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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第二章二節:復讐者(前編)

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第092話 衛士の実力


テイガーの奮戦とセヴィアの策により、

狼獣族でヴェルズ村の元警備隊長ガスタは、

ヴェルズの結界により捕えられた。





捕えられたガスタは、

なんとか覆う結界を破る策を考えている。


奥の手である『雷狼ボルド』の魔力を蒸散させる効果は、

ヴェルズの結界に刻まれた紋印しるしで打ち消され、

ガスタは結界を破る決め手を欠いていた。


唯一、突破する手段を持つ者が居るとすれば、

結界内にガスタ以外に閉じ込められた、

もう一人の存在。


目の前に白く細身の剣を持つエルフの女剣士、

衛士ガーディアン』セヴィアリュシアの存在を、

ガスタは無視する事などできなかった。


彼女はガスタにとって、

妻のカタキとも言うべき、

憎むべき相手だったのだから。



「……ただ睨むだけで、何も喋る気は無いのかしら」


「……」



ガスタとセヴィアを中心として、

半径五十メートル圏内に張られた結界に、

二人は閉じ込められている。


その結界の内部では、

セヴィアとガスタが睨み合うように視線を交え、

片や左腰の鞘に収められた細身の剣に剣気を纏い、

片や威嚇するように二脚と二腕に殺気を込め、

牽制し合う姿勢を保っている。


テイガーが戦っていた時とは明らかに違う、

殺意を明確に指向したガスタの殺気は、

目の前のセヴィアにだけ向けられていた。


その殺意をセヴィアは受け流し、

鋭い視線と全身の剣気で払う。


今すぐにでも戦いが始まりそうな雰囲気だったが、

それを制止させているのが、

結界の外に居る者達の存在が大きいだろう。


外科的な傷口の切除が完了し、

魔術的な治癒術と回復術を施されるテイガーと、

その治癒を行うエルフ族の警備隊長カルンツェルン、

そして治癒術を手伝う鳥獣族の警備隊長。


テイガーの治癒をその二人に完全に任せた、

大魔導師ハイウィザードヴェルズェリアと、

その傍で控えるように立つ巨人族の亜種、

一つ目巨人(サイクロプス)のキュプロスと、

三つ目巨人(ヘカトンケイル)のガルデ。


更に巨神族ティターンのガブスと、

蛇獣族ラミアのメージ。

そこに各地点に分散していた警備隊長達も、

続々と集結しつつあった。


何より厄介なのが、

ヴェルズェリアの他に存在する危うい気配。

大鬼族オーガのフォウルと、

突然変異体アルビノで人間の姿に見える青年。





破れない結界に封じ込められ、

周囲には強敵を有する戦力部隊。


この状況では流石のガスタも、

下手にセヴィアリュシアに手を出せない。


手を出した瞬間に、

結界を展開するヴェルズェリアの妨害が予想でき、

逆に結界を打ち破られたとしても、

その外に居る実力者達に包囲され逃げ切れない。


何より厄介なのが、

この結界に満月からの光を遮断する効果を備えられ、

狼獣族に溢れ出るほどの魔力を補充させる手段が、

途絶えてしまったことにある。


結界の展開後、一度だけガスタは『雷狼ボルド』を使用した。

その時に内在する魔力を半分ほど使用したにも関わらず、

結界を破ることも傷付けることも出来ない。

その事実を知った今では、

ガスタに出来る手段は何も無かった。


本当は、ガスタには手段が残っていた。

しかしそれは、本当に最後の手段。


それを使ってしまえば、

今の自分ではどうなってしまうか分からない。

それほどの手段が残っていたが、

殺気任せのガスタでさえ、

その手段を用いるのに躊躇があった。


だからこそこの時点で、

ガスタは覚悟したのだろう。


いざとなれば、最終手段それを使うという覚悟を。



「……ガスタ、答えなさい。貴方が今回の事件で誘拐に関わっている事は既に分かっています。貴方の同行者達と、誘拐した子供二人の行方、そして誘拐の先にある目的を教えなさい」


「…………」



ヴェルズェリアが結界の外からガスタに呼び掛け、

そうした質疑を行っていたが、

ガスタが黙ったまま答えようとしない。


ガスタとしては、

絶対に答えられないだろう。


ナニガシやヴェルゼミュート達の事を教えれば、

間違い無く自分は結界に封じられたまま、

この戦力がそちらに向いてしまうのだ。

ならばここで戦力を足止めする為に時間を稼ぐのが、

ガスタの務めだと考え、黙る事にしていた。

しかし、ガスタはその質疑に疑問を持っている。


子供を二人誘拐した?


