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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第二章二節:復讐者(中編)

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第097話 解散と遭遇


過去の出来事を振り返りつつ、

自分の妻であるセヴィアリュシアを信じて待つバラスタは、

周囲の森から吹く風に乗せられた微かな匂いを嗅ぎ取った。





山と山の合間にある川辺は、

山側の森から風が降り注ぐように吹く。


それで空気の流れが水源のある川に引き寄せられる事を利用し、

周囲の匂いを嗅ぎ取って変化を察知していたバラスタは、

周囲の森の変化を匂いで感じ取ったのだ。


周囲の森に誰かが踏み込んで来た事を、

バラスタはすぐに察知する。


大岩の窪みに位置する場所に素早く隠れ、

自分自身の気配を悟られないように、

バラスタは周囲の匂いを嗅ぎながら警戒する。


そして周囲の森から続々と飛び出すように出てきたのは、

バラスタが見知った匂いの人物達だった。


ガブス、メージを先頭に、

キュプロスとガルデが飛び出して森から抜け出る。

更に各警備隊長達も追うように飛び出つつ、

テイガーを担ぐように肩を貸す二人の女性警備隊長、

蜥蜴族のヴラズと牛頭族のバズラが出てくると、

その川には今回の主戦力である者達が、

ほぼ全て合流したのだった。





そして最後に飛び出すように出てきたのは、

黒い毛皮に覆われた獣族を担いだ一人の女性。


担がれているのは狼獣族のガスタ。

そして背負っているのは、

バラスタの妻であるセヴィアリュシアだった。


それを岩の窪みで観察し確認したバラスタは、

すぐに窪みから飛び出て、

セヴィアリュシアが居る場所まで一気に駆け出した。


飛ぶように川の岩場を伝いながら飛び渡り、

バラスタは自分の妻と父の傍まで、

驚きを含んだ声を出して近寄った。



「セヴィアリュシア!それに、父さんなのか!?」


「……えぇ、あなた。貴方のお父さんよ」


「そうか、そうか……。無事、なのか?」



バラスタは背負われる父親と、

そして背負う妻セヴィアの姿を見ながら、

心配そうな声でそう聞いてくる。


セヴィアはそれを微笑みながら見て、

頷いて伝えた。



「ガスタは、ヴェルズェリア様の『催眠フェム』を掛けられて意識が無いだけ。私も、久し振りに思いっきり身体を動かして疲れただけよ。……バラスタ、ガスタを任せていいかしら。やっぱり重いわ」


