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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章六節:奪還者(前編)

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第063話 小鬼王の素質


南地区に集まっていた人々が、

徐々に流れるように東地区へ移動し、

南地区から離れて行く。


貴重品の類などを持ち出せる状態ではなく、

住民達のほとんどが手ぶらで歩く中、

壇上に居たジャッカスも警備隊の指示に従い、

降りてその流れに乗ろうとした時だった。


避難する者達の流れに逆らう様に、

一人の子供が列から飛び出し、

その飛び出た子供を警備隊の者達が急いで止めた。


ジャッカスはその騒ぐ音を聞き、

そちらに眼を向けた。


その子供はジャッカスが見知った顔だった。

というよりヴェルズ村の子供で、

ジャッカスが知らない子供などほとんど居ない。


ジャッカスはその子供の前に駆け出し、

警備隊員達に抑えられて、

飛び出す事の出来ない子供の側まで近寄った。



「こ、この!大人しくしなさい!列に戻って!避難をしないと!」


「いやだ!僕、行かなきゃ!あそこに!!」


「どうしたんだ!?」


「ジャ、ジャッカスおじさん!」



飛び出す子供を抑える警備隊員の腕の中には、

金色の髪と尻尾を持ち、

獣族特有の獣耳を頭に生やし、

けれど獣族とは顔立ちがやや違う、

エルフ族の綺麗な顔をした男の子が居た。


その子はジャッカスを見ると、

そう叫んで助けを請うような視線で見つめる。


どういう状況か分からないジャッカスは、

慌てるように取り乱すその子を呼び、

落ち着かせようとした。



「バラスタんとこの、坊やじゃねぇか!どうしたんだ、いったい!?」


「ジャッカスおじさん!!アイリが、アイリを助けなきゃ!!」


「!?ア、アイリがどうしたんだ!?」



リエラが喋るアイリという言葉に反応し、

ジャッカスは押し留めている警備隊員の代わりに、

リエラの肩を軽く掴んでしゃがんで、

なだめるように落ち着かせようとした。


その様子を避難しようとしたヴェルズ村の住人達も、

「なんだなんだ?」と様子を窺っていた。



「一回落ち着けって!――…アイリが、アイリがどうしたんだ?」


「アイリの、アイリの匂いがするんだ!あっちの方から!」


「あっちって…あの馬鹿デケェ魔力の方からか?本当か?」


「うん!それに、いつものアイリの匂いじゃないんだ!」


「いつもの匂いじゃないって、どういうことだい?」


「お母さんが、僕の鼻は『魔力の匂い』も分かるって。だから、アイリの魔力においも分かるんだ!――…でも、匂いと一緒に、血の匂いもしたんだ!アイリ、血をいっぱい流してる!!」


