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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章四節:生誕祭四日目(後編)

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第034話 子供の強さ


警備隊の大人達に基礎を教え終わり、

子供達にはボールを渡してリフティングを教えたフォウルは、

次に向けた目の先を見つめて、頬を指で掻きながら少し悩んでいた。


次に訓練を施そうとしていたのが、

突然変異体(アルビノ)であるアイリだったからだ。



「さて、嬢ちゃん達だがな…。正直、何を教えるかというより、どこまで教えるかというのが、俺の悩んでるトコだ」


「どこまで……?」



フォウルが頬を掻きながら、

地面にゆっくりと胡坐をかいて座る。


それでもフォウルの座高はアイリの身長より遥かに高いので、

視線を下げながら話すフォウルの視線に、

アイリは視線を重ねながら尋ね返していた。



「嬢ちゃん。お前さんはずっと魔力感知で俺を見てたな。――…魔力制御と、魔力感知の疲れはあるか?」


「え、あれ……。そういえば、全然疲れない……?」



フォウルに言われて初めて気付いたアイリは、

自分が今まで、無意識に魔力制御と魔力感知をしつつ、

今までの競合訓練(オリュンピアス)の競技参加者やフォウルとガブスの戦いを、

静かに見つめていたのだった。


フォウルの事を気にかけていた事もあったが、

それ以上に訓練とはいえ、初めて見る魔術や魔族の体術や魔技に、

無意識に魔力感知を行っていたのだ。


昨日までは魔力制御を行っていただけでも疲れが出ていたにも関わらず、

今こうして疲れも無く、汗も掻くことがない様子に、

アイリ自身が驚いていた。



「その剣のおかげだな。ちゃんと、お前さんの補助をずっとしているんだ。――……生きた武器ってのは、(あるじ)を見定めて認めると、主を補助する。普通の魔剣だと融通は効かないが、お前さんに(こしら)えた魔剣(ソレ)は、既に意思を持ってお前さんを助けてるようだな」


「……私を助けてくれてるの?」



抱えるように両手で持っている、鞘に収まった魔剣を見ながら、

アイリは静かに首を傾げながらも、そう剣に問い掛けてみた。


反応など返ってくるはずも無いと思っていたアイリだったが、

剣の鞘に嵌め込まれた赤い宝玉が静かに光だし、

『リィィ…ン』と小さく響くように、耳に残る音を発した。


アイリは眼を見開いて驚き、

フォウルはニヤッと笑いながら、その光景を見て満足していた。



「そうだよって言ってるぜ。お前さんの剣、ちゃんと言う事は聞いてるみたいだな」


「!?フォウルさん、この剣の言葉も分かるの?」


「ガッハッハッ!!いいや、なんとなくだな。俺も持ってるからな。自然と、魔力と波動で分かるもんなんだ」



そう笑いながら言うフォウルは、胡坐をかいた膝の上に、

魔力収納(インベントリマナ)』から取り出した、長さ三メートル以上ある戦斧(ブージ)を取り出した。


それは昨日、ドワーフの工房でフォウルがドワーフの族長に見せた、

自分で打って鍛えたという武器だった。



「嬢ちゃんには紹介してなかったな。コレが俺の武器……名前は『戦鬼人(ヴァルディール)』だ。使う時には『ヴァル(戦鬼)』とか呼んでる。これが俺の二つ名にもなっちまったワケだが……」


「ヴァル、ディール……え、あれ……?」



胡坐の膝に乗せたフォウルの武器『戦鬼人(ヴァルディール)』に反応するように、

アイリが抱える魔剣に嵌め込まれた赤い宝玉が先程より強く光だし、

それに応えるように、戦鬼人(ヴァルディール)に嵌め込まれた赤い宝玉が輝きを強めた。


まるで何かを話し合うように、

二つの武器が『リィィ……ン』と小さく響き合い、

武器同士が僅かに振動している。


その様子を不思議そうに見つめるアイリと、

互いの武器が共鳴し合う光景を静かに見つめるフォウルだったが、

赤い宝玉が互いに輝きを鎮めると、振動も無くなった。


その様子を不思議そうに、

そしてやや不安な瞳で見つめたアイリだったが、

フォウルが「ガッハッハッ!!」と笑い出して、

戦鬼人(ヴァルディール)を優しくパシパシと叩き、アイリに視線を送った。



「武器同士の挨拶が終わったってよ。まぁ、戦鬼人(ヴァル)からしてみれば、嬢ちゃんの剣は兄弟……いや、妹みたいなモンだろうからな。色々兄貴としちゃ、言っておきたい事でもあったんだろうぜ」


「武器の、兄妹(きょうだい)……」



武器の兄妹という、不思議な言葉を聞いたアイリだったが、

不思議と手に持っている、まだ名前が無い魔剣が、

嬉しそうにしていると感じられた。


その喜びが自分の中にも流れ込む不思議な感覚を、

アイリは魔力の波動として自然と受け止めていた。


アイリは初めて、自分が持っている剣に意思と命が宿っているのだと、

確信する事ができたのだった。



「嬢ちゃん、まだ(そいつ)に名前は無いのか?」


「は、はい。まだ、考えられてなくて……」


「そうか。()かすわけじゃないけどな。俺の戦鬼人(ヴァル)もそうだが、そいつ等は名前を呼ばれるとやる気を出すんだ。気持ちが(たかぶ)るってヤツだろうな。嬢ちゃんの剣が気に入る名前を、ちゃんと考えて付けてやんな。そうすりゃ、剣も喜ぶぜ」