「あ、あぁ」



背負うガスタを託すようにセヴィアは動かし、

それに応じてバラスタは父ガスタに腕を回す。


岩肌の地面にゆっくり倒すように寝かされるガスタは、

正常に息を整えたまま目を閉じている。

それは完全に『催眠』の状態に陥っている事を、

証明する状態でもあるだろう。


この状態は『催眠フェム』の段階では初期状態。


術者本人が『催眠』状態の相手に支持を送る事で、

初めて『催眠』状態の相手は術者の命令に従う。

どこまで出来るかは術者の力量次第だが、

恐らくヴェルズほどの魔術師になると、

催眠状態のガスタに誰かを殺す事を許容させる事も、

あるいは可能かもしれない。

もしくは、自分で自分の命を絶つ事さえも。


今のガスタの状態は、

ただ眠っている状態に等しい。


その状態が解ける事があるとすれば、

術者であるヴェルズェリアに、

何かしらの異常が起きた時だけだろう。

例えば、精神支配をしたガスタが解ける程の魔術を、

自分の許容以上の思考演算を超えて行う場合など。


その危惧をセヴィアリュシアは抱く気さえ無かった。

『表情』の無い顔を見せたヴェルズェリアが、

あの恐ろしい存在が負けるはずが無いと、

そういう確固たる自信を持っていた為でもあるだろう。


セヴィアが案じる問題は、

そのヴェルズェリアと戦っている相手のこと。


自分の息子(ヴァリュエィラ)と思われる青年の事を考え、

バラスタに心配されるほど青褪めた状態で、

セヴィアはこの場でバラスタ達と合流した。



「全員、集まりなさい!!今後の私達の行動、方針を決めます」



それをバラスタに告げる事を躊躇しつつも、

セヴィアはその場の全員を招集した。

決めなければならなかったからだ。

今後の、自分達の行動を。


ヴェルズ村と近隣の村の警備隊長と隊員ガブス、

そして助っ人である蛇獣族のメージや、

ミコラーシュ配下のキュプロスとガルデを集め、

『衛士』セヴィアリュシアは今後の方針を伝えた。


その場には、獅獣族のレオンを始め、

元鬼王フォウルや勇者はいない。


統率者であるヴェルズが居ないにも関わらず、

セヴィアリュシアが方針を決めようとする姿勢に対して、

その場の誰もが異論を挟もうとしなかったのは、

セヴィアリュシアの実力をその場の全員が、

ガスタとの戦いで認めたからに他ならない。



「バラスタ、そして他の警備隊長達は、捕縛したガスタを連れて村へ戻りなさい」


「!!」


「あの戦いを見れば分かるでしょう。もう貴方達ではこれ以上の戦いに付き合うのは不可能よ。今は捕縛したガスタを奪還される事を防ぐのを最優先しなさい」


「……了解、しました」



セヴィアの帰還の命令に息を呑んだ警備隊長達は、

その説明を聞いて、素直に納得してしまった。


この戦いは、既に自分達が関われる域を超えている。

それは始めから言われていた事でもある。


しかし実際にガスタと戦い、

そしてガスタにさえ勝利できず、

元鬼王フォウルと半獣族の青年を傍観しかできずに、

これ以上は足手まといにしかなりかねないのが、

まさに事実だと認めるしかなかったのだ。


続けてセヴィアリュシアは、

キュプロスとガルデを見ながら話した。



「キュプロスとガルデ、貴方達はどうします?ミコラーシュ様の下へ向かいますか?」


「どうする、兄者よ」


「総隊長……ミコラーシュの姐御の戦う気配が消えた。あの鬼王の気配が一度大きくなってドワルゴン殿と戦おうとした気配もあったが、戦っていないようだ。……俺等は最後に姐御が戦ってた場所まで向かう」


「だ、そうだ。後はセヴィア、お前に任せよう」



キュプロスを兄者と呼ぶガルデが聞くと、

気配を読んで状況を観察していたキュプロスの決意に、

ガルデも同意しセヴィアの問いを返した。


この四メートル近い体格の二匹の一つ目・三つ目の巨人族は、

基本的にヴェルズ村には帰属する存在ではない。

あくまでミコラーシュを慕い付いて来ただけの舎弟関係であり、

セヴィアやヴェルズでも彼等に命令する権利が無い。


それを承知した上でセヴィアは、

彼等の行動を彼等自身に決めてもらっていた。


何も口に出さずに付いて来ていたキュプロスとガルデは、

姐御と慕うミコラーシュの義母であるヴェルズの頼みでもあるので、

今回は戦力として同行しながらもミコラーシュを探し、

ミコラーシュの居所が分かったことで、

各々の判断で行動する決意を行えたらしい。


その決意と判断にセヴィアは口を出さず、

ただ黙って頷き了承した。



「ガブス、メージ。貴方達も各警備隊長達と同行して村に戻って。万が一に他の侵入者達がガスタを奪う為に襲ってきた場合は迎撃を。テイガーは治療を継続しつつ、ある程度の治癒が終わったらガブス・メージの二人と協力して迎撃と撃退をお願いするわ」


「……ワカッタ」


「シューッ。分かった」


「……お任せ、ください……」



この中でも比較的強い三名が、

セヴィアにそう託された。


警備隊長達だけでは、

万が一にでもガスタ並の強さを持つ相手と遭遇した場合、

時間稼ぎもできずに倒され、

ガスタを奪われる可能性が出てきてしまう。


その可能性を少なくする為にも、

ガスタを連れて戻る警備隊長達には、

護衛となる戦力が複数必要だった。


最有力候補はテイガーだったが、

まだ手足の治療が完全に終わっていない。

移動しながらでは満足な治療も施せないだろう。


ガブスとメージも強者ではあったが、

全力のテイガーと比べると見劣りすると、

セヴィアは内心で確信していた。


ならば彼等にはテイガーが戦えるまでの治癒を行う間に、

ガスタと警備隊長達の護衛を頼むのが望ましい。

それがセヴィアリュシアの判断だった。





そしてセヴィアリュシア本人の行動に関して、

自身でこう告げた。



「私は、キュプロス・ガルデとはまた別に、アイリュシティアとジークヴェルトの奪還に向かいます」


「!?セヴィアリュシア、君も一緒に戻るんじゃないのか!?」



そう自己申告して行動を告げるセヴィアに、

バラスタは驚きの声を出した。

そのセヴィアは微笑むようにバラスタを見て、

首を振ってバラスタの言葉を否定した。



「先ほどの魔力の波動。あの大鬼オーガやヴェルズェリア様はアイリュシティアだと断定していた。……あの二人のやりとりで、確定した事があるわ」


「確定、したこと?」


「今までもあの二人の話も聞いていて分からない言葉が幾つかあったわ。突然変異体アルビノの者達を『種子たね』と呼び、その血を与えられた者が到達者()に至るという話。突然変異体アルビノと呼ばれる者達の血は、何か特殊な効能があるということが、あの三人の話には含まれていた」