「!?」


「だから、アイリを助けなきゃ!!」



リエラが話す言葉を、

ジャッカスは全て理解をしているワケではない。


『魔力の匂い』というモノも、

ジャッカスは詳細も知らなければ、

リエラのそれがどれ程の精度なのかも分からない。


しかしジャッカスはその言葉を聞き、

自分が感じていた胸騒ぎの正体に、

初めて合致したような気持ちになった。


''ソレ''はまるで、

アイリの事さえ予知していたかのようだ。



「それに、あそこにはお父さんも、お母さんも行ってるんだ!!だから、僕も行かなきゃ!!」


「!?お父さんとお母さんって、バラスタと奥さんも行ってるのか!?」


「うん!だからお願い!!僕、あそこに行かないと!!」


「――…だ、ダメだ!子供が、あんな危ねぇトコに行けるはずねぇだろ!!」


「!?ジャ、ジャッカスおじさん!!」



懇願するように頼むリエラに対して、

ジャッカスはグッと息を飲み込みながら、

目を伏せてそう告げた。


それはジャッカスの本心でもある。


あんな膨大で敵意溢れる魔力がある場所へ、

子供であるリエラを送るわけにはいかない。

そんな事は子供好きであるジャッカスが、

許せるはずがないことだった。


しかしジャッカスの決意を揺さぶるように、

リエラは涙を溢れさせながら言った。



「僕、お父さんと約束したんだ!!アイリを守るって!フォウルのおじさんとも約束したんだ!!」


「!!――…子供のお前さんが行ったって、足手まといになるだけだ!!」



怒鳴るように突きつけるその言葉は、

ジャッカスがフォウルから受けた言葉だった。

その言葉にジャッカスは反論できず、

フォウルという頼みに願うしかなかった。


しかしリエラは、

ジャッカスが反論できない言葉に対して、

こう返したのだ。



「僕は、僕のやり方でアイリを守る!!村長様達や、おじさん達ができないことでアイリを守る!!守らなきゃいけないんだ!!」


「――ッ!!そ、そんな方法、あるわけねぇだろ!!」


「ある!!絶対ある!!」


「そんな方法があるなら、俺がアイリを守りに行ってるんだよ!!!」



リエラの言葉に葛藤したジャッカスは、

怒鳴るようにそう大声で叫んだ。


周囲で見ていたヴェルズ村の者達と、

そして警備隊の面々が、

ジャッカスの悲痛な叫びを聞いて、

苦い表情を広げていった。





悲痛な叫びの言葉は、

ジャッカスが抱く心情そのものだった。


アイリを助けられる力があるなら、

自分だってアイリを助けに行きたい。

それがジャッカスの本音だった。


しかし、ジャッカスにはその方法が浮かばない。


ヴェルズ達の魔力さえ霞んでしまうような、

膨大な魔力を持つ相手に、

貧弱なゴブリンである自分がいったい何をできるのか。


そんな事をジャッカスは想像さえできない。

できるはずがないのだ。


魔獣化した大熊でさえ手に負えない自分が、

あんな巨大で凶悪な魔力を持つ相手に、

そんな相手からアイリを守る術など、

考える事もできなかった。


ジャッカスの現実と本音が衝突し、

フォウルに足手まといだと言われた時、

現実という無慈悲な事実を突きつけられ、

ジャッカスは今まで本音を抑え込んでいた。


その抑え込んでいた本音を、

ジャッカスは大声で叫んだのだ。


『俺がアイリを守りたい』


それが、ジャッカスの本当の気持ちだった。

誰かに頼んで託すのではなく、

自分の手でアイリを守りたい。


苦しんでいるだろうアイリを、

自分が守ってやりたい。





アイリがマナの実の果汁を飲んで、

負った傷を全て完治させた時。

ジャッカスはその手にアイリを抱き締め、

この子を守ってやりたいと思った。


診療所でアイリが起きた時、

怯えるアイリが自分に手を差し伸べ、

自分の串焼きを泣きながら食べてくれた時、

この子は俺が守らなきゃと思った。


次第に元気を取り戻すアイリは、

自分達に笑顔を向けてくれるようになった。

そんなアイリを見ていたジャッカスは、

この子が笑顔で生きていけるように、

守ってやりたいと思った。


何故ゴブリンという弱い種族である自分が、

そんな事を思ったのか。

それはジャッカス自身にさえ分からない。

しかしジャッカスのアイリへの想いは、

親以上の愛情として注がれていた。


それはジャッカスが親として、

子供を持てなかったからかもしれない。


子を持てない種無しのジャッカスには、

村に戻って串焼きを作り、

親と共に道を歩く子供達を見ながら、

美味しそうに笑って串焼きを食べる子供達を見ながら、

その子達の小さな手を握って歩いていく、

親子の姿を何度も見ていた。


串焼きで笑顔になるみんなの姿で、

ジャッカスは充分なはずだった。

それ以上の事を望もうとはしなかった。





けれど、ジャッカスは望んでしまった。


アイリの小さな手を握りながら。

アイリの小さな身体を抱き締めながら。

アイリのそばで一緒に笑いながら。


『優しいジャッカス』が今ではもう、

ただ串焼きを食べて去っていく親子の姿を、

見ているだけでは満足できなくなってしまった。


だって、知ってしまったのだ。


子供の傍で優しく微笑む親の心を。

ただ見ているだけの光景が、

アイリという存在のおかげで、

現実のモノになってしまったのだ。


そして、例え自分の身が犠牲になろうとも、

子供だけは助けたいという気持ちも、

ジャッカスは知ってしまった。





――…アイリを助けたい。


誰かの手で助けてもらうんじゃない。

本当は、自分の手で助けたい。


それがジャッカスの本音だった。





「――…だったら、ジャッカスおじさん!一緒にアイリを助けにいこう!!」


「……え!?」



大声を上げたジャッカスの言葉を聞いて、

リエラはそう言った。


始めは何を言われているのか、

理解できなかったジャッカスだったが、

続けるリエラの言葉を聞いた。



「僕だけじゃ、アイリを守れないかもしれない!でも、ジャッカスおじさんも居れば、もしかしたら守ることができるかもしれないでしょ!?」


「な、何言ってるんだよ。そもそも、俺はゴブリンで、よわっちくて――…」


「そんなの、関係ないよ!!」



まるで形勢が逆転したように、

抑えていた腕を跳ね除けたリエラが、

ジャッカスに説得するように呼び掛けた。


その言葉を聞いたジャッカスは動揺しながらも、

少しずつ心の奥底にあった何かが、

固まりつつあるような感覚があった。



「お母さんが言ってたんだ!誰も一人じゃ全部できないって!――…僕だけじゃ、アイリを守れないかもしれない。ジャッカスおじさんの言うとおりかもしれない。じゃあ!僕とジャッカスおじさんが一緒にいけば、アイリを守れるかもしれないでしょ!?」


「――……ッ」


「僕やジャッカスおじさんだけじゃ、アイリを助けられないかもしれないなら、あそこに居るみんなでアイリを助けよう!!お父さんやお母さんや、ヴラズおじさん達や、村長様やドワルゴンのおじさんや、ミコラーシュ隊長や――…フォウルのおじさんと一緒に、アイリを守ろう!!」


