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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章六節:奪還者(前編)

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第058話 集合


西地区の警備隊本部の建物前の広場に集まった、

捜索班・追跡班に別れた者達と、

警備隊や各種族の中でも戦闘面で評価を受ける者達が、

武具を整えて戦闘部隊として集まっていた。


戦闘部隊の中にはヴェルズ村の警備隊長が全て含まれ、

ヴラズは勿論ジャッカスの幼馴染みであるバズラもいる。

更にミコラーシュの補佐を務める、

一つ目巨人(サイクロプス)三つ目巨人(ヘカトンケイル)のキュプロス・ガルデが、

捜索班や追跡班、戦闘部隊を纏めているようだ。


それに混じるように祭りでアイリ達と遭遇した、

ラミア族の族長の息子であるメージや、

競合訓練オリュンピアスで優勝しフォウルと戦い、

巨神族へと進化したガブスの姿もある。


それ以外にも各村や各部族・氏族の中でも、

実力が高い者達が選ばれてこの場に集まった。


族長達は老いもある為にヴェルズ村に残り、

南地区へ集まった客人達や旅人達、

すぐに発てない商人達を守護する役目を担っている。

そして村の守護を担う者達は警備隊の若人達や、

競合訓練の魔術部門で活躍を見せた者達、

そして身体部門でガブスや他の候補者達に負けた、

若い戦闘種族達が役目となっている。





フォウルとヴェルズがその場所に合流すると、

それを視界に捉えた者達が視線を集め、

徐々にその視線が広まってフォウル達が到着した事を、

その場に居た全員が確認できた。


そんな面々の前に到着したフォウルが、

立ち止まって第一声に放った言葉はこうだった。



「……ざっと、戦えそうなのが10ちょいほど、居るか居ないかってとこか」


「――…!!」



フォウルが溜息を吐き出す様に漏らす言葉に、

その場に集まった戦闘種族達がピクリと反応した。


それを聞いた捜索班や追跡班の者達は、

キュプロスの無言の手振りによる指示で、

戦闘部隊が集まる場所からやや遠ざかり始める。


フォウルの側に居たヴェルズも、

隣からすぐに後ろへ下がった。

まるでこれからフォウルが、

何をするかが分かるかのような動きだ。





戦闘部隊に加わった者達の中で、

その言葉に反応をしなかったのは警備隊長達であり、

競合訓練で指導を受けた者達や、

直にフォウルと対面して殺気を貰った者達だ。


それでも他から数えれば、

戦闘部隊は合計で50名以上を超えているにも関わらず、

この中で五分の一以上は''戦えない''と、

フォウルはそう一目で判断したのだ。


これには各部族・氏族から集った者達が、

反発しないわけがない。

その反応を示すように、

集められた者達の中で反発を持つ者達が、

フォウルの前に歩みを始めた。


牛頭族・獅獣族・虎獣族を始めとした獣族と、

ガブスの元の種族である同じ巨人族ジャイアントや、

首部分が離れ黒い鎧を纏った首無族デュラハン

蜥蜴族リザードマンより強靭な顎が目立つ鰐牙族アリゲイツ

鳥獣族バードの中でも強靭な嘴・爪・足を持つ禿鷲族コンドルなど、

様々な戦闘種族達がフォウルの前におどり出た。


彼等はヴェルズ村に何名かの同族は居るが、

各地に他の拠点を構えている部族達で、

ヴェルズ村には住んでいない客人達だった。


今日到着した者達さえ居たので、

彼等の中には又聞きでフォウルの事を知るだけで、

フォウルの実力を疑う者達もなかなかに多い。


その反応を予測していたように、

フォウルは呆れたような溜息を吐き出した。



「で、お前等が俺に文句がある奴等だな」


「――…先に来ていた同胞や村の者達から話だけは聞いている。''元''オーガキングだな?」


「先の言葉、まるでこの中に居る大半の者達が役立たずと言っているようだが、相違は無いか?」



フォウルの言葉に文句がある者達が、

それぞれに声を挙げる。


その声全てを聞いているわけではないフォウルは、

適当に右から左へ文句を垂れる者達の言葉を受け流し、

右手をゆっくり胸の前まで上げて人差し指を立て、

左手は右手の魔玉が付いたリストバンドに手をかけた。


そのリストバンドに付いた魔玉の効果は、

自分の魔力を『二分の一』に抑える役目をしていた。

しかもそれを両手に着けているので、

普段のフォウルの魔力量は『四分の三』以上は抑えられている。


ここまでの動作を見て察した者は更に遠くに離れ、

気付いても戦闘部隊の中に居る警備隊の者達は離れず、

気付かない者はその動作を怪訝そうな表情で見ていた。


ヴェルズは静かに西地区全体に魔力障壁を張ると、

それを見計らってフォウルは口を開いた。



「10数えても、立ってられる奴だけ俺等に付いて来い。膝を着いた奴は居残りだ」


「な、何を――…ッ!!!?」



文句を垂れる者達が何か言おうとした瞬間、

フォウルはリストバンドを外した。


その瞬間、その周囲に居た者達は、

身体に何十倍もの重力を受けたように感じ、

潰れるような身体の感覚に自然と膝が曲がっていく。


膝を曲げて地面に着きそうな者達は、

一体何が起こっているのかをまだ理解できず、

背中に圧し掛かるような重圧に耐えていた。


覚悟をしていた警備隊の隊長達や、

ガブス・メージ等のフォウルを知る者達は、

この重圧を跳ね除ける為に自らが工夫し、

魔力制御と魔力放出の『複合魔技セッション』で耐えている。


フォウルがリストバンドを外した事で、

本来は内部に抑え込まれていたフォウルの魔力が開放され、

その場の空気より重く充満していく。


フォウルに指導を受けた者達は、

教官フォウルの試すような『重圧プレッシャー』に耐える術を、

昨日の時点で見つけていた。


実際に重圧を受けて複合魔技セッションを試してみると、

その圧し掛かるフォウルの魔力の重さに、

制御・放出の複合魔技セッション無しで、

よく飛び込もうなどと考えたなと、

ヴラズを始めとした各警備隊長などは、

頭で冷や汗をかきながら考えていた。


そんな余裕ある表情の各警備隊長等とは裏腹に、

フォウルに文句を言っていた者達は、

既に大半が膝を折って地面に着けている。


辛うじて1~2名、なんとか立っている状態だ。





10秒が経過すると、

右手の人差し指をフォウルは曲げ畳み、

外していたリストバンドを再び装着した。


そして確認するように周りを見渡した。



「――…さて……、と。立ってるのは、ひーふーみー……16か。――…で、蜥蜴ヴラズ。それに警備隊の連中は、昨日の今日で良く『魔力制御コントロール』と『魔力放出オープン』で耐えたな」