一人は分かる、アイリの事だろう。

では、もう一人は誰の事なのか。


そういえばと、

道中で倒したヴラズが話した事を、

ガスタは思い出した。



『アイリを、エルフの少女と少年を連れ去ったのは、ガスタ殿なのか』



待ち伏せ強襲してきたヴラズの問う言葉を、

その時のガスタは些細な事だと一蹴した。


少なくともこの時点で、

ガスタはそれに関して重要視していない。

誘拐された相手が、

あのヴェルズェリアの孫だとは、

誰も喋っていないからだ。


意図的にヴェルズ達も、

ジークヴェルトの素性を喋らないようにしていた節があり、

それが追跡者達の必死さの理由だと、

ガスタは気付く事ができていない。


しかし、それを知ったとしても、

ガスタの態度は変わらないだろう。

逆にこの状況で変わってしまうのは、

あまりにも浅はかだと言うべきだ。


ここでガスタが問いながら訴えるように、

『子供は一人だけしか誘拐していない』

などと告げてしまえば、

周囲の状況は一変する。


この言葉を聞いた周囲は、

それが真偽かどうかを品定めすると同時に、

それが真実である場合にも、

そしてそれが嘘である場合でも、

この場に居る全員が追跡を再開するだろう。


結果としてガスタは取り残され、

ヴェルゼミュートを助ける為に動くナニガシ達の、

邪魔になる行為を助長させる事になる。


だからこそ、ガスタは喋らない。


本当は今すぐにでも、

目の前のセヴィアに問い質す事があるが、

ただ沈黙する事こそが、

今のガスタにやるべきことだった。





この時のガスタは個人の事情よりも、

『兵士』としての役割を全うする為に構えていた。



「今更、『兵士』としての役割を果たそうなどと、随分とおこがましいわね。ガスタ」


「!!――……ッ」



そう挑発的な物言いをガスタに向けるのは、

対面しているセヴィアだ。


そのセヴィアの物言いに感情が刺激され、

我慢しようと耐えるガスタだったが、

口の端が吊り上がり、

歯を剥き出した憎々しい表情を浮かべてしまう。


先ほどからガスタが黙ったままになると、

セヴィアはこうして刺激するように言葉を投げ掛け、

ガスタの動向に変化を生じさせようとしている。


恐らくガスタが今の状態で一言でも発せば、

感情のまま言葉を続けるだろうと、

そうセヴィアは予想しているのだろう。


その時に発せられるガスタの言葉一つが、

情報として価値あるモノになることを、

セヴィアは期待し誘導しようとしているのだ。


その予想が当たっているからこそ、

ガスタは憎々しい表情を浮かべて黙っていた。



「打ち倒した警備隊長達を侮り、己の目的の為に動き出した貴方が、今更ながら『兵士』を演じたところで、既に手遅れよ」


「……ッ」


「……良いことを教えましょうか?」


「……」


「貴方に渡すだろう情報を、敢えてレオンに探らせたまま放置していたのは、ワザとよ」


「!!」



そう告げたセヴィアの言葉に驚くガスタは、

憎々しい表情を初めて驚きに歪ませた。

それを嬉しそうに微笑みを浮かべて見るセヴィアに、

ガスタは驚く顔を止めて睨む顔へ戻る。


あの女はこちらの変化の様子を見て、

話す内容を決めている。

そうガスタは悟った瞬間でもあった。



「気付かないと思ったのかしら、あの獅子顔の猫ちゃんは。行動力は認めるけれど、あれほど大胆にさぐられれば、嫌でも耳に入ってしまうというのにね」


「……ッ」


「獅獣族に関しては虎獣族のように教訓しても良かったけれど、彼等の場合はメスにしか手解きをしないと約定していてね。オスオスで訓練を任せていたのだけれど……正直、あの程度しか鍛えられないようであれば、昔から私が口だけでも出しておいた方が良かったかしらね?貴方もそう思うでしょう、ガスタ」


「グルル……ッ!!」



ガスタが低く唸る。

それは無意識の怒りが表層に出した結果だった。


獅獣族自体に、ガスタは思い入れは無い。

しかしガスタの親友とも言うべきレオンを、

侮辱するような物言いに対してだけは、

ガスタは怒りを隠すことができなかった。


そんなガスタの様子を見ながら、

微笑みを絶やさずに挑発し続けた。



「悔しそうね、ガスタ。才能は同等だと感じていた貴方とレオンでも、訓練次第であそこまで実力に開きを見せた。幼少時に差は無かった貴方達が、ああも身体能力にも、魔技の錬度にも差が及ぶということは……やはり貴方を選んだ事は、間違っていなかったわ。ガスタ」