「……確かに、そういう話をしていたとは思うが……」


「そこのガブスが、競合訓練の際に飲んだ赤い小瓶の液体が、まさに突然変異体アルビノの血だったのでしょう。そして……」



セヴィアはバラスタとの会話の中で、

競合訓練の時を思い出しながら話す。

あの時、フォウルに重傷を負わされた傷を回復され、

その後にガブスが飲んだ小瓶に入った赤い液体の事を。


蓋を開けた瞬間に感じた禍々しいまでの魔力が、

先ほどの魔力の波動と酷似している事から、

セヴィアはガブスが飲んだ赤い液体が、

突然変異体アルビノの血と同種のものだと、

そう断定したのだ。


そして、セヴィアはもう一つの存在も知っていた。


ここにいる人物達の中でもそれ(・・)を目にした人物は、

あの場に居たセヴィアと、

そして警備隊長のヴラズだけ。


ヴラズはセヴィアの言いたい事を、

いち早く察した。



「……そして、突然変異体アルビノの血とは、恐らく『マナの実』と同種の効果を持っている。それがアイリュシティアの誘拐された本当の理由だと、私は考えているわ」


「!?」


「そして、あの元鬼王フォウルが探していたと言っていたモノ。『皇帝』以外に、突然変異体アルビノのジュリア様と、マナの実を捜していると言っていた。……あの言葉を置き換えるのなら、元鬼王フォウルが探していたのは『マナの実』と、そして『マナの実』と同じ効能の血を持つ、ジュリア様やアイリシュティアのような突然変異体アルビノだとしたら……」


「!!」



その場に居る全員が、

セヴィアリュシアの言葉に驚愕を浮かべた。


伝説上で語られる『マナの実』の存在を、

この中の極一部を除き、誰も見た事がない。


高密度の魔力が集う地脈に生えた『マナの樹』に、

生涯一つだけ生えるという実。

その実を食べれば一口で体の異常が全て完治し、

二口食べれば進化を遂げるとさえ言われる、

言わば万能の実の存在を、

誰もが御伽噺でしか聞かされない。


その実と同じ効能を持つ血が、

突然変異体アルビノ』に流れている。


それは周囲の魔族達にとっては、

それだけでも驚愕すべき事実だったが、

フォウルの本当の目的が『マナの実』の捜索ではなく、

それと同じ効能の血を持つ『突然変異体アルビノ』の捜索だとしたら。


その可能性を、セヴィアは懸念していた。



「私はずっと、あの元鬼王フォウルが何かを隠したまま今回の事件に関わっていると思っていた。そしてこの事実が浮上した以上、元鬼王フォウルにアイリュシティアを任せてしまうのは得策ではない。今後どのような事になるのか想像もできない。……あるいは、あの元鬼王が『皇帝』と結託してアイリシュティアの誘拐を手伝い、『マナの実』と同じ効能を持つ『突然変異体アルビノ』の血を使って、『皇帝』の復活を目論んでいるのかもしれない」


「――……!!」


「全ては可能性の問題。けれど、この疑惑が浮かんでしまった以上、私はアイリュシティアとジークヴェルトの奪還は最優先に動くわ。……私一人でも、ね」


「しかし、君だけでは……」



セヴィアの決意を渋るように食い下がるバラスタは、

そう行動するセヴィアを引き止めるだけの材料を用意できず、

苦々しい表情を浮かべている。


その表情を浮かべる夫バラスタを見ながら、

妻であるセヴィアは優しく微笑んで、

夫の左頬に触れるように右手を伸ばした。



「私は大丈夫。それより、あなたにはガスタを……貴方のお父さんの傍に居てあげて」


「父の、傍に……」


「今、ヴェルズェリア様の催眠状態にガスタは掛かっている。けれどヴェルズェリア様も戦闘中。何かの拍子で、ガスタの催眠が解ける可能性もある。だから、もし……」


「……もし?」


「もしその時が来たら、貴方がガスタに……父親に母親のことを、全てを話しなさい」


「!」


「貴方の母、リュイの死の真相を。……あの日、あの年。多くの者達が出払い、ガスタも村に居なかった時、あの村で何が起こっていたのか。私が貴方に明かした時と同じ事を、今度はガスタに貴方が話して頂戴。……私が言うより、息子である貴方が言うほうが、信じるでしょうから」


