表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第序章二節:魔族の村

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/142

第007話 魔族の言語

今回は複数の視点から交互に。


私は目覚めた日から、

裏道の環境とは驚くほど生活は様変わりをしていた。

私が寝ていた場所は、

どうやらこの町の診療所のような場所なんだと、

目覚めたその日に理解できた。


串焼きを三本も食べさせてもらって、

四本目を取り出そうとするおじさんとは、

別の緑色の人に止められて、

その日の食事は終わって、

ベッドのような場所で寝るように言われている感じだったので、

そのまま再び眠りについた。


不思議と先ほどまで寝ていたのに、

お腹が膨れると更に眠気が出てきて、

目を閉じると次の日の朝まで、

ぐっすり眠ることができた。





次の日に私が起きると、

昨日とは別の緑色の茶髪の人が来て、

何か仕事をしながら私の面倒を見てくれた。


この場所で働いている昨日の黒い髪の人と、

今日の茶色の髪の人は、

女の人だというのが理解できた。


体付きがちょっと違うのと、

少しだけ屋台のおじさんより、

体と雰囲気が柔らかい感じがしたから。


それから昨日の黒髪の人が来てたので見比べると、

茶髪の人が若い人なのかなという印象を持った。

多分だけど、前世のお姉ちゃんよりは年下なのかなと思う。


お粥に似た食事を持ってきてくれて、朝はそれを食べた。

昨日のおじさんが食べさせてくれた串焼きより、

味は全然薄かったけど、生ゴミよりずっと美味しい。


それを食べ終わると、

にっこり笑って茶髪の人が、

食べ終わった食器を持っていってくれる。


その後に茶髪のお姉さんと黒髪のおばさんが、

白っぽい服を着て私のベッドまで来た。


二人は何かを話しながら、

私に話しかけてくる。

でも言葉が分からなかった。


私は日本語を話して、

言葉が分からない事を伝えたけれど、

やっぱり日本語も伝わらない。


二人は困った顔をしながら、

おばさんのほうがお姉さんに、

何か指示してお姉さんが傍から離れた。


戻ってきた時に、

お姉さんは複数の本を持ってきた。


それを私に一冊一冊と渡していって、

それを指差しながら何かを伝えてくる。

多分だけど、

その文字が読めるかの確認をしたいんだと思った。


私はそれを全部見た。


でも、どれも何を書いてあるのか分からない。

多分文字なんだと思う。

そして本の中身を見ると、

絵と一緒に文字が付属するように書かれていた。


もしかして、これは子供向けの絵本なのかな?


