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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章五節:生誕祭、最後の日(後編)

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第051話 追う者と追われる者


アイリと道化師クラウンが出会う前の出来事。





アイリはリエラの手を引きながら、

フォウルから逃げるようにその場を離れ、

祭りの喧騒の中に混じっていく。


子供二人が大人達の間を沿うように進み、

足元を掠めていく子供二人に驚きながらも、

大人達は子供を踏まないようにと避けてくれる。


そんな二人の子供を追うのは、

一人の母親であるセヴィアだった。


セヴィアは辛うじて視線に入る、

リエラの金毛の尻尾を確認しながら、

『魔力探知』を使って自分の子供の後を追っていた。


後を追う身のこなしはただの主婦ではなく、

大柄・小柄の魔族達の合間を綺麗に縫うように、

セヴィアは移動している。


流石は元警備隊所属の術師だと言えるが、

既にそれは20年以上前の事であり、

今は一児の母として活動しており、

身体的な能力は大幅に低下している。


更に子供の出産後は、

一時的に内在魔力量は大幅に低下し、

生活に支障がない程度の魔術は扱えても、

戦えるほどの魔術を扱うには荷が重くなっている。





エルフに限らず特定の魔族は子供の出産に際し、

母体となる母親の内在魔力を胎児は受け継ぎ、

子供を出産後は母体である母親の魔力は、

一時的だが数年以上に及び大幅に低下する。


セヴィアはリエラを出産して五年前後。

まだ内在魔力は完全には戻っていない。


リエラは母親であるセヴィアの魔力を受け継ぎ、

通常の子供の中では飛び抜けた魔力を有している。


それ故にリエラには不便な思いをさせた事が、

セヴィアには心の中で引っ掛かりとして在る。


幼いせいでまだ感情を制御できず、

扱いきれない魔力で力加減が難しいリエラが、

同い年の子供達と迂闊に遊ばせられない。


そのせいで自然とリエラは、

同世代の子供達と溝を作ってしまい、

父親であるバラスタや大人達の行動を見て、

大人っぽい行動に憧れを抱いたり、

魔技を用いた強さに憧れる事が多かったのだ。


リエラにも同世代の友を作ってあげたい。

だけれど、リエラの才と魔力に及ぶような、

そんな子供はヴェルズ村にはいない。


同世代の友達が居ないというのは、

子供の成長の中で何かを失わせてしまう事を、

セヴィアはずっと懸念していた。





そんな中に現れたのが、アイリだった。


初めてアイリと出会った時、

セヴィアは彼女を魔物だと思った。


赤い瞳と漆黒の毛皮に覆われた姿。

荒げた息を吐き出しながら息子の前に現れた魔物アイリに、

セヴィアは咄嗟に魔術で撃退しようとした。


しかし出産後の後遺症で、

魔術が上手く扱えない状態だったことと、

リエラが魔物アイリの近くに居た為に、

攻撃魔術では子供も巻き込みかねないことで、

セヴィアが咄嗟に行動に表したのは、

我が身を呈して子供リエラを庇うという行為だった。


その後の結果は、

ここまで読んだ人々なら御存知だろう。





魔物は魔物ではなく、

アイリというエルフの子供だったという事実に、

セヴィアは驚愕すると同時に、

自分がどれほど情けない者なのかと、

自分自身に叱咤しったを重ねた。


そして同時に、

自分の子供の才の素晴らしさも、

セヴィアは同時に感じていた。


あの場で最も落ち着いた行動を取ったのは、

誰もがジャッカスだと思っていたのだが、

それは事実とは異なっている。


あの場で最も落ち着いた行動を取っていたのは、

セヴィアの息子であるリエラだったのだ。


セヴィアは息子を庇い、

馬頭族の青年に担がれて離れた後、

自分の息子の言葉に我を疑った。



『母さん、どうしてみんな驚いてるの?なんでおじさん、あの子の事を蹴ったの?』


『!?――…ヴァリュエィラ、何を言って……アレは魔物で――…』


『あの子、魔物じゃないよ?だって、お母さんそっくりの耳の子だったもん』



