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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章五節:生誕祭、最後の日(後編)

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第049話 気負い


しばらくアイリの頭を撫でていたフォウルだったが、

落ち着いたアイリの様子を感じ取ると、

フォウルは頭を撫でるのを止めて手を離した。


少し名残惜しそうに、

離れた大きな手を見るアイリだったが、

その瞬間にやや離れた後方からアイリ達を呼ぶ声が聞こえた。


その声に反応してアイリが振り返ると、

呼ぶ声の主が弾むように嬉々とする姿が見えた。


その声の主は昨日、

競合訓練(オリュンピアス)で天才振りを発揮した狼少年。

そしてその母親であるエルフの女性。

リエラとセヴィアの二人が、

広間の出店を縫うように移動して近付いて来たのだ。



「アイリー!ほら、母さん!やっぱりアイリとおじさんだよ!」


「――…本当だわ。髪と瞳が違うけれど、アイリちゃんなのね?もしかして『悪戯(ジェクト)』の魔術を使っているの?」


「あ……」



そう言いながら確認するように近付く母子の姿に、

アイリは躊躇するように身体を一歩引いてしまった。


アイリが身を引いたことで、

リエラとセヴィアがその動きに気付き、

アイリの様子がおかしい事に気付いた。


二人は戸惑いながらも、

身を引かれた距離からお互いに動かずに、

まずはセヴィアから優しく声を掛けられた。



「どうしたの、アイリちゃん。……何か怖い事があった?それとも、私達が何かしてしまったのかしら?」


「あ、あの……」



セヴィアの問い掛けに、

アイリは上手く答えられない。


何か言葉を返そうと必死になっている様子のアイリを見て、

少なくとも今挙げた事柄で自分達から身を引いたのではないと、

セヴィアは分かってあげることはできた。


しかし、何か必死に話そうとしながらも、

言葉を選ぶように躊躇して話せないアイリの様子に、

少なくとも何かがあったのだと、セヴィアは察した様子だ。


アイリの隣に居るフォウルに視線を移したセヴィアは、

視線で何が合ったのかを問うように訴えた。


フォウルはコレに対して面倒臭そうな表情だったが、

頭をポリポリと指で掻くと、

落とした腰と足の向きをセヴィア達に向け、

アイリの背中をそっと押して前に一歩進ませた。


アイリはそれに驚きながらも、

それを驚く声よりも先にフォウルが話し始めた。



「――…嬢ちゃんが自分で自分の姿が異常だってのを、きちんと理解しただけだ。……お前さん等に色んな迷惑を掛けてたってんで気に病んでるんだろ」


「!――…そういうことなのね……」



フォウルの話す説明に、

セヴィアは幾度かきつい視線を向けたが、

ある程度の事情を聞いた事で、

アイリが何を悩んでいるのかを、

セヴィアは再認識する事ができたようだ。


フォウルに押し出されてどう身動きを取れば良いかを、

自分では判断できないアイリに向かって、

セヴィアがゆっくりと近付いていく。


目の前まで来たセヴィアは腰と膝を下げて、

そのまま優しく両の腕を横に広げて、

セヴィアはアイリを抱き締めた。





そのセヴィアの行動を予期していなかったアイリは、

動揺する声を小声で漏らしていたが、

優しく背中を撫でるように触るセヴィアの行動に、

動揺や困惑は次第に無くなったが、

それと同時に違う思考へと至り始めた。


それはアイリが今までで一番多く、

前世でも今世でも考えたであろう、

迷惑を掛けてしまったのだという、

『罪悪感』だった。



「――…ごめんなさい…」


