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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章六節:奪還者(後編)

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第067話 夢を見た代償


落ち着きを取り戻したヴェルズは、

本格的に勇者をどうするかという、

本題へ移る決断をした。


そして腰掛けていた椅子から立ち上がり、

改めて勇者の方へ冷たい視線を向け、

無表情に近いまま口を開いた。



「――……勇者。お前がなんで此処ここにいるのか。首無騎士デュラハンの姿を模してまで、村に、そして警備隊に紛れ込んだのか。――……そして500年前に私達を襲い、ジュリア様を何処かに連れ去り、300年前に現れた時には戦おうともせず、何も語ろうとせず去っていったあの時の事も、全て話してもらうわ」


「!……そ、それは……」


「――……言わないのであれば、今回の件がどんな形で決着したとしても――……人間大陸、そして人間に対して、『ヴェルズェリア=フォン=ライアット』の名を掲げ、私は人間という種に対して宣戦布告と共に、人間への攻撃を開始します」


「!?な、なっ!?」


「!!!」



ヴェルズが発する言葉に対して、

勇者は驚愕の表情を浮かべ、

更に周囲に待機していた警備隊の面々や、

勇者に向けて剣を突き立てるセヴィアも、

同じ様に驚愕の表情を浮かべたと同時に、

鋭い目付きと口を引き締めた表情へ変化した。


ヴェルズの発した言葉の意味は、

まさに彼女の言う通り、

人間という種族に対しての宣戦布告であり、

約1000年ぶりに人間と魔族で行われる、

大規模な戦争を引き起こす意味を持つ。


それは虚構によって招く事態ではなく、

魔大陸を統べる女王(ヴェルズェリア)』の名を掲げて、

彼女を慕って敬う魔族達が、

そして畏れ恐れる者達を巻き込んで挙行される、

魔族による現実的で大規模な戦争を意味した。


その先に行き着く戦争の名は、

第二次人魔大戦。


人間と魔族が再び対立し、

両大陸を巻き込む戦争の勃発を、

ヴェルズは覚悟を持った上で、

冷酷で冷たい視線と表情を、

地面で転がされている勇者へ向けて告げた。





ヴェルズはこの時、

一瞬だけフォウルに視線を向けた。


ヴェルズの宣戦布告を聞いたフォウルは、

特に表情にも態度にも変化を見せない。


ただヴェルズには視線を向けず、

勇者に顔を向けながらも、

何処か遠くを見ているような虚無感を、

横顔から感じさせていた。


その表情に鋭くさせていた視線を一瞬歪ませ、

自分の中に抱いていた決意が揺らぎながらも、

ヴェルズは一瞬で表情を戻し、

改めて勇者へと視線を戻した。





*





戻した視線の先で転がされている勇者は、

慌てるように口を開いた。



「ま、待ってくれ!僕は今回の件に関しても、500年前に関しても、僕は君達に対して何もしてはいない!!そ、それに、君に付きまとうような行為も、500年前にジュリアが消えたという話を聞いてから、全くやっていないよ!!」


「500年より前は、ストーカーやってたって認めるのかよ……」



勇者の最後の部分に呆れたように呟いたのは、

その頭を押さえつけていたフォウルだった。


しかしそのフォウルの言葉も意に介さないように、

勇者はヴェルズに対して言葉を繋げた。



「それに、もしその件で責任を問うのだとしたら、僕に対してだけのはずだ!なぜ君は、またあの人魔大戦たたかいを!?もうあんな戦いをしない為に、僕や君達は――……」


「人間が、''また''私の大事なものを奪ったからよ」



抗弁を吐き出す勇者に対して、

ヴェルズはその一言だけを呟いた。


その口調と声色は極めて低く、

周囲で待機している者達は、

ヴェルズから発せられる凄まじい魔力の波動を感じ、

身の毛がよだち、毛が無い者達は鳥肌を立たせた。


その魔力には怒気以上の憎しみの感情が含まれ、

ヴェルズの表情は灯される明かりが影となり、

漆黒の影を覆う顔から見える蒼い眼が、

揺らめきながら歪んだように変わり、

憎しみの瞳を見せていた。


その憎しみの表情を見た勇者は、

強行へ走ろうとするヴェルズへの抗弁を、

閉じざるをえなかった。



「人間が私から、私達から何を奪ったのか。――……忘れたとは言わせない。絶対に忘れさせはしない」


「…………ッ」


「人間が私の故郷を攻めてきた時。その勢いを止められなかったライアット大森林の一族は……父様とうさまと森の戦士達は、私達家族を人質に捕られ、抵抗を止めた。そして父様とうさまと森の戦士達を、その家族の目の前で殺し首を斬り捨て、燃える森へと投げ捨てた」


