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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章五節:生誕祭、最後の日(前編)

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第043話 魔力収納


意識を戻したアイリは、

敷かれた布団の上に寝転がる姿で目を覚ました。


起きた時には既に夜の去り際で、

朝の明るさが徐々に映えるように、

薄らと外を照らしている。


アイリの隣に居たフォウルは、

胡坐で座ったまま声を掛けてきた。



「起きたか、嬢ちゃん」


「――…フォウル、さん?」


「ちょいと時間が掛かっちまったからな。もうすぐ朝だぜ」



そうテント内から外を眺めるように、

視線を動かすフォウルに気付き、

アイリは横になっていた身体を、

小さな両手で支えつつ上半身を起こして、

頭がやや呆けさせながら閉じた瞼を擦っていた。


外を見ていたフォウルに続くように、

アイリも外を見ると、

本当に外が明るくなり始めていた事に、

アイリは少し驚いていた。



「えっ――…ほんの少し、魔力(なか)に居ただけなのに……?」


「意識の内と外じゃ、時間の感覚が違うんだ。だいたい意識の内の1分間は、外では10分間程だと思えばいい。嬢ちゃんの中に居たのが軽く30分だとしたら、既に300分…5時間近くは眠り()けてたってことだ」



自分が5時間も寝ていたという事に驚くアイリに、

フォウルは続けて言葉を繋いで注意をした。



「ちなみに言っておくと、誰かの意識の中に他人(ほか)(はい)れる制限時間が12時間。つまり意識内では1時間ちょいってトコだな。それを超えて時間を過ぎると、入り込んだ奴の意識が自分の肉体に戻ってこれなくなる。そして意識の主と意識が混濁して対消滅(おだぶつ)だ。互いに廃人になっちまうから、嬢ちゃんは迂闊に真似するなよ?」


「は、はい…」



あっさりと恐ろしい事を言うフォウルに引きながら、

アイリは確かめる様に自分の身体を触ってみる。


魔力(なか)ではフワフワとした身体の感覚だったが、

今はしっかりと自分の身体を感じられるようになって、

やや一安心をしているようだ。



「そんじゃあ、嬢ちゃん。ちょいと気になる事もあるが、まぁ感覚を忘れない内に特定魔力元素(オーマイナー)を感じ分けしちまうか」


「あ、はい!」



フォウルにそう言われて、

意識内に入った理由を思い出したアイリは、

気付いたように返事をする。


その返事にニヤっと笑ったフォウルは立ち上がり、

手招くように今度はテントの外へとアイリを導いた。





テントの外に出たフォウルとアイリは、

そのまま丸太の上に隣り合うように座った。


アイリはフォウルに促されるまま言う通りに、

特定魔力元素(オーマイナー)を感知する為に習った。



「まず、瞑想する時と同じで自分の中に意識を向けつつ『魔力感知』だ」


「はい」


「そのまま自分の心臓がある位置を感知していく。心臓の位置にもよるが、魔族は心臓に特定魔力元素(オーマイナー)がある。さっき魔力(マナ)の中で感じた感覚を思い出して、探してみな」


「……はい」



瞑想の時と同じ要領を思い出しつつ、

アイリは自分の心臓を位置するだろう胸の中央へ、

魔力感知を行う。


アイリが探しているのは、

外側がヒヤッとして冷たく、

奥に触れると熱い感覚。


試行錯誤しながら探したアイリは、

数分後にその感覚の魔力を見つけ出した。



「フォウルさん、見つけました!」


「お、(はえ)えな。じゃあ早速、時空間魔術(パラム)を使って『魔力収納(インベントリマナ)』を――…」


「あっ」



魔力収納を教えようとするフォウルを遮るように、

アイリは声を小さく上げた。


その声は言葉を中断させ、

「どうした?」とフォウルが声を掛けると、

アイリは少し慌てて話し始めた。



「あ、あの、フォウルさん。私、魔術は10歳にならないと習っちゃダメって……」


「ん?なんの話だ」


「あの、フォウルさんに魔技を習う時に言った…あと、村長様にも魔力を感じられるようになった時に約束して……」


「……あっ」



アイリが慌てて伝える言葉に、

フォウルは思い出したようにそう言った。


『「で、話は戻るがな。嬢ちゃんはここに居る大人達全員の前で魔術は10歳まで学ばないって約束するなら、俺が魔力を感知する器官を治してもいいぜ。そして代わりに、俺が『魔力感知』と他の身体技術系の魔技も教えてやる!ついでに、そこの蜥蜴や小僧にも教えてやるぞ!」』


祭りの二日目、そうセヴィア達の前で言った事を、

フォウルは思い出した。


そしてアイリもその日の夜、

ヴェルズにこう言われている事を思い出した。


『「けれど、いくつか約束して?攻撃魔術は、10歳になってから学ぶ事。絶対に見様見真似で攻撃魔術は使わないで。医療魔術に関しては、私が時間がある時に教えるわ。それと、決して自分の力を驕らないこと。あなたの力は、他の者達にとっては危険なモノだということを、ちゃんと理解して。いいわね?」』