「…どうして謝るの?アイリちゃん」



抱き寄せられたアイリはセヴィアの胸元で、

セヴィアはアイリの長耳の側で呟く様に喋りかける。


まだ5歳ほどのアイリの体格に釣り合う小さな手が、

セヴィアの胸元の服を小さく握り締めながら、

更に言葉を呟かせていった。



「――…ちゃんと、昨日…セヴィアさんが言ってくれたこと、覚えてるけど……でも、ずっと前からいっぱい、皆に迷惑を掛けてたんじゃないかって……だから……」



祭りの四日目、競合訓練(オリュンピアス)前の警備隊本部の受付前で、

セヴィアと話した事をアイリはちゃんと覚えていた。

しかし覚えていたからこそ、

逆に先ほどの様な態度が見えてしまったのだろう。


誰かに迷惑を掛けるのは当たり前という話を、

アイリは驚きながらも頭の中で覚え、

それを自分の中で受け入れようとしていた。


しかし今回の事は、

自分がまだ子供だから迷惑を掛けているというモノではなく、

自分が『突然変異体(アルビノ)』だから迷惑を掛けていたという、

自分自身では気付く事も改善できる事も無いモノだったのだ。


アイリが道を通る度に、

部外者達の奇異と驚きの視線を気付かせまいと、

ヴェルズ村の人々が総出で動かす事になっていた。


その事実がアイリにとっては重い出来事であり、

慣れて多少は親しんだはずのセヴィア達に対してさえ、

抱える罪悪感に身を引かせてしまう程の動作を生んだ。


アイリはそれに自分で気付く前に、

フォウルから渡された『悪戯(ジェクト)』が入った、

魔玉の首飾りを受け取っていなければ、

その場から一歩でも動く事さえ躊躇っただろう。


或いはそうなってしまえば、祭りが終わった後、

アイリは二度と家から出ずに、

人前に姿を現す事もしなかったかもしれない。


そして自分を預かってくれているヴェルズへの罪悪感から、

黙って家を抜け出て、村を出て行こうとさえするだろう。

アイリはそういう事を考え、

そういう事は実行できてしまう子供なのだ。


ある意味でフォウルがあの場で切り出したタイミングは、

まさに絶好のタイミングだったと言っても良い。


少なくとも現状で『悪戯(ジェクト)』を扱えるアイリは、

容姿での奇異の視線だけは受けず、

またそれを隠そうとする村人達の行動を節制しているのだら。



「――…アイリちゃん。村の人達がお祭りに参加してるアイリちゃんを見て、今日までなんと言っているか知っている?」


「!…………」



セヴィアの言葉にアイリは返答しなかった。

ただ静かに首を振って分からない事を伝えた。


しかしアイリは思考して考えていた。


それは前世で周囲の人々に迷惑を掛けた時に言われた、

およそ子供に向けるべきではないあられもない言葉達。

アイリに打ち込まれた(くさび)の形をした何か。


アイリはそれに近い事を皆に言われているのだと、

一瞬だが頭に過ぎってしまった。


そんな事は無いと思いつつも、

アイリの中にいる冷静な部分が、

『じゃあ他に何を言われているの?』と聞き返すのだ。

そう思った瞬間に言葉が無くなり、

アイリはただ黙って首を振るしかなかった。





*





その答えを教えてくれたセヴィアの言葉は、

アイリが前世で受け続けた言葉より、

アイリの中で考えられた冷静な問いへの返答より、

ずっと暖かみを感じる言葉だった。



「――…『良かった、元気になったんだね』『あの子が祭りを楽しんでくれるように頑張らなきゃ』『まだ凄く小さいのに、しっかりした良い子だよね』『笑顔が凄く可愛い子だねぇ』『祭りを楽しんでくれてると良いなぁ』――……皆は迷惑に思うどころか、アイリちゃんがお祭りを楽しんでくれるならって、いっぱい頑張ってたの。――…だから大丈夫よ。アイリちゃんは突然変異(アルビノ)だからって、誰にも迷惑なんて掛けてない。誰にも掛けてないの」


