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『赤瞳の戦姫』~転生したらオークに拾われました~  作者: オオノギ
幼少期 第一章一節:生誕祭一日目

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第011話 元奴隷達の村

今回は少し短い御話。



「この村は昔は名前も無い、魔族で奴隷にされた奴等で作った小さな村だったんだ」



アイリを連れたジャッカスが、

広場から少し離れたレンガ積みの小さな塀に一緒に座り、

先ほど中央広場で売り出されていた、

牛頭族の牛乳屋からミルクを受け取り、

二人で祭りの風景を眺めながら飲んでいた。


魔族には体力と魔力が同時に癒され、

栄養価も高いミルクは、

アイリにとってはとても美味しく感じていた。

それを少しずつ飲みながら、

でも口周りがミルクで白くなってしまったアイリに、

微笑みながら手拭いで口周りを拭くジャッカスは、

先ほどの話を続けた。



「俺も婆さんから聞いた話だけどな?随分前に人間が魔族を奴隷にして、そんな奴隷になっちまった魔族達を、魔王様が解放してくれたんだ。でもその魔族達の氏族や部族は、奴隷になっちまった奴等を受け入れなかったんだ」


「……どれい?」


「ん?あぁ、んー……要はコキ使われてメシも食わして貰えないようになっちまう事だな。それになった魔族達を"恥"だって言って、同じ種族の仲間達が仲間外れにしたんだ」


「……そんなの、おかしい」


「ははっ、アイリは優しいなぁ」



ミルクを飲む手も口も休めて膨れるように怒るアイリを見て、

ジャッカスは微笑んで頭を撫でた。


「そんな行く宛も無い連中を、魔王様やヴェルズ様は居場所を用意してくれた。それがこの村なんだ。色々苦労もあったけど、今こうして俺等がここで生きて暮らせてるのも、魔王様とヴェルズ様のおかげってことさ」


「……みんな、悔しくなかったの?」


「ん、なんでだい?」


「だって、みんなのせいじゃないんでしょ?なのに、仲間外れにされるの、おかしいよ…」



アイリの言葉には明らかな怒気と同時に、

理不尽さに納得していない様子が見て取れる。


それは、アイリの前世の経験から出た言葉なのか。

それとも、純粋な気持ちから出たのかは、

アイリ自身にも分からない。


それさえも知らないジャッカスは、

アイリが俺達の為に怒ってくれているのだと、

少しだけ嬉しくなった。



「昔の奴等は悔しかったろうなぁ。今でこそ受け入れてるけど、200年くらい前までは誰も村に近寄らせないようにしてたらしいぜ。その時から生きてる方達は、他のとこにいる同じ種族とは絶対に会わないし。ただ他の連中は、そういう同族よりも、そういう目に遭わせた人間の事が嫌いだ、って思ってるのもいるなぁ」


「……っ……」



人間を嫌っているという部分で、

アイリは少しだけ表情を強張らせる。


アイリは起きてからの祭りまでの一週間、

前世の世界と今世の世界の違いについて、

ぼんやりとだが理解していた。


そして同時に、前世の自分と、

今世の自分の違いも理解していた。

自分が今は魔族だということ。

そして、元の自分は人間だということを。


そして考えてしまう。

「もし私が、人間だった事が皆に知られたら…」と。


それはアイリにとって不安を思い起こさせるに、

十分な理由だった。



「……ジャッカスさんも、人間は嫌い……?」



恐る恐るアイリは問いかけてみる。

その返事によっては、

アイリは自分が元人間だったという事は、

絶対に話さないと決めるつもりだった。


ジャッカスは、この村に……いや、

今の私に初めて優しくしてくれた、

アイリには特別な人物だった。


だから彼だけには嫌われたくなかった。

もし嫌われたら。

その恐怖が、今のアイリを支配しようとしていた。



「俺の婆さんのお袋さんがな、奴隷だったんだと。でも、その主人だった人間が優しかったらしいんだ」


「……え?」


「ちゃんと飯も用意して食わせてくれるし、寝床も用意してくれるし。他に奴隷になった魔族達にも同じように優しくしてたらしいんだ。解放された時も『故郷に帰っても元気でな』って言われたって。俺は婆さんにそれ聞いた時、人間にも優しい奴がいるんだなって思ったぜ」


「……」


「だからかな、別に人間は嫌いじゃないな。むしろ良い奴等も居るなら、俺の串焼き食べてみてくれって言っちまいそうだ」



ジャッカスは空を見ながら笑顔で言った。


同じ空の下にいる会った事も無い人間という種族にさえ、

ジャッカスはただ「串焼きを食べさせたい」と告げた。


アイリはそれに驚かずにはいられなかった。

そして、胸の中から込み上げる気持ちで、

泣きそうになった。


嬉しかった。

昔の自分を否定される言葉では無く、

昔も今も受け入れてくれるジャッカスという存在が、

アイリには嬉しくて仕方なかった。


それでも、この村で人間は好まれないというのは、

アイリにも理解できた。

ヴェルズに家族の事を聞かれた時も、

不自然でも話さなくて良かったのかもしれない。





けれど、いつになるかは分からないけど。

いつかジャッカスさんには本当の事を言おうと思う。


自分が元は人間だったことを。

そして、自分の大好きだった家族の事を。

信じてもらえるかは分からないけれど、

ジャッカスさんには嘘を吐きたくないから。


それがアイリの、恩返し以外でしたい、

自分の生きる目標となった。





*





魔族だけしか住んでいないヴェルズ村。


かつてその村は、魔大陸でも辺境の奴隷村と呼ばれ、

同じ魔族達からさえ蔑みの目で見られる場所でもあった。


しかし、長い年月で村人達は出来る事をし続け、

村とは呼べないほど立派な町へと姿を変えた。


豊かな山々に囲まれた土地は外敵を阻む天然の要塞となり、

農作物と狩猟で自給自足を可能とする環境は、

奴隷と呼ばれた人々を頑強な強さへと育て、

精神さえ健全に育むことを助けた。


魔大陸で偉大な魔術師と呼ばれた者や、

最強の戦士と呼ばれる二人を除いても、

この村は既に他の部族や王都の戦力など諸ともしない、

屈強な魔族達が居る事に気付いているのは、

村人達を除く大半の者達だけだろう。





その村で育てられる事になる一人の少女もまた、

その例外では無くなってしまうのは、後日の話である。





『赤瞳の戦姫』ご覧下さりありがとうございます!


誤字・脱字・今回の話での感想があれば、

是非ご意見頂ければと嬉しいです。

評価も貰えると嬉しいです(怯え声)


ではでは、次回更新まで(`・ω・´)ゝビシッ


この物語の登場人物達の紹介ページです。

キャラクターの挿絵もあるので、興味があれば御覧下さい。


https://ncode.syosetu.com/n6157dz/1/

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[良い点] 遅まきながらの感想、失礼します。 最初の注意書きを読んだ時に、いい歳した男の自分がそう簡単に泣けるのかと疑問に思いましたが、2話3話と読み進める毎にアイリの不幸な境遇に胸が熱くなり、第4…
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