そこには、動物みたいな絵や、

人の姿に似た何かの絵が描かれている。

少しだけパラパラとページを開いていくと、

一つだけ分かりやすい絵があった。


ワニのような口に大きな体。

背中には翼が生えて、大きな尻尾。


前世でお兄ちゃんが持っていた漫画で、

それとよく似た動物を見たことがある。

正確には空想上の動物なので、

実物なんて見たことは無い。



「ドラゴン?」



書かれている文字は違うけど、

多分ドラゴンだ。


他にも見た事がある動物がある。

クマやイヌ、ネコやウサギ、

他にも知っている動物の絵が描かれている本があった。


それを一つ一つ、

日本語で発音しながら喋っていくと、

二人は少し神妙な顔をしながら私を見ていた。


二人の表情を見て、

何か自分が変な事をしたのではないかと、

少しだけ不安になった。


多分ソレが自分の表情にも出ていたようで、

そう思って二人を見ていると笑って頭を撫でてくれた。

それから黒髪のおばさんだけ席を離れて、

茶髪のお姉さんが本を読む私と一緒にいてくれた。


茶髪のお姉さんは鳥の羽の先に黒いインクをつけたモノを私に渡し、

紙のような茶色いものを渡してきた。

本に書かれている絵を指しながら、

手を動かして何かを書くように言われているのを理解する。


文字を書くのかなと思い、

私は指されている絵の動物の名前を日本語で書いた。


絵で描かれているのは、多分イノシシだと思う。

漢字・ひらがな・カタカナ・英語のどれで書けばいいのか分からない。

分からなかったので、とりあえず全部で書いてみた。


『猪』『いのしし』『イノシシ』『Boar(ボア)』この四つで書いてみる。


するとお姉さんは驚いた様子を見せて、

他にも色んなものを指したので、

私は言葉を書いてみせた。


まだ習っていない漢字や英語はあったけど、

分かる絵には分かるだけ文字を書いて言葉を見せてみた。


多分、紙に十枚くらい書いて見せた後、

それを見ながら表情を苦々しくさせつつ、

お姉さんは私に渡した本とは別の本と見比べながら何かを調べる。


少しそれを覗くと色んな文字がそこには書かれていて、

どれも私には読めないものだった。

多分だけど、あれは言葉の辞典のようなものかもしれない。


覗いている私を見てお姉さんは、

一緒に本を見る?と言うように、

私に手招きして本を一緒に見せてくれる。

これは?と聞くようにお姉さんは言葉を指していくけど、

私は首を横に振って読めない事を伝える。


そういうやり取りをしていく中で、

一つだけ見覚えのある文字が見えた。


正確には、私の知ってる文字ではない。

けれど、とてもよく似た文字なのは確かだ。

その文字は、アルファベット文字に似ていた。


『a』『b』『c』『d』の形に近い文字が見えて、

私はそれを指して分かる事を伝える。


お姉さんはそれを見てまた驚いた表情になったけれど、

私をベッドに戻して『待ってて』と言う手振りで伝えてくる。


そうして素直に待っていると、

誰かが訪れたような家の音が聞こえる。


さっきのお姉さんとおばさんと、

誰かが喋っている声が聞こえるけれど、

何を話しているのか分からない。









目の前の椅子に腰掛けたヴェルズに対して、

その正面の革椅子に座るジスタが、

落ち着きつつも不思議そうに聞いた。



「ヴェルズ様、今日はお昼過ぎにお越しになる予定だったのでは?」


「早めに用事を済ませたの。ジスタ、メイファ、二人とも無理をお願いしてごめんなさい」


「い、いえ!ヴェ、ヴェルズ様が頭を下げられることなんて……」



ジスタの診療所を訪れたヴェルズは、

ジスタに診療部屋の隣の部屋に通されていた。


その後にメイファが部屋に入り、

ジスタの隣に座るように椅子に腰かけ、

二人とヴェルズが向かい合い、

間に机が挟んで談合が開かれていた。



「それでメイファ、あの子はどうだったんだい?」


「あ、はい。それが、その……」



ジスタの問いにメイファは持ってきた本と、

少女に書いてもらった紙を机に広げる。

ジスタとヴェルズはそれを見ながら、

そこから導かれる結論に驚いていた。


確認したメイファ自身でさえ、

まだ困惑さえ残しているのだ、無理もない。



「どうやら見た目以上に知識はあるようなんです。ただ、文字や言葉は私達とは完全に違うようで……」



少女の検査をしたメイファが、

ジスタとヴェルズに説明するように話しながら、

少女の状態を伝える。


まず、魔族が使っている共通の魔族文字と、

少女が使っている文字や言葉が違うこと。


幼いながらに物事に対する知識は意外と豊富で、

教養がある程度感じられること。


そして魔大陸・人間大陸の言葉をまとめた辞典を見せると、

ある文字に反応を見せたこと。



「……確かこの文字は、何万年も前に消失した人間大陸で使われていた文字ね。今ではこれを使う人間さえ、ほとんどいないはずだけど…」


「あ、あとですね。この文字の他に、2つか3つの言葉を使っているみたいなんです。でも、知恵ある魔族でも魔族文字と人間文字の2つを書いて喋れる氏族は滅多にいないのに、あんなに小さな子がこんなに多くの文字を書けるなんて……」


「……確かに信じられないねぇ。エルフ族でもあの見た目なら、多分生まれて五年も経ってないはずだよ。そんな短い時間で物を覚える知識があるなんて……天才なのか、それともエルフ族とは違う魔族なのでしょうかね、ヴェルズ様?」