「――…ッ!!!」


「ジャッカスおじさん!一緒に行こう!一緒に、アイリを守ろうよ!!」



目に涙を溜めながらそう叫ぶリエラの言葉に、

ジャッカスの心を縛るような何かが砕け、

奥底に在る自分の気持ちを自覚した。


リエラを抑えていたもう片方の手を、

ゆっくり離したジャッカスは、

その手をリエラの頭に乗せて、

撫でるように優しく触った。



「――…分かった。俺も、アイリを守りてぇんだ。俺一人じゃ守れないかもしれねぇ――…だから一緒に行って、アイリを守ってくれねぇか?坊や」


「!!――…うんっ!!」



涙で曇っていた悲痛なリエラの表情が、

その言葉を聞いてパッと明るくなった。


笑顔に戻ったリエラの表情を見て、

やっぱり子供は笑顔が一番だなと、

ジャッカスは笑顔で思った。





*





リエラの頭を撫で終わったジャッカスは、

共に西地区の出入り口へ向かうべく体を振り向かせた。


しかし振り向いた先で待っていたのは、

行く手を遮るように立ちはだかる警備隊員達だった。


その光景に気付いたジャッカスは、

苦笑いを浮かべながら、

警備隊の面々に声を掛けた。



「――…アハハッ、お前さん達、どうしたんだ?」


「話は聞いていた。……行かせるワケがないだろう、ジャッカス!そして、そちらの坊やもだ」



ジャッカスとリエラを取り囲むように、

数名の警備隊員が周囲に展開する。


その様子をジャッカスは窺いながらも、

リエラを自分の背中に隠すように移動させ、

腰の布鞄に手を近づけつつも、

口を動かす事を止めなかった。



「な、なんだよ。よわっちぃゴブリンと子供相手に、随分と仰々しいんじゃねぇか?大の戦闘種族おとなが、みっともないってもんだぜ?」


「確かに、ただのゴブリンや普通の子供であれば、ここまでせずに取り押さえるだけで済ますだろう。――…だがジャッカス殿よ。薬師ドラング一族であるお前が易々と捕まるようなヘマを犯すものかな?――…腰の入れ物には、やはり得意の煙玉が入ってるようだな」


「ッ!!……へへっ、バレてたかよ」


警備隊げんえき時代のお前を知らぬ者には、美味い料理メシを作る''ただの''ゴブリンだと思われがちだがな。知っている者は戦闘種でも警戒するだろう。――…薬師ドラングの秘術を駆使した撹乱戦法で、かつて警備隊を最も恐怖させた斥候せっこうだ。油断して懸かれば、意図も容易く駆け抜け飛び出して行く事も可能だろう」


