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ちょいちょい改稿して内容がちょっとだけ変わるのは若くてフットワークが軽いからだと思ってください……

「王様だ~れだ」


手を挙げたのは俺の隣にいた若杉俊也。俺の親友である。


「お前何回目だよ~」


「で、命令は?」


俊也はしばらく考えて、


「……じゃあ4番に13番が甘い言葉を囁く、で」


と俺にとって最悪の命令を言った。


さてはこいつ、俺が4番の紙を持ってると知ってこの命令にしたな?

甘い言葉を囁くなんて俺にとっては公開処刑だ。

よし、空気になってやりすごそう。


「で、4番と13番誰ー?」


誰の手も挙がらない。

俺の相手もこういうのが苦手な人なのか。


「あれ、いないの~?おかしいな、抜けてる数字はないはずなんだけど」

「みんなで番号言っていく?」


抜け目のない進行役の声から逃げられそうもない。

俺は観念して手を挙げる。


「はい!13番、俺です」


好奇の目がこちらに向けられる。


「啓介が甘い言葉とか」

「似合わねえー!」

「んだよ~もう」


近くにいた中鉢政弘(なかばちまさひろ)を始めとした友達一同におもいっきり冷やかされる。

だから嫌だったのに。


「4番は~?」


まあ、相手がやりやすい人だといいな。

男子とか、最悪女子でも恋愛に興味なさそうな姉御系の堀津ーー堀津梨花(ほりつりか)辺りだとまだマシだな。


「梨乃さんは違う?」


「はい……4番です……」


そんなことを考えているうちに4番ーー俺の相手が判明した。


「いや、無理無理!海沼くんに私じゃつりあわないって!」


思わずそれはこっちのセリフだ!と反論したくなった。

松田梨乃ーークラス、いや学年でトップレベルの人気を誇る女子だ。

その人気は男子のみならず女子にもトップレベルで、もともと整っている顔立ちとピュアな笑顔や、特別扱いせず誰にでも優しいことから時折女子に「天使」と呼ばれているのを何度か見たことがある(本人は否定していたが)。

そんな彼女だが、男っ気は一切なく、今付き合っている人はいないらしい。以前本人が家庭基礎の時に友達とそういう話になっていたのを耳にした。自分はモテないのだと、本人はぼやいていたが、それは本人の勘違いで、いわゆる彼女は男子たちの高値の花なのだ。だから男子は皆、さん付けで呼ぶのである。

かくいう俺は身長も小さく弟っぽいとよく言われるくらい男らしくない。チキンだし。

不釣り合いだ。


「で、具体的に甘い言葉ってなんなの?」

「ググる?」

「ググろう」


進行役の二人がスマホで調べ出す。

よし、今のうちに……!


「どこに行こうとしてるんだ~啓介?」

「逃げるなよ」


ギクリ

親友二人に声をかけられ逃げるのを断念。ちっ、と心の中で舌打ちする。

俺がすごすごと自分が元いた場所に戻ると、俺を悩ませている張本人の俊也が声をかけてきた。


「何が不満で逃げようとしてるんだよ?」

「いや、全部だけど⁉」

「具体的には?」


俺は少し考えて、こう答えた。

「人前でとか公開処刑」

「俺の『手をつないで廊下を歩く』よりマシだろ」


う、それを言われると何も答えられない。

こいつは数十分前俺が王様になった時の命令、「手をつないで廊下を歩く」に当たっていた。相手が女子でしかもそういう類いのことに慣れていない人だったので、相当ごねて、大分待たされていたのがかわいそうに思えたのはまだ記憶に新しい。それこそ公開処刑だ。


「まさか、まだあの時の命令を根にもって……」「当たり前だろ」


食い気味で肯定される。

しかも相手こいつの好きな人じゃなかったしな。


俊也には好き、というか、本人いわく「気になっている人」がいる。残念ながらさっきの命令、「手をつないで廊下を歩く」では当たらず、しかも違う女子に当たり、その女子に遠回しに拒否され、待たされた挙げ句、冷やかされるというかわいそうなことになっていた。しかもその次の命令でその「気になっている人」は男子とのポッキーゲームに当たってたし……同情する。


