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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第序章二節:魔族の村

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第002話 魔物の噂

とある辺境の町に住む、子供に優しいゴブリンからの視点。


「あらジャッカスぅ、この肉団子美味しそうねぇ」


「お、流石バフォーのとこの奥さんだ。お目が高いねぇ!今日ドワルゴン様が仕入れてくれた肉で作ってんだ、どうだい?旦那や子供達に一つずつ!」



牛頭のぶっくりした体格の女性に、

ジャッカスというゴブリンが屋台で接客をする。


ジャッカスにとってここは、

毎度見慣れた道で見慣れた場所。

通る顔もほぼ全員が知り合いだ。



「そぉねぇ。じゃあ、9つほど貰おうかしらぁ」


「あれ、8つじゃないのかい?」


「今年にもう1人生んだわよぉ、男の子だからもういっぱい食べるわよぉ」


「おぉ、そうなのかい!じゃあマケとくから10本持ってきなよ!」


「あらぁ、いいのぉ?ありがとねぇ、ジャッカスぅ」



そう言うと木の皮を薄く加工した袋に、

肉串を10本詰め込んだ。

それを渡すと奥さんは手元の銅貨を使ってジャッカスに渡す。





ジャッカスは機嫌が良かった。


何せ数日後には、

このヴェルス村の誕生祭なのだから。


この魔族だけが住む魔大陸の南東の端の端、

つまり辺境に位置する場所で、

ヴェルス村は500年前に出来た村だ。


『始祖の魔王』様がいなくなってから、

魔大陸全土が混乱状態になり、

その混乱を避ける為に逃げてきた魔族達や、

迫害を受けていた魔族達が集まってできた村。


『ヴェルス』という名は、

村長の名前から取った名前になる。

村長は長寿のハイエルフ族の為、

村設立時からの村長ということになるだろう。


幾つもの山に囲まれ、

綺麗な川と緑が生い茂り開拓はあまり行わず、

山で獲れる果物や実が豊富ながらも、

やや凶暴ながらも多くの魔物が生息している為、

素材や食材に困らずに、

500年間この村は中央の勢力から一歩引いて、

独立して暮らせている。


技術の発展こそあまり無いものの、

この300年は実に平和に村人は過ごしていた。

『村』という名称だが、既に町規模の人口がいるほどだ。


それもこれも、

とある男のおかげなのだが。


その男は山の方で一人で暮らして居る為、

村に下りてくるのはほとんど無い。

少し前までは、と言ったほうがいいんだろうが、

その話はまた別としよう。





そんな男もヴェルス村の誕生祭が近づくと、

このヴェルズ村まで来てくれる。


しかも山で捕れた魔物達の素材や燻製した肉、

たまに山から下りてくる時に、

襲い掛かってくる魔物を返り討ちにして、

新鮮なまま届けてくれる事もある。


村の男共が束になって倒せるような魔物を、

素手で瞬く間に倒しちまうのだから、

凄すぎて毎回持ってきてくれる土産に、

村の男達が雄叫びを上げるんだ。





俺は魔物狩りが苦手だ。


自分がゴブリンだから、

