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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章四節:生誕祭四日目(後編)

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第037話 龍神の御話


後夜祭が開かれるヴェルズ村の中央広場は、

暗く夜が訪れる世界を覆すように、あちらこちらに灯火が起こされ、

周囲を明るく魅せていた。


外部商人達の屋台はまだ開いており、

稼ぎ時だと言わんばかりに、

集まってきた競合訓練の観客達や、

警備隊員達に商品である食べ物や飲み物を勧め、

中央広場のあちこちで宴会が開かれていた。


各宴会では、それぞれの村の者達が集まり、

他の村々の住民達が交流する場であり、

行商を行う者達が交流できる貴重な機会である後夜祭は、

それぞれの者達の思惑が飛び交う場所でもある。


そういう場所だからか、ヴェルズは各村の村長達や、

各氏族・部族達が集まった場所で宴会を開き、

そういう思惑がある相手達と様々な事を話し合いつつ、

交流の場を設けている。


遠目ながら、フォウルとアイリは共に見た時、

その席にジークとハイヒの二人の参加していたので、

ヴェルズが一緒の席に居ても良いと、参加を許したのかもしれない。


後にジークに聞いたのだが、

参加は許されているだけで、その時は特に発言はしなかったという。

ただ、今の魔大陸の情勢や情報を己の耳で聞き、

今後自分でどうするかの思案の為に、

参加する事を許してもらったそうだ。


ただ、それを話した時のヴェルズの様子が、

「やっぱり父親に似たのね」という微笑だったらしく、

喧嘩別れをしたというヴェルズと息子アルトマンの確執は、

本当に存在するのかという疑問を抱けた事が良かったと、

後にジークヴェルトからアイリは聞くのである。





そんな光景を横目に、ミコラーシュに誘導されて進んだ先で、

アイリとフォウル、そしてバラスタ、セヴィア、リエラの親子は、

その場所に案内された。


その場所は、ヴェルズ村の住人達が集まり宴会をしている場所だった。


ヴラズ、バズラ等の警備隊員達を始め、

ジャッカスやピーグ、南地区の住民達や、

北地区・東地区の職人達、そしてジスタやメイファといった、

ヴェルズ村の住人達が集まっていた。


全員がフォウルが来た事を驚きながらも、

それを誘導するミコラーシュの姿と、

横で一緒に連れて来られた狼親子とアイリ姿で、

何かを納得したように迎えてくれた。


その筆頭であり、一番始めに声を掛けたのがジャッカスだった。



「おーい!アイリ!それにお前さん()!今日は大活躍だったらしいなー!」


「ジャッカスさん!」



宴会に参加しているジャッカスだったが、

自分が作った串焼きを大量に持ち込んでいるようで、

大皿に幾つも盛られた串焼きは、皆に配られている。


他の村人達が集まる宴会場でも配られて、

非常に好評だったようだ。


今日の祭りでジャッカスが持ってきた新作串は、

腸詰に挽肉を詰めたソーセージを串に刺して焼き、

トマトペーストのソースを小皿に入れて、

ソーセージ串に付けて食べるという手法が試されているらしい。


ジャッカス命名で『腸詰串』という料理名になった。


アイリもそれを勧められて食べると、

噛んで挽肉を包んだ腸詰の皮が破れた瞬間、

ジュワッと広がる肉汁と、

香ばしいハーブの匂いが口の中で広がり、

挽肉の塩加減が効いてとても美味しかった。


リエラやバラスタも食べて、とても美味しいと好評だ。

セヴィアは肉を食べれないからと断ったのだが、

ジャッカスはエルフ用の腸詰肉(ソーセージ)も用意していて、

普通の腸詰肉(ソーセージ)と違い、

