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浬、丸山の不正を暴く

「何が言いたいんだ君は。ちゃんと書こうぜ!のマイページを表示させているだろう」

「じゃあ言い方を変えます。本当にこのページだけがあなたの持っているマイページですか」

 丸山が正月に餅を喉に詰まらせた爺みたいな顔になった。窒息はしていないから救急車を呼ばなくても平気だ。

「こ、これだけに決まっているだろ」

 声が震えている。チャンスだ。

「マルヤマン、大賢者豪、やまる、ケンケン、サークルクル。この名前に聞き覚えは?」

 人差し指を立て、九九を暗唱するような勢いで人名を諳んじる。丸山は渋柿を食べた人の顔になって本棚にぶつかった。逆転裁判の犯人みたいな反応をする人は初めて見たぞ。


 どうやら図星だったようだな。俺は鼻高々で背筋を伸ばす。

「浬さん。さっきの呪文みたいな言葉は何ですか」

「私も気になるわ」

 瑞稀にも俺の推理を説明していなかったからな。美少女二人から、えるたそのように迫られたら仕方ない。俺は探偵気取りで部室内を周回する。


「瑞稀から聞いたんだ。小説を書こうぜ!では非合法でポイントを引き上げる方法があるってね。結論から言おう。丸山先輩、あなたは裏アカウントを使っている」

 またも丸山は梅干しを食べた後に種を喉に詰まらせた顔をして本棚に激突する。逆転裁判の犯人みたいな反応も二度目だとくどくなってくる。

「ぼ、僕が裏アカウントを使っているだって。言いがかりもいいところだ。そんな不正をするわけがないだろう」

「いいや、使っている。そうじゃなきゃ短期間に1000もの読者数を稼げるわけがない」

「僕の小説が面白いからバズって読者数が増えたんだろう。それに、裏アカウントを使っているなんて机上の空論だ。証拠はどこにもないじゃないか」

 早々に言ってしまったな。ミステリーにおける犯人の死亡フラグ。俺は意気揚々と自前のスマホを操作する。


「証拠ならありますよ。それはこいつだ」

 水戸黄門よろしく俺はスマホの画面をつきつける。そこに表示されていたのは、

「僕のツイッターだと」

 瞬間、丸山は鼻で笑う。


「やっぱり適当なことを言っていただけではないか。ツイッターなんか小説を書こうぜ!とは何ら関係は無い。負け惜しみで適当なことをぬかしているなら、さすがに怒るぞ」

「いいや、大いに関係がある。その前に三河先輩、お願いがあります」

「私に?」

 妙なタイミングで飛び火したので、三河部長は首を傾げる。俺はポケットをまさぐり一枚のメモを取り出した。


「このメモに書かれている名前を小説を書こうぜ!のユーザー名検索で検索してもらえませんか」

「どれどれ。マルヤマン、大賢者豪、やまる、ケンケン、サークルクル。なんか変な名前が並んでいるわね。っていうか、さっき君が唱えていた呪文じゃないの」

 先輩が「変な名前」と発言した瞬間に丸山の眉根が動いた。だが、そんなことお構いなしに先輩は検索を開始する。


 おそらく、俺が適当に書いたからヒットするわけはないと思っていただろう。だから、「検索結果1件」と示された時に彼女は刮目していた。

 他の名前も検索をかけると、該当するユーザーが次々と掘り出される。たまに類似する名前のユーザーまで引っかかってしまうことがあったが、「該当するユーザーはありませんでした」という無情な宣告だけは受けることは無かった。


「どういうこと。全部実在しているユーザー名が書かれているなんて」

「それだけじゃありません。試しに、マルヤマンというユーザーのページを開いてください」

 俺の指示を受け、三河先輩は検索結果をクリックする。すると、更に決定的な証拠が挙がってきた。


 マルヤマンのプロフィールや投稿した小説の欄はすべて空白。一見すると登録しただけで手つかずな新規ユーザーのように思える。しかし、一か所だけ埋まっている項目があった。

「ブックマークされている小説。これって丸山先輩が書いた作品ですよね」

 唯一ブックマークされていたのは、丸山が勝負のために提出した小説だったのだ。


 他のユーザーも同じように丸山の小説だけをブックマークして後は空欄のものばかり。ここまで露骨な証拠を示されては言い逃れできまい。


 だが、敵もさるもので、拳を握りしめながら噛みついてくる。

「裏アカウントを使っているとして、どうやって特定したんだ。まさか、全部のユーザーをチェックしたんじゃあるまいな」

「そんなバカなことはしない。書こうぜ!の登録者数は60万人ぐらいいるって言うし」

 千葉県船橋市の住民の名前すべてを一晩で調べろなんて土台無理だ。やるのならば効率よく絞り込む必要がある。


「そこで俺が利用したのがツイッターだ」

 俺は再度スマホの画面を突き出す。まだ合点がいっていないようなので、俺は少々ページを操作した。表示されているのは「丸山の小説を宣伝しているツイートをリツイートしたユーザーの一覧」だ。


「書こうぜ!の小説を宣伝する方法としてツイッターがある。けれども、単に呟くだけじゃ意味がない。より多くの人にリツイートされる必要がある。だから睨んだんだ。このツイートをリツイートした奴が書こうぜ!のアカウントも持っているんじゃないかってな」

 調べてみたらビンゴだった。丸山の裏アカウントとおぼしきユーザー名で宣伝ツイートをリツイートしている奴がボロボロと出てきたのだ。書こうぜ!と同じくツイッターでも裏アカウントを作っていたのだろう。まさか、実際に裏アカウントを持っているか調べる奴がいるなんて想定していなかったから、名前を使いまわした。それが裏目に出てしまったということだ。


 ここまで決定的な証拠が出てしまったらもう言い逃れはできない。崩れ落ちる丸山だったが、苦し紛れに言い放つ。

「宣伝ツイートは5800もリツイートされている。まさか、そのユーザー名をすべて調べたというのか」

「そうだ」

 たった三文字で答えたが、実行すると地獄だったぞ。でも、書こうぜ!の全ユーザーを調べるよりも労力は百分の一で済む。


 俺が全部調べたみたいに言ってしまったが、正確には語弊がある。いくらなんでも6000件近くの名前を書こうぜ!で検索するのは一晩では無茶だ。だから掲示板で「この小説の作者が複垢使ってるっぽいwwww」と晒してやった。そしたら、あれよという間に証拠となるアカウントが集まってきたのだ。ネットの力ってすげー。インチキだって? よーこさんも言っていたじゃないか。アウトソーシングというやつだよ。

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