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魔女育ちの竜人譚  作者: 青葉コーイチ
学院入学試験1
6/7

学院入学試験編6

おかしい、さっきまで倒れる寸前だった奴が淡い蒼色をした魔力を発して目の前に


立っている。だが妙だ、こいつの魔力とどまらず常に吹き出し続けてるこれでは


すぐに力尽きてしまう。


「何のつもりかしら、今までは魔法を使わなくても勝てると踏んでいたのかしら


だとしたら心外ね。」


そう言いレイの事をにらみつける。その眼光からは怒りが伝わってきた。


「違うそういうつもりじゃない。この力は俺のほとんど開いていない魔孔


を強制的に開き魔力を無理やり出しているんだ。この力は自分の魔力を使い


切るまで終わらない。だからなるべく使いたくなかったんだ。」


「なるほどね、そしてそのちからは…」


「あぁ、あんたが思っている通り時間制限がある。持って3分だ。」


どうせ気づかれているだろうし自らその弱点を明らかにする。俺は溢れ出る魔力を


一気に双翼へと集中させる。双翼はその白銀の刀身をさらに輝かせる。そこからは


感じたことのない何か巨大なものを感じる。この異様な雰囲気にアリアとレオンは


空気がどんどん張りつめていくのを感じる。数秒の沈黙、だがこの沈黙は実際より


も長く濃く感じた。それほどに空気は重い。


「行くぜ…」


レイはそう言い地面を蹴る。さっきよりも速い速度で間合いを詰め一瞬のうちに


アリアの懐に潜り込み剣をふるう。アリアはデジャブを感じながらもその剣を


同じように炎剣で受け止める。


「ーーっ!」


アリアは予想以上の力に体を後退させられる。すぐさま2本目の炎剣を展開し円の


縁ギリギリで持ちこたえる。


「なるほど、魔力が増えただけでなく身体能力も上昇しているわけね。すこし


舐めてたわ。」


そう言い後ろに魔法陣を展開する。俺はすかさず距離を取り放たれる魔法を


切り刻む。が、それで攻撃は終わらず展開していた炎剣を伸ばしこちらに放つ。


(有無を言わせない追い打ち。だが…!)


「はぁっ!!」


レイは双翼を勢いよく振り下ろした。瞬間、炎剣は真っ二つに割れ斬撃がアリアの


体のすぐ横を通過しそのまま試験会場の壁に衝突した。壁や床には深く、鋭い一閃


が刻まれていた。


「いまのは…」


アリアは驚きを隠せずにいる。


「龍一閃『エルアグレシオ』あんたを倒す技の名だ。」


眼前にいるこの男の揺るがない瞳、すぐ横で起きた事を改めて反芻しあることを


決意する。この男を倒すためには命を削る必要があると。


(私も少し無理しなくちゃいけないわね)