「…………」



メイファとジスタの疑問に、

ヴェルズは視線を細めて思考する。


ジスタにとってはヴェルズは医療術に関する師匠であり、

メイファにとっては大師匠にあたる。


何か悩める事があれば、

大抵の事はヴェルズに話せば知識的・技術的な部分は解決できる。

それほど村の各氏族達が信頼を寄せるヴェルズが悩むほど、

あの少女の存在は稀で奇異な存在なのだ。



「……やっぱり、ジュリア様が言っていた事は本当だったのかしら?」


「……ヴェルズ様?」


「いえ、なんでもないわ。今、あの子は何をしているのかしら?」



ぼそりと呟く言葉をメイファは聞き取れなかったが、

その後にメイファにヴェルズは少女の事について確認する。



「え、えっと、まだ上手く歩けないようなので寝台で寝かせています。先生やヴェルズ様が大丈夫であれば、少し歩いたりさせるのも……」


「そうね。まだ小さな子なのだし、寝かせるばかりより散歩をさせてみるのも良いかもしれないわ」


「でも、まだ怯えるような顔を見せる時があるからねぇ。あんまり人通りが多いところは、避けたほうがいいねぇ」


「は、はい」



ヴェルズとジスタの助言を聞き、

メイファは今後の少女の事を確認すると、

椅子から立ちヴェルズに一礼して部屋から退出する。


実は昨日、少女が起きたと知らされたヴェルズは、

夜中にジスタの元に訪れ、少女の容態を聞いていた。


息子の対応に反応する少女の様子、

そして精神的に感じている他者へ恐怖する様子など、

ヴェルズとジスタで今後の少女の事を粗方決め、

少女と幾分か歳は離れていても近いメイファに検査などを頼んだのだ。


これはメイファに対する医療術に対する修行にもなるということで、

双方の合意の下でメイファに委ねている。


メイファが退出した後、

ヴェルズとジスタは改めて、

少女の書いた文字を書いた紙を見つめた。



「……ヴェルズ様、やっぱりあの子は王都の王族の子、とかでしょうかねぇ?」


「それは無いでしょう」



ジスタの問いにヴェルズは即答するように返す。

考える間も無い返しにジスタは若干の混乱を示した。



「でもねぇ、奴隷にされた子にしては教養が行き届いてる。しかも、あの赤い瞳と、白銀の髪。魔王ジュリア様の子孫ではないんですかねぇ?」


「基本的にエルフ族は瞳の色は青、髪は金髪。けれどジュリア様の場合は、ハイエルフ族の突然変異体アルビノと言われているわ。多分あの子も、突然変異体アルビノなのでしょう」