「――…美味いってのは、褒め言葉として受け取っておくぜ。でも、俺を買い被り過ぎだと思うんだ。――…チッ!」



目の前に立つ虎獣族の警備隊員に言われることに、

ジャッカスは気恥ずかしさを感じながらも、

自分の思惑がバレている事を悔しがった。


それを知らない他の者達の表情は、

二人の会話が何を意味しているか分からないだろう。





ジャッカスが警備隊にまだ所属していた頃。

大熊の魔獣に襲われる以前までは、

当時は警備隊員達に悪名あだなとどろいていた。


言葉で当時のジャッカスを表現すれば、

正しく『ゴブリンの狡猾さ』を身に付けていた、

と言えばいいだろう。


ヴラズの小隊で斥候を務めるジャッカスは、

母親のジスタから教わっていた薬師ドラングの知識を用いて、

手の平に複数個ほど収まるカラの実の外殻を削った小さな玉を作り、

その中に白煙・毒煙・糞煙・催涙煙・粉末胡椒など、

地面に叩き付けると小さな爆発を起こす火薬と一緒に、

様々な効能を持つモノを入れた煙玉を使い、

それを警備隊の仕事でも多用していた。


警備隊の小隊同士の実戦を想定した演習では、

相手の小隊が仕掛けた際に煙玉と胡椒玉を使い、

相手の視界と嗅覚を完全に封じた上で、

ジャッカスやヴラズの小隊は煙玉に影響を受けないように、

ドワーフ達が持つ鍛冶用の保護眼鏡ゴーグルと鼻栓を使い、

ゴブリン特有の気配を消す身体術で近付き、

相手の急所へ刺し込むなどを戦術を使う事が多かった。


効果的で有用な戦術でありながらも、

薬師ドラングにしか造れないモノも多く、

更に使う本人までもダメージを受けそうなので、

ジャッカスや他の薬師ドラングしか使えない戦術だった。


ジャッカスなりに仲間を守る為に備えた戦い方だったが、

毎回実戦演習の度に小麦粉塗れになる麦煙玉むぎだまを使い、

目が充血してクシャミが止まらなくなる胡椒玉こしょうだまを使い、

強烈なアンモニア臭で獣族などの鼻を潰す糞玉くそだまを使い、

仕舞いには獲物に毒煙玉どくけむりだまを使って肉を台無しにするなど、

数々の悪行を成したことで当時は有名であった。


付いたジャッカスの悪名あだなが『煙使い(スモークマスター)』。

そしてそんな使い方をする息子のジャッカスに、

母親であるジスタは毎回拳骨と怒声を飛んでいたという。


煙使い(スモークマスター)』と呼ばれていたジャッカスが、

炭火焼きという木炭の煙さえ利用する『調理者コックマスター』になるとは、

実に皮肉が効きながらも納得のいく理由だろう。





余談だが、このジャッカスの道具と戦術は、

当時同じ小隊だったヴラズ達もかなり渋った為、

ヴラズ達の小隊から離れて斥候する場合に使うモノとなっていた。


あるいは魔獣化した大熊と遭遇した時、

この戦術を突き詰める隊列と戦術をヴラズ達が考慮すれば、

ドワルゴンの助けが無くても大熊を撃退していたかもしれない。


その事もヴラズ・バズラ・ピーグの三人は考えたこともあり、

ジャッカスに対するいる心を強めていたのだろう。





そんな道具モノもちいると知る警備隊の者達は、

やや距離をとって警戒しながら片手で鼻を摘み、

ジャッカスの胴体並に大きな片腕を自由にさせて、

取り押さえる姿勢でジリジリと詰め寄る。


万が一に備えて各種の煙玉を腰布鞄ポーチに潜ませて、

何かあればと用意していたジャッカスだったが、

不意を衝く事が難しいこの状況に、

苦笑いを浮かべつつどうするかを必死に考えていた。


ジャッカスとしては獣族の嗅覚に致命的となる糞玉や、

周囲を大きく巻き込むような白煙玉を使用するつもりはない。

そうなると周囲が大きく混乱する恐れがあるし、

現状で避難をさせている警備隊の数名を戦闘不能にさせれば、

その後に困るのが彼等と彼等が守るだろう村の住人達だからだ。


気付かれずに西地区の出入り口へ向かう事が理想だったが、

流石にアレだけの騒ぎになって注目を集めていれば、

それが不可能だと分かりそうなものだったが、

今のジャッカスにはアイリを守りに行きたいという、

はやる気持ちしかなかった。


そんなジャッカスは今度は説得を試みるべく、

取り囲む警備隊員達に声を掛けた。



「――……なぁ!俺、料理自慢大会たいかいの優勝者なんだよな!」


「……そうだな、お前の料理は美味い。俺達だってお前に票を入れた。それがどうしたんだ?」


「確か優勝したら、報酬がいーっぱい貰えるって言ってたよな!?――…だったらさ、報酬それの代わりとして、今回は俺達を見逃してくれねぇか!?」


「!!――…出来るわけがないだろうッ!!」


「なんでだよ!?金貨数百枚詰め込んだ袋や、食べきれない量の肉をくれって言うよりずっと簡単な報酬もんだぜ!?そんなちっぽけな望みも叶えてくれねぇようなら、優勝しても嬉しくなんてねぇよ!」


「――…みすみすとあやうい場所へ行こうとする者を見送ることを、我々警備隊が許すはずがないだろう!まして、あの膨大な魔力の渦中なかに飛び込む自殺行為を、認められるはずがないッ!!」



白い毛並の虎獣族が大声で怒鳴り、

ジャッカスの無茶な要求を制止する。



「それにジャッカス、お前が言ったんだぞ!ヴェルズ様達がアイリを連れ戻すと信じると!!だったらお前も、大人しく待つのが道理だろう!!」


「た、確かに言ったさ!――……でも、ソレとコレとは話が別だ!!俺は俺で、アイリを守りたいから行くんだ!そこに俺以外の道理なんてものあるもんかよ!!」


「お前、滅茶苦茶言ってるのが自分で分からないのか!?」


「分からねぇよ!お袋から散々馬鹿だって言われるくれぇ馬鹿なんだからなッ!!」



それでも一歩も引こうとしないジャッカスは、

目力めぢからを更に強くさせて包囲する警備隊員達を見ながら、

握り締めた手を体の前に出して叫んだ。



「俺は確かに馬鹿なんだろうさ!!でもな、俺は誰かに認められたくて、警備隊に入って皆を守ろうとしたワケでも、今まで串焼き作ってるワケでもねぇよ!――…俺がやりたいからやってきただけだ!!だから俺は、アイリを守りにいく!お前さん等に認めてられなくても、だッ!!」


「――…ッ!!最早もはや、言葉は不要か……。……全員、ジャッカスと狼獣族オオカミの子供を抑えて縄で縛りつけて無理矢理にでも避難いどうさせるぞ。多少荒めにして構わない。絶対に行かせるな!」