「……はい」



剣を抱えて握るアイリの小さな手が、

先程から握る強さより和らげて、剣を握りなおす。


早くこの子にも名前を付けてあげようと、

アイリは静かに考えた。





アイリがこの剣に名前を付けたのは、ヴェルズ村の生誕祭の後になる。





*





「――…そうだ嬢ちゃん。これ使いな。昨日ドワーフ共に付き合わされた時に暇潰しに作ったんだ」


「え、これって……?」



またも魔力収納(インベントリマナ)からフォウルが何かを取り出すと、

それを手渡されたアイリは、片手で剣を、片手でソレを受け取った。


それは、茶色の革ベルトのように見えたが、

不思議とベルト自体から感じる魔力の波動が、

それがただの革ベルトではないことを、アイリは不思議と悟った。



「それも余りモンだから遠慮するな。大昔に居た蛇王の皮をなめしてベルトにした。ゴムより自由に伸びるし耐久力も相当だ。その二つの輪に鞘を入れてみな」


「は、はい」



促されるようにアイリは鞘をベルトの輪に入れると、

それに呼応するように剣の赤い宝玉が輝き出し、

革ベルトの輪が締まって鞘を纏う様に縛った。


まるで剣自体がそうするのが当たり前かのように、

革ベルトの端と端の先端を動かしながら、アイリに胴体に巻き付いた。


すると、鞘はアイリの背に回り、体の前に出たベルトの二つの先端は結び合うと、

金具で止められ、アイリが鞘を背負うような形として、その姿が出来上がった。


勝手に動く革のベルトや剣に困惑しながらも、

不安の瞳を向けた先にいるフォウルの慌てない様子を見て、

大丈夫なのだと信頼し、そのまま受け入れたのだ。



「剣の方が嬢ちゃんより、どうするべきか、どうされたいかをしっかり考えてるな。これで体を動かしても大丈夫だって事だろ。嬢ちゃん、自分の剣に感謝しな」


「え、は、はい。あ、ありがとう……?」



首と視線を背中に意識させながら向け、

背負う鞘に収められた剣に御礼を言う光景を、

フォウルは「ガッハッハッ!!」と可笑しく笑いながら、

胡坐を掻いていた足を解いて、両足を大地に立たせた。



「さて、これで嬢ちゃんの準備はOK(オーケー)だな。次は坊主のほうだが……、なんだ?お前等、親子揃って間抜けな顔しやがって」



フォウルが呆れながら顔を向けた先には、

バラスタとリエラの狼親子が、口をあんぐりと開けて、

目を丸くしながらフォウルとアイリの事を見ていた。


二人が驚くのは無理もなかったが、

武器が会話しているという話や、

剣が自らの意思でアイリに革ベルトを備えて巻き付く姿など、

普通の魔族なら一生に一度、目にできるか否かという光景だろう。


その話が真実かどうかは別としても、

魔剣同士の共鳴する波動が、

生きた魔族と変わりない波動を放っていたのは間違いないのだ。


バラスタは完全に驚愕の表情を浮かべていたが、

リエラは驚きと興味の半々の分けられており、

アイリが持っている剣と、フォウルが右手で支え持つ戦斧に、

とても興味を示していた。


リエラは碧眼を輝かせながら、尻尾をピンと上へ立たせて、

喉を一度鳴らして、フォウルに近付いていく。


バラスタは驚愕のまま、リエラの行動に気付かず、

我が子の行動に気付いたのは、その声を発した時だった。



「おじさん!僕は……僕も!僕にも、おじさんの武器をください!」


「!!」


「!?ヴァ、ヴァリュエィラ!?」



リエラの言葉に驚かされたフォウルと、

意識を戻した父親であるバラスタが、驚愕の声を上げて制止し、

リエラに近付いて肩に手を置き、体を引き寄せようとした。


しかし、リエラは頑なに訴えるような眼をフォウルに向け、

自分の行いを、言葉でも態度でも取り下げようとはしなかった。


その様子に、フォウルは頭をポリポリと掻きながら、

リエラに一歩近付いて、膝を折って地面に肩膝を付け、

見下ろすように顔を近付けて、リエラの顔を見た。


父親であるバラスタは、近付くフォウルに警戒しながらも、

殺気とは違う凄みを纏わせたフォウルの様子に、

気圧されないように息子の傍を離れないようにするのが精一杯だった。


息子のリエラはといえば、

目の前のフォウルの威圧感に気付かないのか、

それとも、気付いていても父親と同じように、

気圧されないように耐えているのか。


そんな事など気にしないとでも言うように、

フォウルはリエラを見据えながら、口を開いた。



「坊主。なんで俺の武器が欲しい?」


「――…!!僕、強くなりたい。アイリのこと、守れるくらい!」


「だったら諦めろ。お前では嬢ちゃんは守れん。嬢ちゃんはこのままいけば、この村どころか世界中の誰よりも強くなる。お前さんじゃ守るどころか、精々良いとこ足手まといだ」


