悪臭が漂っているはずだ。
「そうだな、少し匂うかも」
「それを早く言ってくれ!!」
「ここは私の領土でございます」
そうなのか、ここはファルの領土なのか。じゃあ、遠慮なく風呂を借りよう.........って、ん? 私の領土? 私の.....私の
「ファル、ここはファルの領土なの?」
「はい、私の領土でございます」
「ソウナンデスカ」
「ダメですわ、完全におかしくなっているわ」
「気をつけなよファル!」
「フウリ様すいません、はぁ、どうしましょう.....このまま私を御嫌いになられでもしたら.....」
「とりあえず、ファルの屋敷の風呂に行こう! カノンよろしくねん♪」
「.........任された」
どや顔のカノンは魔法を詠唱した。
【転移】
詠唱とともに大きな円形の空間が出てきた。カノンたちはその円形の中に入っていった。
◇◇◇
「は! ここは!? ってなぜ、俺は風呂に?」
俺は意識を失っていたのか、それとも記憶がないのか分からないが、なぜ急に風呂に入っているか分からなかった。
「私が運びました」
俺は聞いてはいけない声がした。それも俺の後ろから。それと同時に俺の背中には豊富なメロンが当てられている感覚がした。
「ふ、ふぁるなのか?」
「はい♪」
「ななななななな、なんでいるのさ!」
俺はすぐに風呂から出て行こうとするが、それはあっけなく遮らてしまう。
「ダメです、お話があるので」
まるで獲物を捕らえた蛇の如く俺の体に自分の四肢を巻き付けていた。
これはダメだ.....俺の理性が飛んでしまう。
「じゃ、じゃあ、せめてこの態勢だけは.....」
「むっ、わかりました」
拗ねたファルが無性に一瞬ドキッとしてしまった。小悪魔ファルめ。
「では、お話があります」
「どうしたの?」
急に真剣な顔をし始めたので俺も真剣に受け答えた。
「わ、わわわ、私は.....私は!」
何かを言うために意を決しているファルに俺は何も言わずに聞いた。ファルは決意が固まったのか、俯いていたが、再び俺の方を見てきた。
「私はフウリ様が好きです! け、け、けけけっこんしてくだしゃい!」
「え」
このことが今後の俺の生活、また王都を揺るがす事態となることは、このときの俺はまだ知らない。
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