意思を曲げない事を主張し叫ぶジャッカスを諦め、

警備隊員達は素手の状態から、

腰に下げていた頑丈に出来た網縄を持った。


ジャッカスも警備隊達の意志を見届け、

強行突破してでも向かう覚悟を決めた。


その瞬間、ジャッカスの後ろに居たリエラが、

身体中に魔力を巡らせて人化状態から獣化状態へ変化し、

更に三メートルの大狼たいろうの姿へ魔獣化ビストした。

今回はバラスタの着ていた狼獣族専用の子供用戦闘着なので、

破けることもなく全身金色の大狼に黒装束を纏った姿となった。


リエラが魔獣化ビストした姿を確認した警備隊員達は、

全力状態の隊長達に匹敵する高い魔力を感じ、

手加減できない事を悟り、

腰や背に置いていた武器を手に取ろうと構えた。


ジャッカスも腰布の入れ物から複数の煙玉を取り出し、

黄・白・赤色の玉を指と指の間に挟むように手を広げ、

最後の忠告を皮肉を込めて伝えた。



「――…お前さん達、くっせぇにおいがしばらく染み付くくらいは覚悟しろよなぁ!嫌な奴は退いた退いたぁ!!――…坊や。お前さんもしばらくは、鼻がモゲそうなにおいが毛にこびりついて、アイリに嫌な顔されるくらいの覚悟はあるよなぁ!?」