「!?――……っ……」



セヴィアから告げられる言葉に、

始めアイリは聞き違いを考えた。


しかし幾つも出る村人達の言葉と、

突然変異(アルビノ)だからって、誰にも迷惑は掛けてない』という言葉に、

アイリは小さな手を震えさせて、

声に成らない声を幾つか漏らす。


そう。普通に考えれば、

そして村人達がアイリをどう思い、

どう厚遇しているかを知っていれば、

卑下するような事を言われるはずもない。


しかしアイリには村人達の思いが、

伝わらない所が多かったのだろう。


アイリが『元奴隷だった』かもしれない。

という事実もアイリ自身に隠し、

村の子供達と変わらず不自由の無い生活を送らせたいという、

村の人々がアイリの事を想っての事でも、

やはり不自然さが出てしまっていたのだから。


恐らくヴェルズ辺りは祭りが終わった後に、

突然変異体(アルビノ)の異常性や、

元奴隷だったかもしれないという事を、

アイリ自身に伝える気はあったかもしれない。


生誕祭の三日目にヴェルズと一緒に周った際、

周囲の視線で自分が奇異の目で見られている事に、

アイリ自身が気付き始めていたことから、

その洞察力では誤魔化しきれないと考えるのが、

ヴェルズを知る『アタシ』には予想できるからだ。





アイリは今、

不安な気持ちから解放された。


セヴィアの言葉はアイリに、

新しく生まれかけていた(くさび)を取り払い、

今世(いま)の自分が居ても良いと許されるような、

そんな救いの言葉になっていた。


安堵したアイリが涙を流しそうになるが、

今この場で大泣きしてしまうは避けたいようで、

必死になって我慢している。


過去に二度も人前で泣いている姿を、

周囲に見せてしまっているアイリには、

また泣いて皆に心配されるというのが嫌なのだろう。


だから小さな手をしっかり握り締め、

顔を伏せながら震える身体を耐えさせ、

セヴィアに優しく抱き込まれる温かさで、

乱れそうな心に平静さを戻そうとしていた。


フォウルは既に押し出した手を引いて立ち上がり、

セヴィアに抱き込まれるアイリの様子を、

口元をやや微笑ませながら、

けれど瞳の奥では悲痛な面持ちで見ていた。


リエラも二人の様子を見ていたが、

セヴィアほど身体もまだ大きいワケではなく、

またアイリが怯えていた理由がまだ理解できず、

子供ながらに自分ではアイリを慰められないことに、

リエラは悲しみで尻尾をシュンッと垂れ下げている。





アイリが様子を落ち着かせたのは、

それから数分後のことだった。





*





「―――…まったく。アイリちゃんが賢いからと言って、限度があります」


「ぐぬ……」



アイリを抱きかかえたまま椅子に座るセヴィアは、

対面する様に胡坐をかいて座らされているフォウルに、

小言を吐き出す様に告げていた。


フォウルは何か言いたそうな表情だったが、

セヴィアの言い分を聞いている限りでは、

今回は明らかにセヴィアの言葉の方が、

フォウルのソレより遥かに強さを感じさせるモノだった。



「確かにいつかは教えないといけない事でしょうけれど、祭り中…しかも最後の日にワザワザ事をバラすなんて。アイリちゃんにお祭りを楽しんで欲しいという私達の意思を汲み取ろうとか、そんな心ばかりの配慮もオーガには無いのかしら?」


「ぐぬぬ……。だがな、今日はお前等村人の行動がいちいち勘に触るぐれぇ不自然だったんだ。先手打たねぇと嬢ちゃんが嫌な気付き方するだろうが」


「そうね。本当ならちゃんとアイリちゃんの行動は各地区に前もって把握してもらってからやっていた事だけれど、どこかの誰かがアイリちゃんを勝手に連れて行ったり連れ回したせいで、こちらでも把握できなくなってしまったせいじゃないかしら?」


「ぐっ……」


「魔玉で『悪戯(ジェクト)』ができたことで改善できた事もあるでしょうけど、そのおかげで急にアイリちゃんが居なくなったと村の者達は大慌てしていたわ。昨日といい今日といい、オーガという種は本当に自分の事ばかり押し通す自分勝手な種族なのね」


