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第二話 大切なもの

第二話です。書いててどこに向かっているのかわからなくならないんですかねこれ。

自分は途中でどこに向かって書いているのか見失って、途中で設定表見直して方向性を再確認してるんですけど。。

これ方向性見失わないで書ける人はほんとにすごいと思います。by類人猿大爆発

 俺は手元に置かれたハンセン病の子供の写真を見続けた。その写真を見続ければ見続ける程「俺ならこの子が救えるのではないか。」という心情が芽生えてしまう。だが、そんな事を考える度医師を辞めた原因が脳裏をよぎる。「稲城先生に裏切られた。」その一言が常に俺を苦しめる。だがなんだろうな。この複雑な心境は。俺は医師としての資格を失ってしまった。それも患者を最も苦しめる結末を迎えて。それなのに...

 もう、やめよう。こんな物があれば常に自分の心が揺らいでしまう。そう思って俺はライターを手に取り、ハンセン病の子供の写った写真を燃やした。冬柴には悪いが、俺にはもう耐えられない。医師に戻りたいと思っても、トラウマが俺を苦しめる。患者のことを思って言った一言が常に俺を苦しめ、悩ませる。もう医者だった頃の自分を忘れてしまおう。「別の仕事を始めれば、次第にこの苦しみも忘れるだろう。」そう思った。

 そこからは早かった。自宅の近くの町工場に就職し、気が付けば自分のトラウマなんてものは忘れていた。町工場の仲間とも仲良くなり、飲みに行くようにもなり、医者だったことなんて忘れようとしていた。

 しかし、現実は非常だった。数少ない核保有国である隣国が核弾頭ミサイルを日本に向けて発射した。

そして、そのミサイルは自分の自宅から百数十キロ離れた自分の故郷に落ちたのだ。母親の家はぎりぎりミサイルの爆破圏内からは外れていたが、母親は高濃度の核によって被爆していた。

 ミサイルを放った隣国は、その他大勢の国々によって壊滅状態まで追い込まれたが、日本が受けた被害は甚大だった。

 母親は核汚染された地域から離れた大病院へと入院となった。俺は、その病院へとお見舞いへ向かった。母親は元気だった。普段通りにしか見えなかった。今から考えれば母は激痛に耐えていたのかもしれない。息子である俺に弱いところを見せないために。母との面会が終わった後、俺は担当医師から呼び出された。嫌な予感はした。しかし聞かないわけにはいかない。医者の後をついていくと、小さな部屋へと連れていかれた。椅子に座った俺に、担当医は真剣なまなざしで話し出した。

「あなたのお母さまは先日のミサイルの影響により、被爆しているのはご存知ですね?」

「はい。」

「そして、あなたは元医師だとお母さまからお聞きしました。」

「はい。」

「この部屋に連れてこられたという事は、どういうことかわかりますね?」

「はい。」

「では、事実をお話ししましょう。現在、あなたのお母さまは、核被爆によって、現状地球上ではありえないとされていた『分子死』の状態に陥っています。幸い、分子死の進行は遅いですが、1日でお母さまは死に至ると思われます。」

「そんな。しかも分子死って。あんなもの現実に存在できるんですか?」

「はい。私もにわかには信じ難いですが。しかし、現在の世界の化学技術の進歩は目覚ましいものもありますし、過去に不可能とされていたものが可能になってもおかしくはないかと。」

「分子死ってことは母の死体は。」

「はい。お母さまが亡くなると同時に消滅します。」

この言葉に俺は絶句し、そのまま母の許に戻った。

母にこの事実を伝えるべきか否か。そのことが頭をよぎる。医師はまだ母に病状を伝えていないと言っていた。ここで俺のトラウマがまた息を吹き返した。今回は、もう間違えない。真実をありのまま伝える。

 「今担当医から話を聞いてきた。事実を知りたいか?」

「そりゃ知りたいわよ。いつまでも知らない状態でいるのは怖いわ。どんな事実であろうと、私は受け入れるわ。」

「たとえ、事実が信じがたいものだったとしても?」

「それでも、よ。」

「分かった。じゃあ俺の口から伝えさせてもらうわ。」

そう言って俺は重い口を開いた。

「まず母さんは今、核被爆をしているのは知ってるね?」

「まぁ、そりゃあんだけ至近距離で核ミサイルが降ってくりゃ被爆だってするだろうねぇ。」

「そうだな。それでここからが本題だ。ここからは俺も信じられないような出来事なんだが、母さんは今、今まであり得ないとされていた病気になっているんだ。」

「どういう意味なのかはよく分からないんだけれど。」

「まぁ、聞いてくれや。今母さんは『分子死』という状態に陥ろうとしているんだ。」

「分子死って何よ」

「簡単に説明すると...だな、分子死ってのはだな...核被爆によって細胞レベルで崩壊をおこすんだ...つまり...母さんが死ぬときには細胞一つ残らなくなってしまうんだ。」

「そっか、じゃああたしが死ぬのは確定なのね。分かったわ。じゃああとどれくらい生きられるのかしら。」

「それは...」

ここで俺はあのトラウマを思い出した。どうするべきか。俺は決心を決めたはずなのに、どうしても揺らぐ。大切な人間だからこそ、本当のことを伝えるべきなのか。もう俺にはわからなくなってしまった。

第二話、お楽しみいただけましたでしょうか。主人公の大事な人間殺すとしたら誰を殺せるのかを設定の段階で考え続けた結果、母親を殺すという最もベターな結果に落ち着きました。

やっぱりベタベタな展開が書きやすいんだなと感じました。次回はどんなふうに話を展開させようかスタートとゴールくらいしか決めてないのでその辺も楽しみながら書いていきたいなと思っています。

次回もお楽しみに。by類人猿大爆発

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