「えっ。……うっ……ウンッ!」



リエラを含む警備隊員の獣族達が、

物凄く嫌そうな表情をしながらも、

その場からは誰も退こうとはせずに、

全員がこの場で起こる事態を覚悟した。





ジャッカスとリエラを取り囲む警備隊員達の、

一触即発の状態がまさに爆発しようとした瞬間、

取り囲んでいた警備隊員の一人が勢いよく前に倒れこんだ。

その警備隊員の腰にしがみ付くようにタックルした人物に、

またもジャッカスは驚かされた。


警備隊員を前倒しにしたのは、

幼馴染みである豚顔族のピーグだったのだ。



「ピ、ピーグじゃねぇか!?お前、どうして……」


「――……ッ、ジャッカスッ!何してんだよ、早くいけよッ!!」


「!?」


「……言ったろ。『お前が困ってたら、喜んで協力する』ってさ。――…俺だけじゃねぇ。みんなも、だ!」



そうピーグが言うと同時に、

ジャッカスの周囲を取り囲んだ警備隊員達が、

次々と前倒しになるような状態で倒れていく。


その腰や背中に飛び掛った者達は、

ヴェルズ村の住人達だった。



「ジャッカス!早く行きなっ!!」


「ジャッカス!アイリちゃん、絶対連れ戻すんだよっ!」


「狼坊や!ジャッカス(そいつ)連れてさっさと行きなぁ!!」


「――…!?み、みんな……なんで……?」



気が付けば、周囲の状況は一変していた。


ジャッカスを取り囲んでいたはずの警備隊が、

村人達に囲まれて取り抑えられていく。


不意を突かれた警備隊員達は地面に伏せられ、

気付いて上手く避けても逃げた先で待ち伏せするように、

大柄の獣族や種族達が羽交はがめにされ、

体の大きな警備隊員達も村人達に雁字搦がんじがらめにされる。


ジャッカスを取り囲んでいた警備隊員達はほぼ抑え込まれ、

それを仕切っていた白毛皮の虎獣族が仰天しながらも、

吼えるように叫んだ。



「お、お前達ッ!こんな事をして分かっているのか!?ジャッカスをこのまま行かせたら――…!」


「……みんな分かってるさ。俺達だって、そんなことを望んじゃいない」


「バ、バフォー……!!」



白毛皮の虎獣族の隊員の前に、

料理自慢大会準優勝者であり、

牛頭族のバフォーが立ち塞がった。


互いに二メートル強の体格であり、

農業を営む牛頭族と戦闘訓練を積んだ虎獣族には、

肉体的な屈強度に差が見られない。


バフォーは虎獣族トラに向けるのではなく、

後ろでこの状況に困惑しているジャッカス達に向けて、

背中を向けながら真剣な表情で言い放った。



「――…ジャッカスッ!!あのお嬢ちゃんだけじゃねぇ、お前等もちゃんと帰ってこいよ!!」


「!!バ、バフォーの旦那……」



バフォーは口元を微笑ませながら、

今度は楽しげな表情でジャッカスを見ながら

次の言葉をジャッカスに伝えた。


それに続くように、

村人達もジャッカスに笑いかけて伝えた。



「帰ってきたら、全員に美味いメシ奢ってくれ!」


「あの''あげもの''っていう串焼き、また食べさせてね!」


「俺は豪勢に一匹丸々使った丸焼きで!」


「それ、ジャッカスが作らなくてもいいじゃねぇかよ!」


「バッカ!ジャッカスが作るから美味いんだろ!」


「ハッハッハッ!ちげえねぇな!」


「あの茶色のスープ、戻ったら作り方教えてよね!」


「……み、みんな…ッ」



村人達は冗談交じりに笑いながら、

ジャッカスに向けてそう呼び掛けて行く。


それを聞いたジャッカスは、

握っていた煙玉を腰の布鞄に戻し、

少し伏せた顔を上げて目に涙を溜めながら、

その言葉に対しての返事をした。



「――……ッ!分かった!お前さん等!アイリ連れ戻したら腹が壊れるぐれぇ作ってやるから、期待してて待ってろよな!!」


「おう!」


「行ってらっしゃい!!」


「――…坊や!背中に乗せてくれ!一気に突っ切っていくぞ!!」


「う、うんッ!」



叫ぶように返すジャッカスの言葉に、

村人達は笑顔で返して警備隊員達を足止めする。


魔獣化ビストしたリエラの背中にジャッカスは飛び乗り、

金色の毛にしがみ付いて騎乗すると、

リエラは四足の脚に力を込めて、

一気にその場から駆け出した。


そのスピードは尋常なモノではなく、

まだ無事な警備隊員達が取り囲もうとする隙間を、

素早く縫うように走り抜けていく。


静止状態から一気に加速状態になり、

リエラの背中にしがみ付くジャッカスは、

風圧で顔を歪ませながら耐えていた。


その中で見た光景に、

ジャッカスはやはり驚くしかなかった。


バフォーの妻でありジャッカスの店の常連のタンも、

夫と並ぶほどの二メートル強の体を駆使し、

自分の体格以下の警備隊員の肩を掴み、

両の手で固めるように二人の警備隊員を抑えている。


その近くではタンの子供達も居て、

タンがキュッと締めて地に伏せた警備隊員の背中に、