そんな事を急に言い出したのだ。


息子がおかしな事を言い出したかと思った時、

先ほどの場所から悲鳴が上がり、

何かが起こった事をセヴィアは知った。


その後、慌てて走っていく警備隊員の姿と、

周囲の人々の言葉から、

セヴィアは初めてあの魔物が、

ただの子供だという事を知ったのだった。


セヴィアは気を動転しながらも、

隙間を縫うようにリエラを抱えて進み、

ジャッカスの屋台のある場所まで戻った。





そこには毛布で包まれた銀色の髪の子供と、

泣き崩れるジャッカスの姿。

子供が咳をして吐き出す赤い血と、

周囲の人々から感じる絶望的な表情と状況。


それで状況を把握してしまったセヴィアは、

自分がなんと浅慮せんりょな者だったのかを、

今までの生涯で初めて深く後悔をした。


膝を落とすように曲げて地面に着け、

リエラをゆっくりと抱き締めながら、

セヴィアは涙を流しながらいた。





あの時、私がもう少し落ち着いていれば。


そうすれば息子リエラが、

あの子の事を私に教えてくれたかもしれない。


私がもっと落ち着いていれば、

あの子がこんな状況にならずに済んだかもしれない。


自分の息子の事ばかり考えて、

周りが何も見えなくなった浅ましい自分に、

あの時の子供アイリが起きたという知らせを受けても、

ずっとセヴィアは自身への叱咤しったを続けていた。





数日間、床にして悔やむ妻の姿を見かねて、

夫のバラスタはジャッカスの元に訪れ、

アイリの事を聞いていくと、

妻にアイリの事を話し伝えた。


リエラも母親を心配する様子を見せた為、

バラスタに説得されたセヴィアは、

祭り前には何とかす事を止めた。


そして祭り当日。


アイリがジャッカスの店へ訪れる事を知ったバラスタは、

セヴィアとリエラを連れて南地区へと向かい、

元気になったアイリを見ることになった。


始めこそ周囲の人々に怯える様子を見せていたアイリに、

セヴィアは会う事を躊躇ためらう姿も見えたが、

セヴィア達も聞かされていなかった南地区と警備隊の土下座騒動で、

アイリが皆に決意を見せた時の表情と言葉で、

セヴィアはアイリと対面する事を初めて決意し、

あの時の事を正直に話して謝罪しようと決意した。


そしてあれほどの決意を見せるアイリを、

ジャッカスの話から類稀なる才を持つアイリを、

息子の友に…出来れば将来の伴侶にと考えた。





しかしアイリと実際に触れ合い、

話す時間と接する時間を持ったセヴィアは、

アイリの強さと才の裏にある弱さを知った。


アイリの強さとは、

子供として本来持つはずの何かを、

アイリが得なかったからこその強さだと気付いた。


本来は両親に与えられるだろう当たり前の事を、

そして子供が持つだろう当たり前の事を、

アイリはほとんど持っていなかったのだ。


だからこそアイリには、

普通の子供になってほしいと、

セヴィアは強く望んだ。


小さな子供アイリが傷付きながらも、

前に進み続けようとする痛ましい姿の裏に、

必死に自分を抑え続けて我慢しようとする、

アイリのあの姿を見たセヴィアには、

その思いが強くなった。


''家族になってくれたら嬉しい''と、

セヴィアはアイリに伝えた時も、

涙を流すアイリの姿を見て、

セヴィアは確信をした。


アイリはとても弱い。


だから強く在ろうとして、

無理をし続けているのだろう。


子供らしい事を我慢して、

大人らしい事を強要され続ける事を、

今まで誰かにいられてきたのだと。


そう在る事が正しいのだと、

アイリが思い込み続けていることを、

セヴィアは確信したのだ。


そんな思いだったからこそ、

アイリが魔技を習う姿に、

セヴィアは少し渋い顔を見せた。

勿論、アイリにはそんな表情は見せなかった。





息子リエラにはいずれ、

習う事は必要だろうと考えてはいた。


そして自分の思った通り、

リエラには魔技を扱う才が有り、

それが非常に優れている事を証明できた。


けれど、アイリが無理に魔技を習う事だけは、

セヴィアは快くは思わなかった。

そんな思いとは裏腹に、

アイリは明らかに魔技に関しても才能を持っていた。


信じられるだろうか?