「ッ!!セヴィアリュシア、貴様ァッ!!」



レオンを侮辱するセヴィアの言葉に、

『兵士』としてのガスタを早々に崩した。


微笑みを浮かべながら挑発するセヴィアに、

ガスタは素早く飛び掛かり襲う。


ガスタの右手の鉤爪がセヴィアを直接狙うと、

それを返すようにセヴィアの細身の剣が、

凶器と化したガスタの右手を跳ね除けた。

強化したガスタの鉤爪と、

剣気と魔力を込めたセヴィアの剣は、

高く響く金属音を鳴り響かせる。


弾かれる勢いで体も後方に吹き飛んだガスタと、

身動ぎもしない直立のセヴィア。

この撃ち合いで見せた結果は、

明らかにガスタに不利なモノだった。


速さが違う。


ガスタが瞬時に抱いたセヴィアとの差は、

明らかな初動の速度の違いだった。


ガスタが飛び掛かる瞬間には、

セヴィアは剣を抜き放ってはいなかった。

直撃する寸前に、

セヴィアは剣を抜いて迎撃を済ませている。


初動の速度が明らかに異常だった。

それにガスタは気付いたからこそ、

怒りの感情で支配された頭を一瞬で冷やし、

目の前のセヴィアに対する態勢を整え直す。


弾き飛ばされながらも体を捻り両足で着地し、

すぐに前屈する体をセヴィアに向ける。


セヴィアは追撃する様子さえ見せず、

抜き放った細身の剣を再度、鞘に収め直す。

静かな動作で行われるソレが、

その実力の高さを物語っている事を、

ガスタは知っていた。


そう、ガスタは知っていた。


その動作は何度も見た事がある。

30年より前、幼少時からガスタは知っていた。





*





ガスタは前世まえの世界で死んだ後、

この世界で狼獣族として生まれ変わった。

そしてヴェルズ村で育った。


育ったという言葉に偽りは無い。

しかしガスタは、

この村で生まれたのではない。


ガスタの両親は元々、流浪るろうの狼獣族だった。


魔大陸の各地点を転々としながら旅し、

狼獣族の祖である魔獣王様を探すという、

その目的で旅をしていたらしい。

その道中でガスタの両親は、

ヴェルズ村に立ち寄ったそうだ。


立ち寄った理由で最大だったのは、

ガスタの母親が病で倒れたからでもある。

そこで当時から療養所を営んでいた薬師のジスタに、

ガスタの母親は患者として入院した。


老いも見せ始めるガスタの両親は、

旅の疲れで既に体も精神も限界に近かった。

そんな両親に声を掛けたのは、

後にガスタの妻となる狼獣族、

リュイの両親となる夫婦だった。


まだ幼く生まれて間も無いガスタを連れたまま、

旅を続けようと試みるガスタの両親を説得し、

衰え限界に近いガスタの両親は彼等を頼り、

ヴェルズ村に移住する形となった。


その時にガスタの両親の引き受けに同意し、

リュイの両親が許しを得るように話したのが、

当時はまだ『衛士』であり警備隊長だった、

あのセヴィアリュシアだった。


ガスタとセヴィアの接点は、

その時からと言えるだろう。





結果として言えば、

ガスタの母親は病で死んだ。


虚弱では無かったはずだったが、

度重なる旅の疲れで身体が弱くなり、

病の治療に耐え切れなかったのが理由だった。

その後にガスタの父親も、

後を追うように老衰し衰弱死してしまう。


元々から高齢の狼獣族の二人の死は、

ガスタにとっては目に見えるほど明確だった。


それでも、この世界で自分を生み、

10年近く自分と共に居た両親の死は、

少なからずガスタに悲しみを生んだ。


ガスタの両親である墓地は、

リュイの両親となる夫婦が建て、

そして埋めてくれた。


ガスタはその後に、

リュイの両親となる夫婦に引き取られ、

そのままヴェルズ村で生活する事になった。


自分の両親を弔うまで世話をしてくれた夫婦に、

ガスタは恩返しをする為に、

夫婦を手伝うように雑事をこなした。


その過程の中で、

幼い魔族の子供達で行う魔技の訓練に参加し、

テイガーとレオンと出会い、

ガスタも警備隊に所属する事を選ぶ。


それでも勤勉で真面目で、

実直な馬鹿とも言えるガスタは、

