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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章五節:生誕祭、最後の日(前編)

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第045話 賑わう祭り


ジャッカスに導かれるままに、

ヴェルズ村に入ったアイリとフォウルの二人は、

やや驚きながら中央広場の方へと歩いていた。


歩いている最中に、

すれ違うように居るヴェルズ村の人々が、

アイリだけではなく、

フォウルにまで笑顔を向けていたのだ。



「あらぁ!二人とも戻ってきたんだねぇ」


「ジャッカスが連れ戻したのかい?すげぇな!」


「おっ、でかいオーガのも戻ってきたのか?昨日売ってる酒は全部アンタが買っていったから、おかげで売るモンがなくなっちまったよ!」


「オーガの旦那!昨日は蒸留酒全部買ってくれてありがとなぁ!」



………。


一体何がどうなっているのだろうか。


そんな表情をするアイリと、

呆気に取られているフォウルの姿に、

ジャッカスは笑いながら、

そのまま先導するように歩いていく。


中央広場が近付き、屋台や出店も見え始めると、

そこの店主達はフォウルに気付き、

笑顔で店の売り込みをしている。


このような事態に、

流石のフォウルも不気味に思いながら、

先導するジャッカスを呼び止めるように声を掛けた。



「おい、ゴブリンの。どういうことだ」


「ん?なんだよ、オーガの」


「なんでコイツ等、俺を見てヘラヘラと笑ってやがる?昨日の事を本当に忘れたのか」


「昨日って、お前さんが出店の酒を全部買い漁って他の連中が飲めなくなって、競合訓練で優勝した巨人を叩きのめして、嫌味(いやみ)ったらしく警備隊の連中を罵って、ガキ共に(たま)遊び教えて、昔話してたらキレて後夜祭(まつり)が終わる前に帰っちまったことか?」



懇切丁寧(こんせつていねい)に昨日フォウルが起こした事の数々を、

ジャッカスは一つ一つ挙げて聞いていく。


ちなみに補足するような余談だが、

昨日フォウルは昼食後に粗方の出店の酒を樽ごと購入し、

それをわずかな時間で飲み干している。


毎回お酒を飲んでいる印象のフォウルだが、

本当に毎回お酒を買っているらしい。

本人曰く酔わない体質らしいので、

いくら飲んでも酔わずに綺麗に飲み干すのだ。


しかしその弊害として、

酒を飲みたくて他の祭り参加者達が、

出店の店主やフォウルに文句を言ったらしいのだが、

その際にはフォウルは素直に酒樽を差し出し、

好きなだけ酒を振舞っていたという。


だから昨日のフォウルの周囲には、

あれほど人々が集まっていたのだ。





そんな余談を思っていると、

先ほどのフォウルの言葉に更に回答するように、

ジャッカスは歩きながら首を傾けて振り返った。



「だから誰も気にしてねーよ。そもそもアンタ、この村に入ってからずっと魔力抑えっぱなしなんだろ?俺達に気遣いっぱなしのオーガを怖がるなんて暇なこと、俺等はしないってーのっ」