僅か数日前までは村長ヴェルズのせいとはいえ、

魔力さえ感じる事ができなかった子供が、

二日後には魔力制御を未熟ながらも行い、

魔力感知まで出来ている。


そして魔技を教わったその日に、

魔力制御コントロール』『魔力感知センサー』、

魔力放出オープン』『魔力抑制サブレーション』の魔技を、

形なりにも整えてしまったのだ。


息子リエラでさえ才能は有れど、

4歳の春から一年間という期間、

父親であるバラスタに魔技を習い続け、

基礎となる部分は整っていたからこそ、

完璧に近い形で魔技を教えられても実行できた。


なのにアイリは、

一年どころかわずか数日で、

魔技の基礎を全て整えたのだ。


魔力だけでなく魔技の才能でさえ、

息子リエラを圧倒しているのではないかと、

セヴィアは影ながらに戦慄していた。


セヴィアは遠目ながらに見据えると、

ミコラーシュとヴェルズに視線を向けた。


あの二人でさえアイリの魔技に関する成長を、

まるで信じられないモノを見るような目で、

驚きながら見ていたのだから。





けれど。


だからこそセヴィアはアイリを、

今のアイリからは魔技から遠ざけたかった。

そしてある人物から遠ざけないといけないとも思った。


アイリの急激な成長に伴い、

その傍に突如として現れた、

恐らくはアイリと同じ『なにか』を持つ大鬼オーガ


フォウル=ザ=ダカン。そう名乗った元鬼王オーガキング


アレからは絶対遠ざけなければいけないと、

後夜祭で恐ろしい殺気を見せたフォウルと、

そしてその強烈な殺気を諸共せずに、

立ち上がって声を上げて止めに入ったアイリを見て、

セヴィアは確信した。


この二人をこれ以上一緒にさせれば、

アイリという子供はこの先、

何かを失い続けてしまうのではないか。

そして失った何かをアイリは今後、

得る事が出来なくなるのではないか。


そんな直感に近い何かを、

セヴィアは感じていたのだ。





*





「アイリちゃん!ちょっとまって!」


「――…え、あっ……」



人垣から抜け出た先の小さな広場の形になる街角で、

アイリとリエラが抜け出て姿がはっきり見えた瞬間、

セヴィアは声を大きく張り上げてアイリに声を掛けた。


人垣から発せられていた喧騒が無くなったことで、

セヴィアの声に気付いたアイリは、

振り返って立ち止まり、セヴィアの姿を確認した。


乱れた走り方をせずに追い付くセヴィアだったが、

少し息を荒げてアイリとリエラの前で立ち止まると、

肩を数度揺らして息を整え、改めてアイリ達に話し掛けた。



「――ハァ、……。アイリちゃん、えっとね……まずは、足、そんなに速かったの…?」


「え?」


「走る空間が、大人の私達よりあったでしょうけど……ヴァリュエィラは、日頃からお父さんと走ってるから……。でもアイリちゃんが、そんなに足が速かったなんて……驚いたわ……」