恩ある夫婦に尽くそうとした。





ガスタが二十を超える丁度その時期、

その夫婦に子供が生まれた。


その子の名前は、リュイ。

後にガスタの妻となる狼獣族の女性だった。


狼獣族の子供は、

二種類の生まれ方をする。


一つは、人間に近い姿で生まれる。

つまり『人化』した状態で誕生する。

二つは、獣の姿で生まれる。

つまり『獣化』した状態で誕生する。


この二つの生まれ方の中で、

リュイは『人化』した状態で生まれた。


一般的な狼獣族は『獣化』した生まれる事が多い。

ガスタも獣化したまま生まれていた。


しかし狼獣族のリュイの家系では、

『人化』した状態で生まれる事は、

然程だが珍しくなかったらしい。





このヴェルズ村が、

元々なんと呼ばれていた村か、

覚えている者はいるだろうか。


そう、彼女達の家系は、

人魔戦争で奴隷となった狼獣族だった。

その中で彼女達の家系で何があったのか、

語るべくも無いだろう。


本来の狼獣族から血の薄くなった狼獣族。

リュイはまさに、

その検挙な例だったのだろう。


彼女は赤子の時から少女期まで、

満足に『人化』から完全な『獣化』が出来なかった。

勿論『魔獣化』にも生涯で辿り着けなかった。


それほど血が薄くなったリュイが、

唯一と言えるほど長けていたのは、

一般的な狼獣族より高めの魔力量を保有していたこと。


故にリュイが進んだ道は、

必然として『魔術師』の道となった。

そんな幼く未熟なリュイを、

ガスタは実の兄であるように守り続けた。


ガスタは村で過ごす中で

元奴隷村と呼ばれたヴェルズ村の生い立ち、

そしてそこに住む魔族達の生い立ち、

それ等を知っていく中で、

前世まえの自分を取り巻く事情を思い出していた。


強大なローマが迫る中で、

蛮族ながらも知恵と交友を持つ血族だった前世のガスタは、

そこでローマの兵達と戦い、

自分達の脅かし奪っていくローマと戦った。


その過程で妻を病で亡くし、

妻が残した息子は残した村で強襲され、

ガスタ達の留守中に拉致され、

それを救い出そうと後を追った中で、

ローマの兵達の慰み者となって無残に殺された事を知った。


その時に拉致し奪っていたローマ兵達を、

ガスタ率いる蛮族達は容赦無く殺した。

そして前世のガスタは死ぬまで、

狂戦士として、復讐者としてローマ兵を殺し続けた。





だからこそ、ガスタは警備隊として残り続けた。


かつての自分達の姿を重ねた村で、

ガスタは守るべき者を見つけ、

果たすべき恩義を抱えて生きる事にした。


この世界で、この異世界で。


そんな彼が前世とは違う強さを求め、

彼女の門戸を叩き師弟に選ばれたのは、

言わば必然というものだったのだろう。


セヴィアリュシアという師をガスタは得た。

そして強くなる為に戦う術を学び、目で盗んだ。


そんなガスタを兄のように慕い、

時折だが憂いを見せる彼の姿を見て、

妹のような存在だったリュイが彼に惹かれ、

恋に落ちるのは当たり前だった。


そしてガスタも妹のように慕い庇ってきたリュイに、

いつしか心を許すようになった。


そんな二人は、ガスタが三十五の歳、

リュイが成人した十五の歳に夫婦となった。


一族に濃い血を残したいという思いは、

少しはあったかもしれない。

しかし実の娘に幸せになってほしいと、

そう願ったリュイの両親は、

信頼出来るほど成長し逞しくなったガスタに、

娘リュイを託し、結婚を快く承諾した。


ガスタとリュイの婚儀は実に簡素に済んだが、

それでも祝う為の出席者の中には、

テイガーやレオンと親しみある顔が居た。


そしてその中にも、

ガスタとリュイの師でもあった、

セヴィアリュシアが微笑み拍手し見送っていた。





二人の間に子供が生まれ、

その子は『獣化』したまま生まれた。


狼獣族の血を濃く継いだ証明だった事を喜び、

リュイの両親は顔を擦り合わせて喜び、

自分のような半端者でなくて、

あなたに似て良かったと、

リュイは出産後に涙を流しながら、

ガスタに寄り添って言った。