そう言って首の向きを戻して歩き続けるジャッカスに、

フォウルは瞳に戸惑いを含ませていた。

その戸惑いはアイリでさえ理解できるほど、

顕著に今のフォウルに顔に表れている。


やはり通りかかる村人達や商人達、

そして警備隊の面々は、

フォウルを見ても怯えるような様子を見せない。


外来の客達は多少は警戒する場面も見られるが、

それでも怯える様子とは違う様子(もの)を見せている。


警備隊の面々などはフォウルを見かけると、

ビシッと背筋を伸ばして起立する者もいる。

特に戦闘種族と呼ばれている者達が、

誠意(それ)を強く表していた。


この状態の理由を考え続け、

フォウルは歩きながらある可能性を思いつく。


それは同時に『アタシ』も考えていた事で、

それを思いついたフォウルは、

凄く嫌そうに顔を引き攣らせていた。





*





そうしてジャッカス・アイリ・フォウルの三人が、

ヴェルズ村の中央広場へと赴くと、

そこには昨日とはまた違う光景が広がっていた。


中央で組み立てられていた木材の高台は解体され、

その場を中心に南地区にあった食べ物の露店や、

東地区・北地区に立ち並んでいた織物屋や洋服屋、

ドワーフ達が鍛えた武器や鉄製の防具の店。

亜獣族・獣族達が作った魔物や魔獣の皮革品や、

手先が器用なゴブリン達が作った装飾屋・道具屋などもある。


今回、昨日までの祭りと違う光景があるとしたら、

昨日まで中央広場で露店を出していた外来商人達が、

今回は客人側として祭りを楽しんでいた事だろう。


ヴェルズ村生誕祭の最後の五日目は、

外来客達を楽しませる為の日であり、

ヴェルズ村に住む者達全員が一堂に会する日でもあるのだ。


北・東地区の境目にあった食堂で働いている者達も、

東地区に居を構えていたエルフの洋服屋も、

先日訪れたドワーフの工房に居た職人達も、

そして南地区に住む非戦闘種族の者達も、

全て中央広場で露店や簡易式の店を出して出迎える。


それに参加する人々の多さたるや、

昨日の競合訓練や後夜祭に集まった時の、

倍にも数えていいかもしれない。





アイリは昨日より遥かに多い人々の数に圧倒され、

辺りをキョロキョロと見渡してしまう。


昨日見かけなかった種族も多く、

上半身は人間に近いが下半身が蛇の様な蛇獣族(ラミア)や、

鳥をそのまま大きくして二足歩行をする鳥獣族(ガルーダ)

顔が魚で背びれを持ち、その胴に腕足がある魚人族(マーマン)

自分の頭を腕で抱え首から煙の様な魔力で覆う首無族(デュラハン)など、

アイリが今日始めて見るような種族も大半だった。


そんな祭りの風景を眺めている時に、

アイリの目の前を蛇獣族(ラミア)の男女が通る。

頭や耳、腕に同じ装飾品を巻きつけて、

鱗には同じ模様が彫られている。

これは蛇獣族(ラミア)の夫婦の特徴で、

(つがい)と同じ装飾品を纏い、下半身の鱗に同じ刺青を彫るらしい。


そんな蛇獣族の夫婦がアイリ達の側を通ると、

自分の足元に見えるアイリを見て少し驚き、

その側に居るジャッカスを見て女の蛇獣族が声を掛けてきた。



「あ~ら~、ジャッカスじゃな~い~。今日は御店やってない~の~?」


「お、アンタ達か!今年も来てくれたんだな。悪いな、今日は知り合いを外まで出迎えててさ」


「そ~な~の~?」


「シューッ、そのエルフの子は、もしや、突然変異体(アルビノ)?」



蛇獣族の女性と話すジャッカスに問うように、

下半身を高く伸ばしアイリの頭上から蛇獣族の男性が聞いてくる。


上半身は人間ほどの大きさなのだが、

下半身だけでも三メートル以上有り、

その光景は中々にアイリを内心動揺させている。



「ん?そうだけど、メージの旦那。ダメだぜ?勝手に持っていったらよ」


「シューッ、持って、いかん」



笑いながらもそういうジャッカスの言葉に、

メージと呼ばれる蛇獣族の男性は、

やや不機嫌そうに言葉を返した。


ジャッカスの言葉の真意が分からず、

頭上に居るメージにやや不安を持ったアイリは、

後ずさるようにフォウルの後ろへ移動した。


その様子に気付いたフォウルは、

ソレを説明するようにアイリに伝えた。



蛇獣族(ラミア)ってのは、(オス)(メス)(つがい)と決めた相手を見つけると、自分の里に無理矢理連れて行っちまうんだ。だから大概の魔大陸の種族の村や里でも、(つがい)を連れた蛇獣族(ラミア)じゃなけりゃあ入れないって決まりを作ったんだっけな」