「!!ぼ、僕は……それでも!」


「武器ってのはな、持てば強くなるモンじゃねぇ。武器(それ)を使いこなす為に体と魔力を鍛え、武器(それ)を使いこなす技術(わざ)が必要だ。坊主が魔剣(ぶき)を持っても、強くなんてなれねぇんだよ」



フォウルが口にする言葉の強さは、

子供を諭すように、という口調ではない。


子供の『夢』を壊すような口調で語るその言葉の強さに、

リエラは言葉を出す為に開こうとする口を開けられず、

悔しそうな表情で奥歯を強く噛み締めていた。


それを聞いていた父親のバラスタは、

息子に現実を突きつけようとするフォウルの無残な言葉に、

怒りを覚えながらも、それが事実だという事を内心では認めていた。


フォウルのガブスの戦いにおいて、

武器は何の意味も持たなかった。


互いに鍛えた肉体と、

互いに備えた魔力に()る素早い攻防。


ただその戦いにおいて、技量よりも際立ったのは、

圧倒的なまでの魔力と、圧倒的な肉体の強さを見せた二人には、

武器はあくまで武器でしかなく、

強さとは鍛え抜いた身体と魔力なのだと、

あの場に居た全員が身を持って感じた。


バラスタも、勿論その一人だった。


鍛えてきたと自負してきた自分の鍛錬への自信が、

あの戦いで一瞬の内に砕け散ったのだ。


そして自信を砕いたフォウル曰く、

自分達は基礎もできてないと言われれば、

そう納得するしかないのが、

あの場にいた全員の一致した気持ちだった。


息子のリエラは、まだソレに気付いていない。


だからこそ、フォウルやアイリの持つ魔剣に、

興味を引かれ、ソレを欲したのだろう。





しかし、フォウルの言葉で挫かれそうになる夢を、

リエラは諦めなかった。


フォウルの隣に佇み、

心配そうにこちらを見ている少女の泣き顔を、

リエラもまた、見ていた一人なのだから。



「じゃあ、武器なんて要らない!僕もおじさんみたいに強くなれる方法、教えて!!」


「ヴァ、ヴァリュエィラ……」


「お母さんが言ってた!誰も一人じゃ全部できないって……それが当たり前だって!だったら、僕がアイリにできないことで、アイリを守れるようになる!なりたい!」


「………」



フォウルは若干ながら、目を見開いた。

その視線の先には、強い眼差しでフォウルを見返す、リエラの姿だった。


その瞳を見返すフォウルは(しば)し、何も言わずただ見ていた。


数十秒後、口元をニヤけさせたフォウルは、

屈んだ姿勢を戻して、立ち上がった。


そして何も無い空間から『魔力収納』で何かを出すと、

それを掴んで、リエラに投げ捨てるように渡した。


それを慌てて受け取ったリエラは、

それを一度見て、フォウルへと視線を移した。



「俺が若い時に使ってた篭手(グローブ)だ。バファルガスが失敗作だとか言ってたが、どんな大きさにも伸び縮みするし耐久性も高い。魔力をソレに込めれば、どんなモンを()ん殴っても痛くなくなる。――…剣はやらん。嬢ちゃんにもう渡したからな。だが剣の代わりに、(それ)をやる」


「おじさん……」


「狼の。後でお前の(つがい)に伝えとけ。『良い息子を育てたな』ってな」


「!……言う必要はありますまい。妻はその点に関して、誰よりも自信を持っておりますので」


「ガッハッハッ!そうか。良い女を(つがい)にしたな、狼の。俺がもっと若けりゃ、口説いていたかもなぁ!」


「!!ガルルルッ………妻を狙っているのであれば、首だけになっても喉元を食らうぞ……」


「若けりゃって言ってるだろうが……。全く、この村は冗談が通じないのが多すぎだろ」



そんな冗談と本音を交えながら、

リエラとアイリは大人達の会話を聞きながら互いに見合いつつ、

アイリの顔を見たリエラは少し顔を赤くして、

顔を背けて、渡された篭手(グローブ)を手に付けようとしていた。


アイリはこの時、リエラがフォウルに食って掛かってまで、

強さに(こだわ)る理由を理解していない。


けれど、子供ながらに強さを求める姿が自分と重なり、

この時からアイリは、リエラに抱く印象を若干変化させていた。


今までは、尻尾が柔らかい友達。

そして今は、自分と同じ強さを目指す友達。


「アイリを守れる強さが欲しい」という理由は理解できなかったが、

この村の人々が優しくアイリを助けるように、

リエラもまた優しいからこそ、友達を守りたいという気持ちがあるのだと、

アイリは勝手に理解してしまった。


リエラが強さを目指す原動力が、

まさにアイリに向ける恋心だと向けられる本人が気付くのは、

少なくとも、この時ではなかったのだった。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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