二人はその子供に『バラスタ』と名付けた。


名前の由来は、

ガスタの名前の一部から文字を取った。

その命名者はリュイだった。


こうして息子が生まれた場合には父親から、

娘が生まれれば母から文字を取り名付けるのが、

狼獣族の習慣だと、初めてガスタは知ったのだった。





そしてバラスタが四歳の年。

リュイが二十歳、ガスタが四十歳の年。

魔獣災害スタンピードが起きた年。


リュイは死んだ。


彼女の死に繋がる行動を取らせたのは、

ガスタとリュイの師である、

セヴィアリュシアの命令だった。





*





ガスタは構え直したセヴィアの姿を見て、

冷静で冷酷な感情に戦士としての目論見と、

奥底に眠る復讐者としての暗く淀んだ感情を同居させ、

睨むようにセヴィアを一瞬見つけ、再度駆け出した。


そのガスタの動作を確認しながら、

セヴィアは再度、左腰に下げた剣の柄に右手を伸ばす。


次の瞬間にガスタが行ったのは、

セヴィアの剣の射程ギリギリで立ち止まった瞬間、

地面の土を蹴り上げた動作だった。


舞い上がる土煙と、

セヴィアに迫る土そのものを、

造作も無く風魔術でセヴィアは払い除ける。


しかし蹴り上げた位置にガスタは存在しない。

すぐに上を見たセヴィアは、

飛び上がり強襲するガスタに視線を向けた。


気付かれる事を承知していたガスタは、

渾身の力を込めた脚力と魔力の鋭気で、

右足から魔力斬撃を放った。


凄まじい速度と威力で放たれる魔力斬撃だったが、

セヴィアは素早く引き抜いた細身の剣で、

それすらも振り払い破ってしまう。


同時に降下してくるガスタに狙いを定め、

逆に細身の剣に溜めた魔力で、

セヴィアなりの魔力斬撃を放って見せた。


それを空中で身動ぎ体を捻って回避したガスタは、

再度地面へ着地し後退する。


セヴィアは態勢を崩さない。


その動作は実に緩やかで、

テイガーの力強さを感じる構えとは、

真逆の印象を抱かせるほどだ。


しかし、明らかにテイガーより戦い難い。

そうガスタは断定している。


力任せの攻撃は流れるようにいなされ、

素早い攻撃も逆に初動の速度で上回り、

その最高打点となる位置に達する前に弾かれる。


あるいはテイガーの方が、

腕力や膂力と言った力は上なのだろう。


しかしセヴィアの力は腕力と膂力では無く、

その初動の速度と力の打点をズラす剣技なのだと、

そうガスタは昔から考えていた。





セヴィアを崩すのであれば、

その初動を発揮できない状態で攻撃を加えるか、

こちらの攻撃をズラしても問題無い程の力で攻撃を放つか、

あるいは、いなすことが難しい攻撃を連打し続けるか。


その三通りの方法が考えられる。


しかしその全てにおいて、

今のガスタには達成できるとは思えない。


ガスタの攻撃力と速度はテイガーに劣る。

雷狼ボルド』も攻略の鍵とはなるだろうが、

今の状態で連発するのは消耗的な危険性が高い。


この結界さえ消えれば、

手立てはいくらでも出来たのだろうが、

その可能性は今の状態では逆に危ういのは、

先ほど説明した通りだと思う。


怒り任せに攻撃しているように見えながらも、

ガスタは必死に打開できる策を考えていた。


そしてガスタの師であるセヴィアリュシアも、

それは考えていた。


『自分をどう攻略してくるのか』


それを自身で考えているからこそ、

セヴィアの対応は素早い。

考え予測できる攻撃であれば、

セヴィアは初動の速さを損なうことなく、

そして逆にガスタを崩す攻撃を放てる。


戦闘技術に関する重要な要素、

その全てをセヴィアリュシアという人物は、

ガスタという相手より遥かに上回っていた。



「……そういえば、師として貴方に戦う術を教えても、『衛士』として戦う姿を見せるのは、初めてだったわね。ガスタ」


「!!」


「こちらの時間も無いの。アイリュシティアとジークヴェルトの行き先を教えず、話し合おうとする態度にもなってくれないのなら……貴方のような駄狼だろうには、今度はお座りを教えてあげるわ」