「え、えぇ……」



そんな理由を聞かされて、

アイリは若干引き気味に言葉を漏らす。


その声が聞こえたのか、

ジャッカスからフォウルへと視線を移したメージが、

驚く様に目と口を大きく開けた。


そして伸ばしていた下半身を縮めて地面に付け自らを巻きつけ、

上半身は頭を下げて右腕を前に出した。

それは蛇獣族(ラミア)式の礼を成す姿だった。



「シューッ!?フォ、フォウル王、お久し振りで、ございます」


「ん?どっかで会った事があるか?」



お久し振りという言葉に疑問を抱いたフォウルがそう聞くと、

頭を更に下げてメージが話し始めた。



「シューッ、(われ)が、幼子の頃に、貴方が里に、訪れました」


「ん?……あー、そういえば行ったな。70年ちょい前か?あん時のチビ共の中に居た奴か」


「シューッ、然り。長の息子で、メージ=ガルミと、申します。こちらは、妻で、マシス」


「よろし~く~」



蛇獣族の夫婦であるメージとマシスが礼節に準じて挨拶すると、

フォウルもそれに気軽に「おう」と片手を上げて軽く挨拶した。



「なんだ、蛇獣族(ラミア)もこの村と懇意にしてたのか。お前の親父はまだ生きてるか?」


「シューッ、然り。父は、もう歳で、里の奥で、脱皮してる」


「そういや丁度その時期か。つぅことは、お前等は脱皮した皮を売りつけに来たってとこか」



そう聞くフォウルの言葉に、

メージは素直に頷いた。


蛇獣族(ラミア)の脱皮した皮は利用価値があり、

脱皮した分厚く頑丈な皮は他の魔族達にとっては、

胸当てや篭手、靴や鞄など様々な素材へと変わる。


本来であれば脱皮した皮は蛇獣族にとっては無用な物だが、

他の魔族達がそういうモノに利用できるということで、

脱皮した皮は捨てずに、ある程度溜まったら行商へ回すらしい。


そこで得た金銭を元に、

蛇獣族(ラミア)の里に足りない物資を取り入れたり、

身に付ける装飾品を購入したり、

里の周辺には居ない珍しい食べ物を買って楽しむそうだ。


ヴェルズ村に訪れる外来商人達は、

そういった種族達が要らずに捨てるようなモノを求め、

今回の祭りに多く参加するらしい。


ヴェルズ村の立場として、

蛇獣族(ラミア)の脱皮した皮などの素材を各種族達にお願いし、

外来商人達にヴェルズ達が仲介して素材を買い取る。

市場に疎い各種族達が騙されずに素材を売らないように、

その窓口となっているのが、ヴェルズ村なのだ。





蛇獣族(ラミア)のガルミ夫婦は、

従えて来た連れの蛇獣族達と共に祭りを楽しむ為に、

他の場所へ行くので、その場で別れる事となった。


今の魔大陸は秋頃の季節で、

蛇獣族(ラミア)の里は冬を越える為に、

ヴェルズ村の生誕祭を利用して自分達の脱皮した皮を売り、

その年を越す多めの食材などを買うらしい。


彼等の第一目的は食料なのだが、

蛇獣族(ラミア)の女性は綺麗な装飾品が大好きで、

ガルミ夫婦の今の目当ては、装飾品(そっち)のようだ。


ラミア自身も昔は魔物の骨などで、

装飾品を加工する事もあったのだが、

加工の腕前はドワーフやゴブリンの方が優れ、

現在は脱皮した皮を売ったお金で、

職人達の素晴らしい装飾品を買う事で、

十分に満足しているらしい。


なので、蛇獣族(ラミア)が身に付けている装飾品の数々は、

主に腕の良い職人達から買っているようだ。


少し前まではドワーフ達から買っていたそうなのだが、

最近ではゴブリン達の装飾技術も目覚しく悩ましいらしい。

エルフ達の美的感覚も蛇獣族(ラミア)と共通する部分があり、

装飾品や上半身に着る洋服などもエルフ族の洋服屋から買っている。


その部分を聞いた時のアイリの様子は、

面白いほど怯えた表情をしていたので、

それはヴェルズとセヴィアのせいだと言っておこう。





余談になってしまうが、

魔力が良く浸透した上質で傷が少ない脱皮した皮なら、

魔大陸と人間大陸の中間に在る中立都市の自由商人達が、

数年は働かずに遊んで暮らせるほどの大金になる事を、

アイリが知るのは数十年後となる。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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