遊ぶように乗っていた。


子供とはいえ、牛頭族の子供である。

体格は既に一メートルを超えており、

体重もそれ相応に重くなる。


そんな子供達に数人で圧し掛かられれば、

警備隊員はなす術も無く地に伏せて沈黙するしかなかった。



「アイリちゃんを助けるんだよぉ!ジャッカスぅ!」


「おじちゃーん!」



駆け抜けていく中で聞こえるタンの声と、

子供達のジャッカスを応援する声に、

ジャッカスは短く懸命に「おう!」と叫んだ。


牛頭族のバフォーと妻のタンは、

今でこそ畑を営む一家だったが、

彼等も若い時には警備隊に所属した者達だ。


戦う鍛錬はせずとも、

日常生活での農場や子供達の面倒で、

鍛え抜かれた肉体は衰えなど見せるはずもない。


そのバフォーは先程まで警備隊員達を指揮していた、

白毛の虎獣族の小隊長と相対して、

互いに似通った体格で押し合うように手と手を掴み合い、

互いを抑えているような状態だ。


その状態に苦々しく震える声を漏らすのは、

白毛で虎獣族の小隊長だった。



「バ、バフォー…ッ!!かつては警備隊長も務めたお前が、なぜ……ッ!!」


「分からぬさ…ッ!!俺だって、理屈では分かっている……!このままジャッカスを行かせれば、死が待つことなど……ッ!」


「ならば、どうしてこんな……ッ!他の者達も、何故……ッ!」


「……フハハッ!……何故だろうな。だが立場も違えば、お前達もこうするだろうよ。……ほら、あいつ等のようにな!」


「な、なに……!?」



バフォーが視線を向けた先を白毛の虎獣族が見ると、

その光景に驚愕させられた。


本来この状況を治めるべく務める警備隊員の中でも、

ジャッカスを助けるように動く者達がいるのだ。


特に二十歳前後の若輩者にその行動は多く見られ、

今年の競合訓練オリュンピアスで活躍を見せていた、

『剣』の代表者である牛頭族の若者と、

『槍』の代表者である獅獣族で族長の息子、

『拳』の代表者である虎獣族の若者も、

ジャッカスを助けるように、

他の警備隊員達を抑えていたのだ。


ガブスという強者が居た事で影に隠れたが、

彼等も本来であれば若者の中でも、

村では突出した才能を持っている。


そんな三名の合間を縫うようにリエラは進み、

その瞬間ジャッカスに視線を向けた三名は、

ニヤッと笑いながら片手を軽く振って見送った。


この三名は幼い頃からヴェルズ村に住み、

幼馴染みの間柄でもある彼等は、

ジャッカスの串焼きを食べて育った者達だ。


安いとはいえ子供ながらに金を持たない三人に、

ジャッカスは無料タダで串焼きを渡していた。

それを美味しい美味しいと言って食べる三人に、

ジャッカスは笑いながらもっと食べるかと聞いてくる。


後に横に太り始めた三人を見て、

その親達が食べさせ過ぎだとジャッカスに苦情が入り、

子供には無料タダは一本までという決まりを作らせるのに、

随分と親達は苦労させられたものだった。

それでも彼等は成長しながらもジャッカスの店に通い、

今では常連となっている。


幼い頃から今までも、

変わらぬ笑顔で串焼きを作るジャッカスに、

三名はそれぞれに思うところがあるのだろう。


子供の頃からの情なのか、

それとも子供の頃から笑顔のジャッカスが、

今日の祭りに限って悲痛な表情で何かに耐える姿に、

あるいは我慢ができなかったからかもしれない。


だからこそ彼等三名も、

そしてそれと似通った境遇である若い警備隊員達が、

ジャッカスを助けるように動いていた。





その光景を目にする白毛で虎獣族の小隊長に、

バフォーは掴み合いながらも再び口を開いた。



「ジャッカスという男は実に不思議だ。長く接すると、ついついあの男がゴブリンだと忘れて、まるで同族のように思ってしまう。――…かつてゴブリンには、ゴブリン(その)全ての部族を束ねる小鬼王ゴブリンキングが居たという。特に人魔大戦の代で生まれた小鬼王ゴブリンキングは、小鬼部族ゴブリンを強さで束ねたのではなく、圧倒的な統率力カリスマで纏め上げ、鬼王オーガキングにそれを買われて同盟を結んだと聞く。――…あるいはジャッカスという男、我々に影響さえ与えるほどの『キング』の素養でもあるのかもしれないな」


「!!何を馬鹿な事を――…ッ」


「ベンツ……お前だって本当は、行かせてやりたいのではないか?ジャッカスをあの子(アイリ)の元へ。――…他の警備隊員ものたちも、本当はそうしたいのではないか?」


「――…ッ」


「確かにあの膨大な魔力に行く事は、死を意味するだろう。――…だが何故だろうな。ジャッカスであれば、必ず戻ってくる気がするのだ」


「何を根拠に、そんな事を言っている……」


「何故だろうな。――……フハハッ!考えるのも馬鹿らしい、''勘''のようなモノだろう。だが、俺は……俺達は信じているよ。ジャッカスが子供達を連れて、無事に帰ってくることを」