そう言われているアイリは、

魔術を10歳になるまで習う事ができない。

それを今のタイミングで思い出してしまったのは、

律儀なアイリの愚直さだったのだろう。





約束自体は『器官を治したら』という事なので、

別に約束自体を破るわけではない。


そしてヴェルズとの約束も、

あくまで攻撃魔術を学ぶのが10歳からで、

攻撃魔術ではない『魔力収納』ならば問題無いと、

中から見ている『アタシ』は思うわけなのだが、

『10歳まで魔術を習ってはいけない』という、

曖昧な部分だけはしっかり覚えている二人は、

どうするかと悩んでいた。





暫く悩むように「うーん」と唸っていたフォウルが、

「よしっ」と頷いて膝に手を落としてバチッと鳴らし、

アイリに顔を向けた。



「嬢ちゃん、今から習うのは『魔技』だ。『魔術』じゃない」


「えっ」


「『魔力収納』は魔技だ。魔術じゃないってことだ。そして俺は嬢ちゃんに『魔技』を教える約束をしている。それで問題無しだ」


「で、でも、時空間魔術だってさっきまで……」


(こま)けぇ事はいいんだよ。第一、俺が発案した術なんだ。誰がなんと言おうと、俺が『魔技』だと言えば『魔技(マギ)』だ。だから魔術じゃない。それでいいな?」


「は、はい」



ゴリ押ししてアイリを納得させるフォウルは、

腕を組んで満足そうにニヤッと笑っている。


いい歳したオッサンが子供に理屈をゴリ押す姿は、

少々情けなく『アタシ』は思うわけだが、

そこは大人しく目を瞑ろう。





そうしてアイリは、フォウルに時空間魔術(パラム)改め、

特定魔力元素(オーマイナー)を使用する魔技、

『魔力収納』を教わる事になったのだった。





*





「まずは、手を胸の前にかざして、感じた特定魔力元素(オーマイナー)を自分の手の平に集める感じをイメージしてみな」



そうフォウルに言われたアイリは、

促されるようにそれを行う。


心臓から感じる特定魔力元素(オーマイナー)を引き出すように、

胸の前にかざした手に集めるイメージを行うと、

アイリのかざした手と手の間に、何かが出来上がりつつあった。


自分の手の中にヒヤッと冷たいモノを感じたアイリは、

集中する為に瞑っていた瞼を開けて、

自分の目でソレを確認した。





すると手の中には、

青白い光球が出来上がっていた。


大きさは全く違うが、

アイリの手に収まるほど小さな大きさで、

それは自分の魔力(マナ)の中で見たモノと、

同じ光景のモノなのは確かだった。



「フォウルさん、これが…?」


「そうだ。これが嬢ちゃんの中にある『特定魔力元素(オーマイナー)』を具現させ物質化させた姿だ。……体裁として『魔技』にしてるが、これが『魔術』だ」



あくまで教えているのは『魔技』だと、

そう主張しているフォウルだったが、

実際に教えているソレは、『魔術』だった。


自分の魔力を抽出して外へ放出し、

形あるモノへと『物質化』させる。


今アイリが行っているソレは、

紛れもない『魔術』だった。



「フォ、フォウルさん。コレ、どうすれば…?」


「嬢ちゃん。物を置いたり()まう時に使う場所はなんだ?」



目の前で物質化した『特定魔力元素(オーマイナー)』を、

どうすれば分からず聞いたアイリだったが、

逆にそうフォウルに聞かれて言葉に詰まった。


物を置く、閉まって置く時に使う場所。


そう聞かれたアイリが真っ先に考えたのは、

家にある箪笥(タンス)や本棚を連想させた。

しかし、それ等は置く物が限定的で、

今問われている事とは違う気がする。


例えばもっと大きな物を、

もっと多く閉まって置く事が出来る場所。


家の外にあるような格納庫、

或いはもっと大きな倉庫など。


そういう物をアイリは連想して考え始めた。



「考え着いてそれを思い浮かべながら、その『特定魔力元素(オーマイナー)』を自分の胸に当てて、自分の魔力(マナ)の中に戻すイメージをしてみるんだ」


「これを、戻すイメージ…」



つまり、今から目の前にある特定魔力元素(これ)を、

実際に自分の中に収納・格納するということ。


それを理解したアイリは、

ゆっくりと手と手の間に生まれた特定魔力元素(それ)を、

自分の胸に押し付けるように当てた。


当てた瞬間に少し冷たく感じ、

徐々に熱く感じる物質化した特定魔力元素(それ)を、

少し顔を歪めながらも、アイリは戻すイメージを浮かべた。


すると、ゴムボールのような硬さを感じていたはずのモノが、

溶けるように崩れ始め、

その崩れた粒子がアイリの胸の中へと還っていく。





全て戻り、手の中には何も無い状態になったアイリは、

落ち着くように目を開けて、手の中を確認した。


手の中を確認しても既に無い事を確認して、

フォウルを見てどうすれば良いかを聞いた。