「………」



セヴィアの猛撃についに反論を諦めたのか、

ぐうの音さえ止めたフォウルは溜息を秘かに漏らし、

ボソッと何かを呟いた。



「……これだから―――を超えてるエルフの女は」


「何か言ったかしら?私より長生きのオーガ様」


「なんでもねぇよ、俺よりは長生きしてねぇエルフの女」



フォウルの呟きに即座に反応したセヴィアは、

満面の笑みを浮かべつつも全く笑っていない雰囲気を漂わせ、

フォウルに相対したままその表情を崩さなかった。


互いに皮肉るような言葉が交えられ、

アイリを抱えたまま笑顔のままのセヴィアと、

腕を組んで胡坐で地べたに座ったままのフォウルは、

これ以上の攻撃的な言葉を交える事も無かった。


何故ならそんな二人の威圧感に板挟みに遭い、

セヴィアに優しく抱き締められている、

アイリの姿があったのだから。



「あ、あの…二人共、喧嘩は……」


「大丈夫よ、アイリちゃん。あのオーガのおじさんとは喧嘩なんてしていないから」


「はぁ……」



二人の姿に困惑するアイリだったが、

喧嘩していることを否定する笑顔のセヴィアと、

溜息を吐いて顔を反らしたフォウルの様子に、

困惑するアイリの様子にさほど変化は訪れなかった。





それからアイリとリエラが一緒に居る中で、

何故セヴィアとリエラがアイリの元へと来たのか、

ちょっとした小話が交えられた。


セヴィアはリエラと共に、

夫のバラスタが担当する警備隊区画が催す、

飲食店の出店を手伝っていたのだが、

フォウルとアイリが戻って来たという情報が届くと同時に、

ジャッカスとフォウルと共に居たはずのアイリが、

急に姿を消したらしいという情報も届いたのだ。


警備隊の面々は慌てるように、

各方面で情報を整理する中で、

一緒に出店の店番をしていたリエラが、

「アイリの匂いがする」と言うと、

鼻をクンクンとさせながら飛び出てしまったそうだ。


それをセヴィアは追った結果、

こうしてアイリ達と合流する事ができたらしい。


それにしても匂いという手段で、

多種族が居る祭りの中から見つけ出すとは、

狼獣族寄りながらもハーフエルフであるリエラの嗅覚も、

狼獣族と大差の無い性能と言えるものだろう。





そんなリエラと隣り合う様にアイリが、

その側でセヴィアも一緒に円形のテーブルを囲むように、

各椅子にアイリ達3人は座っていた。


フォウルはと言えば、

少し離れた場所でドワルゴンの様子を、

ずっとうかがう様に立ち尽くしている。


ドワルゴンの食事量も半端無いモノで、

量だけで言えば屋台の客達に出した以上の量になるだろう。

その量を用意しているジャッカスもジャッカスだが、

予めドワルゴンの食事量を知っていれば、

それだけの量を用意するのは心構えとして必要なのだと、

遠巻きに見ている他の食事店の者達などは、

感心さえしているほどだ。


そんなジャッカスの店の様子と共に、

その客となっているドワルゴンの姿を見るフォウルは、

何か考えるように自分の手で顎を撫でながら、

思案するように何かブツブツと呟いている。


その様子をアイリは心配そうに、

けれどそれ以上の態度では表さずに、

フォウルの様子をチラチラと窺っていた。


アイリもドワルゴンへの謎の恐怖感と、

そのドワルゴンに興味を示すフォウルの様子に、

気が気ではないのだろう。


しかしドワルゴンを見るだけで、

恐怖心で動けなくなってしまうアイリには、

ドワルゴンやフォウルをどうこうする事ができないと、

アイリ自身でも理解をしているのだ。


だからアイリは、

フォウルを見るドワルゴンに何も言えない。


例え二人の先に何があるのかを、

アイリは無意識に悟りながらも、

それを「やめて」などと、

今のアイリからは言えるわけがない。


それはアイリとフォウルが、

ヴェルズ村へ戻る前に行ったやりとりで、

アイリがフォウルから見放されているモノだと、

そういう自己解釈をいまだに広げつつあるからだ。


第三者から見れば、

フォウルはむしろ過剰にアイリに構っているのだが、

アイリ自身はそういう解釈をできないらしい。


自分自身を特別視できず、

逆に自分自身を他者よりも劣っているのだという、

そんな考えを持つアイリには、

フォウルに特別な扱いを受けているという自己分析は、

自分ではまだできない。


かといってアイリの場合は、

自分が劣っているからと卑屈になるのではなく、

劣った分を自己努力でまかなおうとする、