ふぅ、と息を吐き、呟く。


栄光の序章(ファーストロック)解放」


すると彼女の身に着けている指輪から魔方陣が展開され、彼女の周りを円状に


回っている。魔方陣から彼女の物ではない不気味な魔力をを感じレイはその魔法を


解析すべく魔析の慧眼(ドラゴンセンス)を発動する。が、彼女を覆っている魔方陣をいくら見ても


魔法の本質を見ることができない。魔法を解読するためさらに凝らしてみる。


瞬間、目の前の景色が全く違うものになっていた。


「こ、ここは…。」


目の前に広がっているのは戦火により荒廃した町。さらに地面には屍が無残にも


転がっている。辺りを見渡してみるとそこにはある一人の少女がポツンと佇んで


いる。少女は空を見上げてる。空一面重々しい雲で覆われている、無機質で変わり


映えせず永遠に続く空を。すると、少女の背後に忍び寄る影が迫ってきている。が


少女は気づいていない。


「俺がやるしか…。」


少女を助けようと一歩足を踏み出したその時、視点が反転し体が自由落下を


始めた。


「なに!?」


既にの世界は崩壊を始めており周りは闇に包まれていた。体を反転させ


上を向く闇がすべてを飲み込んでおり少女の無事は確認できない。闇はすぐそこま


で迫ってきておりすぐに俺を飲み込んだ。


「くっ!」


薄れゆく意識の中で俺はこんな声を聴いた気がした。


「私をここから解放して。」


目を開くと元の世界に戻ってきていた。どうやらあの世界での数分はこっちではほんの


わずかな時間しか流れていないらしい。


「はぁ、はぁ、」


レイは精神をごっそりすり減らされていた。額からは汗がたれ息が上がっている。


そんな様子を見てアリアは自分の過去を見られたと気づく。


「その様子だと私の過去を覗いたわね。この魔方陣は私の記憶を媒介に作られた


いわば呪いのようなものよ。もう少し長く私の記憶に触れていたらあなた死んで


いたかもね。」


「しれっと怖い事言うなよ…。」


が、その言葉や表情からは冗談か本当かを判断することはできず真相は闇の中だ。


そうこうしているうちに彼女が発生させた魔方陣はどんどん縮小していき


一気にはじけた。


「ふぅ…。」


息を吐き、自分の体を確認している。それはまるで久しぶりに帰ってきた体を


喜んでいるようにも感じた。


「時間を取らせてしまってすまなかったわ。私も少し本気を出させてもらうわ。」


こっちを見る目はさっきよりも鋭く重圧がこれでもかと伝わってくる。レイは


構えを取り直そうとした時だ。顔の横を熱いものが通過した。すぐに後ろから


くる轟音と熱風がレイに現実を突きつける。


「さっきの仕返しよ。これでおあいこだわ。」


そう言い顔には笑みが浮かんでいる。


「さぁ、クライマックスと行きましょう!」


掛け声とともにアリアは魔方陣を展開し炎弾を射出した。


レイは魔析の慧眼(ドラゴンセンス)をフル解放しアリアの炎弾に対抗する。しかし速さと


威力がけた違いに上がっている炎弾は予測出来ていても正面から受けてはダメージ


は避けられない。だがレイは避けることをせずむしろ前進した。


(ここで逃げても奴のペースにの飲まれるだけだ。なら俺は攻め続ける。たとえ


この身が焼けこげようともな!)


全身から噴き出している魔力をフル活用し炎弾を切り裂き進み続ける。炎弾に


向かうたび体が軋みを感じやけどが増えていった。


「いいわ!最高に激熱だわ。もっとこの私を楽しませて!」


炎弾の威力は彼女の感情の昂りと共に更に増していく。それに応えるように


レイの全身からはさらに魔力が噴き出る。


「あんたに勝って俺はマーリンに示すんだ、俺の力を。ここで決める!」


レイは残っているであろう魔力すべても剣に集中させる。


「くらえ。龍十閃『クロスエルアグレシオン』」


十字に放たれた斬撃は地を割り、風を切り飛んでくる炎弾すべてを


切り裂きアリアに向かう。魔力を使い果たしたレイは地面に膝をついていた。


「私も見せよう今出せる最高の魔法を。」


アリアは右手と左手で違う魔法を展開していた。それはレイも魔析の慧眼(ドラゴンセンス)で見てい


たがレイには意図が読めなかった。なぜなら展開した魔法はどちらも初級魔法で


ありどちらもすぐにかき消される魔法だからだ。


するとアリアは二つの魔法を自身の前で重ね合わせた。


「二つの魔法は今ここで邂逅する、消えかかりの灯はここで業火となり相手を灰燼


とかす。くらいなさい。二重魔法(クロスマージ)フレイムブラスト」


二重魔法(クロスマージ)。これは二つの魔法を合わせより強い魔法を編み出す


もので魔法を極め深化させることでできる高等魔法である。放たれた火球は


全てを飲み込まんと地をえぐり、周りの空気を巻き込み爆進している。


二つの魔法が衝突する。勝負は一瞬で決まっていた。火球は十字に放たれた斬撃を


ものともせず飲み込みレイに襲い掛かる。


「くそがぁぁぁぁ!!」


限界を迎えている体をたたき起こし双翼で火球に迎え撃つ。しかし火球の威力は


レイの予想をはるかに超えるのもであり一瞬で飲み込まれそのまま壁に激突し


火球は爆発し辺りは黒煙で包まれていた。


「ここまでか…すまねぇマーリンもうダメそうだ。」


「ホントニソウカ」


意識の中でレイは見知らぬ声と影が見えていた。


「もう体に力が入らねぇ。」


「ワタシノチカラヲツカエ。」


「力ってなんだよ。てかあんた誰だ。」


「ワタシハオマエノナカニイル。オマエハワスレテイルダケダ。」


「俺が忘れてる?」


俺は自信の記憶を探る。がそんな記憶はどこにもない。さらに昔を思い出そうと


するが()()()()()()というよりもある一定の年齢からの記憶がもやがかかったよう


に思い出せない。


(お、俺は一体…ぐっ)


思い出そうとすると頭が破裂するような痛みがの脳天を貫く。まるで何者かが


思い出すことを拒んでいるようなそんな気さえする。


「あ゛ぁぁぁぁぁぁ」


思い出そうとすればするほど頭痛は増していく。限界を超え朦朧とする中奴の事を


見るとある一つの単語が思い浮かぶ。瞬間頭痛が消え視界がクリアとなる。


そこには黒竜が佇んでいた。


「一つ聞いていいか。」


何も思い出せないが奴が俺の記憶のカギであることは間違いない。


「お前を頼ればあいつに勝てるか?」


「フッ、グモンダナ」


黒竜はにっと笑って見せた。


「行くぜ()()()()()お前の力を貸してくれ」













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