第一章 再会 壱話 涙
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俺はミナに渡されたポーションで足の傷はすぐに塞がった。痛みはまだ少し残ってはいるが、先よりは全然マシであった。
「ありがとう、ミナ」
俺はいつの間にかミナの頭を撫でていた。昔、よくミナには撫でていたため、その癖が抜けていなかったのだ。俺はすぐに手を引っ込めようとするが、既に俺の思考を先読んでいるのか、ミナは俺の腕を掴んでいた。
「み、みな? 離そうか」
「このままにして」
「で、でも.....」
「このまま!」
「はい」
ミナの圧力はもはや邪神であった。
ん? 邪神? 俺は一番忘れてはいけないことを忘れていた。
「邪神は?」
「あー、邪神だっけ? そんな感じのやつは倒したよ?」
「そうかそうか」
「弱い分際でよくもフウリ様の前に出ようとしたものだ」
「はー、なるほど」
「わたくしに1人でも余裕でしたのに.....そうすれば、フウリはわたくしに惚れて.....ふふふふ」
後半はよく聞こえなかったが、何か良からぬことを考えていることは理解できた。
いやいやいや、待て待て。今普通に会話を流していたが、今弱いとか言ったの? ねぇ、邪神相手に弱いとか言っちゃたの?
「..........驚いてる?」
「...................」
「おーーい、お兄ちゃん?」
「ダメですわね、完全に停止してますわ」
「しばらく待ちましょう」
俺はしばらく思考が停止していた。俺の脳みそでは理解に苦しむことばかり起こってしまっているからだ。
「なわけ、あるか!!!!」
「わぁあ! びっくりした、驚かせないでよお兄ちゃん」
「ご、ごめん.....って、なわけ、あるか!!!!」
「うるさいわね」
「しょうがないだろ? 邪神が弱いとか言うローラたちがおかしいんだから」
「おかしくないわ、本当のことを言ったのだもの」
本当のこと? おいおい、冗談も甚だしいわ!
「疑っているようね、いいわ証明してあげる」
すると、ローラは腰に指してあった剣を取り出し、横に一振りした。
「おいおいおい、嘘だろ.........」
ローラの一振りで俺が毎日通っていた探鉱が真っ二つになった。どういうことだ? こんな力、まるで神の領域ではないか!
「分かったでしょ? わたくしたちはあんな雑魚に負けるわけがないのですわ」
「あぁ、分かったよ。てか、もう訳が分からないわ.......」
「じゃあ、ほら」
「ん?」
ローラは俺に頭を差し出してきた。何がしたいんだ?
「わたくしにも撫でなさいよ」
「はぁ!? ローラに!?」
俺の昔のローラのイメージとかけ離れている。昔は、俺に甘えるミナとは正反対であり、いつもツンツンしていたのだ。だが、最後の別れだけは誰よりも泣いていたな。
「は、早くしなさいよ!」
「わ、わかったよ」
俺の右手はヒルのごとくピッタリ離れないミナがいるため、左手でローラの頭を撫でた。
「はぁ~、幸せ」
「え? 何て言ったの?」
「な、なんでもないわよ!」
そう言い、俺の手を叩き落した。まったく騒がしい奴だな。
「じゃあ、お兄ちゃん! 王都に行こ! そして、僕と一緒に暮らそう!!」
「何勝手なことを言っているのですか? フウリ様は私の国に来るのです」
「..........私と来ることは前世から決まってた」
「わ、わたくしは一緒に暮らしてやってもいいですわよ!」
何か話が飛躍しすぎている。俺も出来ることならこんな生活を脱したい。精神も体もそろそろ限界を迎えそうだった。このままこの村から逃げて、山奥で暮らすのもありだとは思う。しかし、俺にはスキルがない。これがどれだけひどいことかミナたちは分かっていない。
俺と居ては不幸になってしまう。だから——————————
そう、俺は言葉を紡ごうとした。しかし、その言葉はファルによって塞がれた。
「また、自分と居ては不幸になるとか言おうと思っているのですか?」
「.......................」
俺は何も言うことが出来なかった。
「ふざけないでください!!」
俺は驚いてしまった、他のみんなも同様であった。涙を流しながら怒鳴り上げるファルの姿に。
「私がどんな思いでこの5年間を過ごしてきたとお思いですか? フウリ様に会いたくて、会いたくて会いたくて会いたくて..........私はここまで強くなりました。自分と居るから不幸になる? じゃあ、私は何なんですか! フウリ様といなくて不幸になってしまった私は何なんですか!!」
俺は黙ってしまった。そんな率直な言葉を俺は人生で一度も聞いたことがなかった。
俺のこの5年間は壮絶であった。足の爪はもう生えてこなくなるくらいまで剥がれ、背中はムチでできた傷がもう消えなくなるくらいまで打ち込まれた。
でも、ふと思った。俺はなぜこんな苦痛を耐えれていたのだろうか?
そう、4人の笑顔だった。
俺が守った、4人の笑顔だった。
そんなことを思っていたら、俺は涙が堪えられなくなっていた。
「フウリ様」
そう言い、正面からファルが抱きしめてくれた。その抱擁は、まるで聖女のような暖かさを持っていた。
俺は泣き続けた。今まで溜まっていた分泣き続けた。
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