先ほどから微動だにしなかったセヴィアが、

その足を動かし、一歩動いた。


その瞬間にガスタは悪寒を感じ、

全身の毛を逆立たせて警戒状態を最大に引き上げる。


その判断は正しく、

ガスタの嗅覚と聴覚と視覚、

そして髭から伝わる空気振動が、

フッと消えたセヴィアの姿を感じ取り、

大きく横に体を避けさせた。


セヴィアリュシアの突きが、

ガスタの胴体だった部分に突き刺さるように、

その空間へ運ばれていた。


視覚では捉えられない初動の速さで、

一瞬で十数メートル以上の差を詰めたセヴィアが、

ガスタの胴に細身の剣を刺し込もうとしたのだ。


それをガスタは最大限高めた、

直感と感覚で回避してみせた。

それどころか避けた身体を捻り、

中段の回し蹴りをセヴィアの顔面目掛けて放つ。


それをセヴィアは回避すると、

二の突きを行う為に剣を腕ごと引き、

地面に着いた両足を軸に、

音速を超える二度目の突きを放った。


その速度は音を置き去りにし、

ガスタの胴を再度狙うようにセヴィアは突く。

それを予測し身体自体の防御を魔力で硬め、

ガスタは左手で細身の剣を掴み取ろうとした。


しかし、突き込まれるはずの場所に細身の剣は届かず、

剣先が一瞬停止した瞬間に、

今度は音速を超えた速度の引きをセヴィアは行い、

そして再び音速を超える速度で三度目の突きを行った。


これは蜥蜴族の警備隊長ヴラズが見せた二連突き(ダブルスラスト)を、

セヴィアが剣で実行したということだ。


三度目の突きが狙う場所は、ガスタの顔面。


それを感覚で感じ取りながらも、

知覚では把握しきれないガスタは、

予感に近い悪寒を最大限に働かせ、

なんとか後方に飛び退いて剣先の射程から出た。


あとコンマ一秒でも回避が遅ければ、

ガスタの右目にセヴィアの細身の剣が突き刺さっただろう。

微かに右目の下の毛が斬り飛ばされたことで、

ガスタはそれを予見させられた。





*





そして、セヴィアの猛攻は続いた。


ガスタの懐から離れようとせず、

踏み込みガスタの正面を取り続け、

深く浅い踏み込みを数度繰り返しつつ、

音よりも速く飛び出す速度で剣先を、

ガスタの体へと刺し込む為にセヴィアは突き続けた。


通常であれば音速を超えた肉体は、

音の壁とも言うべき空間を突破し、

その衝撃で肉体が耐え切れず大きな傷となる。

酷ければ骨に異常をきたし、

悪ければ肉が抉れてしまうほどの衝撃。


何故それをセヴィアが回避しているのか。

それは魔技と魔術を合わせた戦技アーツを使用していたからだ。


簡単に説明すれば、

魔技で肉体そのものを強化し、

音の壁を突き破る衝撃にも耐えうるようにし、

更に音の衝撃を緩和する為に、

『音の壁』という空間そのものを『空間魔術』で干渉させ、

音の壁を超える時に発生する肉体への衝撃を無くし、

突進力のバネとして活用していたのだ。


だからこそセヴィアは意図も容易く、

音速を超える突きを何度も行えている。


しかしそんなコンマ一秒を作用する魔技と魔術の精度と速度、

普通の魔族であれば容易く行えない。

あのヴラズでさえ30年以上の修練で編み出し、

そしてようやく二連突きだけで行える難しさなのだ。

むしろ30年でその境地に辿り着けるヴラズも、

一重に天武の才を持っている事に気付く者は少ない。


そんな才あるワザを猛攻として続けるセヴィアの突きは、

二度や三度では利かない回数で行われている。

20年前後の戦闘に関する空白ブランクを抱えるセヴィアが、

何故それだけの戦技を扱えるのか。


それこそ、身体に刻まれた習慣とも言うべき修練が、

彼女の身体に刻み込まれている証拠になるのだろう。


セヴィアが言う空白ブランクとは戦闘技術ではなく、

あくまで戦闘の勘と感性なのだと、

そう言われれば納得してしまうものがあった。





初回の攻撃を回避することに成功しながらも、

続く攻撃をガスタが回避するには、

あまりにも空間が足りなかった。


半径五十メートルの結界。

これがガスタには狭すぎた。


大きく避けてセヴィアから離れようとしても、

五十メートルという距離は長いようで短く、

ガスタの最高速度が引き出される前に結界へ突き当たり、

速度を落として別方向へ移動するしかない。


そしてその瞬間には、

ガスタはセヴィアに追いつかれる。


減速箇所を承知しているセヴィアは、

最高速度で退避できないガスタの後を追い続け、

必ずガスタの正面へ位置取りをしていた。


あるいは、もっと結界内に広さがあれば。

ガスタは魔獣化ビストしてセヴィアを翻弄する速度で動きつつ、

その喉元に牙を突きたてようと考えたかもしれない。


しかし狭いスペースの中では、

魔獣化し最高速度で移動できる距離は確保できず、

ただ的を広くし剣で突かれるという状態。

だからガスタは魔獣化できず、

獣化状態のままセヴィアと戦い続けていた。





その光景を結界の外で見ていた者達の中で、

唖然とする様を見せていたのは、

戻って来た警備隊長達だった。


セヴィア・ガスタの攻防で見る実力が、

明らかに自分達より次元が違うのだと、

それを感じてしまったのだ。


セヴィアの連続突きに対して、

ガスタは回避しながらも何度か反撃し、

あの短時間での攻撃速度の情報に、

視線で追う事すら諦める警備隊長もいる。


この中でガスタとセヴィアの攻防を、

まともに直視し視認できているのは、

巨神族のガブスと、

巨人族の変異進化種のキュプロスとガルデ。

そして突然変異体アルビノの勇者と、

元鬼王のフォウルぐらいのものだろう。


蛇獣族のメージは視覚より特殊器官での熱量で、

ヴェルズェリアは魔力感知で魔力の流れを見て、

それで把握しているという状態だった。


セヴィアの実力も然る事ながら、

元警備隊長で脱退したガスタの実力に、