「……分かった」



バラスタの左頬を右手で優しく撫でるセヴィアを、

苦々しい表情を浮かべるバラスタは、

渋々ながらに了承して頷いた。


その夫婦の様子を見ていた二名、

警備隊長の蜥蜴族のヴラズと牛頭族のバズラが、

バラスタよりも険しく苦々しい表情を浮かべるのを、

傍に居る治療中のテイガーが気付いた。



「……やはりお前達は、リュイの死に関して何か知っているのか」


「……」


「……ッ」



テイガーの問い掛けを耳にしながらも、

ヴラズとバズラは互いに沈黙を貫いた。

テイガーもそれ以上の問いは投げず、

自身の治癒に専念し始める。


リュイを知る者であれば、

彼女の死が魔獣に因るものではなく、

何か別の理由であるのかというモノに、

興味にも似た疑問を浮かべた。


彼女の死がガスタという戦士を、

ヴェルズ村から離別させるきっかけになったのは、

その二名を知る者であれば、決定的だったからだ。





*





その後、セヴィアとキュプロス・ガルデの三名は、

捕虜としたガスタを連れた警備隊から離脱し、

それぞれの思惑によって動いた。


ガスタを背負うバラスタを連れた警備隊長達は、

セヴィアの提案でトレントの森を迂回し、

川沿いを歩き別のルートで村まで戻るようにした。


トレントの森に警備隊長等が侵入した際、

白い花を持って侵入する事でトレント達に敵意を抱かせずに済んだ。

しかし帰りにもトレントの森を通過する場合、

今度は逆に襲撃された際に逃げ場を無くす事を恐れたからだ。


アイリを誘拐した誘拐犯達以外に、

自分達を奇襲してきた他の侵入者達が存在するのだとしたら、

今度はその侵入者達に奇襲されかねない。


トレントの森はそういう意味では、

侵入者達の奇襲し易い場所だという事を指摘し、

セヴィアは警備隊に川沿いのルートを選ばせた。


ガスタを連れて戻る警備隊長達は、

そのセヴィアの意見に素直に従い、

全員が川沿いの順路を進み、

ヴェルズ村への岐路へと戻る。


元々は山間に出来た上流の大河が、

下流で幾つにも分断した川がバラスタ達の居た場所だ。

警備隊長等は中流の川まで戻り、

分断されヴェルズ村の付近に流れる下流の川を沿って、

村への帰路にする予定だった。





バラスタは催眠状態の父ガスタを背負い、

負傷したテイガーは他警備隊長の肩を借りながら歩き、

その治療に女性警備隊長二名が当たる。

まだガスタの魔力封殺で気絶したままの双子の犬獣族は、

他の警備隊長の肩にそれぞれ担がれている。


負傷者と荷物を抱える以外の警備隊長達は周囲を警戒し、

蛇獣族のメージは森側を蛇の脚で擦り歩き、

巨神族のガブスは川沿い側を歩いて周囲を警戒する。


派手に山の方で暴れたせいで、

この付近の山から逃げてきた魔物達が、

付近の森に警戒するように隠れているのを察知し、

それ等の魔物達が襲いに来ないかを警戒しながら、

さらに侵入者達の奇襲にも気を配る。


フォウル・勇者・ヴェルズ・セヴィア、

そしてレオン・キュプロス・ガルデという強者達が抜け、

今の警備隊長等の数は、合計で12名のみ。

ガスタという捕虜を含めれば、13名になるだろう。


そのうちの半数近くが即戦闘は不可能。

この状態のままの帰路への行軍は、

全員が緊張と不安を募らせた。





目算が甘かったと思う警備隊長も居た。


今回の件でフォウルに『半人前』と言われつつも、

認められたと思い付いて来た警備隊長達だったが、

その実は足手まといにしかならず、

ガスタに対しては時間稼ぎと呼べるほどの戦闘もできなかった。


更にはセヴィアとフォウルの戦いを目の当たりにし、

この場の警備隊長達のほぼ全員が、

自分の実力に対する評価を喪失している。


そう思っている事を互いに認識しつつも、

互いにそれを口に出してしまった瞬間に、

今も自分を支えている何かが崩れることを、

全員が知っていた為、何も口に出さない。





だからこそ、それを言うべき立場だったのは、

負傷し肩を借りる、警備隊長頭のテイガーだった。



「……我等には、届かぬ境地を見たな」


「!…………ッ」


「……テイガー殿ならば、届くのではないですか?」


「いや、無理だろう。……正直、あの者達を見た後では、俺でも軽々しく『戦える』などとは言えない」


「…………」



