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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章五節:生誕祭、最後の日(後編)

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第056話 精神体


侵入者の情報を五名に訂正し、

一緒に連れて控えていたエルフの術師に、

整理した情報を訂正させて紙に書かせていく。


そんなヴェルズを他所に、

フォウルは顎に手をやって悩む様に唸った。



「だが、腑に落ちん。話を聞く限りじゃ、この坊主は間違いなく『幻術』自体を見破れる。だが坊主でさえ見破って尚、視認できない相手が居たということだ。――…おい、セヴィアっつったか。お前は本当に何も見えなかったのか?」


「……えぇ。私は見えなかったわ。けれど――…」


「そうだ。嬢ちゃんは見えてたような様子があった、とお前等は言ってる。――…精神体アストラルが居たのか?」


「――…アストラル?」


「それは何のことなの?」



フォウルがボソリと呟いた言葉に、

ヴェルズとセヴィアは食いつくように聞いた。


二人が詰め寄るように聞くので、

渋々ながらもフォウルは話した。



「一部の連中だけだがな。魂を持った連中が『精神の体』だけで現世で生きることがある。――…ヴェルズ、お前はそういう存在を知っているはずだがな?」


「――…まさか、妖精族フェアリー?」


「それも、その一つだがな。他にもお前が知ってる悪魔族デーモンもそうだ。本来奴等は、精神体アストラルだけが行き交う世界に棲みついてるらしい。肉体を持ってる俺等じゃ、辿り着けない世界だ」


「――…悪魔族デーモンに関しては、私も異端なものしか知らないの。『悪魔公爵バフォメット』は悪魔の中でも異端過ぎて、他の悪魔族デーモンと比べる対象とはならないもの」


「その『悪魔公爵バフォメット』だがな。随分前に聞いた事が間違いじゃなければ、そいつも『到達者エンド』だ」


「!?――…納得できたわ。昨日貴方に『到達者エンド』の話をした時に『会ったことが無いと思っているのか?』と聞かれたことを。――…まぁ、あの変態バフォメットなら、ある程度は納得してしまえるわね」


「確か、邪竜王ニーズが『闇神くらがみ』に収まる前の先代っつぅ奴だ。――…『闇神』バフォメット。『光神』ティエリドと対を成す存在だったが、自分の邪竜ペットに称号を譲って雲隠れした。……と聞いていた」


「……バフォメットは、ジュリア様の魂に惹かれて顕現けんげんしたと言っていたわ。『純粋なる無垢むくの持ち主』とかなんとか、ワケが分からない事を言って、急にジュリア様につかした……。――…丁度、人魔大戦が終わった少し後だったかしら」



そんな会話を続ける中で、

フォウルは途端に口を閉じてそれ以上何も言おうとせず、

ヴェルズもその態度になったフォウルに察して、

やや沈黙した空気を取り払うように喋り始めた。



「――…ごめんなさい、話が逸れたわね。――…フォウル殿、精神体アストラルと呼ばれる者がその場に居た可能性は分かったわ。――…けれど、なんでアイリがそれを見ることができたの?アイリがまさか、幻術破りを出来るはずがない――…貴方が教えたの?」


「教えてねぇよ。大体、精神体アストラルと幻術じゃ全く違う。――…もしかしたら、突然変異体アルビノの嬢ちゃん''だから''見破れるのかもな」


「……突然変異体アルビノだから…。――…そういえば、ジュリア様もミコラーシュを見つけた時……いえ、なんでもないわ」



セヴィアとリエラが近くに居る事を思い出し、

口を閉じたヴェルズは頭の中で思い返した。


ミコラーシュが妖精の世界から飛び出して来た際、

妖精だったミコラーシュの姿を視認できたのは、

確かにジュリアだけだった事を思い出したのだ。


始めは手に何か見えないモノを持った様子を見せるジュリアに、

ヴェルズやドワルゴンは困惑を示したが、

バフォメットがそれを見ると、

伝説の種族である妖精族フェアリーだと言い出し、

初めてジュリアの手の中に妖精が居る事を、

ヴェルズ達は知る事ができたのだ。


ジュリアも連れて来たは良いものの、

これが何の種族なのか全く分からなかったので、

詳しそうな奴に聞きに戻ったということらしい。


それからバフォメットが何かしらの魔術を用いて、

妖精族フェアリーであるミコラーシュの姿を、

ヴェルズ達にも見えるように工夫を凝らしたのだ。


今でこそ半精神体ハーフアストラルとなっているミコラーシュだが、

彼女は妖精族フェアリーとダークエルフの両面を持つ、

まさにこの世界では特異な存在とも呼ぶに相応しい。


今までそんな彼女が目の前に居た為に、

ヴェルズも過去の出会いの一部を省略して、

肝心な部分を忘れかけていたのだ。





数秒間、口を閉じたヴェルズは再び口を開け、

話題を無難な方向へと導いた。


ミコラーシュが半妖精族だというのは秘密であるし、

それを目の前のセヴィアとリエラに教えるわけには、

流石のヴェルズでも許すことができなかったからだ。



「ジュリア様やアイリのような突然変異体アルビノは、或いは精神体アストラルと呼ばれる者達を見る事ができる『魔眼』を持つのでしょう。今までそれらしい様子をアイリが見せなかったのも、ここに''そういう''者達が全く居なかったということね」