「…………」


「抵抗する母様かあさまや女達の手足を剣で突き刺し、犯して殺した。親しかった幼い友や、気の優しい同族達を捕え、奪い、犯し、私から全てを奪った。――……私はお前達人間という種族を、一生許さない。許すつもりなど毛ほども無い。――……そう昔に言った事さえ、お前は忘れたのかしら?」


「……忘れるはずが、ないよ。それを招いたのが人魔大戦せんそうで君達に聖剣を振るった僕だという事も、ちゃんと分かっているつもりだ。だから、僕は君にこれ以上、苦しんでほしくなくて――……」


「お前の偽善に付き合っている余裕は、今の私には無いよ」



振り絞るように出た勇者の言葉も、

斬り捨てるようにヴェルズは言い放った。


そこには今の魔族達が知っている、

魔大陸に平和を齎した信仰の対象たる『大魔導師ヴェルズェリア』ではなく、

影を纏わせた憎しみで歪む顔と言葉を宿す、

狂気の魔女(ヴェルズ)』の一面が垣間見えていた。



「私では『勇者おまえ』は殺せない。殺しきれない。でもね、人間の数百万程度なら容易くほふれるのよ。……私だけでもね」


「ッ!!」


「そうしないのは、私とジュリア様が、友の願いをぬぐいきれなかったから。それさえ無ければ今すぐにでも、野に放てば害ばかり齎す『害獣にんげん』など、一匹残らず消し去る事など躊躇ちゅうちょしない。再び私の大事な物を奪うようであれば、今すぐにでも人間全てを滅ぼしに、お前達の大陸に再び赴きましょう」


「や、やめるんだ……」


「私という『魔女バケモノ』を野に放ちたいというのであれば、何も明かさず何も伝えずに黙っていなさい。その選択をした時点で、お前を人間大陸から遥かに離れた地へと転移させた後に、お前が守ろうとした国も、人間大陸に残った人間達も、全てを灰にして一片すら残さずに滅ぼしてあげる」


「そ、そんな事させるはずがッ!!!」


「だったら私を殺しなさい。今すぐに」


「!?」



看過できないヴェルズの発言に驚き、

反射的にそう返した勇者の言葉に対して、

ヴェルズは冷たく静かにそう述べた。


その表情は憎しみとは全く違う、

無表情なものへと変化しており、

その言葉を無表情なまま告げたヴェルズに、

勇者は驚きながら何かに耐えるように、

下唇を噛んで表情を強張らせ、目を伏せた。


勇者のその表情を確認したヴェルズは、

黙った勇者に代わって口を開いた。



「――……本当に、お前は1000年前から何も変わっていないわね。いいえ、むしろ悪化しているのかしら」


「…………」


しと思える事に乗せられ、しと思える事に抗おうとする。そしていざ、しと思えた事に揺らぎが生じると、貫き通すこともせずに、ただ自分が良しと思える行動へ移り変わる。――……お前のような者が『勇ましき者(ヴレイヴ)』などと呼ばれ、人間達から持てはやされていたのだと思うと、吐き気を通り越してあきれが来るわ」


「……ッ」


「ジュリア様がいない今。私を殺せば、人間大陸に対する後顧こうこうれいも無くなる事を知りながら、そうやって偽善に駆られて私を心配するフリをして。そんな偽善ことに今まで付き合っていたのは、人間からも魔族からも見捨てられたお前への同情心からだったのよ。それさえ分からない?」


「……知っていたよ。知っていた。だがら、僕は君に……君達に何かできないかと……」


「……結局お前は、今の私に何をしたいの?それとも、何を今の私がすれば満足なの?――……この際、はっきり言っておくわ。その問いにさえ答えられないお前に、私は何も求めない。この魔大陸に棲む者達、魔族の一命たりとも渡さないし、奪わせはしない。――……もし奪うのであれば、それはお前達が私達に奪われる事を許した事と同義だということを、覚悟するべきだったのよ」


「……僕は……ッ」


「それが嫌なら、私を殺しなさい。そして奪いなさい。私の故郷と家族を奪ったように。今度はこの地に棲む者達から全てを奪い、全て犯しなさい。その時に私が乞う事があるとすれば、私のような『魔女バケモノ』を生み出さないように、女子供だろうと容赦や油断などせずに殺しなさい。――……と、いうことだけよ」