テイガーの戦いの一部始終を見た者は少ない。


しかし、各警備隊長達がガスタを捕えた結界の場所へ赴く際、

その通過点であるテイガーの待ち伏せ地点を見て、

ガスタとテイガーの戦いが予想以上のモノだったことを、

全員が感じ取っていた。


自分達の知るテイガーと、

ガスタと戦った際のテイガーとでは、

恐らくは実力に大きな幅があるのだろう。


その光景を見た警備隊長達は、

そうテイガーの認識を改めていた。


そんなテイガーでさえ、

セヴィアやフォウルといった強者達の戦いには、

付いて行けないと即断している。

それが警備隊長達には驚愕であり、

同時に失意の念を持つ事にも繋がった。



「……だからこそ、俺は心がおどった」


「心が、躍った?」



そんなテイガーの口から、

不意にそんな言葉が告げられた事で、

警備隊長の一人がそう言葉を返した。


テイガーは負傷の痛みで苦痛の顔を漏らしながらも、

口元をニヤリとさせて、笑った。



「……フ、ハハッ。俺も老いが始まり、今の力を維持する事がやっとだと思った。だが、そうでもない。ガスタの『雷狼ボルド』を見て、そう思った」


「ガスタの……」


「まだまだ、強くなる術は存在する。我が一族も、そして俺自身も。それを学べたのは、今回は儲けものだったということだ」


「……テイガー殿は、前向きですな」


「それが我等、虎獣族という種族ものだ」



そのテイガーの言葉を聞いた者達の中では、

内心で賛否両論が拡がった。


『何故、そう思えるのか』

『あんな戦いを行う相手と対峙するなど無理だ』

『もう武器を置いてしまおうか』


そう考える者達が居る一方で、

真逆の事を考える者達も居る。


『そうか、まだ自分は強くなれるのか』

『もっと強くなりたい、あの者のように』

『今回の戦いで反省はできた。更なる修練を』


そう賛否の意見を内心に抱いた警備隊長達は、

互いにこれ以上の言葉を交えずに、

帰路となる山間の中腹となる川沿いを歩き続けた。





*




彼等が北東へ登りつつ中流の川の分岐点を目指して、

30分程の時間が経過していた。

その間、幸いにも魔物達が襲ってくる事は無かった。


しかし山間の中腹で上流の川が枝分かれする地点に、

警備隊長達が到着した時。


岩場の川沿いから土手へ変化し始めた地点で、

帰路を目指す警備隊長達は、

思わぬ人物達と遭遇してしまった。


その驚きを代表して話すのは、

先行して歩いていた警備隊長のヴラズだった。




「――……ミコラーシュ殿?」


「……ヴラズか?」


「やはりミコラーシュ殿か!……そっちは……ッ!?」



ミコラーシュが川の水を汲み上げ、

竹の筒に入れているところに出会ったヴラズは、

そのミコラーシュとの遭遇を驚きつつ、

行方不明となっていたミコラーシュの無事に安堵した。


しかし、その横で横たわる女性らしき人物と、

やや離れた場所で座禅を組み座っている、

その人物の姿をヴラズは見た瞬間、

すぐに嬉しい驚愕が、警戒への驚愕に変化した。



「ミコラーシュ殿……その者達はッ!?」


「あー……」



ヴラズが槍を構えて警戒態勢になった瞬間、

後方に居た各警備隊長達とガブス・メージ等が、

ミコラーシュと共に居る人物達に気付き、

同じ様に警戒し、各々が武器を構える。





警備隊の者達が警戒する相手。


それは倒れた女性ではなく、

座禅を組んだ人間の男。


長い黒髪と服着が乱れ上半身が裸ながらも、

セヴィアやフォウルと同じ『気』を纏う、

対面する魔族達に恐ろしさを抱かせる存在感ある人物。





人間大陸では『聖人』と呼ばれ、

前世では『兵法者』『侍』と呼ばれた男。


名前は無いが、敢えて呼ぶなら『ナニガシ』。


今回のアイリ誘拐の実行犯達が、

ミコラーシュと共に居る現場に、

警備隊長達は遭遇する事となった。


そう。フォウル達と分かれ、

ミコラーシュに連れられて休息できる水辺へ案内された、

負傷したナニガシと気絶したままのヴェルゼミュート。


彼等はフォウル達とは逆側の山間の川辺で、

休息をとっている最中だった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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