中には骨を取り除いた魚肉の挽肉が詰められている。


それを勧められて食べたセヴィア達エルフ族の人々は、

意外な美味しさに好評だった。


フォウルも腸詰串を持って食べたのだが、

美味いという言葉より先に、

少し鋭い視線をジャッカスに向けて言葉を投げかけた。



「……おい、ゴブリンの旦那」


「なんだい、オーガの」


「お前さん、前世(むかし)は料理人でもしてたのかい?」


「ん?いや、若い頃は警備隊で斥候してたぜ。それで怪我負って、その後に旅に出て習ったんだ」


「誰に習った?」


「んー、実はあんまり覚えてないんだよなぁ。一緒に居たんだけどさ…」



前世(むかし)という聞き方で、

実はジャッカスも『前世持ち』なのかと勘繰ったフォウルだったが、

不思議そうに聞き返すジャッカスの様子とその言葉に、

そうではないと勘を働かせて、次の話題に移った。


それは、ジャッカスに料理を教えた人物の話。





*




今から約29年前。

ジャッカスが種無しだと聞いて旅立った、

1ヵ月後くらいの話らしい。


過酷な魔大陸でゴブリンが一匹で生きていく為には、

誰もが思うより想像以上の苦労がある。

そんな苦労が無理に繋がり、

ジャッカスは旅の道中で倒れる事となった。


しかし数日後に起きたジャッカスは、

ある小屋に住む不思議な人物に助けられたらしい。


ジャッカスの話では不思議な場所で、

見晴らしの良い山の高台に位置する場所だったらしいが、

不思議と魔物の気配は無かったそうだ。


その人物に看病され完治した後も、

しばらくジャッカスは一緒に生活していたそうだ。

しばらく置いて貰えるお礼として、

家の雑用を任されていたジャッカスだったが、

一つだけ任されなかった家事があった。





それが、料理だった。


その人が作る料理は、

不思議と見た事ないものばかりで、

ジャッカスが知る料理とは常識が違ったらしい。


臭みがあり食べ難い肉を、

香草で炙り臭みを取って調理する方法や、

硬いはずのパンを柔らかく焼く方法。


更に、強烈な匂いのする壷の中に野菜を入れて、

重石を載せて数日間放置して開けて取り出すと、

野菜が柔らかいながらもシャキシャキとした食感になり、

塩加減が絶妙な美味しい野菜になったそうだ。


ジャッカスはそんな料理を食べさせてもらい、

不思議と今まで食べた料理より、

はるかに美味しいその料理の数々に、

感動を覚えたらしい。


ジャッカスは料理を覚えたいと言ったが、

その人はやや渋りつつ、

教えてくれた料理があった。


それが『串焼き』だった。


まずはタレの作り方から、必要な器具の作り方。

肉を美味しく斬れるナイフ捌きや、

肉が美味しく食べられる焼き加減など。


ジャッカスはそれを数年掛かりで覚え、

その人から合格を貰ったそうだ。


ジャッカスはその人を師匠と呼ぼうとしたが、

やめてくれと言われて師匠とは呼ばなかったそうだ。

名前を聞いても名乗らず、

顔も姿も魔術のようなモノで見え難くしていたらしい。


そうして串焼きだけは一流になったジャッカスは、

いい加減戻らないと、皆が心配するということで、

ヴェルズ村に帰ってきた。


ジャッカスは村を出た理由は、

実は種無しの身体を癒す方法を探す為だったらしい。

自暴自棄になって居なくなったのではなく、

病気を治す為の旅をしていたのだ。


けれど、その人物に会い、

自分の子供を持つだけが自分の幸せじゃなく、

料理が美味しいだけでも十分幸せだと知ったジャッカスは、

そのまま村に帰ったのだ。





*





「帰る時も朧気(オボロゲ)でな?その人が村の近くまで送ってくれたみたいなんだ。ただ、送る時にも目隠しされたりされてな。その人の事に関してだけは、教わった事以外は全然わからねぇんだよ」


