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吸血鬼とベテランと勇者ちゃん

吸血姫とベテランと勇者ちゃん






太陽がさんさんと照らす森の中、わたしは徹夜明けのゲーマーみたいな顔で屋敷に帰還した。


「昼間に作業するもんじゃないな・・・」余裕で死ねる


うつろな足取りで地下に降りて行ったわたしは、エントランスの足跡に気づくことはなかった。



暗闇に逃げ込んで精神を回復させたあと、わたしは何もやることがないことに気づいた。なら、錬金術をしよう。と、いきこんで釜のある部屋に移動した。


「さーて。何を作ろうか」

わたしは考える。そのままの勢いで水を注いだはいいが、肝心の作るものを考えていなかったのだ。こういう時ゲームなら、ミッションや依頼の品、爆弾などを作ればいいのだがそんなものはない。かと言って自分に必要なモノもそう思いつかない。

何かないかな?と収納魔法を漁っていると、


「そういえばあったね。」

お墓づくり前の狩猟品がまだそのまま残っていた。なら、作るものは決まったね。




包丁とまな板、のはずだったのが、何故か刃渡り長めのサバイバルナイフが出来上がっていた。いやまあ異世界ならただの包丁より役立つだろうけども・・・


「意外と使いやすいね。」こっちで正解だったかも。

そんなに料理は得意じゃない。というよりしていた記憶がないので得意なのかもよくわからない。何となくこんな感じなのでは

?というアバウトすぎる感覚でウサギや鳥をさばいていく。

随分と雑な下ごしらえを終えて、次に取り出したのはフライパン?スキレット?ただの鉄製のフライパンみたいなの。

調味料もその他の食材もないので、さばいたお肉だけ入れて火を・・


「いや、地下で火はダメじゃない?」


やってきたのは屋敷の一階。食堂の近く。やはりというか厨房があった。この世界、意外と発展してるのか、はたまたわたしみたいな異世界出身者が多いのか、やたら近代的で使いやすい厨房だった。

ただ、流石にガスやIHヒーターなどはなく、魔法陣の上に調理器具を置いて加熱する方式のようだ。

というわけで、食材(肉だけ)を焼いていくことにした。吸血鬼的には別に生でも行ける感じはしたが、どうせなら焼いたほうがおいしいはずだし。




失敗した。凄い焼け付いて、こげてしまった。


「そういえば、油とか塗るんだっけ・・?」

このタイプのには、やらなくちゃいけないことがあったはず。やらかした後に思い出したわたしは、焦げた何かを掃除しに裏の川へ向かうのだった。




「ねー リーダー」

ライフルを構えたまま、ウェンディが話しかけてくる。


「あれ、吸血鬼だよね?」

だろうな。胸も大きい、相当な魔力量だろうが・・・


「そこまで魔力ないのかな?」

いや、

「気配を消しているな。」

粗削りだが、育てれば優秀な魔術師になれるだろう。だが・・・


「どうする?撃つ?」

「やめておけ」

吸血鬼を討伐するには、軍隊クラスの戦力で削り、専用の魔法陣で消滅させるしかない。


「このチームで削れるとは思えない、偵察にとどめておこう。」

「りょうか・・い?」

「どうした?」

「いや、なんかアイツと目が合った。」

「気づかれたか?」

「と、思う・・よ?」

「・・・・・」

「・・・・・」


吸血鬼は基本、理性のない魔獣のようなもの、と言われる。見つかったらエサとして襲われるのが普通で、見つけ次第討伐隊が組まれるほどだ。

稀に理性を保ったままの個体が見つかるが、やはり食事の為に人を襲うので、やはり討伐、または捕獲されて見世物などにされる。

なので、見つかってしまった場合、スタングレネードや捕縛魔法で時間稼ぎをして逃げるのが基本だ。今回も吸血鬼と分かったあたりでその準備をしていたのだが。


「こっちチラッと見て、そのまま屋敷入っていったんだけど・・・?」

「・・・・・」

アイツは何だ?




裏の川でフライパンを洗って(というか削って)何とか綺麗にした後、屋敷に戻る途中。


「・・・・・」なんかいる


そっちをチラッと見れば、ライフルの銃口とそれを構える女の子と目が合う。あの時のプロチーム、そのライフル持ってた娘だ。

ふむ。

探してたのはやっぱり、わたしか。そして隠れながら銃構えてるということは討伐対象かな?