「ははっ。散々フォウル殿に、野次やじと煽りを飛ばされながら学ばせて頂きましたからな」



フォウルの言葉を乾いた笑いで受けるヴラズと、

立っている警備隊長等が「そうそう」と頷いている。


競合訓練での際に指導を受けた者達は、

フォウルの性格の一端を把握している為、

文句が出る場合はフォウルもこういった手段に出るのを、

承知してはいたのだ。


あくまで承知しているだけで、

容認をしているわけではない。

しかし指導を受けた事で行える、

自らが行える魔技ことを把握したかったのだ。


そしてそれを承知していなかった者達は、

地面に伏すように泡を吹いて倒れる者や、

膝を地面に着け脂汗を流して荒げた息を整える者が、

大半を占めるようにフォウルの前に居た。


そういった者達が大半の中で、

膝を着けずに立っていたのは二名だけ。


その二名も片方の鰐牙族アリゲイツ疲労困憊ひろうこんぱいの様子で、

フォウルの魔力の重圧プレッシャーが解除されると、

フラフラしながらもなんとか堪えていたが、

そのまま倒れるように横に転がってしまった。


フォウルに不満のある者の中で耐えられたのは、

たったの一名のみ。

首無族デュラハンである黒騎士の風貌を装った者だけだった。



「で、文句のある奴で立ってるのは、この首無し(デュラハン)だけか」


「……伝説にたがわぬ重圧プレッシャー。流石は『戦鬼バトルオーガ』と呼ぶべき者よ」



首無族デュラハンは左手に、

兜を被った自分の顔の抱えながら、

口を動かして喋り、

フォウルを見ながらそう告げる。


腰に下げていた帯剣を右手で抜き放ち、

フォウルの前で黒鉄で鍛えた剣を構えた。

二メートル半以上の体躯を誇る首無族デュラハンの帯剣は、

人間サイズの大きさからして見れば大剣の如き大きさだろう。


その首無族デュラハンの行動に驚いた警備隊長達は、

これはマズイと止めに入ろうと動いたが、

フォウルの無言の視線に気付いて動きを止めた。

その視線は『止めるな』と言っていた。


視線を戻して首無族デュラハンに視線を向け直し、

フォウルは鼻で溜息を吐き出した。



「お前さんは俺とってみねぇと、分からんか」


「その通り。こちらを試したのだ。そちらを試すのも道理どおりだろう」


「フンッ、確かに一理あるな。――…で、どうした?さっきから構えるだけで、隙だらけの俺に撃ち込まんのか」


「――…ッ!!」



フォウルは首無族デュラハンが帯剣を抜き放つ前から、

攻撃される事を予測はしていたようだったが、

当人である首無族デュラハンはその時点では、

フォウルに一言述べる前から攻撃をする意思を持っていなかった。


その戦闘に置ける心構えの意識の差が、

まるで実力の差だと言うフォウルの表情と言葉に、

首無族デュラハンは帯剣を握る手に力を入れた。



「ならば――…その傲慢プライド、その顔と共に斬り落とそう!!」



そう言った首無族デュラハンは足を踏み込み、

纏う大鎧では考えられないほどの速度で剣を振る。

その剣の軌道は正確にフォウルの首筋を狙い、

フォウルは特に微動だにもせず、

特に腕や手で剣を止めるような動きも見せない。


それを怪訝に思いながらも、

首無族デュラハンは渾身の一撃を込めて、

フォウルの首を落としに掛かった。


首無族デュラハンは戦闘に関しての所作として、

相手の首を落とすという行動を必ず行う。

これには紆余曲折うよきょくせつと様々な理由が定義されるが、

その一つとしては、相手に礼儀を弁えさせる行動だ。


自分達が首無しと呼ばれる一族であり、

魔族の中でも首と胴が離れた異形の姿であれど、

首無族デュラハンは自分達の姿を誇りとし、

その誇りある姿へ相手もならう様にさせる行動なのだ。


首無族デュラハンの首落としの行為とは、

相手にこちらの礼儀を教える場合に行う。

簡単に言えば仕置しおきの行動だった。


もしこれが普通の大鬼オーガであれば、

その首は落とされ礼儀を弁えさせただろう。

そう。普通の大鬼オーガであれば、だ。



「――…で?」


「!!!」



フォウルの首に帯剣を当てた瞬間、