「ッ……僕はもう、そんな事は絶対にしない。……それだけは、誓ったんだ……」



無表情のまま告げるヴェルズの言葉に、

振り絞るように零れる勇者の言葉が、

小さな声ながらもその場に静かに伝わった。


警備隊の面々に留まらずセヴィアやフォウルも、

そのヴェルズの言葉に、

静寂を余儀なくされていた。


ヴェルズは無表情ながらも、

その言葉は全ての真意を捉えている言葉だと、

その場にいる全員が感じていた。





*





人間との共存はありえない。


それが2000年という時間の中で生き、

人魔大戦という争いを経験した、

ヴェルズが得た答えだった。


互いに奪い合い、互いに奪われ合う。

どちらかが奪い尽くされるまで、

人間と魔族の戦いは続くのだと、

ヴェルズはさとっていた。


例えどれだけ人間と近しい姿をしていても、

どれだけ個という存在同士で親しくなれても。


人間と魔族では、決定的な違いがあった。

そしてそれを互いに嫌悪し続ける限り、

そして嫌悪し続けた結果として生まれた、

狂気の魔女(ヴェルズ)』のような存在が生まれ続ける限り、

第二次・第三次と、永遠に人魔大戦は続く事を、

ヴェルズは知っていた。


そして人間という種族でさえ、

同じ『人間』という括りの中にいるにも関わらず、

小さな理由で戦争が起きている事を知っていた。


肌の色や髪の色、目の色など。

身体的特徴の差異で人間同士が差別し合い、

たたえる神や指導者の思考が異なるという、

そんな理由で国を分け、言語も分け、

互いに理解した上でも争い合うという愚行を、

何千・何万年という中で続ける人間達に、

ヴェルズは何の希望も抱いてはいなかった。





唯一、そんなヴェルズや、

それと意見を同じくしていたジュリアが、

塵ほどの可能性と呼ぶべき、

一抹の夢を魅せた相手。


それをせたのが、

人間との混血児である、

半大鬼ハーフオーガのフォルスという人物だった。


彼は出会ったジュリアとヴェルズに対して、

魔族全体の共存と、更に人間との共存を話し、

何度もジュリアとヴェルズと対峙し、

その間に拳以上の言葉も交えた。


ジュリアとヴェルズはそんな夢物語など、

絶対に不可能だと思っていた。

しかし何度も共に戦い語り合う中で、

フォルスという存在に光を見出したのもまた、

ジュリアとヴェルズだった。


彼ならばあるいは、

魔大陸で全魔族との共存もできるかもしれない。

そしてもしかしたら、

人間という種とも共存していけるように、

この世界を変えてくれるかもしれない。


そんな希望の光を、

フォルスという人物に二人は見ていた。


だからこそ敵である勇者との和解という、

ヴェルズの心情を考えればありえない事を実行し、

人魔大戦を終わらせる為に、

魔大陸の留守をドワルゴン達に預け、

和平を承諾した『皇帝』へ会う為に、

勇者に道中の道案内を頼み、

ジュリアとヴェルズの二人は勿論、

フォルスも人間大陸の帝国本土の帝都まで赴いた。


人間と魔族の共存の為に。

人間大陸と魔大陸に棲む者達の為に。

そして、それを夢見る親友の為に。





*





帝都そこで待っていたのは、

ジュリアとヴェルズを確実に殺す為に、

罠を張って待ち構えた『皇帝』の姿と、

その皇帝を信頼し裏切られた勇者の姿。


そして罠によって動けないジュリア達の代わりに、

到達者エンド』と成った『皇帝』の前に立つ、

彼女達のたった一人の親友の後ろ姿。


「すまねぇな」と横顔で悲しそうに微笑んで、

対魔族武装を着込んだ『皇帝』へ挑んだ、

たった一人の親友フォルスの姿だった。





帝都さえ滅ぼす戦いの末、

『皇帝』と『親友フォルス』は相打ちとなり、

双方の遺体さえ発見できなかった。


しかし跡に残る抉れたように拡がる広大な大地が、

親友フォルスの死を物語っている事を、

ジュリアとヴェルズは認めざるをえなかった。


自分達を騙した人間達を許せず、

また大事な親友を失った悲しみと怒りで、

ジュリアとヴェルズのたがが外れた。


勇者の制止をことごとく跳ね除け、

ジュリアとヴェルズは動き続けられる限り、

人間大陸を破壊し尽くした。


帝都に僅かに残った人間達は勿論、