「……………」



ジャッカスの話を、

その場に居た全員が聞いていた。


実はジャッカスは、

誰かにこの事を話したのは初めてだった。


全員が驚き、全員が様々な表情を浮かべていたが、

口を真っ先に開いたのは、フォウルだった。



「ゴブリンの旦那、魔物の気配がしない山って言ったか?」


「ん?あぁ、あの山は全然魔物の遠吠えとかはしなかったな。でも、鳥とか虫の声はよくしてたぜ」


「……お前、そこに運ばれる前、どこで気絶したか覚えてるか?」


「――…確か、魔大陸からちょい北部の山脈だ。北から山脈を抜けて、人間大陸に行ける中立都市に向かう気だった、はずだ」


「間違いない、そりゃアイツだ。北の山脈に移住してた時期か」



ジャッカスの言葉を聞いて、

フォウルは勝手に納得すると、

腸詰串を齧りつつ汲まれた酒を飲んで喉を潤した。


その言葉に反応したのは、ジャッカスだった。



「お、オーガの!お前さん、あの人が誰だか知ってるのか!?」


「知ってる。というか、お前達は知らないのか?――…って、無理もないか。2000年前ならいざ知らず、今の時代じゃ、あいつの見聞は残ってないだろうからな」


「教えてくれ!あの人は何者なんだい!?すげぇ人なんだろ!?」



そう目を輝かせて聞くジャッカスの言葉を受け、

酒を一度飲み干して木のジョッキに注ぐと、

そこに注がれた発泡酒を見ながら、フォウルは呟いた。



「『龍神(りゅうじん)』の、恐らくは『水神(すいじん)』のヤツだろうな。俺も名を知らんが、何度か昔にバファルガスに連れられて会った事がある」


「りゅう…じん…?」



龍神(りゅうじん)』という言葉に、

その場の全員が複雑な表情を浮かべる。


その言葉に聞き覚えがない者達は、

互いに見合いながら聞き合うが、誰も知らない。


この場で唯一、『龍神』という言葉を発した者だけが、

『龍神』を知っていた。



「『龍神』は、簡単に言えば竜が進化して『竜王(ドラゴンロード)』を超えて『(りゅう)』に変わった、『到達者(エンド)』達の事だ」


「……え、えんど…?えんど達…?」


「『到達者(エンド)』ってのは複数居る。属性を(なぞら)えた称号として各属性の称号を持つ奴等だ。『火』『水』『風』『土』の基本四属性は勿論、『氷』『雷』『光』『闇』がいる。合計で8匹だな」


「8匹の、えんど……?」



あまりに唐突な話で、

それを聞いた全員が思考を混乱させた。


竜王(ドラゴンロード)』とは、伝説や御伽噺で語られる存在。


『覇王竜ファフナー』

『真竜王ワーム』

『邪竜王ニーズ』


その三匹を指す言葉だ。


しかし、フォウルの話が本当なら、

()の竜王達は、最後の進化体ではない。


更に上の進化へと至った『到達者(エンド)』達、

『龍神』が存在するというのだ。


その言葉は衝撃的であり、

そして何か、夢物語を聞かされるようなものだった。



「ま、待ってくれよ!でも俺が逢ったあの人、そんなにおっかねぇ人じゃなかったぜ!?」



フォウルの言葉に些細な反論するのは、

慌てるように伝えるジャッカスだった。

自分の抱える記憶にある人物の印象と、

フォウルの話す存在は、全くの別のモノだとしか思えなかったのだ。


しかし、フォウルはその思いをアッサリと切った。



水神(すいじん)の奴は特に龍神の中じゃ大人しいはずだ。俺も1000年以上会ってねぇから今の奴を知らんが、そんなに変わらんだろうぜ」


「し、しかしよ…俺、そんなすげぇのと逢ってたのか…?」


「アイツは魔族に優しい。どんな弱小種でも見捨てないからな。2000年前も、人魔大戦で魔族を助ける為に『火神(ひがみ)』の奴と戦ってたはずだ」


「ひ、ひがみ…?」 


「『水神』が魔族の味方なら『火神』は人間の味方だった。水神がいなかったら、今頃は魔大陸は人間に制圧されてただろうな」



まさかこんな宴会の場で、

人魔大戦で起こっていた恐ろしい話を聞かされるとは、

全員思ってはいなかった。


酒盛りを行っていた全員の手がピタリと止まり、

唾だけがゴクリと喉を流れて流し込まれた。


まるで、御伽噺を聞かされているのか、

それとも単なる与太話でも聞かされているのか、

全員が分からなかったのだ。


しかし、大真面目にソレを教えるフォウルの躊躇の無さに、

そして、2000年前の人魔大戦を経験している鬼王(オーガキング)に、

全員が真実味を感じざるを得なかったのだ。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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