まるで同じ鉄と鉄がぶつかり合ったような、

凄まじい音が鳴り響く。


首という急所へ剣戟けんげきを当てたにも関わらず、

フォウルの首は胴からは離れていない。


それどころかフォウルの首へ直撃させた黒鉄の帯剣が、

刃毀れを起こすように刃の部分が砕け、

それが次第に全体に広がり、首無族デュラハンの剣を砕き折った。


この予想外の結果に、

兜の中から驚く視線を向ける首無族デュラハンは、

一歩・二歩と足を後退させた。

そして改めて柄以外が粉砕した自分の剣を見て、

フォウルへ視線を向け直した。


フォウルは呆然とする首無族デュラハンに向け、

改めて喋りかけた。



「――…で、これでお前は納得できたか?と聞いてるんだがな」



そう問い質された首無族デュラハンは、

呆然としながらも左足を一歩後退させ、

左膝を曲げて地に着けて、

まるで王に忠誠を使う騎士の礼を模するように、

フォウルへと敬礼をした。



「認めましょう。貴方が強者であると」


「はぁ、首無族デュラハンっつぅのは相変わらず面倒くせぇな。さっさと代わりの剣を用意して準備しろ」


「ハッ!!」



そう言うと首無族デュラハンはフォウルの言う通りに行動し、

替えとなる剣を武具の配布役をしていたドワーフ達に願い出る。


首無族デュラハンという種族は、

強さは魔族の中でも群を抜く者も多く、

魔技の技術に衰えや停滞を見せることは歴史上少ない。


しかしその気性や性格からか、

自分より強い者にしか従わないという規律を持ち、

忠誠を誓うに値する人物にしか膝を屈しないという、

種族特有の矜持プライドを持っている。


フォウルを強者と認めた首無族デュラハンは、

忠誠を誓うに値する相手だと認め、

フォウルの意に素直に従うようになったのだ。


フォウルはこれが至極面倒臭そうで、

溜息を吐き出すほどらしい。



首無族デュラハンは確か、西の山脈の奥にある場所に棲み着いてた記憶があるが、なんで真逆の東側(ヴェルズ村)に来てるんだ?覇王竜ファフナーの眷属になってるはずだろ、あいつ等」



そうヴラズに尋ねたのはフォウルで、

腕を組みながら帯剣の代わりを受け取る、

首無族デュラハンに視線を向けながら聞いていた。



「あの者は傭兵ですな。確かキュプロス殿とガルデ殿が、昨日の競合訓練の裏で村の庇護を得ようと集まった警備隊入隊希望者の中で合格した者でしょう。昨日だけで100名ほど落としているらしいので、中々に腕が立つ者のはずですよ」


「んじゃあ、ここにうずくまったり、寝転がってる奴等は?」


「ヴェルズ様と懇意にしている氏族や部族の子弟してい達……なのですがな。今回の事を聞き協力しようとしてくれた者達です。――…彼等の実力は、言わば祭りが始まる前の我等の姿でしょう」


一丁前いっちょうまえ魔力制御コントロール魔力放出オープン複合魔技セッションが出来るようになったからって調子に乗るなよ?お前等も''まだまだ''だからな、半人前ども」



そうフォウルが言いながら頭を掻く姿に、

ヴラズを含んだ警備隊の隊長達と、

競合訓練で指導を受けた者達が、

苦笑いを浮かべつつ互いに顔を見遣った。


単に悪口を言われているだけのように聞こえるが、

フォウルの言い方が含む部分を、

各々が別の意味と捉える事が出来たからだ。


『まだまだ半人前』。


つまり自分達はまだ先を目指せるということ。

まだまだ強くなれるということ。


各々がその意味を理解し、

昨日まで散々『出来ていない』と罵られた者達が、

『一丁前』に出来るようになっていると褒められ、

苦笑しながらも嬉しさでたかぶりさえ起こす。


そして今の自分に慢心することをせず、

真の意味で『一人前』と目の前の大鬼に言わせることを目標に、

この事件の後に、各々が精進し続けるのだった。





それがフォウルへ返せる、

せめてもの恩の返し方だと思いながら。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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