「……なるほどねぇ、あれが突然変異体アルビノですか。初めて見ましたねぇ」



この世界では極稀に動物・魔物・魔族・人族に、

突然変異体アルビノ』と呼ばれる通常個体とは別の、

体毛・瞳の色をした存在が生まれるという。


魔物で現れる例は極端に少ないが、

動物や人間、魔族の中で、

そういう個体が現れる例は挙げられている。


魔王ジュリアもハイエルフ族の突然変異体アルビノと言われており、

それ故か通常のハイエルフ族の数十倍の魔力量を宿していたという。


他にも魔王ジュリアの時代に現れる最初の勇者が突然変異体アルビノで、

ジュリアと同じ赤い瞳で白髪だったと伝えられており、

突然変異体アルビノは当時の人々から、

強力な個体と成りうる存在とわれていた。


しかし、魔王ジュリアが行方不明になってからは、

突然変異体アルビノの存在は魔大陸では今まで確認されていなかった為、

自然とそういう風評も薄くなり、

人々の知識からも薄れさせていた。



「そういえば、うちの息子ジャッカスにあの子を預けるという話、どうなんでしょうかねぇ?」


「そうね。大丈夫なら二日後には私があの子を預かって魔族語の読み書きと喋りを教えましょう。話せるようになったら、あの子自身の意思で決めてもらう形にして」


「ヴェルズ様が直々に?メイファに頼めば、あの子でも教えられるとは思いますがねぇ」


「できるだけエルフ族として、鈍りの少ない発音で覚えてほしいの。それに、二人には皆を医術で助けてもらわないといけませんからね」



ヴェルズの気遣いに、

ジスタは頭が下がるばかりだった。

確かにあの子だけに構えるほど診療所は暇ではない。


ジスタとメイファだけでは出来る事は限られるが、

それでも警備隊が魔物に襲われて怪我をしたり、

病を患って苦しむ人はこの町にもいくらかは存在するのだ。

二人の医術がこの町の助けになっているのは、

誰もが認めるものだった。



「私はジャッカスの所に行って今の話をするわ。少しの間、あの子をお願いね。ジスタ」


「分かりました、ヴェルズ様」



少女が文字を書いた紙はヴェルズが持ち帰ることになった。

魔族語を覚える為の簡易的な勉強道具を準備して、

魔族語を覚える助けにする為に。


ジスタも戻って診療所を開ける準備を始める。


準備を終えて診療所を始めると、

何人か続々と入ってきて診療される為に順番待ちをしていた。

メイファが患者の名前を呼び、

ジスタが診察して症状の状態を確認し、

調合済みの丸薬や塗り薬を渡していく。


ジスタの診療室の隅には、

少女が寝かされていた寝台が置かれ、

少女も一緒に連れて来られていた。


少女は始めこそ、

ジスタと患者達の診療風景を不思議そうに見ていたが、

ジスタが患者に少女の事を軽く説明して、

患者が少女に向かって挨拶すると、

徐々に怯えは無くなり、

軽く手を振ったりお辞儀したりと、

挨拶と思われる行動を返すようになっていた。


お昼までそういう流れが続いて、

軽くジスタとメイファがご飯を用意して、

少女と一緒に食事をする。


木皿と木のスプーンで出来た食器に、

牛頭族に貰っている牛乳を煮て、

調味料と食材を入れたスープを食べると、

少女が美味しそうにそれを食べてくれる姿に、

二人は微笑んだ。



昼を過ぎて診療所に運ぶ人の足は少なくなり、

ジスタはメイファに頼み、

軽く少女を外に出して遊ぶことをお願いしてみた。


皮の靴を履かせて、

日差しを遮るように、

やや大きめの帽子を少女に被せてみる。


少女は不思議そうに被せられた帽子を見ていたが、

メイファに抱えられて外に出ると、

外の光景をキョロキョロと見ていた。


人通りが多い場所は避けるようにジスタに言われていた為、

中央広場や商店通りは行くことはなかったが、

メイファが少女を降ろしてゆっくり町を見ながら歩いていると、

少女は不思議そうに、

けれど少し微笑みながら表情で周りを見ていた。


通りがかりの魔族達が、

メイファと少女を見て二人に挨拶すると、

少女は魔族語で挨拶を返したとメイファに聞いた時、

ジスタは驚いたものだ。


恐らくは発音を真似て挨拶を返したのだろうが、

まずソレを挨拶だと理解して返すべきだと判断している事に、

ジスタもメイファも驚いたのだ。





やはり天才なのか、

それとも見た目より歳を経ているのか。


ジスタとメイファはそれぞれ考えたが、

その答えはまだ少女からは得られないものだと、

二人は理解していた。









赤い瞳の少女は初めて、

この町だと思われる場所の裏通りではなく、

表通りを普通に歩いていた。





靴と帽子を着せられて、

茶髪のお姉さんに背負い抱えられて、

初めて裏道とは違う外を、

私は見ることができた。


