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浬たち、髪形で遊ぶ

 陽湖荘に到着して、最初に飛び込んできたのは。


 ポニテにした瑞稀だった。


 すごく、新鮮です。髪が長いから色々な髪形にできそうだけど、普段は三つ編みツインテールばかりだからな。文学少女っぽくて似合っていると思っていたけど、これはこれで「あり」だ。

 いや、所感を述べている場合じゃなくて、

「一体何をやっていたのですか」

 俺が呆れていると、瑞稀が涙目になって顔を合わせてきた。隣ではよーこさんが彼女をつぶさに観察しながら唸っている。


 訳が分からないでいると、美琴が腕を組んで解説してくれた。

「あんたが全然帰ってこないから、よーこさんが暇つぶしに『瑞稀に似合う髪形を考えよう』とか言い出したのよ。なんか、あんたに喜んでもらう髪形を研究したかったんだってさ。それで、色々いじくられて今に至るというわけ」

「俺が好きな髪形か。三つ編みじゃなくて普通のツインテールとか」

 花園華もそんな髪形にしているし。

「素直に答えなくていいわよ」

「そうですよ。私はリカちゃん人形じゃありません」

 瑞稀から精いっぱい抗議される。ポニテ瑞稀も悪くはないんだけどな。


「やっと帰ってきおったか、浬。色々試してみたが、この馬尻尾とかいうやつが似合うと思うのじゃ」

「ポニーテールを無理やり日本語訳しなくていいから」

 ツインテールだと「二つの尻尾」となるのだろうか。洋菓子を売っている店名みたいだ。

「可愛いとは思うが、こうしてみたらどうだ」

 一瞬ほほを赤らめた瑞稀だったが、俺が仕掛けた一瞬の所作に固まる。

「あ、可愛いかも」

 静観していた美琴も称賛する始末だ。いたずらごころでやってみたのだが、思いのほか似合っていた。


 俺が仕掛けたのはどうということはない。瑞稀の眼鏡を取ったのだ。裸眼の彼女はすっきりとした顔立ちであり、スポーティな印象を与えるポニーテールが絶妙な具合にかみ合っていた。これで読書好きだから、ギャップ萌えキャラとして十分通用するぞ。

「おお、眼鏡を外すという発想はなかった。うむ、さすがは浬じゃ」

「明日はこのまま学校に行ってみたら。イメチェンってことで」

「も~! いい加減にしないと境界上のホライズンの角で殴りますよ」

 洒落にならないダメージになるからやめろ。あの小説、何ページあると思っているんだ。


 完全におもちゃにされている瑞稀だったが、ここまでされて黙ってはいなかった。俺から眼鏡を受け取ると、隙ありとばかりに美琴へと装着したのだ。

 瑞稀から標的を移される羽目になった美琴。うーん、なんというか、

「絶妙に似合ってないな」

 無理して大人びたファッションしようとしている小学生という印象を受ける。おかっぱ頭というのがいけないのかな。そもそも、眼鏡キャラとは程遠い性格だし。


「私、視力1.0だから眼鏡なんて必要ないわよ。それに、けっこう度がきつくない、この眼鏡」

「仕方ないじゃないですか。視力0.3ですもの」

 威張るようなことかな。俺は0.8だけど、油断していると眼鏡のお世話になりそうだ。


 外された眼鏡はそのまま持ち主のもとへ帰る。と、思いきや、今度は別の人物が犠牲になった。消去法からしてよーこさんだ。

 不意打ちで面食らうよーこさん。美琴と比べると似合ってはいる。似合ってはいるんだけど、なんというか。

「いかがわしいビデオに出てくる女教師みたいだな」

 「こんな問題も解けないの。おしおきするわよ」とか言っていそうだ。ボンキュッキュッなせいで、不埒な印象に拍車をかけている。決してガチャピンやムックが出てくる子供向け番組じゃないぞ。


「分からないでもないけど、率直にそんな感想が出てくるということは、あんた普段その手のビデオを見ているわけ」

「失礼な。男子高校生がみんないかがわしいビデオを見ていると思うなよ」

 ファンとして、ガクドルズのいかがわしい同人誌もチェックしているだけだ。第一、そんなビデオは十八歳未満が視聴してはいけません。


「ほう。うちの眼鏡姿は教師みたいか。言ってくれるのう、浬」

「決して誉め言葉じゃないからな」

 無言で俺はよーこさんから眼鏡を外す。そして、瑞稀よ。路傍に落ちている糞を見るような冷たい視線で俺を見ないでください。


 ちなみに、当然のことながら俺にも眼鏡が装着される羽目になった。そして、女性陣たちからの感想は、

「普通」

 一番反応に困るやつだった。

ちなみに、作者はポニテ好きだったりする(どうでもいい)

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