セヴィアにそう言われて、

自分アイリの走る速度は速い』という事を、

初めてアイリは認識した。


恐らくは『魔力制御コントロール』の上達と同時に、

自身が負うはずの疲れや足への負担が軽減され、

アイリでさえ無意識に身体能力が高く上昇していた。


あくまで子供の身体能力としてだが、

そこに無意識な『身体強化』や『筋力増強』といった魔技マギを行い、

更に走る速度を高めていた可能性もある。


競合訓練オリュンピアスで常に『魔力感知センサー』を続け、

選手達の戦い、そしてガブスとフォウルの戦いを見た事で、

魔力の流れと仕組みを無意識に理解したアイリが、

魔力の操作そのものに''慣れ始めている''可能性が高い。


それに付いて行くリエラも相当なモノだが、

見ただけで魔技の仕組みを理解して実行し、

フォウルという助けがありながらも、

更に時空間魔術パラムという魔術さえ見様見真似で行う、

アイリの異常とも思える天才性は、

魔族という枠組みからも大きく逸脱している。


その異常性を理解している人物は、

恐らくこの村には数人程度だろう。


ヴェルズ、ドワルゴン、フォウル、ジャッカス。

そしてミコラーシュと、セヴィア。


この6人は少なくとも、

アイリの異常性には気付いているのは確かだ。





………だが、あと一人。

どうも不可解な人物がいる。


アイリの目の前に現れ、

フォウルやジークヴェルトの素性を既に知り、

その際のアイリを見て何か口をつぐんで挨拶した、

『前世持ち』だという、あの人間の女。


道化師クラウン』と名乗る人間の女も、

あるいはアイリの異常性を知っている可能性もある。


ただ、突然変異体アルビノという存在を見て、

驚いていただけという事も有り得る。

決め付けは即断過ぎるとは思うが、

どうもあの女は『アタシ』の勘がヤバイと言っている。


『アタシ』が今まで出会ってきた、

大魔導師ヴェルズ』『鬼王フォウル』『覇王竜ファフナー』、

悪魔公爵バフォメット』『俊足姫ミコラーシュ』『魔獣王フェンリル』、

最強の戦士(ドワルゴン)』『勇者』……そして『皇帝ルシエル』。


その他の到達者エンドを含めても、

クラウンと呼ばれるアレほどの危険を感じた事は無い。

……しかし、何かが引っ掛かる。


――…『魔王アタシ』は、

アイツを何処かで見たことがある。


アイリ』の視線を介して見た時、

『アタシ』の魂は警戒心を最大限まで引き上げた。


恐怖から感じた有様ではない。

今更思えば『天敵』と言えるモノだろう。


この世界の小さなくくりで例えれば、

かつてエルフとドワーフが相容れなかったように。

かつて人間と魔族が相容れなかったように。


道化師アレは今の『アタシ』にとって、

そんな存在にさえ思える。


だからあの時、道化師クラウンに出会った瞬間に、

出来得る限り『アタシ』の魂の波長を消した。


例えるなら潜んで鼻だけで息をすると、

逆に息を荒げてしまう原理と同じ。

だったらいっそのこと、

息を止めてしまえばいいのだと、

そんな感じで波長を消したのだ。


そうする事で『アイリ』の中に居る『アタシ』を、

気付かれる事がないようにと細心の注意を払った。


フォウルがアイリの魔力なかに入った時も同じ様に、

息を潜めるのではなく、息を止めてやり過ごした。


流石にあれだけ長時間居座られるとこちらもキツいので、

フォウルが出て行くと安心した瞬間に息を吐いてしまい、

その一息で『アタシ』の気配をフォウルに気付かれたのは、

冷や汗どころの騒ぎではなかった。





*





――…話が逸れてしまったが、

セヴィアはアイリ達を追いかける時に、

アイリの身体能力を見誤っていた事に気付いた。


先ほどは魔技の上達っぷりを話したが、

それとは関係無くアイリの身体能力の高さに関して、

『アタシ』は当たり前だろうと思った。


なにせ路地裏や裏道に居た時、

アイリは魔力を使わずに警備隊から逃げていたのだ。

身体能力だけで言っても、

アイリの潜在能力ポテンシャルの高さは既に異常だ。


今までそんな身体能力モノを見せる必要が無い為に、

この村の者達の大半が見た目に比例するように、

アイリが弱々しい子供だという誤った認識をしていたのだ。


少なくともアイリは、