裏道から見る町とは違い、

町並は建物が等間隔に建ち並び、

その中を川が流れていて、

人がいっぱい通っていた。


遠くからでは分からないけれど、

ずっと向こうでは商店が並んでいる場所や、

大きな広場もあるように見える。


前世のお兄ちゃんが趣味で見ていた映像で見覚えがある。

まるでヨーロッパ中世期を連想させるような風景だ。


住んでいる人は前世とは全然違うけど、

なんだか御伽噺おとぎばなしで出てきそうな風車小屋や川に架かる橋に、

とてもドキドキしてワクワクする事ができた。


お姉さんが私を降ろして、

手を繋いでゆっくりと歩くように促してくれる。


まだ上手く力が入らないけれど、

意識して足に力を入れてゆっくり歩く。

歩幅が違うけれど、

お姉さんは私の歩くスピードに合うように歩いてくれた。


石畳の道を歩いていると、

通りかかる人達がこちらに向けて何か言って、

お姉さんも何か言って軽く会釈しながら道を歩いている。


多分だけど、

あれはこの世界の挨拶の言葉なのだと、

私は理解することができた。


次に通りかかる人にお姉さんが挨拶した後、

通りかかる人も挨拶をして、私も同じ言葉で挨拶をしてみる。



「《こんにちは》」



多分、日本語だと『こんにちは』になる言葉だと思う。


私が少し大きめに声を出して挨拶すると、

通りかかる人が少し笑ったようにして、

手を上げて通り過ぎた。


ちゃんと挨拶が通じているんだなと安心すると、

お姉さんが少し驚いた顔をして、

頭を優しく撫でてくれた。


私は診療所に居たときに、

黒髪のおばさんと訪れる人々の会話を聞いて、

少しだけ言葉の発音に注目していた。


少し聞いただけだったが、

やっぱり発音自体はそれほど難しくない。

今回は授業で習っていた英語を思い出して、

それを応用して言ってみた。


それから診療所の周りを一周するように歩いて、

診療所に戻る時にお姉さんが何か言葉をおばさんに言って、

おばさんもそれに返す言葉を言う。


多分だけど、その言葉の意味は、

「ただいま」と「おかえり」なんだと理解できた。


私はお姉さんの言葉を真似て、

「ただいま」と思われる言葉をおばさんに向けて言うと、

おばさんもお姉さんも驚いた顔をして私を見たので、

間違ったのかなと少し不安になったが、

おばさんが「おかえり」という意味の言葉で返事をしてくれたので、

多分合っていたのかなと安心することができた。





それから、昨日の屋台のおじさんが、

夕暮れ時に私の所に来た。


多分ここはおじさんの家なのかなと思い、

「おかえり」とこの世界の言葉で言ってみると、

おじさんは驚いておばさんに何か言いながら、

嬉しそうに私を抱き寄せて頭を撫でながら「ただいま」と言ってくれた。


その時に気付いたけれど、

おばさんとおじさんはとても良く似ている。

それでいて、おばさんの方がおじさんより、

多少は老けているように見えた。


もしかして、

おばさんとおじさんは親子なのだろうか。

茶髪のお姉さんは、

おじさんの娘か妹さんなのだろうか。


言葉を少しだけ理解できたけど、

まだ私はこの人達の事を全然知らないんだと思い、

少しだけ寂しくなった。


おじさんが持ってきてくれた串焼きを食べると、

とても美味しくて、

私が美味しそうに食べるのを見て、

おじさんが笑って頭を撫でてくれる。


食べ終わってから、

おじさんが私に向かって何かを喋りながら、

身振り手振りで話してくれている。


おじさんは自分を指差しながら、

同じ言葉を喋っている。

何度かそういう事を繰り返すおじさんを見て、

その意図をやっと理解できた。


多分、おじさんの名前を教えてくれていたのだ。



「《ジャッカス?》」



おじさんの発音を真似て、

おじさんの名前を言ってみる。

するとおじさんは凄く嬉しそうな顔で、

私を抱き寄せて頭を撫でてくれた。


それからおばさんの方にも、

おじさんは指を向けて何か喋っている。

今度は二つの言葉だ。

一度おじさん自身に指を向けてから、

おばさんに指を指す。

そして何か言葉を二つ言う。


何度か聞いて、

二つ目の言葉は名前なんだと分かった。

一つ目の言葉はおじさんとおばさんに、

関連付けする言葉なのだろうか。


もしかして、お母さんと言っているのかな。

そう考えて、続けるおじさんの言葉を頷いて、

二人を見て指を指しながら喋ってみる。



「《ジャッカスのお母さん、ジスタ?》」



そう言うと、おじさんはさっきより嬉しそうに。

そしておばさんは驚きながらも、

嬉しそうに私の頭を撫でてくれる。

二人の様子に私も嬉しくなって、笑って二人に接した。


それからお姉さんが後から来て、