「まあ、しょうがないわな」


苦笑いを向けるのはもう1人の親友ーー石長一樹(いしながかずき)である。入学当初は俺と同じくらいの身長だったくせに、今では俺より数センチ身長が高い。まだ成長期ということか。


「当然の報いだ」

「で、他は?」


先を急かす一樹に言おうかどうしようか迷うがやはりいうことにした。俺少し声のトーンを落として、


「相手が松田さんっていうのが……」

「え、何そこが不満なの?もっと上をくれってこと?」


何も知らない一樹が驚く。学年トップクラスの人気がある松田さんに不満を抱く奴は少ないだろう。


「いや、そうじゃなくて!あんまり得意じゃないタイプというか」

「なんで?」

「こう、教室にいると、目線を感じるんだよ」

「?いいことじゃないの?」

「大体俺ら三人でいる時に、平原と一緒にスマホで写真を見て、クスクス笑いながらこっちを見てきて」

「……なんか怖いな」


最近はまた頻度が増えた気がする。ものすごいいい笑顔でこっちを見てるのに注意とかできないし。


「隠れ腐女子なのかな、と……」

「うわあ」

「で、あまりいい顔じゃない、と」

「腐女子なのはまだいいんだけど、クスクス笑われるのはちょっと……まあ、ともかく苦手なタイプ」

「まあ、安心しろ、松田さんが腐女子の可能性は薄い」

「なんで?」

「見ろ」


俊也が顎で松田さんの方をしゃくる。


「いや、大丈夫じゃないって!こんなのバレたら、アキちゃんに殺されるって!」


その先には松田さんがいた。カメラ役の女子と言い争っているようにも見える。


「ようするに、松田さんと平原はお前のファンってことだよ」

「……は?」

「あれ、お前知らないの?お前ファンクラブできてるけど」

「はあ⁉」


親友二人に言われ、驚きを隠せない。


「俺のどこが……」

「笑顔がかわいい」

「ちっちゃくって弟っぽい」

「………………」


男としてそこはかとなく微妙なんですけど……

弟っぽいのは認めるけど笑顔がかわいいとかそんなの作り笑いだし……


「……一応好かれてるうちに入ってると思うぞ……男として見られてるかはわからんが……」

「……まあ、無関心じゃないだけマシじゃない?松田さん、男の影全くないし。他の奴よりはリードしてると思うよ」


慰めるかのような言葉にふと、疑問を抱いた。


「なんかそれ俺が松田さんのこと好きみたいじゃん」

「「違うの?」」

「……………………」


……………………


「だって普段のお前ならそういうこと俺らに相談しないだろ」

「好きじゃなかったらそんなこと意識しないだろ」


うんうん、と二人が頷き合う。

いえてる……

確かにさっきの俊也に出した命令の時俊也がそうであったように、普通相手のことをそこまで気にしない。


「いやないない。今までそんなに話したことないし」

「恋愛に場数は関係ないって言ったのどこのどいつだよ」


はい、俺です、以前俊也が悩んでた時に言いました。


「……相手はあの松田さんだぞ?俺がそんな無謀なことするわけないだろ?」


ため息をつきながら言うと、

「……そんなに否定するなら俺がとっちゃおうか」

「⁉」

「冗談だって」


冗談だと知ってほっとする自分がいるのに気づいてようやく自覚する。


「やっと気づいたのか」

「今まで気づいてなかったことに驚きなんだけど」


……何も言い返せない……


「海沼くん、こっちこっち!セリフ決まったよー!」


「! じゃあ行ってくる!」





「一樹、冗談とは言え『とる』って言い方はないと思うぞ?」

「そこは謝ります、はい、全国の松田ファンの皆さま申し訳ございませんでした。……素直に甘い言葉とか言える啓介だと思います?」

「言えないにポッキー十本」

「言うのに五分かかるにポテチ一袋」





「はい、海沼くんはこのセリフを言ってね」


そう言ってスマホを見せられる。


「うわ、何このセリフくっさ!」


こんなセリフ言うとかはず!でもやるしかない。王様の命令は絶対、だから。