バフォーと虎獣族のベンツは掴み合いながらも、

そんな話をしていた。


そしてその話が聞こえるのか、

騒がしかった周囲はいつの間にか静けさを取り戻し、

バフォーの話を村人達や警備隊員達が静かに聞いていた。

組み敷かれて地に伏せる者達でさえ、

その声が聞こえて静まっている。


掴み合っていたバフォーとベンツが互いに手を離し、

向かい合いながらバフォーは口を開いた。



「俺の……俺達むらびとからの頼みだ。――…ジャッカスやあの坊主を、行かせてやってくれ」



自ら頭を下げるように頼むバフォーと、

バフォーに続くように周囲の村人達が、

警備隊員達を抑えることをやめて、

同じ様な姿勢で頭を下げる。


警備隊員達はその光景に呆然としながらも、

何かを諦めるように溜息を吐き出す。


虎獣族のベンツもその光景を目にし、

溜息を吐き出しながら大声で指示を飛ばした。



「――……フゥ、……警備隊員は、持ち場へ戻れ!非戦闘種族たたかえぬものはさっさと避難を開始しろ!――……ジャッカスは既に''避難し終わっている''のだから、な」


「――……恩に着よう、ベンツ」


「その恩は、後で返して貰おう。――…ジャッカスの、美味い飯でな」



その場を仕切っていたベンツが折れた事で、

各警備隊員達を抑え込んでいた村人達は、

警備隊員達を解放した。


心なしか警備隊員達も、

その言葉に安堵したように、

そして本当は望んでいたように微笑んでいた。





その時ジャッカス達は、

騒ぎの中心となっていた南地区の広場を抜け出し、

村の出入り口となっている西地区の大通りに、

差し掛かろうとする最中だった。


そこで後ろ側で広がっていた喧騒が、

一気に沈静化した事に気付いたジャッカスは、

リエラを制止させて後ろを振り向く。


振り向いた先に広がっていたのは、

村人達や警備隊員達が並び立ち、

まるでジャッカス達を見送るような姿だった。


一体なにが起こったのかと、

ジャッカスは事態に困惑していたが、

見送る人々から声が上がり、

その声には先程までジャッカスを止めようとした、

警備隊員達の姿も見られた。



「ジャッカース!無事に戻ってこいよー!」


「アイリちゃんを助けてあげてー!」


「狼坊主ー!ジャッカスを頼んだぞー!!」


「どっか抜けてるとこがあるから、ジャッカスをよろしくなー!」


「ジャッカスー!早く戻ってメシ作ってくれよなー!」



人々の口からジャッカスへの声援が広がり、

南広場に雄叫びのように広がっていく。

その事態にどうしてこうなったのかと、

ジャッカスは驚くばかりだった。


ジャッカスにはバフォーが言うような事を、

自分では自覚さえしていないだろう。

自分はただのゴブリンであり、

貧弱な存在であるとしか思っていない。


だからこそジャッカスは、

自分が出来得る最大限の努力はしてきた。


その努力は長く深く組み上がっていき、

その努力する姿を無自覚で見せてきたジャッカスを、

村の人々は知っていたからこそ、

ジャッカスという男を信頼していたのだ。


ジャッカスがアイリを思う気持ちも、

アイリを守りたいという気持ちも。

そんな努力を積み上げてきた彼だからこそ、

村人達や警備隊員達は信じることができた。


ジャッカスならば無事、

アイリを連れて戻ってきてくれるだろうと。



「ジャッカスおじさんが、みんな大好きなんだね!」


「!!え、いや……へへっ」



ジャッカスを乗せているリエラがそう言うと、

照れるような笑いで誤魔化すジャッカスは、

その声援の中に、とある声を聞いた。


その声の持ち主に気付いたジャッカスは、

そちらに顔を振り向かせる。


そこにはジャッカスと同じ歳ほどの、

ゴブリンの女性が立っていた。


その茶色の頭髪をしたゴブリンの女性は、

診療所で働く母親の弟子のメイファに似て、

綺麗とはお世辞にも言えないが、

ジャッカスから見ればとても可愛らしく思える。


その女性の隣にはその娘であるメイファと、

自分の両親であるジスタとジマスタが立ち、

その女性の隣には一人のゴブリンの男性もいる。



「ジャッカス――…ッ!!」


「……メリア……」



ジャッカスがメリアと呼ぶゴブリンの女性は、

とても大きな声でジャッカスの名前を呼ぶ。


自分に顔を向けている事に気付いたのか、

メリアはさらに声を大きく張り上げて、

ジャッカスにその言葉を伝えた。



「ジャッカス――…ッ!!いってらっしゃい――ッ!!ちゃんと、ちゃんと戻ってきて――…ッ!!」


「……ッ!!」



そう叫ぶメリアの声に、

ジャッカスは喉から何かが飛び出そうになり、

それを堪えるように喉に息を呑んで力を込める。


その女性に並ぶように立つ両親とメイファは静かに微笑みながら、

けれど心配そうにジャッカスを見つめている。

メリアと隣に立つゴブリンの男性も、

心配そうにジャッカスを見つめていた。


ジャッカスは一度、

彼等に何も言わずに村を立ち去った。

その目的は自分の種無しの体を治す為でもあったが、

どこか諦めを含んだ自暴自棄さもあったのは確かだ。

本当はもう、村にさえ戻ることはないと思っていた。


しかしジャッカスは再び村へ戻って来た。

そして今もまた、この村から出て行こうとしている。


しかし前回と今回で違うのは、

今回見送るように見つめる彼等に対して、

何をするか、ということだった。


そんな両親とめいのような子に、

そしてかつて自分の最愛の妻としたメリアと、

そのメリアを幸せにしてくれた男に向かって、

ジャッカスは笑顔を向けて大声で叫んだ。


かつて村を出て行った時に、

自分が伝えなかった言葉を伝えた。



「――…ああっ!!行ってくるぜっ!!絶対アイリ達連れて、帰って来るからなぁ!!――…坊や、行こう!」


「うん!!」



そう言うとジャッカスとリエラは西門へ向かい、

一気に駆け抜けていく。


人通りが全く無い大通りを抜けて西門へ到着し、

閉じ切った小門をジャッカスは内側から開けて、

リエラに再び騎乗して村の外へと駆け出した。


駆け抜けていく中で、

ジャッカスはふとメリアの事を考えた。


幼馴染みのゴブリンの女の子であり、

自分のつがいとなったゴブリンの女性。


その思い出が走馬灯のように頭でよみがえり、

ジャッカスを苦笑させた。



――…やっぱり俺、メリアに惚れたまんまだわ。



そんな事を苦笑しながら考えたジャッカスは、

すでに諦めていた元妻の事を思いながら真正面を見据えた。





行く先には膨大な魔力の塊を感じ、

まるで踏破不可能な山でも見ている感じさえする。

しかも感じるだけではなく、

視覚として膨大な魔力が目に見えている。


向かうべき山の頂上と思われる場所は、

遠目からでも分かるほど抉れて平坦な形へ変化し、

頭頂部が尖るような標高4000メートル級の山が、

台形状の姿へと変化している。


そしてその中に小さく感じる魔力達。

そこには間違いなくヴェルズとミコラーシュ、

そしてドワルゴンの魔力があり、

それほどの者達でさえ小さく感じるほどの、

膨大な魔力の塊の持ち主が居る。


そいつからアイリを奪い返すという、

最も困難である現実をジャッカスは考えた。

場違いにもあんな場所へゴブリンが赴くなど、

あの膨大な魔力の持ち主には馬鹿らしくさえ思える事だろう。


しかし、ジャッカスは既に覚悟していた。





――…アイリを守る。

それ以外は何も要らない。


そんな思いを覚悟しながら、

ジャッカスとリエラは夜の街道を走り抜けていった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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