おじさんがお姉さんを私の側まで来させて、

お姉さんを指差しながら何か言葉を言う。


多分それも名前だと思い、

私は「《メイファ?》」と言ってみた。

お姉さんはそれを見て凄く驚いて、

やっぱり私の頭を撫でてくれた。

とても嬉しかった。


三人を交互に見て、

「《ジスタ、メイファ、ジャッカス》」と、

それぞれ指して名前を言う。


お姉さんはパチパチと手を叩いて、

おじさんは頭を撫でてくれて、

おばさんは私を観察するようにジっと見ている。


それからおじさんは私を指差して何かを言い、

それからおじさんに指を戻す。


その動作と言葉は初め全く分からず、

少しだけ混乱した。

おじさんは少し残念そうにしていたが、

お姉さんが今度は何かをおじさんに言い、

私の正面に立った。


そしてお姉さんは、

自分を指差しながら「《メイファ》」と言い、

今度は私に向けて指を向ける。


この行動で初めて、

私の名前をおじさんとお姉さんは聞いているんだと理解できた。

理解はできたけれど、

この世界の言葉で私の名前を、

どう発音すればいいのかが分からない。





私は今朝の事を思い出して、

この世界にあるアルファベット文字に似た字で、

私の名前を書こうとする。


お姉さんに渡されていた紙と羽ペンとインクが、

近くの机に置かれていたので、

それで自分の名前を書いてみる。



『Airi(愛理)』

それが私の名前。



私の名前は、愛理あいりという名前だった。

誰が言ったのかは覚えていないが、

名前の由来は、

『愛を理解できる子になるように』という意味だったらしい。


私が書いた名前を見て、

お姉さんは少し離れて一冊の本を持ってきた。


そこにはアルファベットに似た文字が羅列されている内容で、

お姉さんとおばさんが文字を探しながら、私の字と本を見比べていく。


それを終えると、

お姉さんは私の書いた名前を指差しながら、

私に何かの言葉を告げた。

その言葉を私は復唱し、

それが彼等の言葉で私の名前の発音になるのだと知った。



「《アイリ?》」



自分を指差しながらそう言うと、

おばさんとお姉さんは笑顔で頷いてくれて、

おじさんは私の名前を何度も呼んで喜んでくれた。


言葉は違うけれど、

私の名前を言ってくれる三人の姿に、

私も少しだけ涙を流しながら笑顔になれた。


こういう時に「ありがとう」という言葉を、

伝えられたら良いのにと思ったけれど、

その言葉はまだ教えてもらってなかったからまだ言えない。


言葉を覚えられたら、

ちゃんとお礼を言いたい。


そう思いながら私は、

お姉さんの持っているアルファベットの文字が書かれた本を指差して、

両手を前に出して貸してくださいという動作でお願いしてみる。


お姉さんはそれを察してくれたのか、

その本を私に貸してくれた。

そこには、多分お姉さん達が使っている言葉の文字と、

アルファベット文字が対比され並べられて書かれていた。


多分、アルファベットの『a』に当たる文字が、

横に書かれている文字なのだ。


名前を書いていた紙にもう一度、私は文字を書き始める。

本を読みながら、彼等の言葉で文字を書いた。

通じるかどうか分からないので、

単文の一文字だけ書いて三人に見せる。



『《ありがとう》』



私の書いた言葉が、

彼等の言葉の文字で正しく伝わっているか分からない。

そんな不安もあったけれど、

お姉さんが辞書と比べて向こうの言語で翻訳して、

それをおばさん達に伝えると、

おばさんやお姉さんは私に頷いて、

理解できていると頷いて伝えてくれている。


おじさんは顔を俯かせて、

目の部分を片手で覆って少しだけ震えている。

私はそのまま続けて、

その言葉に付け足すように言葉を書いていく。



『《わたしを、たすけてくれて、ありがとう》』



そう書いて、ちゃんと笑顔で三人に見せた。


おじさんは涙を流しながら、

思いっきり抱きしめてくれた。

お姉さんやおばさんも、

目を潤わせて抱きしめてくれた。


ちゃんと伝わっていたのだと、

私は安心したのだった。





その日、私は少しだけこの世界の文字と言葉を学んだ。

そしておじさん、おばさん、お姉さんの名前を教えてもらい、

言葉でも文字でも書けるようになった。


おじさんの名前は、『ジャッカス』だと覚えた。

おばさんの名前は、『ジスタ』だと覚えた。

お姉さんの名前は、『メイファ』だと覚えた。


そして私の名前は、この世界では『《アイリ》』だと覚えた。


何も分からなかった世界で、

初めて覚える事ができた名前がこの人達で良かったと、

私は後に思うのだった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