そんな思考回路をしてしまっているので、

『見放されているなら、自分はどうするべきだろう』という、

極めてポジティブな次の考え方に移ってしまったのだ。


だからアイリはフォウルへの誤解に気付けず、

フォウルもアイリへの誤解を感じたままでも、

最低限必要だろうと思うモノを渡し終えた事と、

飄々としているアイリの様子に、

互いに付き合いが短い身だからこんなものかと、

あっさりと受け入れてしまっているのだ。





要するにアイリとフォウル、

この二人は完全な自分自身への事に興味が戻り、

自分自身の行動へ趣向を戻したと言っても良い。


だからこそ必然的に、

こんな言葉がフォウルから飛び出しても、

しょうがない事だったのだ。



「――…嬢ちゃんはそこの二人と合流した事だし、嬢ちゃんの事はお前さん等に任せていいだろ?俺はあのドワルゴンに用がある。お前さん等はお前さん等で、祭りを楽しんできたらどうだ?」



こんな身も蓋も無い事を、

フォウルがあっさりと口に出し、

それをアイリに向けて言い放つ姿は、

流石に中で見ている『アタシ』でも、

眩暈を起こしてしまいそうだ。


当のアイリはまたフォウルに突き放されたと思い、

非常に表情を暗くさせてしまう。


そしてその一瞬の表情の変化を、

向かいと隣で見てしまったセヴィアとリエラは、

無神経なフォウルの言い方に顔をムクれさせた。


セヴィアにも、そして子供であるリエラにも、

必然的に分かるのだろう。

アイリが誰と一緒に居たがっているのかを。



「――…ドワルゴン様は、しばらくはジャッカスの料理に夢中のままでしょうから、あなたも一緒に来たら良いのでは?」



そう気を効かせた言葉を言うのは、

リエラの母親であるセヴィアだ。


セヴィアの言葉に顔を上げて、

やや期待する表情で見るアイリだったが、

次のフォウルの言葉で、

やはり表情を暗いものへと戻しただけだった。



「せっかくあの野郎に会ったんだ。また見つけるのも厄介そうだし、しばらくここでアイツに付き合うさ。それより関係ねぇお前達は、最後の祭りの日をたっぷり楽しんでくると良い」



フォウルなりに気を効かせた言葉だとは思うのだが、

ことごとくアイリにとっては裏目となる言葉ばかり。


逆にそんなフォウルに気を効かせたアイリが、

こんな事まで言い出してしまった。



「――…リエラ君達がやってた屋台って、何処にあるの?私、少し喉が渇いたから、そこの飲み物が残ってたら飲んでみたいかも。――…ここに居ても邪魔なだけみたいだから……」



最後の部分だけを消え入りそうな声で言うアイリは、

腰掛けていた椅子から降りて、

リエラの手を引いてリエラ達が来た方角へと、

自ら足を進め始めてしまう。


アイリに手を取られたリエラは、

やや嬉しそうにしながらも、

表情を曇らせて笑うアイリの様子を心配し、

セヴィアはそんなアイリの無理をする様子に、

慌てて席を立ち上がって後を追おうとした。





しかし、セヴィアは一度立ち止まると、

フォウルへと振り返り、こう喋った。



「――…私、少し誤解をしていたわ。アイリちゃんは貴方に懐いているものだとばかり思っていた。――…でも、違うのね」


「――…何?」


「……アイリちゃんは貴方に懐いているんじゃない。アイリちゃんは…いえ、貴方とアイリちゃんは『とても似ている』から、今まで一緒に居たがっていたのね」


「!!」


「――…貴方とアイリちゃんは一緒に居てはいけないわ。貴方と一緒に居れば、あの子は貴方に『似てしまう』でしょうから。そして貴方はそんなあの子をずっと許してしまう…――。――…用事とやらを終わらせて、早く村から離れて頂戴。あの子の為にも……」



そうセヴィアは言うと、

離れていくアイリとリエラの後を追うように、

その場を小走りで駆け出した。


セヴィアの物言いに憤る様子も無く、

また不快感を持つような様子も無く、

フォウルはただ黙って静かに首を正面へ戻し、

ドワルゴンがいるジャッカスの屋台へと首の向きを変えた。



「――……もうガキの面倒なんざ、コリゴリなんだっつぅの…」



フォウルはそう呟くと、

手を動かしポリポリと頭を掻く姿を見せた。


その仕草は、

フォウルが困った時に見せるであろう、

生前の頃からの癖の一つだった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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