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浬、美琴とよーこさんに疑念をかけられる

 更に、異変は朝の風景だけに留まらなかった。小野塚さんにより攻撃力4000のモンスターカードにされたブルドック先生の数学の授業中のことである。頬のぜい肉といい、本当にブルドックに似ているよな。なんて不埒なことを考えないと訳の分からない数式の連発には耐えられそうにない。マジで中学から難易度上がり過ぎだろ。


 俺のほかにも襲い掛かる眠気に必死に耐えている生徒がちらほらいる。むしろ、正気を保っている奴のほうが少数派なんじゃないか。たちが悪いことに、ブルドックは不真面目な生徒を毒牙にかけようと教室内を周回し出す。そして、さっそく犠牲になったのはあまりにも意外な人物だった。

「こら、石動。堂々と寝ているんじゃない」

 声をかけられ、瑞稀はびくりと跳ね起きる。あまりの勢いに彼女の教科書が落下しそうだった。


 瑞稀が授業中に居眠りするなんて珍しい。ひと月ぐらいしか一緒に授業を受けていないけど、今までそんな不真面目な真似はしていなかったはずだ。

「ズッキーがおねむなんて天変地異でも起きるのか」

 隣の席の小野塚さんも多摩川にアザラシが出たかの心持で眺めている。ここまで来ると只事ではないぞ。罰として問題を解かされていたが難なく正解していたのは流石だが。


 小休止の時に小野塚さんから「ズッキーはどうかしたのか」と詰め寄られたが、明かしていいものかどうか判断に迷った。原因はあの一連の出来事しか考えられないのだが、当人の意向を確かめないことにはどうにもできない。


 とはいえ、悠長なことは言っていられない状況に追い詰められた。その日の夕方、瑞稀が風呂に入っている間によーこさんと美琴から言い寄られたのだ。

「最近、瑞稀の様子が変なのじゃが、知っていることはあるかの」

「さ、さあ。どうだろうね」

「惚けても無駄よ。あんたが関与しているというのはお見通しだから」

 俺が犯人確定かよ。尻を押しただけだぞ。素直にそう言うとセクハラ発言になるからどう伝えたらいいものか迷うが。


「実は朝が弱かっただけなんじゃないのか。今までは新しい環境で緊張していただけで」

「あながち間違いではないかもしれないけど、なんか怪しいのよね」

 美琴の疑念は晴れることはない。目を細めてぐいぐい迫ってくる。よーこさんが気後れしているほどだ。ちょっと積極的過ぎやしませんか。


「あくまで瑞稀の問題なんだから、俺じゃなくて彼女を問い詰めるのが筋なんじゃないのか」

「そうね。だから、浬が風呂に入っている間に聞いたんだけど、『大丈夫ですから』ってはぐらかされたのよ。よーこさんも『瑞稀には特にちょっかいを出してはおらんな』と断言しているし、残るはあんたしかいないじゃない」

「お前自身は除外されてんのかよ。案外、美琴が原因だったりしないか」

 苦しまぎれに反論してみたら蛇にらみを放たれた。主に心臓がマヒしそうになった。


 うやむやにしたままでは(俺の)生活がままならない。毒を食らわば皿までというのはなんか違うと思うが、ここは二人も仲間に取り入れた方が得策だろう。俺は反撃とばかりにテーブルを叩く。

「そこまで言うなら、瑞稀と直接話してくる。そんで、二人にも結果をきちんと話す。それでいいだろ」

「半ば関与を認めたというわけか。いいだろう。ただし、またはぐらかしたら承知しないからな」

 美琴が腕組をしながらしぶしぶ引き下がる。とりあえず、しばらくの間猶予は確保されたわけか。この状況で静観しているよーこさんが不気味ではあったが、とりあえず瑞稀と交渉しよう。


「あの、いくらなんでも焦り過ぎだと思います」

 俺はなんやかんやあって、瑞稀の部屋で正座させられていた。急いていた俺は瑞稀が入浴中の風呂場に直行。そのまま待機していたのだが、瑞稀はまさか扉の前に人がいるなんて思ってもみなかったのだろう。油断して半裸のまま扉を開けてしまい、俺とご対面してしまうのだった。


 頬を膨らませながら、腕をクロスし、股をモジモジさせる瑞稀。つい十分前に目撃した下着姿が重なってしまい、まともに直視できない。瑞稀は白がお好みなのかな。いや、直談判しなくてはいけないのに条件を不利にしてどうするんだ。証拠品を忘れて裁判に挑むようなものだぞ。

「それで、どうしてあんなところにいたのですか。お風呂からあがったら私から呼びに行くのに」

「風呂場の件は悪かった。どうしても瑞稀と話をしたいと思ってな」

「そ、そうなんですか」

 素肌がほの赤く蒸気しているのは風呂上りのせいだよな。だらしなく腕をぶらさげたかと思ったら、咳払いして瑞稀も着席した。律儀に正座しなくてもいいと思うぞ。ズボンだから下着は見えないだろうし。


 遠回しに語ってややこしくさせては元も子もない。単刀直入に核心から攻めた方がいいだろう。俺は一呼吸して切り出した。

「率直に言うが、美琴とよーこさんにも小説を書いている話したらどうだ」

「あの二人に、ですか」

 三人寄れば文殊の知恵ではないが、二人であれこれ考えるよりも四人で意見を出し合った方がより有益なアイデアが出るかもしれない。加えて、美琴とよーこさんはいわゆるオタク文化には疎い。俺だと意見が偏重しすぎるかもしれないが、視点の違う二人からなら思わぬ指摘が出ることもありうるのだ。


 なので、あの二人に協力を仰ぐのはなんら問題がないはず。ところが、瑞稀は渋るように唸っている。うーん、やっぱこんな反応になるよな。俺も同族だから瑞稀の思考がなんとなく把握できる。

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