目ぼしい国々を全力で跡形も無く滅ぼし、

逃げ惑う人間は老若男女ろうにゃくなんにょ問わず吹き飛ばした。


人間達が作った文明という文明を破壊し、

その文明知識を持つであろう人間がいれば、

容赦なく殺し続けた。


捕えられた魔族が盾の様に扱われることに備え、

効果的に運用する為の『魔法』を編み出し、

『魔力を宿さない生物』だけを殺す『魔法』を使い、

奴隷となった魔族を虐げる人間達だけを滅ぼし、

ヴェルズは魔族の奴隷達を解放した。


二人の狂気する姿を目にした者達は、

種族でそれぞれ違う印象を抱いた。

魔族達には自分達を救う彼女達の姿に『女神』を重ね、

滅ぼされる人間達は二名の『邪神』を彷彿とさせた。


そうしている内にジュリアとヴェルズは、

人間大陸の人間の国を9割以上滅ぼし、

奴隷となっていた魔族のほとんどを解放した二人は、

数少なく残っていた人間共が逃げ込んだ国を目指した。





*





そこで目にした光景は、

二人にとっては信じられないものだった。


『人間と魔族が共存する国』


人間大陸の端に、

そんな国が存在していた。

そしてその国が信仰しているモノに、

二人は驚かされた。


赤い肌と黒く塗られた角と髪の『大鬼オーガ』の像を、

その国の人間と魔族は『鬼神かみ』としてあがめていた。


そんな大鬼オーガの石像が建つ傍には、

その大鬼オーガの子供とおぼしき子鬼と、

大鬼の石造より半分以下の大きさになる、

人間の女性の石造が並んで寄り添うように立っていた。


二人は驚かされた。


その石造の人物の顔と武骨さが、

自分達の知る大鬼にとても良く似ていたのだ。


そしてその鬼神に伴う子供の大鬼オーガと、

人間の女性の姿をした石造の特徴を見て、

それが親友に聞かされた親友の母親の特徴と、

彼自身の特徴に一致している事をジュリア達は悟った。





その国は『帝国』ができる遥か以前より、

数千年以上前に建国されていた国だった。


そしてそれを建国したのが、

たった一人の『鬼神きじん』だったという。


鬼神きじん』の名は『フォウル』。

『フォウル=ザ=ダカン』と呼ばれる、

鬼王オーガキング』と同名の大鬼オーガの名前。

そしてそれが、その国の名とも成っていた。


その国はかつて、ドワーフ王国を建国した、

岩窟王ドワーフキングバファルガス』と『鬼神フォウル』が契りを結び、

人間に魔物と呼ばれつつも意思を持つ者達が、

互いに身を寄せ集まり共存する国となっていた。


中には半人魔族ハーフも多く、

自分達が知る親友フォルスのような者達が、

数多く住む情景を目にして、

ジュリアとヴェルズは信じられないと思った。


『帝国』の侵略からも何度も跳ね除けた跡が在り、

自然の要塞と化した崖や山々に囲まれ、

強固な材質で覆われた岩壁で囲まれた国と、

空からの侵入を阻む様に旋回する、

空を飛ぶ魔物に騎乗した人間と魔族達。


そして強靭に育て上げられたであろう魔族達と、

それ等の者達に守られる形で人間達が共に暮らしていた。





ジュリアとヴェルズがその光景を目にしながら、

その国の正面となる大門に降り立ち、

そこで待っていた勇者と、

その国を代表する巫女と呼ばれる者と対面した。


巫女と呼ばれる女性は、

体付きや肌が人間の幼い少女の姿を想起させながらも、

その額には黒い角が一つ生えており、

彼女が大鬼オーガと人間との混血児である事を、

ジュリア達に悟らせた。


そして恐らく彼女は、

親友であるフォルスの血筋に類する者なのだと、

彼女から発せられる魔力を感じ取りながら、

理解をせざるをえなかった。





ジュリアとヴェルズは、

人間大陸での破壊を止めた。


そして『フォウル国』代表の巫女と、

ついでに勇者も挟んだ上で、

彼女達はある盟約を結んだ。


敵だったとはいえ、

皇帝に裏切られ共に殺されそうになった勇者に、

少なからず同情の心を持ったのかは、

勇者を挟む事を決めたジュリア以外には、

理由は分からない。


そして互いの大陸と種族達に干渉しない、

不可侵盟約が結ばれる。

人間と魔族の奴隷解放の約定も、

ジュリアと巫女の間に結ばれた。


同時にジュリアが巫女に頼んだのは、