精神体あいつ等は自分の世界で引き篭るからな。あの嬢ちゃんには多分、ミコラーシュのはねも俺達よりも鮮明に見えてただろうな」


「――…あなた、私の意図を敢えて無視するわね」



ヴェルズの意図を無視するように、

ミコラーシュの情報をセヴィアとリエラの目の前で出され、

諦めの微笑みをヴェルズは浮かべてそう言うと、

フォウルは呆れたように返した。



「いちいち、そっちの事情なんぞ気にしてられるか。――…それにお前も分かってるだろ?俺等や警備隊あいつらの目では見えない敵がいるんだ。しかも現状、それを見破れる手段が明確なのは、突然変異体アルビノの嬢ちゃんしかいない。そこらへんも考えて奴等をとらえる手段を考えねぇと、撃ち漏らすか逆に足元を掬われるぞ」


「――…こちらもミコラーシュという妖精族アストラルが居るわ。その点で言えば、その相手はミコラーシュに任せても良いのでしょうけれど……」


「そういえばさっき、ミコラーシュの奴と連絡が取れないって言ってたな。――…まだ取れないのか?」


「………えぇ」



ヴェルズはフォウルとジスタ達に、

昏睡している三人を任せた後、

すぐに各警備隊達の行動状況と、

各部族・氏族の状況を確認して、

的確に長老達に指示を出して事を円滑に進めていた。


村から避難する者達はほぼ整え、

ヴェルズ村の大扉となっている門を開放し、

そこから村から出て行く者達を検査している。


南地区に集結させつつある露店や出店など、

村人達や残る外部の魔族達を護衛・監視する人員も、

警備隊達が選出した者達に付け加えて、

ヴェルズが推挙する者も選び、

村の守りは現状では最大限整えられる様に、

結界の状態も最大限に高めてある。


唯一、ヴェルズの思惑とは裏腹に、

上手くいっていない事があるとすれば、

それは二名の存在だろう。





まずは『最強の戦士』ドワルゴン。


彼はアイリが誘拐されたという情報を聞いた瞬間、

すぐに行動を起こして村から離れ、

山の中へと戻っていったらしい。


恐らくはドワルゴンもアイリを探す為に、

活動を開始したのだとはヴェルズも分かるのだが、

もう少し待って残ってもらっていれば、

現在ヴェルズ達が持っている情報を共有し、

警備隊と連携をして捜索を行えただろう。


ドワルゴンの行動次第では、

もしアイリとジークを誘拐した者達と、

ヴェルズ達だけで遭遇した場合、

戦力的な不安はあるだろう。

フォウルが加わる事である程度不安は解消されたが、

フォウルという外部の者が加わる事で、

やはり不測の事態が起こった場合に、

ヴェルズ達だけでは対処はできないのだ。


逆にドワルゴン単独で誘拐魔達と遭遇した場合、

勇者並の戦力を持つ人間が二名、狼獣族はともかく、

セヴィアの推測からヴェルズ(自分)並の空間魔術使いと、

目で捉える事ができない精神体アストラルの五名。


ドワルゴン単独だけでは勝利する事は難しく、

仮に一定の戦果を得たとしても、

ドワルゴンだけではアイリとジークを抱えられたまま、

誘拐魔達に逃げられてしまう可能性もある。


そう考慮すれば、

ヴェルズは一刻も早くドワルゴンと合流し、

共に誘拐魔達を捕らえるか討ち滅ぼすかが、

確実な手段だと考えている。





そして二人目となるのは、

『俊足姫』ミコラーシュの存在。


こちらも先程述べたドワルゴンのことと、

基本的には同じ。

しかし大きく異なる事と言えば、

ミコラーシュという戦力が、

今回必ず必要になることだろう。


ミコラーシュは半妖精族であり、

真の姿ならば敵にいる精神体アストラルとの戦力になる。

しかし現状、ミコラーシュは感知できない場所にいる。


ジークヴェルトの捜索をミコラーシュに頼んだのは、

その祖母であるヴェルズ本人だったが、

この状況での頼みは軽率だったという事を、

ヴェルズは痛感させられていた。


あるいは冷静なヴェルズであれば、

ミコラーシュを動かすという手段は待っただろう。

それほどジークヴェルトが失踪・誘拐された事は、

ヴェルズにとって動揺するほどの事態だったのだ。


ヴェルズは内心での動揺は、

この事態が起こってから計り知れない。

しかしその動揺を他者に見せれば、

自分を信奉し信頼する者達にも、

動揺が広がる事をヴェルズは知っていた。


だから常に冷静な表情の裏で、

常に思考を最大限に働かせながら進もうとする。

今回はそれが裏目に出続けている状態だった。


ヴェルズの精神力の疲弊は、

誰もが思う以上に進みつつあった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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