教壇でイメージトレーニングをしていた時ついに若干イラついてきていた進行役が


「はい、そろそろやるよー!もう五分もたってるじゃん」

「梨乃さん早くー!こっちはスタンバイ完了だよー」


と言った。


「いや、でも」

「でもじゃない!ほら!」

「知抄ちゃんは聖母じゃないの⁉」

「今この瞬間のためなら私は悪魔にもなれる!」


そんなやり取りをしながらぐいぐい押されて松田さんが教壇に上がる。

顔をほんのり赤らめながらも笑顔を崩さない松田さんは人気通りかわいい。確かに天使。


「ほら、早く言えよ~」

「ちょっと待って、まだ心の準備が、」

「カメラ準備OKでーす」


恥ずかしい、人前に加えてあのセリフですよ⁉しかも囁くってことは近くまで寄るってことでしょ⁉

恥ずかしさを紛らすために持っていた番号の書かれた紙をいじる。


「うわ、もぉー!」


恥ずかしい!こっちはしかも2、3分前に恋心自覚した奴がですよ!


「一分経過ー」


カメラ役からそんな声がとぶ。


「ちょっと待って、」


今心の準備ができかかった時だったのに……!

好きとかそういうのじゃないだけマシ、好きとかそういうのじゃないだけマシ……!


「ほら、早く」

「あーもう!い、い、い、い、言うよ!」


おー!と歓声があがった。


「じゃあ、言います、」


一歩松田さんの方に歩み寄って、耳に顔を近づけて、


「ーーーーーー、ーーーーーーーーーーーーー」


言った。ついに言った。


「あー!もう!恥ずかしい!」


顔を振って熱を逃がそうとする。今にも顔から火が出そうだ。

ちらりと松田さんを盗み見る。そこにはいつものようにクラスメイトに笑いかける松田さんがいた。これくらいじゃ意識されないか、と少し落胆したけど耳まで真っ赤なので今日はこれでいいことにしよう。


「……言えたな」

「……五分もかからなかったな」

「そこ聞こえてるからな⁉」

「「はーい、すみませーん、」」

「で、結局なんて言ってたんだ?」


結局言わないといけないのか。


「いつ頃かな、君を意識し始めたのは」


「「くっさ……」」

「いや俺が決めた訳じゃないし!」

「で実際はいつ頃ですか?」

「知らねえし!」

「さっきでしょ」

「あーもう!うるさーい!」


そんな俺の声はにぎやかな他の声にかき消された。





その後

「くしゃくしゃじゃん13番の紙」

「誰だよやったの」


……何も……知らない……!

俊也と一樹の目が痛かった……





その日の晩

『ほい、今日の例の写真な』


帰ってから俺と俊也、一樹のライソグループで俊也から写真が回ってきた。友達にもらったらしい。

今日の命令の写真のほとんどがクラスライソに上がっているのに対し例の「囁き」の命令の写真は一つもなかったので、初めて客観的なあの時の自分を見る。

うっわ、顔真っ赤。身長低。背伸びしたつもりはないけど結構ギリギリじゃん。


『本当は細渕さんの撮ってた動画が欲しかったんだけど、肝心なところの音声が入ってないって言ってクラスライソに上げてなかったしな、写真で勘弁』


『動画とか恥ずかしくて見れねえわ。写真で十分』


と送ると、


『まあ確かに啓介はチキンだしな』

『うんうん。写真で十分っていう辺りが素直じゃないよなー』


あ、これディスられてる。


『お前らも大概チキンで素直じゃないだろ』

『……何も言えねえ』

『同じく……』


……俺の身長がもっと伸びて、もっと男らしくなって、松田さんと釣り合うくらいになったら、

その時は、きっと…………

前回がフィクション度50%だったのに対し今回は80%以上にまでいきました。次回からは90%以上になると思います。

……だってフィクションの方が書きやすいんだもん……


次回はまだ未定です。とりあえず第一話をお直ししてからにしようと思ってます

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