始祖の魔王(ジュリア)』と言う大厄災の存在を、

生き残った人間達に伝え広め、残すことだった。


人間達は魔族より遥かに寿命が短く、

歴史を忘れて生き残った子孫達が、

また魔大陸の侵略を企てようとするかもしれない。


その時には自分ジュリアの脅威と爪痕を伝え、

人間達がこれ以上魔大陸を侵し、

そこに棲む魔族じぶん達を逆撫でしないように、

穏やかではない心情でも頭を下げてまで頼んだ。





魔大陸へ帰る道すがら、

ジュリアとヴェルズは同じ事を考えていた。


自分達の親友が語っていた夢物語が、

実は現実の話だったという事を。


そして親友が実現したかった事は、

その夢を私達に叶えさせる為の場所を、

私達自身が用意できるように、

わざわざ自分達の傍で教授していたのだと、

ジュリア達は悟ったのだ。


薄れゆく怒りと憎しみ、

悲しみの感情と共に押し寄せる虚無感を抱きながら、

ジュリアとヴェルズは魔大陸へ、

そして自分達の帰りを待つ者達の場所へ、

帰ったのだった。


その時『悪魔公爵バフォメット』と名乗る悪魔が、

既にジュリア達の傍で同行していたのだが、

怒り任せに暴れまわっていたジュリア達には、

いつバフォメットが同行していたかを思い出すのは、

不可能だったという証言が残されている。





そして『始祖の魔王』ジュリアが魔大陸に君臨し、

魔大陸の統治と復興を任せられたヴェルズェリアが、

魔大陸の王都ジュリアでハイエルフの女王を務め、

その補佐として『衛士』である一族と、

『悪魔公爵』バフォメットが傍に控えた。


王都近くの森林と山々には、

『最強の戦士』の称号が与えられたドワルゴンが、

自分の配下である魔物や魔獣を従え、

王都には住まずに森と山の中で暮らす様子を示した。


奴隷となっていた多種多様の魔族達は、

王都から東側に位置する荒れ果てた山間で街を作らせ、

そこにジュリアが一滴垂らした自分の血を持って、

その地にある地脈を活性化させ、

自然魔力を生み出す場所へと変化させた。


そして妖精族だった一人の少女が、

ジュリアに連れられて王都で住むようになり、

『俊足姫』ミコラーシュと名付けられ、

母親のようにヴェルズを慕うことになる。


ミコラーシュを養女に迎えると、

エルフの周辺氏族達から真の世継ぎを迎えるべきだと、

各氏族の男達を推し薦められ、

困り果てていたところにジュリアが放浪ほうろうから戻り、

状況を聞いてイラッとした顔をすると、

女性の姿から男性の身体に変化し、

各氏族の男達をぶっ飛ばすと、

そのまま民に向けて、

ヴェルズをめとることを宣言した。


ついでに文句がある奴は、

そいつの部族や氏族ごと吹き飛ばすと告げると、

誰からも抗議は起こらなかった。


強引なやり方ながらも、

なんだかんだと自分を助け続けてくれるジュリアの存在に、

初めてヴェルズは尊敬と憧れ以外の感情を抱き、

その宣言を心から受け入れた。





そうして人魔大戦が終結した約500年間で、

魔大陸と人間大陸を繋ぐ場所に中立都市が設けられ、

細々としながらも人間と魔族の間で物流が作られ、

人間にも魔族にも属さない『自由商人』が生まれた。


同時に魔大陸の南で鬼王オーガキングが、

闘技都市を作り上げた事が伝わる。


たまに様子を窺うように王都に潜入する勇者を、

悪魔公爵バフォメットは器用に発見して捕縛し、

ジュリアやヴェルズの前に差し出す事が頻繁するが、

特に実害も無かった為に、

特にお咎めも無く強制送還という形を取ったが、

ジュリアとヴェルズが結婚した事を知ると、

異様なまでにショックを受けて、

更にしつこさが増した時期もあった。


ヴェルズは一児の母となりながらも、

忙しくとも笑顔で魔族達に接する中で平和に暮らし、

ジュリアも争いが起こらなければ、

基本的に食べて寝て放浪するだけの平和に勤しんでいた。





王都ジュリアが聖剣を持つ者に襲撃されるまで、

魔大陸は魔族達だけで、

確かに平和を保っていたのだった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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