その場の警備隊長達は武器を落として顔を伏せた。


その二人の戦いの光景は、

警備隊長達に強さの自信を喪失させる理由としては、

充分な光景だったのだろう。


今の自分達の実力は、

恐るべき実力の彼女セヴィアリュシアに対しても、

そして挑み掛かったガスタに対しても、

警備隊長(同等)の地位に置かれるべきではないと、

そう思わせるほどの実力差を感じたのだった。





後日、この事件が終息後、

関わった警備隊長達の中では辞任者が続出した。


全員が辞任する理由を述べた時、

同じ理由を述べた事は、

後日の警備隊の中で有名となる。


『私では実力が足りない』


ただその一言だけを述べた彼等はその後、

自己鍛錬に励み高みを目指そうとする者、

戦いから身を引き自分の村の生産での貢献を選ぶ者、

武器を置き魔術を専門に選ぶ者、

族長候補の座を他の兄弟に譲った者さえ居たという。


それほどにこの戦いは、

その場に居る魔族達には衝撃を与えたのだった。





*





そして衝撃を及ぼす二人の攻防は、

数十合の攻め合いで区切りを見せた。


今まで細身の剣(レイピア)での突きしか見せなかったセヴィアが、

大虎化したテイガー戦の時と同様に、

魔術を使った攻撃を組み合わせてきた。


突きと同時に展開した『風』と『水』の複合魔術ミックスである、

水の刃(ウォーターブレイド)』を剣と同じ形状に変え、

細身の剣と水の剣の合計六本の剣が、

同時にガスタに音速で突かれた。


驚愕しながらも冷静な洞察力で、

ガスタは右手で二本の水の剣を、

左手で一本の水の剣を払い、

回し受けの要領で右足を跳ね上げ前方へ回して、

水の剣を更に二本も払い除けた。


その腕と脚には部位的に『雷狼ボルド』を纏い、

触れた水の剣は物質の電離・分離現象に襲われ、

水から水素と酸素に分離し、電離の熱量で蒸発した。


しかしガスタがその態勢になった時点で、

セヴィアが隙と共に突いてくる。


右足を跳ね上げたままのガスタは、

それを真上から真下へ踵落かかとおしの要領で振り下ろし、

セヴィアの剣先を迎撃するように直撃させた。


ガスタは数十合のセヴィアの突きで、

セヴィアの突きを見切りつつあった。


だからこそ、それを予想できなかった。

セヴィアが剣を離していることを。



「なッ!?」


「正と負の攻略法は違うのよ、ガスタ」



ほんの僅かな時間、

セヴィアが剣を手放しガスタの懐に飛び込む姿の中、

そう口を動かし告げる声をガスタは聞いた。

本来ながらそんな声が聞こえるほどの時間など、

二人の間には無かったはずなのに。





ガスタの懐に飛び込んだセヴィアが行ったのは、

素手を用いた攻撃だった。


しかしテイガーのように拳を握るではなく、

レオンやガスタのように爪を用いた手段でもない。


セヴィアは左足を地面に強く踏み込ませ、

腰を捻り右足を軸にして、

素早く右の手の平をガスタの胴に当てた瞬間、

ガスタの胴に凄まじい衝撃が放たれた。


ガスタの視界が揺れると同時に、

全身に波のような振動が襲うと、

ガスタは足を震わせながら、

その場で膝を着くようにしゃがみ込んだ。


セヴィアはそうなるのを見越したのか、

懐から正面へ避けるように歩き、

ガスタの背中側へ歩いて回った。


その後に膝を着いたガスタに、

セヴィアは振り返る事無く言い放った。



「魔力とは、魔技とは、自分だけを強く強化するのではない。相手の魔力にも、身体にも影響を及ぼす事ができる。昔に何度も教えたはずよ」


「……ッ!!何を、した……ッ!!」


「貴方の中にある魔力を乱しただけ。私の魔力を、貴方の中に送ってね。魔力封殺ブレイクのお返しよ。……しばらくは地面に、お座りよ」



そこまで聞いたガスタは自らの魔力を高め、

セヴィアの魔力封殺ブレイクを弾く為に、

全身から魔力を放出しようとした。


そう、しようとした。

しかし出来なかった。


感覚的には船酔いに近い状態であり、

悪ければ脳震盪のうしんとうに例えられるほどの状態に、

ガスタは襲われていた。


そしてガスタは勘違いをしていた。


魔力封殺ブレイクのお返し』という言葉を真に受けたガスタは、

本当に受けたセヴィアの攻撃を理解していなかった。


今のガスタに理解はできないだろう。

いや、前世のガスタの知識を用いても、

今の自分の体がどうなっているのかなど分からない。


その知識がある時代に、

ガスタは前世で生まれていない。


膝を着いた体を無理矢理に動かすガスタだったが、

やはり脳も身体も震える状態は続き、

座った状態で更に前倒しに上半身が倒れ、

不様な姿を晒すことになった。





*





セヴィアが行った攻撃を理解できる外野の二人、

元鬼王のフォウルと勇者が、こんな話をしていた。



「……仮にです。仮に彼女が『転生者』ではないとしたら、あんな事を出来るのはおかしい。そう思うでしょう?」


「知らん」


「知らんって……」


「なんだ、お前。アイツが何やったか分かってるのか?」



セヴィアを転生者だと疑う勇者と、

それに関して知らぬ存ぜんを通すフォウルは、

ガスタとセヴィアの戦いを観戦していた。


その観戦中にセヴィアが放った、

ガスタに浴びせた掌底しょうていでの攻撃。

あれに勇者は反応を示し、

フォウルも眉をピクリと動かし反応した。


勇者はセヴィアの攻撃の正体を知っていた。

しかし、それを実際に見た事は無かった。



「フォウルさんの時代には、『』というモノはありましたか?」


「そんなもん知らんし、俺の時代なんてモンも知らん」


「……僕の時代では、空想上……そう、空想上のエネルギーのようなものでした。でも、この世界には魔力マナというものが存在する事で、てっきりこの世界の魔力は、その空想である『気』と同じようなエネルギーだと、そう思っていました。……でも違うんです」