そのまま屋敷に入り、二階に上がる。そして、彼女たちの方に意識を向ける。


・・・・・

帰ったね。


さて、どうしようか。





「ふむ。吸血鬼か」

ギルド長が唸る。前よりしわが増えてる。


「討伐隊、編成します?」

「したいところなのだがな・・・」

リーダーとギルド長が唸っている。

無理もない。いま、この街は二つも面倒の種があるのだ。そこに吸血鬼が追加されるのだから、唸りたくもなる。

まあ、どちらにせよ、私はその時のために愛銃の整備をしようかな。



「取り敢えず、彼らが帰るまで偵察を頼めるか?」

「まあ、それが妥当でしょうね。」

うん。まあ、そうなるよねー。おとなしいなら下手に刺激しない方がいいよ。吸血鬼強いし、あまりやり合いたくはないしねー


「その話、私に任せてもらおうかな。」

うわでた。


「吸血鬼が出たらしいじゃないか。私の部隊が討伐してあげよう」

「い、いやしかし・・・」

「なんだ?私の部隊では実力不足かね?」

「い、いや、そういうわけでは・・・」

・・問題の種、其の一。王国の首都からお越しの王子様ー。色々面倒なうわさが多いお方だ。

護衛部隊を引き連れて、趣味だか追っかけだかをやりに来たらしい。さて、どうなるのかな?




街の入り口にたくさんの人だかり。王子様の護衛部隊と金と名声目当ての傭兵業の冒険者ががそこそこ。

吸血鬼狩りの出陣。ちょっとしたお祭り騒ぎでちょっと楽しいとは思う。

結局、あの後、王子様部隊と集まった傭兵業と案内役のリーダーで討伐隊を編成することになった。私たちは、お留守番。少し不服。分かるけどね。

ギルド長がすごい顔をしている。何か吹っ掛けられたのかな。後で胃薬になる薬草でも探しに行こう。




「すごいお祭り騒ぎですね。何かあったんですか?」

「えっ、あー、うん。ちょっと近くの森にね。」

「へー。強い魔獣さんとかですかね?」

「うん。そんなところ」

・・問題の種、其の二。勇者ちゃん。王国に異世界召喚された勇者だ。

本人はすごくいい子で物覚えも良いのだが・・・


「へー、強い魔獣ね。私たちも行ってみる?」

勇者ちゃんのチームメンバーで、剣士クラスの女の子。身分は王女様。


「私たちもランク上がったし行ってもいいかもしれないね。」

同じくメンバーの盗賊クラスの女の子。身分は公爵家のお嬢様。


「・・・・・」

私たちが留守番になった、もう一つの理由がこの子たちの護衛をやることになったからなのだが。

いや、これどうしようか。というか、絶対行かせられないんだけど、私の言うこと聞いてくれるのかな・・・


「ほーら、かりん。私達も魔獣討伐行かない?」

「え。やだ」


・・・・・


「それに、私たちはまだまだだよ?フォレストウルフの討伐だって苦戦したのに。」

「ぐふっ」

確かに、それに苦戦しなくなれば、初心者卒業って言われてるね。


「それに魔獣を見つける前に、見つかって襲われそうだし。」

「ううっ」

偵察職としては泣きたくなる気持ちは分かる。


「絶対行かない」

「むぐぅ」「・・・」


チームのことよく見てるね。これ私たちいる?


ん?なんか王子様の視線がこっちに?

そう言えば、勇者ちゃんにお熱らしいとかウワサ流れてたなぁ。あれホントなのか?


「あ。ウェンディさん。今日は大丈夫ですか?」

「うん。(君たちの護衛だから)大丈夫だよ。」

勇者かりんちゃん。一切気にしてないね。王子様の視線ガン無視じゃないか・・・。そんな顔で見られてもなー、私にはどうしようもないぞ王子様。


「やった。今日も冒険者の先生お願いできますか?」

「いいよー」

さて、今日は先生になりますか。





「あれ?いつもの森じゃないんですか?」

「あそこの近くに討伐隊がね?」

「なるほど。じゃあ逆ですね。危ないですし」

(あの王子様の近くにいたくないし)

(近くにいれば魔獣討伐に参加できるかなとか思ったのに)


「・・・ウェンディさん、一番離れたところ行きましょう。万が一にも会わないように」

「むぐぅ」

(ほんとよく見てるなぁ)

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