「フォウルさん、これからどうすれば?」


「そうだな。んじゃ試しに……この(まき)を持ってみろ」



テントの側に置かれていた薪藁(まきわら)から1本の薪を取ると、

フォウルはそれをアイリにスッと手渡しする。


渡された薪を見たアイリは、

コレをどうすればいいのかという視線で、

渡した本人であるフォウルに視線を移した。



「その薪を持って、さっき思い浮かべた『物を閉まって置ける場所』を想像しながら、そこに『置ける』と思うんだ。実際に置くような動作をしても良いし、置くイメージだけでも良い」


「置く、イメージ…」



フォウルにそう言われた事で、

アイリは先程考えていた『物を閉まって置く場所』を考える。


イメージするのは『格納庫』。


扉には鍵が付いていて、

その鍵を開けて、手で扉を開ける。

そこには置けるスペースがあるので、

手に持っている薪を置こうと、アイリはイメージした。





そう考えた瞬間、

手に持っていたはずの薪が消えた。


それに驚いたアイリは目を開けて、

辺りをキョロキョロと見回した。


落としたわけでもなく、

フォウルが取ったわけでもない事を確認すると、

アイリは不思議そうな表情を浮かべていた。



「これって…フォウルさん、どういうこと?」


「嬢ちゃんが自分の『魔力収納』の中に置いてきたんだよ。ちょいと手間取ったとこを見ると、少し具体的で複雑なイメージをしたか?」


「えっと、鍵付きの格納庫みたいなのを、考えて…」


「鍵を掛けて開けるとこまでイメージしちまったのか。そりゃ手間取るはずだ。――…次は鍵は考えずにやってみろ。んで、開けた先でさっきの薪を取り出すって思うだけで良い。やってみな?」


「は、はい」



フォウルに言われた通り、

今度は鍵が無いただの納屋を思い浮かべる。


そこにある薪を取り出すイメージをした瞬間、

「カンッ」という音が鳴ったので、

アイリは閉じた目を開けて、

その音が鳴る足元へと視線を向けた。





足元の地面に、

先程アイリが持っていた薪が落ちていた。


今度は何故か足元に出現した薪を、

ワケが分からずアイリが見ていると、

フォウルがニヤッと笑って口を開いた。



「まだ嬢ちゃんが不慣れなもんだから、足元に落ちたか。上手くやれば、こうやれるんだぜ」



そうフォウルは言うと、

足元に落ちていた薪を手で拾って、

軽くポンと拾った手の真上に浮かべる様に投げると、

その薪が一瞬の内に消えてしまった。


それに驚いたアイリを見て、

ニヤッとした表情で見たフォウルは、

今度は持っていた手を下げて、

アイリに手の平を見せる形にすると、

今度はその手の平に薪が出現した。


それを綺麗に掴んだフォウルは、

差し出すようにアイリに薪を手渡した。



「まぁ、ここら辺は『魔術』も『魔技』も慣れだ。(よう)練習ってことだな、嬢ちゃん」



ニヤけた表情でそう言うフォウルの意図を、

今更ながら『アタシ』は理解した。


既に先日となっているが、

競合訓練の時のリエラを贔屓しつつ他の人々を挑発する様に、

「まだまだな」と煽っている。


そしてそれが、

アイリには最も効果を発揮する事を、

フォウルは知っているのだ。





アイリは自分でも知らず知らずに、

『負けず嫌い』という一面を持っていた。


そして先程の行動が勿論、

アイリのその一面を刺激していた。



「フォウルさん、それ貸して!練習する!」



少し頬を膨らませて強請(ねだ)る様に、

微妙に届かず差し出された薪を貸す様に要求するアイリに、

フォウルはニヤニヤと笑って素直に渡した。


魔力(なか)でアイリの意識を直接聞いたフォウルは、

アイリの歪な感性と歪な常識を知ったが、

それでも歪まない少女の『感情』そのものを、

フォウルは上手く利用したのだ。


下手に有頂天(おのぼり)になるようだと、

今後の少女の成長や性格に支障をきたす事を懸念し、

多少アイリが持っている『自尊心』をくすぐるように、

フォウルはそれを、競合訓練や今回でも利用した。





それからアイリは、

何度も『魔力収納』の練習を行った。


朝日が完全に昇るまで『魔力収納』を練習したアイリは、

先程のフォウルと同じ事が出来るようになるまで頑張ったが、

出来たのは手に持った薪を消して、

同じ手の中に戻すまでだった。


そこまで出来た時には、

既に日は完全に昇っており、

フォウルはアイリが練習する隣で、

丸太に座りながら膝に肘を落として、

片腕で頬杖をしたまま、

寝息をたてて寝ていたのだった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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