「……」


「『魔力マナ』と『』は別でした。僕が過ごした時代とは別の時代に、前世まえの世界ではそれを身体技術として体系化し、具体的な術として扱う人々が居たんです。なにせ、魔力を持たない人間が、魔技を扱う魔族と互角に渡り合う『聖人』などと呼ばれているんですから。……けど、それがこの世界の人間達には浸透せず、微々たる力にしかなっていなかった。だからこそ、機械技術を高めて人間の防衛力を高める案を見せたミハエル……『皇帝』側に付いた。そうする事が、人間を守ると信じて……」


「……お前の身の上話なんぞ聞く気はない。あの女がやってるあの技、それが何か知ってるのかと聞いているだけだ」



逸れた勇者の話を戻すために、

フォウルは耳を小指で穿りながら、

呆れたような声を出した。


それに目を伏せながら苦笑しつつ、

勇者は話を戻した。



「『』は魔力マナと違い、自身の生命力を自身の力に変換する方法です。こちらの世界では『精霊技スキル』などと呼ばれています。人間で扱う者達は多いですが、それも微々たるもの。しかし『聖人』と呼ばれる人間は、それを意識的・無意識的に強大に扱えます。だからこそ、その技術は人間という種族だけに行使できる術と思っていた。……彼女の姉サラちゃん、そして今日、妹の彼女を見るまでは……」


「アイツの姉も使ってたのか」


「『衛士』と呼ばれる者達とは、人魔大戦も含めて何度も戦いました。確かに普通のエルフより手強かったですが、あそこまで強くなかった。彼女達の母親だった女性も、見た限りでは『到達者エンド』に届くような実力者ではなかった。……なんであの姉妹だけが、あんな強い剣士になっているんですか」



それがセヴィアを『転生者』だと疑う、

勇者の理由だった。

その理由には、勇者なりに続きがあった。



「……200年前ほど前、僕があの村に尋ねて追い返された時。アルトマン君と一緒に、エルフの女性剣士が僕を迎え撃ちました。200年振りなのですぐには分かりませんでしたが、その子が当時、アルトマン君の傍に付き従っていたエルフの少女だと気付きました。でも、その子があんな規格外バケモノ染みた強さになっている事の方に驚きましたよ。……僕は驚いて聞きましたよ。『なんでそんなに強くなっているんだ!?』と。そしてあの子の姉のサラちゃんは、こう言いましたよ。『家族のおかげだ』と」


「ほぉ……」


「サラちゃんの妹は、確かに王都の城の中で何度か見た事がありましたけど、生まれた時から大人しい子で、黙って物陰から他の者達を見ている事の多い子だと、城で働いていた人達も言っていましたが、特に気にしていなかったので……盲点でした」



悔やむように目を伏せたまま、

呟きのような声でそういう勇者に対して、

手を額に当てて勇者を一瞥したフォウルが、

吐き出すような問いを聞いてみた。



「……なんで出禁扱いされてたって奴が、ジュリアの城の中の事を詳しく知ってるんだ」


「い、いや……その……」


「……やっぱ、テメェとは同じ扱いにされるのだけは嫌だ」



やはり勇者は勇者などではなく、

ただのストーカーだったのだという事実を知り、

フォウルは溜息を吐き出して勇者を放っておくことにした。


そして放置した勇者から視線を外したフォウルは、

結界の中で立つセヴィアという女性を見る。





特定属性の魔術を組み合わせた『複合魔術ミックス』、

特定魔技の魔技を組み合わせた『複合魔技セッション』、

そして人間の『気』を使った『精霊技スキル』にも複合術は存在する。


人間は『気』を使う事はできても、

『魔力』が無い為に魔技や魔術は使えない。


魔族は『魔力』を使う事はあっても、

『気』などの力を使うことは無い。


人間に関しては仕方ないのだろう。

しかし魔族に関しては、

『魔力』という扱い易い力がある時点で、

扱い難い『気』という力を使う必要は無かった。



ならば、その両方を扱える者がいれば?

そしてその発想に、

無自覚ながらも辿り着いた人物が居た。


魔力マナ』と『』を合わせた『複合戦技アビリティ』。


その技術を編み出し育て、

そして高め合う競争相手を自ら作り、

その相手と長年の修練を積み続けた姉妹がいた。



『……いつだったか、彼女は我々に言った。『私が本気で戦える相手は、姉しかいなかった』と。……どの戦いでも、あの女は本気で戦っていないということだ。虎獣族われわれが、打ち倒された時でさえ、な……』



ガスタに倒されたテイガーが、

セヴィアリュシアが姉サラディシュテアに対して、

それほどの評価を下し、信頼していた事を教えていた。





セヴィアリュシア風に言えば、

この技術はこう呼ぶべきなのだろう。


陰陽いんよう経絡気功けいらくきこう


マナ』と『』を陰陽に見立て、

丹田たんでんで練った二つの力を合わせ、

森羅万象この世の全てに解き放つ術。


時にその力は『破壊』を齎し、

時にその力は『調和』を齎す。


その二つを使いこなす技術を、

セヴィアリュシアは得ているのだと、

フォウルは先ほどの攻防で完全に把握していた。





何故ならその技術を、

『鬼神』フォウルも身に付けていたのだから。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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