という言い訳をするつもりはない。

ただ、ゴブリンが単独での戦闘や狩猟に、

向いてない種族なのも確かなんだ。


でも俺は結構手先が器用だ。

それだけは自慢できる。


親父は細工職人で、

鉱石や宝石なんかをドワーフ顔負けの器用さで加工する。

お袋はこの町で医者をしていて手先が器用だから、

縫合手術や色んな医学薬や医療魔術を学んで使ってる。


俺の職業はといえば、

日常ではこうやって屋台を出すことだ。


屋台のメニューは猪肉の串焼きと魚肉の串焼き、

熊肉の串焼き、肉団子の串焼きなど、

たまに汁物や串焼き以外の料理も作るが、

基本的には色んな食材を串に刺して焼いて食べるという、

実にシンプルで食べやすい食べ物の屋台を出していた。


この店の豊富な食材は、

あの男が朝には降りて山ほどの肉と食材、

そして素材を持ってきて提供してくれるのだ。


食材は余るほどあるし、

オマケしても損なんてない。


そもそもこの村は、

村人同士で助け合うのが基本だ。


誰かが怪我したら、

その怪我人の代わりに働いてやる。

勿論、怪我が治ったらしっかりやってもらうけどな。


んで、誰かが病気になったら、

みんなでその病気を治せるように動いて回る。

誰かが困っていたら、村人全員が助けてやる。


それがこの村の掟みたいなモノであり、

村長様、そしてドワルゴン様の立派な信念だ。


そしてその二人が大昔に敬服してた人物こそ、

その信念の体現者だ。





*





大昔の魔族って奴は、

力だけで暴れ回っては多種族を蹂躙し、

何も生まず何も作らず、

ただ奪って世界を混沌させるだけの、

やばい奴等が大半だったらしい。


そこに現れたのが、

『始祖の魔王』ジュリア様だ。


その魔王様は絶大な魔力と強靭な肉体、

そして両の眼が綺麗な赤色と、

白銀の髪が特徴的な魔族だったらしく、

瞬く間に暴れまわってた奴等を抑えまわって、

魔大陸を一気に掌握しちまったそうだ。


大昔の魔族ってのは『力』が絶対だって思ってる奴が大半で、

争いが嫌いな種族ってのは軽蔑されるし、

逆に同族同士で殺しあっていがみ合う奴は、

もっと軽蔑されて嫌われちまう。


そんな魔大陸の人間と魔族との争いで荒廃する中で、

始祖の魔王様はそんな魔大陸に大きな変革を齎した。





しかし500年前に始祖の魔王様が、

勇者と戦い行方不明になった事で一気に混乱が出た。


言ってしまえば、

始祖の魔王様ってのはデタラメなほど強かった。

それこそ多種族の誰であろうと、

誰も勝てないと云わ占めるほどに。


その巨大な力を失った時、

一気に皺寄せが大陸全土に及んだというわけだ。


そして我等が村の山近くに住んでるドワルゴン様は、

その『始祖の魔王』の時代に、

魔王様の側近の戦士を務めていたんだ。

言ってしまえば、

当時最強だった魔王様の実力に最も近い男だ。


この村には始祖の魔王様の言葉に恭順した魔族や、

姓を持つ氏族、そして部族が主に集まってる。


長生きしてるやつでも、

村の設立日から生きてるって魔族もいるもんだから、

ホイホイと『力が~侵略だ~』なんて言うやつは滅多に居ない。


滅多にっていうと、

過去に居たのかって思うよな?