今のセヴィアが全力で後を追って、

初めて拮抗するだろう速力を見せた。


そんなアイリに驚くセヴィアの言葉と態度に、

アイリは初め、首を傾げていた。



「私、足…速いですか?」


「えぇ…ヴァリュエィラ、よく付いていけたわね」


「ううん。僕も思いっきり走ってたよ」



その割には息を乱していないリエラの様子だが、

普段からバラスタとの特訓で慣れているのだろうか。

体力的にはセヴィアよりもリエラの方が今は上らしい。


そんな中でアイリに視線を戻すと、

自分がそれほど速く走った事を意識できないのか、

少々複雑な面持ちをしているアイリに、

先ほどと同じようにセヴィアは近付き、

膝を曲げて身を屈めながら視線を下げて、

アイリとリエラを優しく抱き寄せた。



「急に走り出して心配したのよ、アイリちゃん。――…あの大鬼オーガの言い方は問題大有りだけれど、お祭りを楽しんで欲しいという部分では私も同意見よ。――…アイリちゃん、今日は私達と一緒にお祭りを周りましょう?」


「……は、はい…」


「ヴァリュエィラも、そうやってアイリちゃんと手をずっと繋いでるのよ。二人とも、勝手に飛び出してしまうのだから。良いわね?」


「えっ、あっ…!う、うん!!」



セヴィアに抱き締められながら、

言われた言葉に素直に頷くアイリと、

ずっとアイリと手を繋ぎっぱなしだった事に、

今更ながら気が付いたリエラは、

頬を染めながら耳と尻尾をピンッと張ると、

尻尾を大きく左右に振りながら頷いた。


そんな二人の様子を見て、

優しく微笑んだセヴィアは、

曲げていた膝を真っ直ぐ立たせて、

立ち上がってアイリに手を伸ばした。


伸ばされた手を見ながら、

アイリはどうするべきなのか迷った様子だったが、

リエラと手を繋いだ右手とは逆の左手に、

セヴィアは手を伸ばして優しく握る。


そうして、セヴィア・アイリ・リエラという並びで、

二人の親子に挟まれる形で手を握られるアイリは、

優しく手を引いて歩くセヴィアの後を付いていき、

手を握られてる事を意識して硬くなるリエラを引きながら、

アイリ達は祭りの中を歩み始めた。





その三人の姿を後ろで見つつ、

ある男達が付いて行く。


一人目の男は、身長170センチ前後。

無精髭が目立ち髪を後ろでたばね、

和服に近い服を着崩した様に着こなし、

右腕だけを服のえりに突っ込みながら、

串焼きの串を口に咥えて歩いている。


年配の顔立ちと細そうな体付きながらも、

その左腰には長さ1.5メートル弱の日本刀の鞘に似たモノを下げ、

左手は肩から肘の先が失われた、隻腕の人間。


二人目の男は、身長190センチ前後

黒い毛皮に覆われたコートを纏い、

頭まで深々と被ったフードと、

時折垣間見える姿から、獣族を連想させる。


もう一人の男の後ろに付く様に歩き、

更に前を歩くリエラに視線を向けながら、

ゆっくり親子とアイリの後を追っていた。


先頭を歩く『さむらい』の風貌に似た男が、

後ろからついてくる黒毛皮の獣族に話し掛けた。



「――…ったく、団長もこくな事を。急に呼び出したかと思えば、こんな事をよくもやらせてくれる……」


「………」


「それにしても、あの女朗めろうめの妖術あやかしのじゅつ、本当にせつ妖怪あやかしに見えているようだ。妖怪あやかし共がこちらを警戒しておらん。せつの様な人間はここで見つかると厄介だと聞いてはいたが……」


「………」


「――…おい、番犬ばんけん殿よ。いい加減に一言くらい喋ればどうだ?どうせ彼奴きゃつ等にはこちらの声なんぞ聞こえないのだ。例え此処ここがお主の故郷だったとしても、誰にもバレはせぬよ」


「………」


「――…ハァ。縁日えんにちを楽しむのなら、もう少し華がある相手が良かったのぉ。だんまりの毛達磨けだるま物の怪(もののけ)とでは、柔然に楽しめないわい……」



二人の男はそんな会話にもなっていない事を呟きながら、

アイリ達をゆっくり歩いて追いかける。


その二人がアイリ達を追っている事に気付く者は、

今は誰もいないのだった――…。






『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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