もちろん居たぜ。


俺もかれこれ50年くらい生きてるが、

50年に1人か2人くらいはそういう奴も出てくるんだ。

そういう奴はこの村から出ていかせて魔大陸の首都か、

魔大陸の南の『闘技都市』と呼ばれる場所に行けと言っている。


排他的な村だって思うだろうが、

力を無駄に振りかざすような事さえしなきゃ、

みんな気楽で良い奴等なんだ。


で、そんな気楽な奴等と500年目。

つまり500回目の村の誕生祭だ。

楽しみたいと思うのは当然だ。


もちろん、力自慢の奴等もいるから、

そういう奴等の為の催し物だってある。


でも、誰も彼もが本気で傷つけ合って力を振りかざしたいわけじゃない。

ただ美味い酒を飲んで美味い物を食って、

パーッと長い人生のうちの1年の締めを、

祝って騒ぎたい。


馬鹿騒ぎをして楽しく生きたい。

隣にいる奴等と、隣に居てくれる奴等と。


それがこのヴェルズ村と、

その村人達である俺のことでもあるワケだ。





*





「そういえばジャッカス、聞いたか?」


「ん?なんだピーグ。またかみさんから聞いた噂話か?」


「違うって、ちょっと町の連中で噂になっててよ」



隣で出店の準備をしていた豚顔のピーグが、

ジャッカスに声をかける。

この2人は出店のお馴染みで、

母親同士が友達でよく幼い頃は遊んだものだ。


ピーグはジャッカスほど器用な手先ではないが、

育てている果実で作るワインや、

甘い果汁酒を作る管理が上手い。


ピーグの種族である豚獣ポーク族は、

元来綺麗好きだっていうのもあるだろうが、

細かい管理や保存なんかは、

豚獣ポーク族にちゃんと任せておくときっちりやってくれる。


美味いワインや飲み物と、

串で焼いてる美味い食べ物。


その二つが出店を並べてれば、

自然とお客が合わせて買っていってくれるんだ。

ま、ちょっとした売り手の工夫ってやつだ。



「実はよ。……最近この町に魔物が棲み着いてるんじゃないかってよ」


「魔物が?マジかよ、いつからだ」



魔物マモノ


その言葉を聞いて、

ジャッカスが眉をひそめた。

それが本当だとしたら注意しなきゃならない。


成人してる魔族ならともかく、

子供が下手に魔物に近づいたら、

殺されかねないからだ。


ジャッカスは50年近く生きてる大人の魔族だ。

この町の掟もあるし、

その町で生まれて50年生きてきた。

なら、大人が子供を守るのは常識だった。



二ヶ月(ふたつき)前ぐらいに、大猪が東地区の壁に激突してきたろ?」


「あぁ、あったなぁ」


「そん時は夕方で暗かったし、周りに外からきてた行商人の荷馬車もあってゴタゴタしてたからな。壁直さないまま夜は布張って放置してたんだ。多分そん時に、壊れた壁から入り込んだんじゃねぇかってさ」


「……なるほどねぇ、確かに可能性はあるな」



こんな山奥の町だ。

そういう事故みたいなもんは結構起こる。


危険な魔物の被害は、

ドワルゴン様が大体防いでくれてるとはいえ、

流石に一人で全部は解決できねぇ。


だからこの町にも警備隊がある。

だけど、それでも万能と言われればそうでもねぇ。

それは大猪の件も含めてだ。



「そんくらいの頃からな。始めは東地区で、そして北地区や西地区で見たって情報あんだけどさ。あとこれは、バズラが言ってたんだがよ」


「なんだ、魔物以外に気になる事もあんのか?」


「バズラが魔物だと思ってとっちめようとしたら、そいつの目ん玉が赤色に光ったってよ……」


「赤い目って……そんな魔物もいるのかよ」



基本的に魔物ってのは、

目ん玉が赤く光るなんてことはありえない。


何かしら魔眼持ちの魔物とかだったらありえねぇ事もないが、

普通の魔物が赤い目を持ってるってのは異常だ。


村長のヴェルズ様やドワルゴン様なら、

何か知ってるかもしれねぇが、

もしかして本当にとんでもない魔物が入り込んだってのか。



「バズラは牛頭族でデケェし力はあるけど、結構臆病だからなぁ。そのままビビって逃がしちまって」


「あぁ、まぁバズラじゃしょうがねぇよ。ガキの頃からビビりだったもんなぁ」


「今、警備隊連中で裏道を片っ端から調べて、その魔物探してるんだけど、東地区も北地区も見つからないって言うしさ。残るは西か南のどっちかにいるかもってよ」


「げっ、マジかよ」



俺等は南地区の広場に通じる通りで出店してるんだが、

結構裏道に続く通路ってのが近いんだ。

俺の屋台の目の前にある通路だって、

少し行けば裏道に続いてる。


ゴクリと喉を鳴らして、

裏道の通路を見てる俺に、

ピーグが続けて言った。



「明日は西地区調べるらしいし、明日は俺、農園見てくっから。お前だけでここの店するんだろ?気をつけろよ」


「お、おう……」



そう言ってピーグは心配するように、

ジャッカスに忠告して、

店に来た客に飲み物を渡していた。


幼馴染みのバスラほどではないが、

ジャッカスは気が小さいところがあった。

ゴブリンという種族は基本的に戦闘に向かない。

単体より集団の戦いで活躍するタイプだ。


武器は一応扱えるが、

腕力も脚力も身体能力も然程は高くない。

弱い魔物でも1人で狩るにも、

死に物狂いでやって勝てれば恩の字なのだ。


その魔物が村に入り込んで、

何処かに潜んでいるのだと分かると、

途端に身震いを起こしてしまいそうになる。





その日はピーグと一緒に店を閉めて、

ジャッカスは家に帰った。


既に独り立ちして自分の家を持ってるジャッカスは、

どこかに魔物が棲み着いているという話が、

小さい肝に応えてビクビクしていた。


ピーグめ、余計な事を聞かせやがって。


そんな悪態を心の中で吐きながら、

ジャッカスは寝床に就いたのだった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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